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世界市場で低迷中のナイキ、アディダスに代わり台頭…原宿出店のサードウェーブOnとHOKAが熱いワケ

プレジデントオンライン / 2024年4月16日 10時15分

世界市場で低迷中のナイキ、アディダスに代わり台頭 - 写真提供=オン・ジャパン

■世界市場で低迷中のナイキ、アディダスに代わり台頭

国内ランニング市場に「第3の波」が来ている。

1980年代まではハリマヤ、アシックス、ミズノという国産メーカーが主流だったが、その後はナイキ、アディダス、ニューバランスなど海外の大手ブランドが本格参入。2017年以降はナイキの“シューズ革命”により、厚底モデルがレース用のスタンダードとなった。

大半のメーカーが厚底モデルを開発・投入したことで、国内ランニング市場はかつてないほどのレッドオーシャンになっている。ナイキ、アディダスは厚底のみならず、スニーカー市場でも世界的なヒットを連発してきたが、欧米では販売不振が鮮明との報道も出ている。

そんな中、“サードウェーブ”ともいうべき海外メーカーが新たなトレンドを生み出し、人気を得ている。牽引しているのがOn(オン)とHOKA(ホカ)だ。

雑誌『ランナーズ』を発行しているアールビーズの「ランナー世論調査2023」によると、現在履いているシューズメーカーTOP10(複数回答可)は、アシックス55%、ナイキ34%、アディダス21%、HOKA17%、ニューバランス14%、ミズノ13%、On8%、ワークマン3%、ブルックス3%、プーマ3%。OnとHOKAは昨年の時点でもかなりのユーザーがいたことになる。

さらに今年正月の箱根駅伝では両ブランドが“初出場”を果たした。

Onは3人、HOKAは2人の選手が箱根で着用していたのだ。他はナイキ98人、アシックス57人、アディダス42人、プーマ20人、ミズノ5人、ニューバランス・アンダーアーマー・ブルックスが1人。前回の7ブランドから今回は10ブランドとなったように、国内のランニング市場は“多様性”が顕著になっている。

そして箱根駅伝の“結果”が新たなムーブメントを生み出しそうだ。

■OnとHOKAは大手量販店で“4強”の勢い

OnとHOKAのシューズは筆者も昨年購入しているが、街で履いている人をよく見かけるようになった。実店舗でもかなり売上を伸ばしているようだ。

常時200~250モデルのランニングシューズを販売しているアルペングループ史上最大の旗艦店であるAlpen TOKYOはインバウンドの影響を大きく受けているとはいえ、最近はナイキ、アシックス、On、HOKAが“4強”のイメージだという。

同店を取材したところ、「箱根駅伝のシューズシェア率は売上にもかなり影響しています。Onはメーカーコンセプトでもあると思うんですけど、機能美というところで、無駄な装飾がないシンプルなデザインが人気です。HOKAもファッション的な感覚で履かれている方が多く、厚底を流行らせたところもあります」(ランニングシニアアドバイザー・国松君祥さん)という。

Onは2010年にスイスで誕生したスポーツウェアブランド。短期間で急成長を遂げたことで有名だ。国内では2022年4月に東京・原宿のキャットストリートに世界で2店舗目、アジア初の旗艦店となるOn Tokyo(オン・トーキョー)をオープしている。なお国内店舗ではインバウンド需要があり、特に直営店のないタイの顧客が非常に多く、On Tokyoでは行列を作ることもある。

Onのシューズ
写真提供=オン・ジャパン
短期間で急成長を遂げたOn - 写真提供=オン・ジャパン

世界特許技術のCloudTec(ソールに搭載された筒状のパーツが収縮することで強い推進力を生む)が特徴的でシャープなデザインが人気だ。2022年に発売した高いクッション性を誇る厚底モデルの「クラウドモンスター」でさらに注目度が上がっている。

今年の2月22日には同モデルを初めてアップデートした「クラウドモンスター 2」を発売。4月4日にはアスリートのトレーニングシューズとして開発された「クラウドモンスター ハイパー 」も登場した。

パフォーマンスシューズは新モデルが売り出されると、旧モデルの生産はストップするのが一般的だ。しかし、Onは旧モデルの発売も続けており、“クラウドモンスター・ファミリー”として世の中に認知させていく戦略をとっている。

今後はクラウドモンスターがタウン用、同2はランニング用というような位置づけにしたいようだ。カラーリング(クラウドモンスターは10カラー、同2は6カラー)も充実していることでランニング市場ではなく、ファッションアイテムとして購入されている。

一方のHOKAは2009年にフランスで誕生したブランド。軽量でボリュームのあるミッドソールが特徴だ。トレイルランナーやトライアスリートから火が付き、人気が高まっている。

日本には2017年に本格進出して、今年2月22日には国内最大の直営店HOKA Harajuku(ホカ 原宿)をオープンした。明治神宮前交差点という立地も抜群で、入場待ちの長い行列ができる反響ぶりだった。

HOKA Harajukuの店舗外観
HOKA Harajukuの店舗外観(デッカーズジャパンのリリースより)

その他の直営店も売り上げが伸びている状況だという。世界的にも好調で、HOKAの24年度第3半期(10~12月)の純売上高は4億2930万ドル。前年同期比で21.9%増だった。

さらに国内では軽井沢、横浜(2カ所)、原宿に続き、名古屋(4月24日オープン予定)に直営店を構える。まさにイケイケの状態だ。

■市民ランナーを虜にするノンカーボンの厚底

箱根駅伝でシューズシェア率が注目されるようになったが、彼らがレースで着用しているのはカーボンプレートを搭載した厚底モデル。一方、市民ランナーが普段のランニングで使用するのがノンカーボンの厚底シューズになる。

同じ厚底で、見た目の違いは分かりにくいが、使用目的が異なる。前者はカーボンプレートの反発力とミッドソールのクッション性のハイブリッド。「速く走る」のが主な目的で、耐久性(使用走行距離)はさほどなく、価格も3万円前後と高額だ。

一方のノンカーボンの厚底シューズをシンプルに表現すると、クッション性を重視した“弾むシューズ”になるだろう。こちらは耐久性も高く、価格は2万円前後と比較的リーズナブルだ。ナイキでいえば「インヴィンシブル 3」、アシックスなら「ノヴァブラスト 4」が該当モデルになるだろう。フルマラソンで4~5時間を目指すランナーにもちょうどいい。

「ランナー世論調査2023」でランニングシューズを購入する際に重視する点を聞くと、「クッション性(衝撃吸収)」が60%でダントツトップだった。前出の国松さんも近年は「跳ねる楽しさ」が重要視されているという。

そういう意味でも、OnとHOKAは市民ランナーにとってピッタリで、かつ旬なブランドになるだろう。

両ブランドのシューズはビジュアルが独特で、国内ではタウン用としての人気も高いが、近年はエリートランナーへの販促も目立っている。

Onは佐藤圭汰(駒大)という学生長距離界のスピードスターが着用。3000m障害で世界と戦う三浦龍司が入社したSUBARU、今年の箱根駅伝に出場した駿河台大のユニフォームも手掛けている。

HOKAも宮下隼人(コニカミノルタ)、鎧坂哲哉(旭化成)ら国内トップ選手をサポートしているだけでなく、昨年から大阪国際女子マラソンを協賛している。

すでに市民ランナーのメインストリームとなりつつあるが、今後はエリート層でも両ブランドが輝きを放っていきそうだ。そうなると国内のシューズシェア率の勢力図が大きく変わる可能性もある。

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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)

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(スポーツライター 酒井 政人)

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