これをやれば子供が気分良く勉強に没頭し始める…中学受験のプロが「やる気を気にするな」と言う理由
プレジデントオンライン / 2024年4月8日 16時15分
※本稿は、安浪京子『勉強とメンタルの悩みを解決!【決定版】中学受験をするきみへ』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■「やる気」よりも「やるべきこと」を
ある日、教え子と一緒に「やる気スイッチ」を作りました。
「先生、どうしてもやる気が出ない。スイッチってどこにあるの?」
と聞かれ、体のあちこちを押してみたのですが「どこも違う。てか、くすぐったい」との反応。それなら、と紙で箱を作って真ん中にスイッチの○を書き、「スイッチオン!」と二人で言いながらボタンを押していました。
――それくらい、みんな「やる気」に悩んでいるんだよね。
でもね、中学受験は、入試当日はきみに「やる気があるかどうか」なんて聞いてきません。日々、どれほどやる気をもって過ごしてきたかも聞いてくれません。
シンプルに、当日の点数だけで決まります。
「やる気」という魔物にとらわれてしまうと、「やる気が出ないから勉強できないんだ」と、自分に言い訳をしてしまいがち。
だから「やる気」なんてもう忘れちゃおう!
そして、「やるべきこと」を淡々とやろう。
そのコツはいろいろあるけれど、
②達成できそうな目標を立てる→勉強時間をちょっと短めに決めてみる
③取り組む前の習慣を作る→鉛筆を削ったら3秒以内に何か書き始める など
④体を動かす→体を動かすと脳も動いてくれるよ
⑤心配事があったら誰かに吐き出す→心配やストレスはないにこしたことない
ほかにも、「ごほうびを決める」「時間で区切る」なんかもいいね。でも、一番有効なのは「①何も考えず、単純な勉強を始める」。
ちなみに、スイッチを一緒に作った子とは「このスイッチを押したらつべこべ言わず問題を解こう」と約束して、その後はスイスイと課題を消化していきました。何度も押して、すぐにスイッチの箱がグシャグシャになったけどね(笑)。
■子供の「やる気」を求めてヤキモキするのは時間の無駄
みなさんからいただく相談のトップ3の一つ。それが「やる気」。
「いつになったらやる気になるのでしょうか」
「入試が自分ごとにならない状態にヤキモキします」
という相談は、あらゆる学年からいただきます。
長い指導人生の中で、「本格的にギアが入ったな」と感じることが多いのは、6年の冬です。つまり、そこまでは「この子にやる気はあるのだろうか?」という状態がどのご家庭でも続きます。
他にも、入試が始まり、第一志望の不合格を知ってやる気になる子もいます。最後までやる気にならないまま、受験終了になる子もいます(合格はもらえたりもらえなかったり)。
つまり、「やる気」を求めてヤキモキするのは時間の無駄、とも言えます。
だから、もうやめませんか。
「やる気に満ちた受験生」を追い求めるのは。
学校に行って、その後塾にも行って、土日も特訓やテストで潰れて、すごく頑張っているんです。
学校でも塾でも家でも勉強して、「何もしなくていい休息日」はほぼなし。体力も気力も相当消耗して、そこから「やる気」を捻出するエネルギーは残っていません。
でも、ときどきありませんか?「チラッ」「キラッ」と、子どもがやる気を見せる瞬間が。たっぷり睡眠を取った後、思い切り遊んでスッキリした顔をしているとき、とても嬉しいことがあったときなど。つまり、やる気のベースは「体も心も元気な状態」なのです。
親はどうしても継続的にやる気のある状態を求めますが、瞬間的なやる気も大切にしてあげてください。そして、どういうときにそうなるのか、よく観察してあげてほしいと思います。
同時に、一方的にやる気を求めるばかりでなく、心にエネルギーを充てんしてあげることも、ぜひ意識していただきたいと思います。
自ら勉強に向かい、その勉強姿勢にやる気がみなぎり、解いた問題を間違えたら悔しがってきちんと解きなおしをし、テストで次こそはと闘志を燃やす。
こんな理想の受験生像は、漫画の中にしかいません。
■「どれだけ息抜きすればいいか」の最終結論
「息抜きはどの程度させたら良いですか?」
これもよくいただく質問です。
以前、東大理IIIに進学した4人のお子さんを持つ佐藤亮子さんと対談セミナーをしたときに、佐藤さんが「息はするだけ、抜いちゃダメ!」とおっしゃって、ファシリテーターの方と爆笑した覚えがあります。
佐藤さんもそう言いつつ「子どもたちもなんだかんだ私の目を盗んで、こっそり息抜きしてたみたい」と(笑)。
人間、息抜きなしで走り続けることなどできませんが、でも受験生だし……とさじ加減に悩まれますよね。
結論から言えば、息抜きの程度は子どもによります。“受験生だからこうあるべき”ではありません。これは遊びにも言えることです。
子どもによるわけですから、当然親が一方的に決めることもできません。
私の算数指導は基本的に1回2時間ですが、集中力の持続しない子は途中3~4回休憩を挟むこともありますし、休憩方法もおしゃべりする子、お菓子を食べる子、ルービックキューブをする子とさまざまです。
入試直前期でやる気みなぎる6年生には、休憩なしで3時間ぶっ通しの指導をすることもあります。
「息抜き」でバトルになってしまうのは、「スケジュールにない時間に息抜きしているから」「勉強密度が低いのに息抜きだけしっかり取ろうとするから」「息抜きの合間に勉強をしているようにしか見えないから」……ですよね。お気持ち、とてもよくわかります。
■子供がどうしたら気分よく元気にがんばれるか
そもそも、なぜ息抜きが必要なのかといえば、受験生が「元気な状態で勉強に向かうため」。だから、1時間息抜きをしてもダラダラしていたら、それは息抜きになっていません。逆に、息抜きが3分しかなくても集中できたりするわけです。
なので「息抜きはかくあるべし」ではなく、「どうしたら気分よく元気にがんばれるか」を子どもと話し合うところからスタート、です。
6年冬に、ずっと観たかった映画を楽しんできた教え子は、その後の集中力が格段にアップしました。「入試が終わるまで我慢しなさい」というご家庭の方が多い中、そのお母様はお子さんのことを良く見ているなと感心しました。
塾のない日は学校から帰宅して公園で友達と遊びたい、寝る前に15分自由時間がほしい、模試のあった午後はママとカフェに行きたいなど、子どもが元気になる方法はさまざま。
お子さんが元気になる方法、ご存じですか?
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算数教育家・中学受験専門カウンセラー
株式会社アートオブエデュケーション代表取締役。関西、関東の中学受験専門大手進学塾で算数講師を担当。プロ家庭教師歴約20年。中学受験のプロ家庭教師として、きめ細かい算数指導とメンタルフォローをモットーに、毎年多数の合格者を輩出している。中学受験親向けのセミナーも多数開催。新著に『中学受験 男の子を伸ばす親の習慣』『中学受験 女の子を伸ばす親の習慣』(共に青春出版社)
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(算数教育家・中学受験専門カウンセラー 安浪 京子)
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