「誠実だと思われたい」きれいな言葉を選んで話しているのに、なぜか嫌われる人が持っている"残念なマインド"
プレジデントオンライン / 2024年4月2日 6時15分
※本稿は、小林音子『アメリカの中高生が学んでいる話し方の授業』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■嫌われてしまう原因は「自己中心のマインド」
「自己中心のマインド」を持っていると、それは特に非言語表現に滲み出てしまい、相手にネガティブな印象を与えます。自分のマインドを隠そうと、きれいな言葉で取り繕ったとしても、その試みは相手に伝わってしまい、余計に嫌悪感として人に映ります。
それが無自覚に潜んでいる場合は、いくらきれいな言葉を並べても、その印象をごまかすのは難しいでしょう。「自己中心のマインド」は無自覚だからこそ恐ろしいのです。
「自己中心のマインド」があることについて指摘しても、多くの人は「まさか誰かをコントロールしようだなんて思っていませんよ」と言います。しかし、そう人に映っているときのほとんどは「自己中心のマインド」が必ずあなたの中にあります。
「自己中心のマインド」がないのではなく、あなたの中に確実にあるのに、その気持ちが微細(ミクロ)すぎて気がついていないことが多いのです。ですから、まずは自分の中にある「微細な気持ち」に注意を払い、自覚的になりましょう。
そして、その自覚した「自己中心のマインド」を、自分を尊重しながら「相手中心のマインド」に変えていくのです。
目指すは、アサーティブマインドです。これはアメリカのコミュニケーションで重視されていることで、「自分も相手も大切にする」ことです。その方法をお伝えしていきます。
■自己中心のマインドは「承認欲求」に由来する
それでは「自己中心のマインド」とは何に由来するのでしょうか。それは承認欲求に由来します。承認欲求とは、自分のことを存在価値があると肯定したい、他者から認められたいという願望です。
・好かれたい
・賢いと思われたい
・才能があると思われたい
・面白いと思われたい
・信頼されたい
・理解されたい
・仕事ができると思われたい
・良い人だと思われたい
・誠実だと思われたい
・支持されたい
・センスがいいと思われたい
・気が利く人だと思われたい
・人間的に器が大きいと思われたい
・優しいと思われたい
・自己中心でいたい
・価値があると思われたい
こういった欲求が承認欲求です。
■問題は「思わせよう」とすること
しかし、厳密に言うと、こういった欲求を持つことそのものは悪いことではありません。他者から承認されれば誰もが気持ちいい、嬉しいと感じるでしょう。自信がないとき、この「承認」が自分の自己肯定感を高める助けになり、勇気やモチベーションを与えてくれることがあります。
人間ですから、欲求は必ず存在します。欲求があるからこそ、人は成長できるのです。
では何が問題なのでしょうか。それは、「思わせよう」とすることです。
・好きと思わせよう
・賢いと思わせよう
・才能があると思わせよう
・面白いと思わせよう
・信頼させよう
・わからせよう
・仕事ができると思わせよう
・人格者だと思わせよう
・誠実だと思わせよう
・人気があると思わせよう
・センスがいいと思わせよう
・気が利く人だと思わせよう
・人間的に器が大きいと思わせよう
・優しいと思わせよう
・思い通りに操ろう
・価値があると思わせよう
欲求を持つことそのものはいいのですが、その欲求を満たすための過度な行動で、相手が強要されている、支配されていると感じたり、意図的に利用されてると思えば、人に嫌われてしまいます。
■人はコントロールされることに嫌悪感を抱く
ほのめかしたり、匂わせたりすることも人には不快に映る場合があるので気をつけましょう。
人はコントロールされることに非常に嫌悪感を感じます。
本来、あなたのことをどう思うかは、相手の「自由」です。にもかかわらず、無理に「思わせよう」とすることは、相手の決定権を奪うことになります。
そうして、相手の判断の自由を奪い、コントロールしようとするからこそ、過度に「思わせよう」とすることは印象を悪くします。それは、仕事の武勇伝を語りたがる人、過去の栄光を語る人などに多く見られます。
そういった人から、何か違和感を感じたことはありませんか? 「仕事ができる人」「すごい人」と「思わせよう」としているからかもしれません。
もし、あなたが好かれたいと思っているなら、あなたの願望を相手がどう捉えるかは相手に任せましょう。そのためには、自分の欲求に自覚的になることが大事です。
その欲求を満たそうとしている「自己中心のマインド」にも自覚的になる。それこそが、好かれるコミュニケーションのための第一歩です。
■「自分の承認欲求」をマネジメントする
次に、自覚できた自分の承認欲求とどのように付き合えばよいのかについてお話しします。
まず、自分の承認欲求が自覚できたら、そのために相手をコントロールしようとするのではなく、お願いするようにします。
このとき、お願いしたことを断られたとしても、相手を否定したり怒ったりしないことを先に決めておきましょう。
結局は、コミュニケーションとは「お願い」なのです。
コミュニケーションを取っているときは、自分は相手から何らかの形で承認欲求を満たしてもらっているのです。あるいは満たされようとしています。
人に好かれる人は正直にお願いできるからこそ、好かれるのです。
たとえば「おはよう」の一言でも、「私はあなたと良好な関係を持ちたい」とお願いしていると言えます。
挨拶することで何か自分にとってプラスになるという期待があるためです。ですから、「おはよう」と言う瞬間にも、瞬時に相手の機嫌を推し量ったりタイミングを見計らったりしています。
■相手に「お願いをしていること」を自覚しよう
例を出すと、友人にお金を借りたいときには笑顔で印象良く「おはよう」と挨拶をして相手の状況を確認するでしょう。良好な関係でないとお金を貸してもらえないためです。
しかし、友人にお金を返したくないときには「おはよう」さえ言わずに、コミュニケーションを取らずに避けるようにするでしょう。
これは極端な例ですが、挨拶や第一声にはどんなコミュニケーションを始めたいのかという明確な意図が込められています。
ですから、自分は相手に対して常に何かしらのお願いをしていることを自覚しましょう。
すると、自然と相手に対して謙虚になれますし、それだけでも相手への接し方が変わってきます。自分のニーズや欲求ばかりを言うようなことはなくなります。
そしてコミュニケーションがお願いだということは、その先のゴールとして、良好な人間関係を構築することが社会的な成功にまで繫がるだろうという期待があります。
仕事でも私生活でも助け合える関係性を作っていきたいわけです。
■相手を尊重することで、結局は自分も尊重される
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが唱えた有名な欲求段階理論では、下から「生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求(所属と愛の欲求)、承認(尊重)の欲求、自己実現の欲求」がありますが、コミュニケーションで良好な人間関係を築くその先の目的は、社会的欲求(所属と愛の欲求)と、その上の承認の欲求、そして自己実現の欲求でしょう。
ですから、まずは社会的欲求(所属と愛の欲求)を満たすために、人は友情関係や家族関係、恋愛関係といった社会的な繫がりを形成することで幸福感を得ようとします。
このことは同時にストレスを軽減し、精神的な支えを得ることでもあります。愚痴を聞いてもらったり、悩みを相談したり、知恵を借りたりできるようになるのです。
好印象な挨拶は良好なコミュニケーションの出発点です。
挨拶を意識的に「お願い」と捉えることで、相手への尊重が生まれます。
打算的にコミュニケーションを取りなさい、と言っているのではありません。よりよい人生を送るためには、コミュニケーションの相手を尊重することが不可欠です。
そうすることで、結局は自分も尊重されるのです。
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コミュニケーションコーチ
TEDxスピーチトレーナー、エグゼクティブメディアトレーナー。オリオンズベルトグローバル代表取締役。俳優。コミュニケーションにおけるマインド、言語表現、非言語表現の3つの観点から「自己理解」を深め、「伝える技術」が向上するメソッドを確立。アメリカでコミュニケーションのスクールを複数回視察し、得た知見をメソッドに取り入れる。TEDxスピーカーやビジネスパーソンをはじめ、講師、学生、俳優、タレントに至るまで多様な分野の方に「表現力」のトレーニングを提供。メディアコーチとしては、政界や経済界のエグゼクティブ、広報担当者にメディア対応に必要な技術をコーチング。コミュニケーションコーチとしては、子供からシニアまで幅広い年齢層に向けて「話し方」「聞き方」の基本から、受験・就職面接対策、お見合い対策などをコーチングする。多角的に執筆・講演・ビジネストレーニングを手掛けている。
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(コミュニケーションコーチ 小林 音子)
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