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「猛暑日数が0.2日と北海道に次いで少ないまさかの県」…桜の後にやってくる猛暑を避ける超最適&意外な場所

プレジデントオンライン / 2024年4月6日 9時15分

筆者作成

西日本や東京などで大きく遅れた今年のソメイヨシノの開花。ようやく満開を迎えた地域も多い。統計データ分析家の本川裕さんは「サクラの開花の遅れは地球温暖化の影響が弱まったことが理由ではない。今年も猛暑が予想されている。日本国内の猛暑日の平均日数を調べると、暑さを逃れるには実は“北に行くより海へ向かう”ことがいいとわかった」という――。

■ようやく満開…桜の後にやってくる猛暑を避ける最適&意外な場所

ソメイヨシノの今年の開花は西日本で大きく遅れ、昨年はおろか、平年(30年間分の気象データについて算出した平均値)よりも遅くなった場所が多かった。その大きな理由は、ちょっと意外に思われるかもしれないが、「昨年末から今年にかけて暖冬だったから」であり、地球温暖化の影響が和らいだわけではない。

これからも暑い日が続くことに変わりがない。こうした状況を踏まえ、今回は気象データ特集として、サクラの開花状況を概観するとともに、今後予想される夏の暑さを避けるためにはどうしたらよいかを猛暑日の地域分布データから探ってみよう。

まず、今年のソメイヨシノの全国各地の開花状況を昨年や平年と比較してどのように推移しているかについて示したグラフを図表1に掲げた。

ソメイヨシノの最も早い開花は今年の場合、高知の3月23日だった。開花予想より全般的に遅れがちであり、高知も平年より1日遅かった。

東京の開花も3月29日と遅く、東京が全国一番乗りだった昨年の3月14日より15日遅く、また平年の3月24日よりも5日遅かった。

西日本を中心に多くの地域で開花が昨年はおろか平年よりも遅くなっている。開花が遅くなった理由としては、ひとつは、2月後半から3月にかけて寒い日が多かったことが考えられる。このため蕾の成長が足踏み状態となった。そしてもうひとつは、今年の冬は記録的な暖冬で休眠打破がうまく行われなかったためである。つまり今年は、冬に暖かく、逆に春に寒かったことでサクラの開花が遅くなったと見られる。

開花がまだかまだかとやきもきしていた人が多かった。ある新聞のコラムではそうした状況をあらわすため以下の和歌を引いたほどだった。

〈世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〉在原業平

■桜の「全国一斉開花が促される」と予想される理由

西日本では開花が遅れたのであるが、仙台で平年より6日早く4月2日に開花するなど、ここへきて東日本では開花が進み、平年並みかそれより早くなった。いわば、全国一斉化の傾向、図に即して言えば右下がりの折れ線が横に寝てフラット化する傾向が認められるのである。

東京と仙台の開花日の推移を1953年から長期的に追ったグラフを図表2に掲げた。

早くなる桜の開花日(仙台と東京)
筆者作成

毎年の変動の中で、早くなったり、遅くなったりする傾向がないかを目で確認すると、東京にせよ、仙台にせよ、1980年代までは、開花日にあまり傾向変化があるように見えないが、それ以降は、開花日が早くなる傾向が認められる。

こういう場合の傾向線を求めるひとつの方法は移動平均である。図には各年における過去10カ年の移動平均値の推移を点線で示したが、1990年代以降には開花の早期化傾向がはっきり認められる。

今年(2024年)の開花の遅れは一時的な現象と断定できよう。

地球温暖化で、一方では、サクラの開花の早期化がもたらされるが、他方では、日本の広範囲でサクラがほぼ一斉に開花するようになると気象学者によって予測されている。

サクラの開花には冬の寒さと春の暖かさが必要であり、両者のバランスで開花時期が決まる。サクラの花芽は前年の夏にでき、秋ごろに成長を止めて「休眠」する。冬の厳しい寒さにさらされると「休眠打破」が起こり、成長を再開する。その後は暖かいほど、開花が早まる(東京新聞2024.4.3)。

このため、暖冬で休眠打破が不十分だと春は暖かくとも開花が遅れ、満開にならないこともある。温暖化が進むと、九州は休眠打破に十分な寒さとならず開花が遅れ、逆に東北は休眠打破が十分である上、春の暖かさの影響で早く開花するので、両者が相俟って全国一斉開花が促されると予想されるのである。今年の全国一斉化に向けた動きはそのさきがけだと考えられる。

■猛暑日の地域分布:世界では大陸国で多く、海洋国で少ない

今年、サクラの開花が遅れたからといって、地球温暖化の影響が弱まったとは言えないことは以上で述べたように明らかであろう。今後、われわれは暑さを逃れる対策がこれまで以上に必要とされることとなるのである。

そこで、以下では世界と日本の猛暑日の分布マップを作成し、少しでも涼しい地域へと逃れるための参考としたい。

まず、世界分布を見てみよう。OECDの報告書に掲載されているデータから、猛暑日(最高気温35℃以上の日)を経験した各国の人口の割合をマップ化した。データの得られない国も多いが大勢を理解することは可能である。

結論から言うと、北国と南国という立地よりも、大陸国か海洋国かの違いで人口の猛暑に多くさらされるかどうかが決まって来ることが分かる。陸地より海洋のほうが一日の気温差が小さい。このため海に近い地域ほど一日の気温変動が小さくなり、昼の猛暑にも襲われにくくなっているのである。

具体例を見て行こう。

インド、中国、米国、ブラジル、オーストラリアといった大陸国では人口の60%以上が猛暑日を経験している。

猛暑日経験人口割合世界マップ(2017~21年平均)
筆者作成

東アジアでは、猛暑日経験人口割合が、「大陸国」の中国では78%、「半島国」の韓国では60%、「島国」の日本では53%とほぼ同じ緯度帯であるにもかかわらず、かなりの違いが生じている。

インドネシアは熱帯に位置するにもかかわらず同値が25%に過ぎない。これはインドネシアが海に囲まれている島しょ国だからだと考えることができる。インドの値が95%と高いのは熱帯に位置しているからというより、むしろ大陸国だからと理解したほうがよさそうである。

オセアニアのオーストラリアとニュージーランドは、それぞれ76%、0%と対照的である。これも緯度の違いというより大陸国か島国かという違いにもとづくと言わざるを得ない。

米国よりメキシコ、メキシコよりコスタリカのほうが猛暑日経験人口割合が少ないのも同じ理屈であろう。

ヨーロッパでは英国が7%、スペインが64%と大きな違いがあるのも緯度の違いより海洋性の違いが影響していると見られよう。

■猛暑日の地域分布:日本では内陸部で多く沿岸部で少ない

それでは、日本国内の地域分布でも同様の状況にあるかどうかを次に確かめてみよう。

図表4には、各都道府県の県庁所在市の年間猛暑日日数の分布マップを作成した。データは平年値、すなわち1991~2020年の平均である。

年間猛暑日日数の都道府県マップ
筆者作成

南北の緯度差がけっこう大きい日本列島では、当然、北の北海道・東北のほうが九州よりも猛暑日日数が少ないという傾向が認められる。

ところが、一番、南に位置する沖縄では猛暑日日数が0.2日と北海道に次いで少なくなっている。これは沖縄がきわめて海洋性の高い地域であるからと考えるより他はない。陸地より海洋のほうが一日の気温差が小さい。このため、世界分布と同様、海に近い地域ほど一日の気温変動が小さくなり、猛暑にも襲われにくくなっているのである。

関東・甲信越地方では、埼玉や山梨が猛暑日15日以上であるのに対して、日本海側の新潟だけでなく、太平洋側の茨城、千葉、東京、神奈川、静岡という海沿いの地域では猛暑日5日未満となっている。内陸部と沿岸部との対比がきわめて明確なのである。

全国で最も猛暑日が多いのは京都の19.4日である。京都盆地における夏のうだるような暑さは以前より有名であり、それがデータでも裏づけられている格好だ。

九州でも、ど真ん中の熊本だけが猛暑日15日以上である。西日本の中でも徳島、高知、長崎、そして沖縄という海洋性の高い地域で猛暑日5日未満となっている。

暑さを避けるため、北国への移住が検討されることが多いが、こうしたデータをみると、むしろ近場の海沿いの地域に移住する方が手っ取り早いことが明らかであろう。

ただし、海沿い地域は一日の寒暖差が小さい分、夜になってもあまり涼しくならないというマイナス面もあることは申し添えておこう。

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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。

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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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