ひとり暮らしの人が突然死したら「飼い猫」はどうなるのか…猫好きならやっておきたい「水とエサ」の確保
プレジデントオンライン / 2024年4月14日 13時15分
■愛猫が1週間生き延びるために必要な水の量を知る
一人暮らしで猫を飼っていると、「自分に何かあったら、この子はどうなるんだろう……」という不安がつきものだ。外出中の事故や急病で家に帰れなくなったら、誰かに世話を頼むこともままならない。
そんなときのために、日頃からできる備えとはどんなものか。猫に特化した動物病院「東京猫医療センター」の服部幸院長は「まずは何より、水を飲める環境の用意です」という。
「人間と同じく、猫も水分補給がもっとも肝心です。水さえ飲めれば、飼い主にもしものことがあったとき、ほかの誰かが気づいてくれるまで生き延びられる確率がグッと上がります。猫にとって必要な水の量は、体重が5キロなら1日150〜200ミリリットル程度。1.5リットルもあれば1週間程度を乗り切れる計算です。自分の飼い猫の体重で計算してみてください」
■自動給水器があれば日頃から管理がしやすい
腎臓病になりやすい猫のために、こまめな水分補給をさせるべく部屋のあちこちに水飲み容器を置いている人は少なくないだろう。服部先生は自動給水器の活用も勧める。
「水飲み容器の水は汚れることがあるので、毎日とりかえるのが理想的です。自動給水器ならその手間が減って日頃から楽ですし、飼い主が不在になってしまった場合にも安定してきれいな水が供給できる。合わせて、食事に関しても自動給餌器を使うといいでしょう。こちらも目安として一週間程度のエサを入れておくと安心です」
■猫用の「お薬手帳」をつくっておく
飼い主に代わって、友人などが一時的に猫の面倒をみてくれるとなれば安心だ。ただ、猫によっては食事の制限や薬など、世話する際の注意が必要なこともある。自分自身が帰宅できないような状況下で、そうした注意点をまとめて伝えるのは一苦労だ。
「処方されている薬はあるか、アレルギーはあるか、健康状態はどうなっているか等をまとめた『お薬手帳』のようなものをつくっておくといいでしょう。急に誰かに託すことになったとき、確実に情報が共有できます。しっかりした1冊にまとめるまでいかなくても、薬を処方されたらその内容を紙にメモしておくだけでも役に立ちます」
飼い主が帰れなくなったときだけでなく、出張や旅行といった際にもこのメモがあれば注意点が伝わりやすい。ポイントは、スマホ等のデジタルではなく手書きで残すことだ。
「デジタルだと、災害が起きて停電や通信障害などが続いた場合に参照できなくなるかもしれません。アナログならどんな状況でも変わらず使えるというメリットがあります」
■非常用持ち出しバッグには猫の薬も入れる
災害対策も、猫と暮らす上で欠かせない。
「猫がいなくてもやっておくべきことですが、地震が起きたら今住んでいる家がどうなってしまうのか、想定しておきましょう。国土交通省が発信している『ハザードマップポータルサイト』を参考に、住んでいる地域の土砂災害などの影響を確認するといいでしょう。いざというときに、飼い猫とエサを担いで避難できるのか、避難所はどこがいちばん近いのか。また多頭飼いの場合、例えば自分1人で3匹の猫と防災グッズを担いで逃げることはなかなか難しいと思います。その場合、猫は置いて数日に1回見に行くべきかなども検討しましょう。シミュレーションができているのとできていないのとでは、災害時の初動が変わります」
非常時の持ち出し用バッグには猫の分の水と食事。常備薬があるなら1週間分は確保しておきたい。災害時は人間が優先されるので、猫用の薬が回ってくるのはその後になってしまうからだ。
「防災の一環として家具の転倒防止は効果的です。例えばテレビが倒れても人間は大丈夫かもしれませんが、猫は怪我をします。近くの動物病院が無事に営業しているのかもわからない状況の中、怪我をしてしまうと治療も大変になります。そして何よりも、飼い主自身が怪我をしてしまうと、猫との避難が格段に難しくなります」
■どんなときも飼い主の心身の健康が鍵を握る
災害時にペットを連れて避難所まで避難することを「同行避難」という。近年広がりつつある考え方だが、ペットの滞在を受け入れるかどうかは避難所によっても異なる。ペットにストレスを与えることにならないかも気がかりだ。
「未来への不安という意味では、猫は人間ほどはストレスを感じません。環境の変化に対するストレスはあるものの、『この後どうなるんだろう』という不安はむしろ人間のほうが感じやすいのではないでしょうか。また、そんな不安を感じている人間と接することで、猫のストレスは大きくなります。飼い主が自分自身の不安を取り除くことも重要だと知っておきましょう」
服部先生は、結局のところ「飼い主自身の健康」が何より重要だという。
「特にひとり暮らしの人は、猫の体調管理と同じように自分の体調管理もすることが大切な猫を守ることにつながると肝に銘じましょう。災害時も同じことで、自分に何かあれば猫だけ助かる可能性は極めて低くなります。飼い主自身が安全で健康な状態になければ猫と一緒に逃げることも、猫を助けることもままならないということを、あらためて認識してほしいですね」
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飼い主の緊急時に飼い猫を助ける手帳「ねこヘルプ手帳」を考案。2020年に保護猫・しらすを迎え、現在は猫2匹に。動物と暮らす人の意識改善を目標に掲げ活動している。著書に『ねこ活はじめました』(KADOKAWA)、『もしもなんて来ないと思ってた猫』(実業之日本社)など。
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獣医師
北里大学獣医学部を卒業後、動物病院勤務などを経て2012年に猫に特化した動物病院「東京猫医療センター」を開院。院長を務める。猫のスペシャリストとして、病気の治療はもちろん、日頃のケアや飼い方のアドバイスも行う。
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(漫画家 オキエイコ、獣医師 服部 幸)
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