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「大学付属校」には"欠点"がある…教育ジャーナリストが「想定以上のランクも狙える」と勧める進学ルート

プレジデントオンライン / 2024年4月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula

2025年1月に実施される大学入学共通テストから、試験内容が大きく様変わりする。教育ジャーナリストの清水克彦さんは「一般入試以外にも、志望校に合格するルートはある。中でも、総合型選抜入試(旧AO入試)は実際の学力より上の大学を狙える」という――。

※本稿は、清水克彦『2025年大学入試大改革 求められる「学力」をどう身につけるか』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

■どのルートで山頂を目指すか

保護者にとって、子育てのゴールは「少しでも難易度の高い大学に合格させること」ではない。それはあくまで通過点に過ぎない。

言うまでもなく、大学入試の結果はどうあれ、社会に出て自立できる子ども、自分の頭で考え、判断し、周りと協調しながら行動したり、自分の考えをきちんと表現できる子どもに育てることがゴールだ。

とはいえ、大学進学率が5割をゆうに超える今、保護者からすれば、「子どもがどの大学に進学するか」は大きな山だ。箱根駅伝にたとえれば、最終10区での目標が自立とすれば、大学入試は上りの5区のようなものだ。

ただ、そのルートは、箱根駅伝とは違い、いくつも用意されている。子どもの中で受験したい大学が見えてきた段階で、親子一緒に、どのルートを走るのがベストかを検討することをおすすめしたい。

いくつかルートを挙げてみよう。

■総合型選抜入試は下剋上を起こしやすい

◇志望する大学に入学するまでのルート

○一般入試で受験=通常の入試パターン。大学の難易度に見合う学力が問われるが、強化方法が従来通りのため対策が立てやすい。その反面、予備校代のほか、複数の大学を受験するための受験料や旅費がかさむ

○指定校推薦入試で受験=高校での高い評定平均値が必要。早慶などの場合、校内選考が熾烈。出願すればほぼ合格できるが、他大学との併願はできない。国立大学にはこの制度がない

○学校推薦型選抜入試で受験=同じく高校での高い評定平均値、課外活動での実績が重視される。学校長から推薦される形だが、人気の大学・学部では高い競争率になるため「出願=ほぼ合格」とはいかない

○総合型選抜入試(自己推薦含む)で受験=「一芸入試」と呼ばれた時代とは異なり、小論文やグループディスカッションなどで学力を測るため、一般入試とは別の対策が必須。ただ、ランクが上の大学に合格する下剋上は起こしやすい

○帰国生入試で受験=海外留学期間が大学側の条件に合致しているかを確認する必要がある。高い語学力が求められるほか、高校時代、日本の教育を受けていないため、国語や地理・歴史などの自己学習が必要になる

○付属校からの進学=ほぼ全員、系列の大学に進学できる高校と、数割程度しか進学できない高校があるため、進学条件を確認しておく必要がある。ほぼ全員が進学できる場合でも、人気学部へは成績上位者しか進めない

■指定校推薦枠に飛びつくと後悔する可能性

以上、6つのルートでメリットとデメリットをまとめてみたが、一発勝負の一般入試を除けば、どのルートもある種の曖昧さを含んでいるので注意しておきたい。

指定校推薦の場合、地域のトップ校や準トップ校には、早慶上智やMARCH、関関同立クラスの推薦枠があるが、推薦枠がない高校は、中堅以下の私立大学の中から出願先を選ばなければならなくなる。

高校生の中には、「後伸び」(高校入学後、学力がアップ)する子どもも大勢いるため、焦って指定校推薦枠に飛びつき、中堅以下の大学で妥協してしまうと、先々、後悔することになるかもしれない。

また、指定校推薦入試や学校推薦型選抜入試の場合、評定平均値が同じ子どもが一枠を争うような場合、どうしても学校受けが良い子が有利になったり、いまだに地元の名士の子女が優先されたりする事例も存在するので留意しておこう。

「GOOD」「BETTER」「BEST」に分かれた標識
写真=iStock.com/-Antonio-
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/-Antonio-

■大学付属校は「銅メダル」狙いと同じ

本書を手にされている皆さんの中には、子どもを大学の付属校に通わせているという方も多いと思う。そうでない方は、この項は読み飛ばしていただいて構わない。

率直に言えば、付属校から系列の大学に進学することは、オリンピックなどで言う「銅メダル」狙いと同義だと思っている。

確実にメダルを狙える点ではプラスだが、それ以上の「金メダル」や「銀メダル」を諦めなければならないデメリットも存在する。

「中高一貫の6年間で考え方が変わり、学力も伴ってきたので、本当は○○大学に進みたいのだけど、系列の大学に進んだほうが確実で楽」

という気持ちに傾いてしまうと、誤った選択をしてしまうリスクもはらむ。

たとえば、系列の大学に医歯薬系の学部がない、音楽系の学部がない、あるいは、系列の大学よりも難易度の高い他の私立大学や国公立大学に進学したいと考えるようになったケースなどがこれにあたる。

■ほかのルートを選ぶと「いい顔」をされない

大学付属校の場合、もう一つリスクが存在する。

筆者が、自分の子どもの受験で経験したことだが、大学付属校の中で系列の大学への進学を前提にしている高校の場合、指定校推薦入試はさておき、学校推薦型選抜入試や総合型選抜入試で他の私立大学を受験しようとすると、

「学校側としては一校しか書類は作りませんよ」
「他大学を受けるということは、系列の大学への推薦は辞退すると考えていいですね?」

などと、平たく言えば「いい顔」をしてもらえないのだ。

■外部受験を後押ししてくれる付属高校もある

子どもが通う大学付属の中高一貫校から系列の大学への進学率が高い場合、同様の問題に直面する可能性が高いので、早めに確認しておきたい。

もっとも、近頃では、大学付属校の中にも、他大学への進学に寛容な高校、あるいは、むしろ積極的に後押ししている高校も増加している。

◇他大学への進学が容易な大学付属校
○大学への内部進学資格を留保したまま、他大学受験ができる高校
首都圏では、明治、中央、法政、学習院、成蹊、明治学院、日本女子、大妻女子、共立女子の付属校など。関西圏では、関西、同志社、立命館、甲南の付属校など。「系列の大学にない学部であれば」「2大学2学部まで」、もしくは「高校3年の12月までに結果が分かる総合型選抜入試や学校推薦型選抜入試であれば許可する」といった条件つきの学校が増加

このほか、中堅の日東駒専クラスの付属校の中にも、日大二高や専大松戸高など、他大学への進学率が内部進学を上回っている高校は多い。

早稲田高や早稲田佐賀高など早稲田系列の高校でさえ、東京大学や京都大学など他大学への進学に力を入れている。

私立の中高一貫校は、難関大学や有名大学への「進学実績」を中学受験層にアピールしようとするところと、系列の大学に進学させようとするところに二極化している。

「外へ出る」というなら、子どもが通っている付属校がどちらのタイプかを把握し、ギリギリまで二股をかけたうえで判断するのが上策と言えそうだ。

■総合型選抜入試は難関大学へのファストパス

「子どもを少しでもいい大学に」と願う保護者にとっては、これまで繰り返し述べてきた総合型選抜入試の拡充は朗報になる。

総合型選抜入試は「下剋上を起こしやすい」入試制度だと説明してきたが、受験指導をしてきた経験則から言えば、

「一般入試で日東駒専や産近甲龍クラスが相当な高校生はMARCHや関関同立が、そしてMARCHや関関同立クラスが妥当な高校生は早慶が狙える入試」

ということになる。

■地元の進学校の優秀な生徒が報われる

また、「国公立は少し届かないから地元の私立大学に」と考えている高校生にとっても、本当は行きたい国公立大学で総合型選抜入試を実施していれば、その大学が十分射程に入る入試制度だと断言していい。

それだけではない。それぞれの地域で進学校とされる高校の生徒で、しかも、高校で実施される定期試験などで、学年で上位三割あたりまでにいる生徒や、部活動や生徒会活動など様々な活動で実績がある生徒、あるいは、都道府県大会レベルで文化・芸術などの面で顕著な成績を残した生徒にとっては、志望する難関大学に、一般入試に先がけて合格できるファストパス(入場優先権)にもなる制度である。

「うちの子は、地域の進学校に通っているがトップクラスではない」

こういうケースでもチャンスはある。

■トップクラスの生徒はライバルにならない

清水克彦『2025年大学入試大改革 求められる「学力」をどう身につけるか』(平凡社新書)
清水克彦『2025年大学入試大改革 求められる「学力」をどう身につけるか』(平凡社新書)

皆さんの子どもが通う高校のここ数年の傾向を軽く分析してみていただきたい。公立、私立を問わず、トップ層の生徒は、教員の進学指導によって、一般入試で東京大学や京都大学など難関大学に挑戦するか、あえてリスクを取らず、指定校推薦で、早慶上智などへの難関大学への進学を早々と決めてしまうパターンが多い。

つまり、読み書き計算能力が際立って高い生徒や評定平均値で上位を行く生徒は、総合型選抜入試での合格を目指さない、ということになる。

総合型選抜入試が、各高校のトップ層以外による試験だと思えば、さらに希望が持てるはずだ。このファストパスは、想定以上の大学への合格を可能にするチケットと言えるかもしれない。

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清水 克彦(しみず・かつひこ)
政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学特任教授
愛媛県今治市生まれ。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。米国留学を経てキャスター、報道ワイド番組プロデューサー、大妻女子大学非常勤講師などを歴任。専門分野は現代政治、国際関係論、キャリア教育。著書は『日本有事』、『台湾有事』、『安倍政権の罠』、『ラジオ記者、走る』、『2025年大学入試大改革』ほか多数。

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(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学特任教授 清水 克彦)

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