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50代になったら「仕事の責任」は脇に置け…和田秀樹が「老後に楽しみをとっておく人はバカ」と説く理由

プレジデントオンライン / 2024年4月27日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

50代から豊かな老後を送るにはどうしたらいいか。医師の和田秀樹さんは「50代になったらこれまでの『常識』は捨て去り、仕事の責任やお金の心配は脇に置いてでも、自分の人生を楽しむべきだ。そのほうが結果的に、仕事や家族も含めたトータルの人生が豊かになっていく。老後に楽しみをとっておくなんてバカな考え方は、しないほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『老後に楽しみをとっておくバカ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■50代で「まだまだ自分のことはガマンして頑張る」は大間違い

人生100年時代などといわれますが、そう考えると、50代はちょうど折り返し地点と言えるでしょう。

年齢的にだけでなく、仕事や人生のステージにおいても、登山で言えば、すでに上り坂を過ぎて、頂上を経験し、今や下り坂を歩み出していると感じている人も多いと思います。

そのいっぽうで、今の50代が背負う荷物は、決して軽くありません。

会社で責任ある仕事をまかされる機会は多く、組織全体や部下のことを最優先に考えるべき管理職でもある場合がほとんど。住宅ローンや教育費といった大きな支払いがまだ続いている方も少なくないでしょう。

両親に会うたびに体も声も小さくなっていて、近い将来、介護でお金や労力がとられることを想定しておく必要もあるかもしれません。

「だから、まだまだがんばらなければ!」
「自分のことはガマンしても、会社のため、家族のために働こう」
「老後の生活のことを考えると、今は仕事優先で、お金を貯めておかないと」
「好きなこと、やりたいことは、仕事人生が一段落してからゆっくり楽しもう‼」

そんなふうに考えている人が少なくないのではないでしょうか。

でも、その考え方は、今すぐ捨てたほうがいいと私は思います。誤解を恐れずに言えば、それは大きな間違いだ、とも。

■やりたいことの先送りは、残りの人生においてリスクそのもの

本稿を読んでいる人は、50代か、あるいは50代を目前にした人でしょう。50代こそ、自分がやりたいことをやるべきなのです。

そう言うと、

「今は仕事や家族に対する責任がある」
「老後の生活を考える必要がある」
「忙しくて時間がない」
「体力も衰えを感じるようになってきたし」

といった反論が返ってきそうです。でも、だからこそ、ずっとやりたかったこと、いつかは試してみたかったことを「今」始めるべきです。

それは、スポーツやダンス、旅、グルメといった趣味でも、資格の勉強でも、仕事のスキルアップでも、なんでもかまいません。

50代で、やりたいことを先送りしていることは、残りの人生においてリスクそのものです。

あえてきつい言い方をすれば、老後に楽しみをとっておくなんてバカな考え方は、しないほうがいい。

その理由をこれからつまびらかにしていきたいと思います。

■定年退職したら、子供が自立したら……では遅い理由

ピカピカだった新車も何万キロメートルも走り続ければ、あちこちが故障し始めます。

私たちの心身も50代にもなれば、少しずつガタついてきます。

まずは筋力。筋肉は40歳あたりを境にじわじわと落ち始めます。加齢によって細胞が劣化するため、肌も内臓も劣化していきます。

腰や膝などの痛みも出てきて、激しい運動をすると腰や膝に負担がかかり、スポーツを楽しむのが難しくなります。

座って膝を両手で押さえる女性
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

「65歳の定年を迎えたら、世界中の雪山をめぐってスキーを楽しもう」

そんな夢は今だからまだ抱けるのです。

実際に65歳になったら、衰えた筋力やガタのきた膝では、スキーのようなハードな運動が困難になっているかもしれません。

「そうか。でも私は文化系だから関係ない。会社を辞めて落ち着いたら、好きな本や映画にどっぷり浸って過ごすつもりだ」
「自分もだ。会社人間の荷を下ろしたら、大学に入り直してずっと勉強したかった世界史を学び直してみたい」
「自分は起業に挑戦したい。今いる会社ではできなかった夢を叶えたい」

なるほど。

しかし、老化は何も体力だけに表れるわけではありません。

むしろ深刻なのは、脳の老化=感情の老化です。

■40~50代で「意欲」をうながす前頭葉が老化

脳にはさまざまな部位がありますが、なかでも私たちにとって重要なのは前頭葉です。大脳皮質と呼ばれる脳の表面部分のうち、40%程度を占める前頭葉は「人間らしい機能を担う部位」ともいわれます。

それは前頭葉が「感情のコントロール」、つまり怒りや不安などを処理してくれる役割を担っているから。加えて、もう1つ前頭葉には「意欲」をうながす役割があります。

脳の中でもこの前頭葉が老化すると、意欲が低下し、感情のコントロールに不調をきたします。

この前頭葉の老化も40代後半から表れ、50代で本格化する人がほとんどです。画像診断をすると顕著ですが、40~50代で前頭葉がどんどん縮んでいきます。

そう考えると定年を迎える65歳頃には、その劣化具合がどうなっているかは想像に難くないでしょう。

前頭葉が縮めば、意欲がなくなる。「好きな本や映画にどっぷり浸かる」のも億劫になるかもしれません。感情も劣化するのだから、新たな創作や物語にワクワクし、感動する機会も減っていきます。

「大学に入り直して、学び直す」のは、意欲が衰えていたら、なかなか面倒なことです。新たな学びの場に飛び込むハードルもうんと高く感じるでしょう。

「起業」のため、ビジネスシーズ(ビジネスの種)を探し、市場のニーズを掘り起こし、仲間を見つけて資金を集める、などという一連の活動も、確実に困難になっているはずです。

「65歳になった定年後に……」
「仕事が落ち着いたら……」
「いつか……」

のんきなことを言っているうちに、老化によって体力も意欲も感性も衰える。

カップを持って窓辺に立ち、外を眺める高齢男性
写真=iStock.com/whyframestudio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/whyframestudio

気がつけばただただ年老いた自分の姿に愕然として、こう思うのではないでしょうか。

「もっと早く、やっておけばよかった」

やり残すことなく、一度きりの人生を存分に楽しみたかったら、65歳になってから始めるのでは遅い。

やりたいこと、少しでも気になっていることがあれば、まだ体力があり、脳が縮み切らず、意欲も感性も残っている50代の「今」始めるべきなのです。

■リカバリーできる期間があるのも50代の強み

人生は実験である、と私はよく言います。

実験とは、それまでやったことがない何かを試す挑戦のことを指します。

失敗したら別の方法を試してみる。失敗したらまた別の方法。それでも失敗したら、さらにまた別の方法――。

こうして失敗を繰り返す中で、実験の精度が少しずつ上がり、成功に近づいていけます。

つまり、限られた人生という時間の中でやってみたいこと、成し遂げたいことがあるならば、あれこれ実験してみるのが正解です。言い方を換えると、充実した人生には、挑戦して失敗を繰り返すことが不可欠なのです。

失敗して、また新たな実験を試みるのには体力が必要です。まだ体力と意欲がある50代のうちに「やりたいことを始める」必要があると言ったのは、そのためです。

やりたいことをやり切る充実した人生を送るためにも、また、定年後の時間を存分に楽しむためにも、今から実験を繰り返して成功の精度を上げる。

失敗してもリカバリーできる50代のうちに、やりたいことを始めて、備えておきたいのです。

■お金の心配よりもはるかに大切なこと

「言っていることはわかった。けれど先立つものがない」
「人生は定年してからも長い。だから老後生活に必要な資金を、今のうちに稼いでおかないと」

そんなふうにお金の心配をする人がいるかもしれません。

しかし、50代ともなれば、余剰資金は多少なりともあるはずです。

もとより、お金は天国まで持って行けません。

その手前、70~80代になったとき、いくら巨万の富があったとしても、それを使って楽しむ体力や気力はどれくらい残っているでしょうか?

たとえば、同じヨーロッパを旅するにしても、50代ならばレンタカーを借りてドイツ・バイエルンのアウトバーンを疾走し、フランス・パリで思う存分ワインとフランス料理を楽しみ、坂の多いスペイン・バルセロナの町並みを上り下りしながら街歩きしたりできるでしょう。

アウトドアで飲み物を楽しむカップル
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

興味の赴くまま、やりたいことがまだまだ存分にできます。

しかし、同じ料金をかけたヨーロッパ旅行のタイミングが、80歳であったらどうでしょう? 速度無制限のアウトバーンを運転するのは好奇心より恐怖心が先立ちます。疾走する醍醐味やスリルはもう味わうことはできません。

パリで良さそうなビストロに立ち寄っておすすめメニューを頼んでも、脂がたっぷり乗ったグリルやソテーは胃もたれして楽しめません。

バルセロナの坂道をそぞろ歩きたくても、膝や腰が弱っていたら、喜びよりも苦痛が勝りそうです。

■体力や意欲、感性は、人生の大切なリソース

体力や活力が残っていなければ、時間も好奇心も満たせないかもしれない。

すばらしい異国を旅したとしても、すばらしい体験ができないかもしれない。

そして、思うのです。

「もっと早く、旅に出ていたなら……」

体力や意欲、感性は、人生の大切なリソースです。

同じお金を使うのでも、いつ使うかで、その価値は大きく変わってきます。

最大限にそれら人生のリソースを使える絶好のタイミングが、多くの社会経験や知識があり、多少なりとも自由に使えるお金を持っている50代なのです。

50代のうちにお金や体力、意欲や感性をどう使って、何を得るか。

それこそが、本当にやりたいことをやり、なりたい自分になる人生を送るコツであり、定年後の人生を豊かにしてくれる、実りの多い自分への投資なのです。

私はかれこれ30年以上も65歳以上の高齢者を専門に精神科医をしてきました。

たくさんの高齢者の方々に会ってきたからこそ、確信して言えるのが、「満足そうな老後、幸せそうな定年後を歩んでいる人のかなりの部分が、50代からその準備をしたり、やりたいことを始めたりしていた」ということです。

■50代に入ったら「常識」は捨て去ろう

体力・気力がまだ残っているうちに、自分のやりたいことに挑戦し、練習を積めば、さらに歳をとったとき、たっぷりと経験や知識、仲間が増えています。年老いてから「よっこらしょっ」と立ち上がったのでは、なかなかそうはうまくいきません。

和田秀樹『老後に楽しみをとっておくバカ』(青春出版社)
和田秀樹『老後に楽しみをとっておくバカ』(青春出版社)

今、あなたが50代ならば、手掛けている仕事や、会社の立場や責任、老後の備え、お金などに縛られるのはもったいない。むしろ、あえてそれを脇に置いてでも、その分の時間やお金、労力を、自分の人生を豊かにするための投資に振り分けるのです。

「仕事の責任やお金の心配は脇に置いてでも、自分の人生を楽しむ? 少し非常識なのではないか」

はい。そのとおりです。

非常識、大いに結構。

50代に入ったら、これまでの「常識」は捨て去りましょう。

そのほうが結果的に、仕事や家族も含めたトータルの人生が豊かになっていくはずです。そんな例を私はたくさん見てきました。

だから、体が動くうちに、遠慮することも躊躇することもなく、思い切って旅立ちましょう。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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