リクルート全国1位営業マンがメガバンクの新入社員に伝えた「仕事相手とする雑談の2つのコツ」
プレジデントオンライン / 2024年4月11日 8時15分
※本稿は、渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■「リアクション」が薄いと話はふくらまない
相手にたくさんしゃべってもらうためには、上手な質問をするだけでは足りません。
「あなたの話をもっと聞かせてください」
「その話にものすごく興味がありますよ」
ということを何らかの方法で伝えることで、相手はもっと話したいと思うようになります。
逆に、すごくいい質問をして相手もそれに喜んで答えてくれたのにもかかわらず、こちらの反応が薄いせいで話がふくらまないということもよくあります。
つまりは「リアクション」です。
もちろん、大げさに反応すればいいというものでもありません。
【自分】「超かわいい!」
【相手】「色もちょっと変えてみたんだ」
【自分】「色もかわいい!」
他にも、何でもかんでも「ヤバイ」を連発するなど、テンションは高いのに同じ言葉ばかりのリアクションでは、「この人、本当に人の話を聞いているの?」と疑いたくなります(「とりあえずそう言っておけばいい」と思っている人もいるのでは?)。
やはり重要なのは、相手の話に応じたリアクションです。
ただし、コロナ禍以降、マスクをしての会話が増えてきました。
今後もまだマスクのままでの会話もあるはずです。
口元が隠れているというのは、リアクションに大きく影響してきます。
そこで、言葉や表情だけに頼らないリアクション術をご紹介することにしましょう。
■感情を表現するには「前後の動き」が有効
おススメするのは、2パターンです。
まず、カラダを前に乗り出す動作。
これは、リアルに会っているときでもオンラインの画面越しでも使えます。
これだけで、「あなたの話に興味があるから、もっと聞きたい」という気持ちを表現できます。
そこでカラダを前に乗り出すだけ。
そのうえで、「それで?」「どうしたの?」などといった言葉をあわせれば完璧です。
などと、聞いてもいないことまでしゃべってくれたりします。
もう1つは、カラダを後ろにそらす動作。
これは、「驚きの気持ち」を表現します。
自分が話したことに対して驚いてもらえるのも嬉しいものです。
そこでカラダを後ろにそらしながら、「それは安いですね!」「本当ですか?」「ウソでしょ!」などの言葉と一緒に使うと効果的です。
このように気持ちを動作で表現すると、相手はさらに気持ちよく話せるようになります。
とくにオンラインでマスクをしたままの会話の場合は、「前後の動き」を入れることで気持ちが相手に伝わりやすくなります。
私自身、最近はほぼオンラインでコンサルティングの仕事を行っているので、この画面の中でいかに感情を表現するかを考えたときに、カラダの動きが有効なことに気づきました。
また、相手にたくさんしゃべってもらうという意味では、雑談だけでなく、取材やインタビューなどでも使えますし、営業での商談でも使えます。
「ちょっと自分はリアクションが薄いタイプだな」と自覚していたら、ぜひこれを意識して使ってみてください。
■相手と対等の知識なんて必要ない
以前、某大手銀行の新人研修で「雑談」について講義したことがあります。
![視聴覚室が明るく照らされている](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/1200wm/img_48b3492530b887bcdc5bf38186093d1d397887.jpg)
若手社員の悩みは、「自分の祖父母のような年上のお客さまと、どう話をしていいのかわからない」というものでした。
「いつもどうしているの?」と聞くと、毎日、新聞やビジネス雑誌を読んで知識を蓄えているとのこと。
もちろん、それは勉強になるのでいいのかもしれません。
しかし、いくらそうした情報を仕入れたとしても、何十歳も年上の人と対等の会話などできるわけがないのも事実です。
「銀行マンたるもの、お客さまよりものごとを知っていないとダメだ」と思い込んでいるのでしょう。
そこで、私はその研修であることを伝えました。
すると、研修が終わった頃には皆、晴れやかでスッキリとした表情になったのです。
伝えたのは、2つだけです。
まず、年配の人と対等に話をしようとしないこと。
やろうとしてもできないことを努力しても時間のムダ。新聞を読むのが好きでしかたがないのならともかく、ムリに知識を頭に入れようとしなくてもいい。
■過去の話を聞いて、教えてもらえばいい
もう1つは、「教えてもらう雑談」を心がけることです。
そもそも年齢も社会人としても大先輩なのだから、教わるべきことはたくさんあるはず。相手の過去の話を聞いて、教えてもらえばいい。孫のような営業に教えるという行為は、とても気持ちがいいし、どんどん教えたくなるもの。当然、愛着もわいてくる。かわいがられる存在になればいい。
そんなことを伝えました。
【お客さま】「食品関係の商社に30年勤めていたんだ」
【営業】「そうだったんですね。営業ですか?」
【お客さま】「バリバリの営業だったよ」
【営業】「私はまだ営業を始めたばかりなんですが、なかなか難しくて」
【お客さま】「私も新人の頃は全然売れなかったよ。でも、3年目でトップクラスになってからは、ずっと上位にいたかな」
【営業】「すごいですね。あの、これからときどきお伺いしてもいいですか? 営業を教えてください!」
【お客さま】「ああいいよ。いつでも来なさい」
こうして親しくなっていけば、ムリに知識をつめ込まなくても、自然に相手との関係も深まることがおわかりいただけるでしょう。
■見栄を張らないほうが信頼される
私自身、かつては社長のところへ営業に行っては、経営の苦労話をよく聞いていました。
社長室の本棚に置いてある本の内容についても、いろいろと質問していました。
思えば、当時から自分でビジネスを始めたいと思っていたのかもしれません。営業の仕事をしながら自分の将来のための勉強もできたので、楽しさを感じていました。
すると、そのような私の態度を気に入ってもらえて、営業の成果にもつながるようになったのです。
私の体験からも言えることは、相手が自分より年配者なら、その経験を教えてもらう雑談を心がけるといいということ。
たとえば趣味のことを聞いて、自分もそのジャンルについて詳しければ共通の話題として会話を進めればいいし、自分が知らないことなら「教えてもらう雑談」にすればいいのです。
また、相手が年下だったとしても、自分が知らない分野について詳しいとわかったら、それも「教えてもらう雑談」にしましょう。
教えてもらうスタンスで話すようにすれば、その後の仕事の会話にも好影響が出ることは間違いありません。
![シニア管理職と若いビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/5/1200wm/img_154e89e9972e92ead5febf8067decc19391406.jpg)
■ほどよいタイミングで切り上げるテクニック
雑談で話が弾むのはいいことです。
しかも、相手が気持ちよく話してくれているなら、なおさらです。
でも、その雑談をずっと続けていいのかというと、必ずしもそうではありませんよね。
お互いに「そろそろこの話は終わりにしたいな」と思っているようなときは、長すぎる雑談に困ってしまうという現象が起こります。
「このまま続けていいのだろうか。でも、せっかく話してもらっているのに途中で切り上げにくいな」
このように「できれば相手から切り出してほしい」と思っているようなときに相手任せにしてしまうと、自分でその場をコントロールできなくなります。
ですから、とくに仕事で会っている場合には、ほどよいタイミングで切り上げる必要があるのです。
私がリクルートにいたときは、まだポケベルを使っている時代でした。
話が長いことがわかっているお客さまのところへ行ったときには、社内の事務の人に「○時に鳴らして」とお願いしておきます。
すると話の最中にベルが鳴って、それをチラッと見ることで、相手に様子が伝わります。
【私】「ありがとうございます。では、ちょっと電話をしてきます」
そして実際に話をして(急ぎの用事があるふりをして)、雑談を強制的に中断するということをやっていました。
いまならスマホでも同じことができますね。
■話題をガラッと切り替える言葉を使う
他の方法としては、次のようにすることで、いい意味で話に水を差すことができます。
たとえば、こんな感じです。
「……ということで、話を続けたいのは山々なのですが、そろそろ本題に入りましょう」
「すみません。お手洗いをお借りしてもいいですか?」(一度その場から離れる)
このように、「話題を切り替える言葉」を使うことで、長い雑談を終わらせることができます。
さて、本書の趣旨は、できるだけ相手にたくさんしゃべってもらうことなので、会話が続くということは、うまい雑談ができている証拠です。
相手がもっとしゃべりたいと思っているのなら、雑談を続ける意味もあります。
![渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』(大和出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/f/1200wm/img_1fa3e9eff0920af714484d669b9b80fd243047.jpg)
話に乗っかって会話をどんどん広げてもいいでしょう。
しかし、相手も「そろそろこの話はいいかな」と感じているようなら、パッと話題を切り替えることが、相手の意を汲むことになります。
切り替えるタイミングは、会話が途切れた瞬間がベストです。
どんなにおしゃべりな人でも、1つの話題で延々としゃべることはしません。
どこかで途切れる瞬間があります。
【自分】「なるほど、面白そうですね。……ところで、お時間のほうはまだ大丈夫ですか?」
あくまでも相手を気づかうセリフを使いましょう。
自然に話題を切り替えることができたら、相手からの印象も悪くはなりません。
できるだけ相手にイヤな思いをさせることなく、スマートに終わらせましょう。
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ピクトワークス代表
1962年、神奈川県生まれ。小さい頃から極度の人見知りで、小中高校生時代もクラスで一番無口な性格。明治大学卒業後、精密機器メーカーに入社。その後、リクルートに転職。社内でも異色な無口な営業スタイルで入社10カ月目で営業達成率全国トップになる。94年に有限会社ピクトワークスを設立。広告などのクリエイティブ全般に携わる。その後、事業を営業マン教育の分野にシフト。著書に『“内向型”のための「営業の教科書」』(大和出版)、『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』(以上、日本実業出版社)、『「しゃべらない営業」の技術』(PHPビジネス新書)などがある。
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(ピクトワークス代表 渡瀬 謙)
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