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学生が1人しかいなかったからよ…「カイロ大首席卒業」を問い質した私に41年前の小池百合子が放った一言

プレジデントオンライン / 2024年4月20日 7時15分

小池氏から贈られた著書『3日でおぼえるアラビア語』。裏表紙にサインとアラビア語の書き込みがある - 筆者提供

小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑が再燃している。元東京都知事の舛添要一さんは「41年前、小池氏に『カイロ大首席卒業』について問い質したことがある。そのときには『学生が1人しかいなかったからよ』という説明だった。その後もウソにウソを重ねているのではないか」という――。

■元側近が告発した「学歴詐称問題のもみ消し」疑惑

小池百合子都知事の学歴詐称疑惑が再燃した。元側近の小島敏郎弁護士が、告発記事を4月10日発売の『文藝春秋』に掲載したからである。

2020年5月下旬に、石井妙子氏が『女帝 小池百合子』(文藝春秋)という本を出版し、その中で小池氏のカイロ大学卒業という履歴が疑わしいことを明らかにした。

憔悴(しょうすい)した小池氏は、小島氏に相談し、「カイロ大学に声明文を出してもらう」というもみ消し工作をしたという。

6月に、小池氏から依頼された元ジャーナリストが、卒業を証明する文案を書き、それとほぼ同じ内容の声明文がエジプト大使館のフェイスブックに掲載され、それが奏功して、学歴詐称疑惑は雲散霧消した。そして、7月の都知事選で小池氏は圧勝した。

■小池氏から贈られた著書『3日でおぼえるアラビア語』

今回の騒動を機に、1万冊に及ぶ私の蔵書の中から、若い頃に彼女が書いた本を1冊探し出してきた(写真)。『3日でおぼえるアラビア語』(学生社、1983年5月刊)という本で、彼女から贈られたものである。1983年7月1日の日付で、8(サマーニャ)と3(サラーサ)はアラビア語数字となっている。

その本の裏表紙には、「カイロ大学文学部社会学科を日本人で2人目、女性としては初めて、しかも首席で卒業。……(中略)……日本アラブ協会のアラビア語講師、通訳、翻訳等を通して、日本とアラブの友好に尽力している」という略歴が載っている。

『3日でおぼえるアラビア語』奥付にはカイロ大学文学部社会学科を「首席で卒業」とある
筆者提供
『3日でおぼえるアラビア語』奥付にはカイロ大学文学部社会学科を「首席で卒業」とある - 筆者提供

41年前の本である。

この本を目にすれば、小池氏がアラビア語の大家だと信じるのは当然である。カイロ大学を首席で卒業した以上、エジプト人学生と同じように、アラビア語を読み、書き、話すことができるはずである。

簡単な日常会話のみならず、学科試験の答案を正確にアラビア語で書かなければならないからだ。

■小池氏のアラビア語は「2歳児程度」

しかし、複数のアラビア語の専門家が証言しているが、小池氏のアラビア語会話能力は2歳児程度だという。それで大学を卒業できるはずがない。また、小池氏が邦訳したアラビア語の本も見たことがない。

推測だが、「日本人で2人目」というのも、小池氏の嘘かもしれない。「日本人初」だと格好良すぎて嘘がばれる危険性を察知し、「2人目」にしたのではないか。

そもそも、カイロ大学文学部社会学科卒業の第一号の日本人は誰なのか。カイロ大学には、その男性の氏名、卒業年月日を公表してもらいたい。まともな大学なら、それができないはずはなかろう。

■外国人が「首席で卒業」などあり得ない

私は、通算5年に及ぶヨーロッパ留学を終えて、1978年に帰国し、1979年に東大助教授に就任した。その後、1981年5月にフランスで社会党のミッテランが大統領になったため、フランス政治の専門家としてテレビなどのマスコミで解説する機会が増えたが、その頃、テレビ番組で小池氏を紹介された。

私は、英語の他にフランス語もできたが、パリ大学で、フランス人を追い抜いて首席で卒業することなどありえないことであった。

まして、『3日でおぼえるフランス語』などという本を出版することなど絶対になかった。日本には、フランス語の専門家が山ほどいるからである。

小池氏の著書『3日でおぼえるアラビア語』(学生社)の表紙
筆者提供
小池氏の著書『3日でおぼえるアラビア語』(学生社)の表紙 - 筆者提供

それだけに、カイロ大学を首席で卒業する日本女性がいることに驚愕したのである。今にして思えば、学習者が極度に少ないアラビア語なので、どんな嘘をついてもばれないと小池氏は考えたのであろう。私が信じたように、41年前の日本の人々もマスコミも、彼女の宣伝文句を信じてしまった。結果的に、マスコミは彼女の虚像を膨らませることに加担したのである。

■「学生が1人しかいなかったからよ」と小池氏は答えた

しかし、私も海外の大学で勉強しており、自分の体験から「首席卒業」というのをどうしても信じることができなかったので、ある日、その疑問を質してみた。すると、彼女は、「それは学生が1人しかいなかったからよ。だから、首席でもあるし、ビリでもあるのよ」と笑いながら答えた。

大学院ならまだしも、大きな大学の文学部社会学科で学生が1人ということはありえない。しかし、エジプトに関する知識をほとんど持ち合わせない当時の私は、「発展途上国の大学とはそういうものか」と彼女の言を信じてしまった。

私は、自分の本に、「パリ大学首席卒業」などと嘘を書く勇気はない。

■「非常に生徒数も多いところ」小池氏の矛盾

しかし、35年後に、小池氏は私に嘘をついていたことを公の席で明らかにしたのである。

以下は、2018年6月15日の都知事記者会見の記録である。

【記者】では、首席卒業されたということは、はっきりと断定はできない、難しいというところがあるということでしょうか。

【知事】非常に生徒数も多いところでございますが、ただ、先生から、「非常に良い成績だったよ」とアラビア語で言われたのは覚えておりますので、嬉しくそれを書いたということだと思います。

学生数は1人ではなく、「非常に生徒数も多い」と言い、「首席」ではなく、「非常に良い成績」だったと言う。41年前私に言ったのは真っ赤な嘘だったということだ。

小池氏は私に嘘をついていた(東京15区補欠選挙の告示を控え、街頭演説会の応援に訪れた東京都の小池百合子知事、2024年4月13日)
写真=時事通信フォト
小池氏は私に嘘をついていた(東京15区補欠選挙の告示を控え、街頭演説会の応援に訪れた東京都の小池百合子知事、2024年4月13日) - 写真=時事通信フォト

たとえビリであっても、小池氏がカイロ大学を卒業したということ自体、私には信じがたい。

■「公文書偽造」はまだ時効になっていない

嘘の経歴を著書に平気で書く神経の持ち主でなければ、権謀術数の渦巻く政界で生き残っていくのは無理かもしれない。小池氏の嘘を信じてしまう私のような人間は、政治家には向いていないのであろう。

しかし、公職選挙法235条は、身分、職業、経歴などに関して虚偽の事項を公にした者は「2年以下の禁錮または30万円以上の罰金に処する」と規定している。学歴詐称は、公選法上の虚偽事項公表罪である。刑が確定すると、当選は無効となる。時効は3年である。

また、卒業証明書などを偽造した場合、公文書偽造(時効7年)、私文書偽造(時効5年)で起訴されうる。

2020年の都知事選挙のときの公選法違反は時効となっているが、公文書偽造や私文書偽造はまだ時効ではない。そこに、小池氏が嘘をつき続けなければならない理由がある。

■「東京都のエジプト関連予算9700万円計上」の謎

小池氏は国政に復帰して総理の座を狙うというが、それは国益を甚だしく損なうと考える。

小池氏は、エジプトに、学歴詐称のもみ消し工作で協力してもらった「借り」があるため、たとえば、エジプトからの援助要請を拒否できないであろう。ゆえに、国会議員として国政に参画する資格はない。

実際に、カイロ大学の声明文が発表された後、東京都のエジプト関連予算が9700万円計上されたという。私が都知事のときには、そのようなことはありえないことであった。このようなエジプト贔屓(びいき)が国政の場でなされてよいはずはない。

「東京都のエジプト関連予算9700万円計上」の謎
写真=iStock.com/Anton Aleksenko
「東京都のエジプト関連予算9700万円計上」の謎 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Anton Aleksenko

■「3つの補選」は再選挙の可能性も

4月16日には、衆議院の3つの補欠選挙が告示された。島根1区、東京15区、長崎3区である。昨年秋に、自民党派閥のパーティ券問題が明るみに出て以来、初の国政選挙だが、しかし、自民党は東京15区と長崎3区には候補者を立てず、不戦敗である。

東京15区は、各党派9人が乱立する。法定得票数は「有効得票総数÷6」であるが、候補者乱立で、誰もこの基準を突破できない可能性もあり、その場合は再選挙となる。

乙武洋匡氏(無所属、都民ファーストの会・国民民主党推薦)は、小池氏が国政進出を目指して設立した「ファーストの会」の副代表に就任し、小池氏の支援を受けて立候補したが、女性スキャンダルが蒸し返され、公明党婦人部などは支持していない。

しかも、世論調査では、乙武氏は、支持率で他の候補者に引き離されている。これでは自民党は乙武氏に乗れない。

■小池氏は政界を去るべき

しかも、側近による暴露によって、小池氏の学歴詐称疑惑が再燃した。

自公の支援を受けて乙武氏を楽勝させ、独自の候補を立てることのできない自民党に恩を売り、都知事選3選を狙う。その後、国政に復帰して日本初の女性首相になる、という小池氏の野心に満ちたシナリオは遂げられそうもない。

都知事選は、6月20日に告示され、7月7日の投票である。小池氏は、今回も「カイロ大学卒業」と学歴欄に記すのであろうか。

本人がこれ以上傷つかないためにも、もう政界を去ったほうがよいのではないか。そうすれば学歴詐称問題が再燃することもなかろうし、公選法違反で告発されることもないはずだ。

何よりも、日本国の国益を守るために、小池氏は静かに政治の世界から姿を消すべきである。

ポピュリズム政治がいかに弊害の大きいものであるかを知らせたことが、小池百合子氏の最大の功績として語り続けられるであろう。

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舛添 要一(ますぞえ・よういち)
国際政治学者、前東京都知事
1948年、福岡県生まれ。71年、東京大学法学部政治学科卒業。パリ、ジュネーブ、ミュンヘンでヨーロッパ外交史を研究。東京大学教養学部政治学助教授を経て政界へ。2001年参議院議員(自民党)に初当選後、厚生労働大臣(安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)、都知事を歴任。『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(すべて小学館新書)、『都知事失格』(小学館)など著書多数。

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(国際政治学者、前東京都知事 舛添 要一)

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