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「いらないから堕ろしたいなら堕ろして」待望の第2子懐妊も不倫発覚の不肖夫から離婚と中絶迫られる修羅場

プレジデントオンライン / 2024年4月20日 10時16分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

人に恵まれないと人生はつらいものになる。シングルマザーの30代女性は、毒親に育てられ、1000万円の借金のある男性と結婚。夫は毎晩飲み歩き、職場不倫をし、挙句の果てに、臨月を迎えた女性を残して夜逃げした。現在、女性は2人の息子を育て、夫が求める離婚にあえて応じず、相応の婚姻費用を受け取っている――。

■毒母との離別

中国・四国地方在住の小倉沙美さん(仮名・30代)は、29歳で長男を無事出産した。医療職の夫(30歳)は出産に立ち会い、初めての子どもにメロメロだったが、育児には協力的ではなかった。相変わらず飲み歩き、連絡もなく帰ってこない日もある。

そこへ小倉さんの母親(52歳)が「手伝ってあげる~」とやってきた。しかし母親は料理が下手で、家事も上手くない。だから案の定、

「私は女の子を2人も産んだ勝ち組。ちんこ付いてる男子なんて気持ち悪い!」
「こんなに手伝わされて、娘にこき使われる私って可哀想!」

などと、小倉さんが初めての育児で忙しくしていても、ただそこにいてべらべら喋っているだけだった。

産後3カ月頃、夫に1年間の単身赴任が決まる。「研修という名目のため、(給料上乗せの)手当が一切出ない」と夫は言った。

「つまり、私の育休手当(看護師)と手取り350万円の夫の給料で、生まれたばかりの長男にかかるお金と夫の奨学金返済(約400万円)、車のローン(約600万円)、単身赴任の生活費を賄わないといけなかったのです。借金まみれの夫に代わり、婚姻費用などを全額支払った後、ちょっとだけ残っていた私の婚前貯金が、この単身赴任期間で底をつきました……」

金銭的な不安と初めての育児に一人で追われる小倉さんは、いつしか産後うつになっていた。気持ちが沈み、横になっても眠れない日が続く。心療内科を受診すると、今度は母親にこう言われる。

「精神を病むなんてバカじゃないの? 心療内科なんて宗教なのに通うな! あんたの通ってる病院もいい噂聞かないよ!」

「母の基本行動は、他人の悪口を言って自分を上げること。私が産んだ孫の存在も、私の育て方も、悩む事すらも否定される日々……。それまでは母に振り回されつつも『あんたのためを思って』という言葉を信じ、母の愛情を求めていた部分もありました。しかし、私も母親の立場になったことで“本来の親”の気持ちがわかるようになったことと、私がつらいときにもマウントを取り、寄り添わない母を目の当たりにし、縁を切ることにしました」

プライドが高い母親は、自分から来ることや電話をかけてくることはなかった。その代わり妹の義理の家族や叔母などに小倉さんの悪口を言いふらしていた。

■隠し口座

一方、夫はこの頃、突然「バイクがほしい」と言い始めた。車のローンすら払い終わっていないため小倉さんが反対すると、夫は渋々ながら引き下がったように見えた。

1年後、夫が単身赴任から帰ってきた。そのとき、単身赴任手当が月50万円ほど出ていたことが発覚。夫は隠し口座を作り、そこに手当だけ入金してもらっていたのだ。

銀行の通帳
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

夫は月50万円×1年(12カ月)=600万円を丸ごと自分のものにし、すでに大型バイク免許を取得していた。夫の幼稚さに、小倉さんは情けなくて泣いた。すると、「子どもの口座にお金あるじゃん! それでバイクも買えるはず!」と開き直る夫。

「それは長男の将来のための貯金でしょう!」

何度も説明するが、聞く耳を持たない。600万円を返すように言っても、「大型バイク免許取得と飲み代に消えた」と平然と言いのけられた。

■不妊治療とマイホーム

コロナ禍に突入すると、夫の飲み会通いは収まったかのように見えた。

夫の給料が上がり始め、収入も安定。2歳になった長男と遊んでくれるようになった夫に対して不満に思うことも少なくなり、「そろそろマイホームや2人目を考えるか?」という話も出ていた。

しかし、1人目の妊娠で悪阻(つわり)や産後うつなど大変な思いをした小倉さんは、2人目を簡単には考えられなかった。それでも夫は「どうしても2人目がほしい」と必死に説得してくる。やがて小倉さんは覚悟を決め、不妊治療に挑むことにした。

体への負担を考え、小倉さんはパート(看護師)へ転職。そのとき夫は、「専業主婦になればいいじゃん」と言っていたが、夫のこれまでの言動を思い返し、念のために仕事は続けることに。

ところが夫は、「俺は問題ないはず!」と言って自分は治療に来ない。タイミング法や排卵誘発剤で妊娠に至らず、卵管鏡下卵管形成術に挑戦した小倉さんは一人、泣きながら吐くほどの痛みに耐えた。

一方、「長男が小学校に上がるまでに見つかればいいな」と思いながら土地探しを始めたところ、条件に合う土地が見つかり、トントン拍子にマイホームの話が決まる。

家の打ち合わせでは毎回、「高級感がほしい」と夫は騒ぐだけ騒ぎ、夫の希望と予算との折り合いをつけるのは、もっぱら小倉さん。家のローンを組むため、残っていた車のローンを早く終わらせようとやりくりするのも、小倉さんの務めだった。

この頃の小倉家の大きな出費は以下になる。

・高級車のローン
・長男の保育料
・不妊治療費
・マイホームの頭金

頻度が減ったとはいえ飲み会好きな夫は、どんなに家計簿の収支と口座に残る額を見せても、「俺はもっと稼いでる」と譲らない。

この頃の小倉さんは、3歳からの幼保無償化や不妊治療の終了により、出費が減るめどをある程度つけていた。そのうえで、「もうすぐ給料が上がる」と言い張る夫を信じ、「家さえ建てば、家賃が要らなくなる」と思うことで自分を支えていた。

■変化と自白

幸い、長男が3歳のときに夫の給料が大幅に増えた。だが、その途端、「俺はこんなに稼いでるのに、なんで小遣いが少ないんだ!」と騒ぎ立てるように。

「散々説明しましたが、お金はないのは不妊治療とマイホームのためです。夫婦共通のECサイトのアカウントで、必要なものは自由に買えていましたし、家で飲むビール代やガソリン代も家計費から出しています。私はブランドものに興味はありません。夫のお小遣いはほぼ飲み代に消えていました」

この頃から夫は、急に不機嫌になって小倉さんの欠点を挙げ連ねて責め、一方的に「別れる」とわめき散らす。

そんな中、マイホームは無事完成し引っ越しの日を迎える。マイホームの各種手続きも、引越しの荷づくりも、もちろん家事・育児も、夫は仕事を理由にすべて小倉さんに丸投げだった。

マイホームで迎えた最初の夜は大喧嘩になった。夫が謝ることはなく、この日を境にますます態度が悪くなっていく。

約13年間夫を見てきた小倉さんは、直感的に不倫を疑い、探偵事務所に相談。すると、どうやら土日の日勤明けや、泊まり込みの仕事明けに不倫相手の家に行っていることが判明した。

探偵により証拠写真まで押さえた小倉さんだったが、ダメ押しで自白を狙い、夫が泥酔している夜中に不意打ちのビンタで叩き起こし、「○○って誰?」と相手の名前をたずねる。夫は「誰だよそれ!」としらを切ったが、「あなたと性行為をしてる、××マンションの女性でしょ?」と言うと不倫を認めた。もちろん、すべて録音していた。

さらに小倉さんは、夫と相手の女性が口裏を合わせる前に、夫にその場で相手の女性に電話させる。相手は同じ部署で働く若い女性だった。

スマホを使用する女性
写真=iStock.com/Marco_Piunti
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Marco_Piunti

「小倉の妻です。なぜ電話したかお分かりですよね? あなた方が性行為をしていたことも把握しています。同じ職場なのですから、既婚者だと知っていましたよね?」
「……」
「知っていましたよね?」
「……はい。すみませんでした」

夫は、不妊治療を始めた頃から飲み会のたびに不倫を繰り返していたことを自白。「若い女性から誘われて舞い上がってしまった」と非を認めたものの、最後まで小倉さんに謝ることはなかった。

■モラハラ発動

夫の不倫が発覚した2カ月後、なんと2人目の妊娠が判明。

渋々夫に伝えると、「もういらないから、堕ろしたいなら堕ろしていいよ」と言って離婚と中絶を迫られる。

しかし3週間後、世間体と罪悪感からか「やっぱり中絶はやめよう」と手のひらを返した。

胎児超音波検査
写真=iStock.com/PEDRE
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PEDRE

「産むということは再構築?」と小倉さんが今後のことを話し合おうとするも、夫は都合が悪くなると何を言っても「離婚だ離婚だ」と投げやりになる。

小倉さんは長男の手前、夫に普通に話しかけるも、夫は無視したり用意した食事を破棄したり寝室を別にしたり。極めつけは、2回目の妊娠でも悪阻で倒れ、救急搬送された時だ。救急隊員からの連絡を夫は「仕事中だから」と途中で切ったため、小倉さんは3歳の長男同伴で救急搬送された。

その後も夫は、「悪阻で寝てるのを見るとイライラする」と言ったり、「仕方なくお前と結婚してやった! 本当は嫌だった!」などと口走ったりするように。

あまりに「離婚したい」と言うので、小倉さんが家のローンや子どもの養育費のことを話すと、「疲れているから話しかけるな!」と逃げた。小倉さんは、産後うつの悪化と悪阻に苛まれた。

■臨月の夜逃げ

夫の職場不倫発覚から9カ月ほど経ったある晩、パートから帰宅した小倉さんは違和感を覚える。夫婦で共有していたスケジュールアプリから夫が退会していたうえ、家にあった夫の生活必需品がなくなっている。どうやら夫はありったけの現金やカード類を持ち、車で夜逃げしていた。

すぐに弁護士を予約した小倉さんだったが、長男が寝た後にお金や子どものことで不安になり、夜通し泣き続ける。しかし翌朝、「泣いてる場合じゃない! 出産は待ってくれない!」と自分を奮い立たせた。

役所の子ども相談窓口に電話し、夫が全財産を持って夜逃げしたこと、そして自分は臨月を迎えていること、母親が毒母なので頼れないことを相談。

すると職員はすぐに自宅まで来て話を聞き、出産時の入院期間中と出産後、長男は児童相談所の緊急保護を利用できる手はずを整えてくれた。

■小倉家のタブー

筆者は家庭にタブーが生まれるとき、「短絡的思考」「断絶・孤立」「羞恥心」の3つが揃うと考えている。

さかのぼれば、“デキ婚”をした小倉さんの両親は紛れもなく「短絡的思考」の持ち主だったと言える。母親は父親と離婚後、次々に交際相手をかえた。親しくなった相手を見下すところがあり、結局、心を許せる友人知人がいなかった。母親は社会で「孤立」していた。

筆者はこれまで、毒親に育てられた50人以上の人に取材を行ってきたが、小倉さんのような毒親育ちの人の多くが、身近な人の横暴な振る舞いに対して異常なまでに我慢強い。

その理由は、毒親に対して我慢を強いられてきたことと、間違った家族像を正す機会がなかったことが大きいだろう。小倉さんは、家庭を顧みず不倫する父親と、娘たちをコントロールし、マウントを取りたがる母親に育てられた。「家族とはこういうもの」という間違った“型”を覚えてしまっていたがゆえに、母親同様、身勝手に振る舞う夫を許し続け、助長させてしまった。

毒親の傾向のひとつは子どもを自分の“所有物扱い”することだ。所有物扱いされて育った子どもは、自分よりも毒親を優先するため、成長しても自分を優先することができない。適切に“自分を優先することができない人”は、“自分ばかり優先する人”に狙われやすい。

義両親に甘やかされて育った小倉さんの夫は、高額浪費、借金三昧、職場不倫、臨月夜逃げと、まぎれもなく“自分ばかり優先する人”だった。

幼い長男と臨月の妻を置き去りにし、夜逃げした夫の言動からは、大人になりきれていない身勝手さが溢れ出ている。両親から甘やかされて育ち、毒母育ちの小倉さんが夫のワガママを受け入れ続けてしまったために、夫は40歳手前まで自分の幼さに気付かずに来てしまったのだろう。

■怒涛の出産と調停

その後、無事次男を出産した小倉さんは現在、4歳の長男と3人、マイホームで暮らしている。

1回目の離婚調停では、夫は婚姻費用と養育費を基準額より10万円も低い金額で提示してきた。さらに不貞行為に関して「一回限りだった」と嘘をついた。

「相手女性が一定期間の不倫を認めた合意書がありますし、そもそも回数の問題ではありません。しかしその後、次の調停を前に一部生活費が振り込まれたところを見ると、夫は『不貞行為』を働いた有責配偶者であることに、生活費を払わないという『悪意の遺棄』が積み重なると、さらに裁判で不利になるということは分かっているみたいです」

まだ離婚が確定していない現在、夫が小倉さん妻子に払うべきお金は、

・離婚しない→妻と子の生活保障(婚姻費用)
・離婚する→子の生活保障(養育費)のみ

となり、小倉さんの場合、この2つで10万円ほど差が出るという。

「離婚原因を作った有責配偶者からは、原則として離婚請求できません。夫が離婚したければ『相手に有利な条件を出して、離婚を認めてもらえるよう交渉する』しかないでしょう。だから弁護士さんから『離婚は急がなくていい』と言われました」

小倉さんは離婚不受理届も出しているため、夫が勝手に離婚届を提出することもできない。

ただ、10年以上別居すれば有責配偶者から離婚請求できる場合もあるが、原則『小さい子どもがいない場合』だ。小倉さんの次男はまだ生まれたばかり。10年経ってもまだ10歳では、夫から離婚請求されても認められない可能性がある。

「なので夫は、私たち妻子の生活費+家のローン+夫自身の生活費の三重苦が確定しています。私が離婚を突っぱねる限り、最低でも10年は極貧生活が続くわけです」

指輪を外す女性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

■タブーの連鎖を止める

小倉さんは離婚した両親に振り回されてきた。そのため息子たちには、自分のような思いをさせたくないと話す。

「小学生の頃、(両親が離婚し、母親が父親から養育費をとらなかったため)お金がなくて恥ずかしい思いをした経験から、『養育費は子どものものなので、可能ならちゃんともらってほしい。DVなど特別な事情がない限り、面会は子どもに決めさせてほしい』と思っていました。もちろん不倫した父が悪いのは分かっていますが、どっちも毒親だったと思います。2人とも自分のことばかりで、一番に愛されていた記憶がありません」

別居した小倉さんが自分を頼ってこないことが気に入らない母親(57歳)は、「あいつは祖母(母親の母親)の遺産を狙っている」という嘘を親戚中に言いふらし、「あいつは私のマンションも狙うに決まってる! あいつには1円もやらずに次女に相続させてやる!」と息巻いていると、80歳になった祖母を世話する叔母(母親の妹)から聞いた。

「親は選べないと言うけれど、せめて自分は毒母や夫のように、自分の都合で子どもを迷わせたり傷つけたりするような親にも、義両親のように何をしても叱らない甘やかし親にもなりたくないと思いました。幸か不幸か、『自分の親パターン』『夫パターン』『義両親パターン』というあらゆる反面教師を得たので、それを糧に息子たちと向き合っていきたいと思います」

小倉さんは身勝手な両親や夫を、「恥ずかしい」と感じている。

自分が母親のような毒母にならないよう、自分の好きな道は自分で決めてほしいと願う小倉さんは子どもたちが好きなことや苦手なことを否定しないようにしている。そして、夫のような大人にならないよう、悪いことをしたり人を傷つけたりしたときには、厳しく叱るようにしている。

「自分が子どもの頃、親にしてほしかったことは、なるべく子どもたちにしてあげたいと思い、『大好きだよ』『あなたが1番大事だよ』と伝えるようにしています」

小倉さんの戦いはまだ始まったばかりだ。

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旦木 瑞穂(たんぎ・みずほ)
ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー
愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する連載の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、東洋経済オンライン「子育てと介護 ダブルケアの現実」、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、日経BP 日経ARIA「今から始める『親』のこと」、朝日新聞出版『AERA.』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。2023年12月に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社新書)刊行。

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(ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー 旦木 瑞穂)

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