いくら単語を覚えても英語力は上がらない…勉強熱心な日本人が英語を話せない根本原因
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 8時15分
※本稿は、Kazu Languages『ゼロから12カ国語マスターした私の最強の外国語習得法』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■そもそも英語は、日本人には難しい
いくつもの言語を習得することはさておき、「まずは、英語を習得したい」という思いで本書を手に取ってくださった人も多いかと思います。
私と同じく「学生時代の英語の授業が楽しくなかった」とか、あるいは「長年勉強したけど、結局は受験対策にしかならなかった」「ぜんぜん話せない英語への苦手意識が拭(ぬぐ)えない」といった理由で自信を失っている人も少なくないでしょう。
そのような人には、「英語すらおぼつかないのに、『多言語を習得する』なんて遥か遠い世界の話」と思わせてしまったかもしれません。でも、ちょっと待ってください。私が思うに、英語は日本語を母語とする人にとって、実は習得するのが難しい言語なのです。
言語習得の難易度は、「習得したい言語と母語が、どれだけ異なるか」によって決まります。
たとえば「英語を母語とする人」にとって、英語と似ているところが多いオランダ語、スペイン語、スウェーデン語は難易度の低い言語といえます。少しだけ似ているところがあるヒンディー語、タイ語、ロシア語などは難易度が中くらいの言語。まったく異なるアラビア語、日本語、中国語などは難易度が高い言語といえます。
ちなみに私は、まずスペインに対する強い興味からスペイン語を習得する中で、英語も習得しました。学生時代に楽しめず、習得もできなかった英語を習得することができたのは、今にして思えば、スペイン語と英語の類似性のおかげだったとも考えられます。
■いったん「日本語に近い」別の言語を学ぶのも手
話を戻します。もうお気付きかもしれません。英語話者にとって、「英語とまったく異なる日本語」は難易度が高い言語。逆もまた然りで、日本語話者にとって、「日本語とまったく異なる英語」は難易度が高い言語なのです。
英語と日本語は、まず使う文字が違います。文字が違えば、似ている単語も存在するはずありません。語順などの文法もまったく違います。さらに、英語は日本語にはない音があるため、日本人は英単語を正しく発音するだけでも苦労します。
ここで道はふたつに分かれます。
もし、そこまで英語を習得することにこだわっておらず、何かしら外国語を学んでみたいという人がいたら、いったん英語以外の言語にトライするのもありでしょう。これが1つめの道です。
学びやすさで言うと、意外にもトルコ語は文法的に日本語と似ているところが多く、比較的習得しやすい言語だと思います。同じ漢字文化である韓国語、中国語、あるいは文法が似ているヒンディー語なども比較的学びやすいといえます。
まず、こうした言語をひとつ学んでから英語に着手すれば、案外、すんなり習得できるかもしれません。
私の場合は「トルコ語(もしくは韓国語、中国語、ヒンディー語)→英語」ではありませんでしたが、ひとつ新たな言語を習得するごとに、また新たな言語を習得するハードルは低くなると実感しています。
■成功体験が自信につながる
なかにはアラビア語のようにものすごく複雑な言語もあれば、インドネシア語のようにシンプルな言語もあります。でも、どの言語でも学び方は同じです。
今までの経験上、「すべきこと」は明確で、なおかつ「すべきことをした結果、習得している自分」のイメージも明確なので、その言語を使えるようになっている近い未来を信じて着々と学習を進めていくことができます。
当然ですが、先にどのような言語を学んでも、英語と日本語の差異そのものは変わりません。
ただ、ひとつでも外国語を習得すると、「言語を習得する」ということ自体が自分にとって未知のものではなくなります。すでに1回は経験済みの「勝手知ったるもの」になるといったらいいでしょうか。
学ぶ言語が変わっても通用するコツや勘所がつかめる。そこでの成功体験が自信につながり、日本人にとっては難易度の高い英語のような言語でもスムーズに習得できるようになるのです。
■英語を勉強しても聴き取れない、話せない理由
一方、「やはり、まず英語」という人もいるでしょう。
あくまでも最初に英語を習得する、これが2つめの道です。
「でも、どうしたらいいのかわからない」「英語を自在に使えるようになるなんて、やっぱり自分には無理なのかもしれない」――という方に言いたいことがあります。
どうか、もう英語を怖がらないでください。本書で、英語は日本人にとって難しい言語であると述べました。であるにもかかわらず多くの日本人は、そんな学びにくい英語を何年間も学んだ経験があるのです。
しかも日常会話くらいなら、中学英語レベルの知識で十分通用します。
つまり中学校で英語の授業を受け、テストで及第点を取ってきた人であるならば、すでに英語の素地は十二分にあるといえます。日本人にとって英語は学びづらい言語である中で、そこまで身につけていることに対して、まず自信をもってほしいと思います。
にもかかわらず、なぜ「英語を聴き取れない」「話せない」のかといえば、理由はただひとつ。その訓練を受ける機会に恵まれてこなかったからです。
私も、かつては同じところにいました。学生のころは、教科書で文法を覚え、単語帳で単語を暗記するばかりで、生の英語を聴ける機会や話せる機会はほとんどありませんでした。
もしかすると、近頃は変わってきているのかもしれませんが、かつて日本の英語教育は文法学習に偏っており、会話の実践力を伸ばすようには組み立てられていなかったのです。
■アプリとポットキャストが役に立つ
だとしたら、これからすべきことは明確でしょう。英語の実践力、特に学校では手薄だったリスニングとスピーキングの訓練を積む。まさに先ほど説明してきたステップを踏んで、英語の学び直しをしていけばいいと思います。
そこでひとつ問題となるのは、本書でおすすめしているPimsleurは基本的に、英語で外国語を学ぶためのアプリであるという点です。
英語の非ネイティブ向けには「韓国語で英語を学ぶ」「フランス語で英語を学ぶ」「スペイン語で英語を学ぶ」などのコースがあるのですが、なぜか「日本語で英語を学ぶ」コースはありません。
また、テキスト教材のAssimilはフランスの企業が作っている教材なので、実はフランス語で外国語を学ぶ教材が最も充実しています。英語で外国語を学ぶ教材もありますが、十数カ国語に留まります。こちらでもやはり、日本語で英語を学ぶ教材は作られていません。
というわけで、英語を習得するためにステップ①②を踏んでいくには、自分でちょうどいい言語学習アプリやテキスト教材を探す必要があります。
ネイティブの発音を真似るステップ①では、PodcastやYouTubeで「英語のネイティブのリアルな発音に触れられる+日本語の解説つき」のチャンネルを探すと、かなり学びやすいでしょう。
まずおすすめしたいのは、YouTubeチャンネル、ケンドラ・ランゲージ・スクールです。各言語で頻出フレーズを紹介している中でも、英語の動画は特に充実しています。初級から上級まで対応し、試験対策用の動画まで揃っています。
これに加え、おすすめのPodcastもいくつかご紹介します。(図表1参照)。
テキスト教材は、物語や会話文に文法解説が載っているという構成で、かつCDなど音声素材がついているものを探してみてください。私のおすすめは『ニューエクスプレス』シリーズです(一部、CD未付録の言語もあるようなので、購入する前に確認してください)。
これで、PimsleurとAssimilを使わなくても、ほぼ同じようにステップ①②のプロセスを踏んでいけるでしょう。
■英語は「便利なツール」と考える
そしてもし、英語の学習を進めるうちに苦手意識や抵抗感が薄れ、徐々に実践力もついてきたと感じたら、ぜひ「英語で他言語を学ぶ」ということにも挑戦してほしいと思います。
なぜなら、英語そのものを学習するよりも、英語で他言語を学習したほうが、結果的に、他言語と一緒に英語も上達しやすいからです。
英語で他言語を学ぶには、英語による解説文を聴き取ったり読み取ったりする必要があります。たとえば「このスペイン語の文法は、どういうことだろう?」と思ったら、まず英語を理解しなくてはいけません。
このように「他言語を学習するためのツール」として英語を活用すると、自然と英語のリスニングやリーディングが上達するというわけです。
また、英語は世界共通語なので、他言語のネイティブと話しているときに単語や文法についてわからないことがあったら、英語に切り替えて質問することもできます。
もちろん英語を話せない人もいますが、私が実際に接してきた中では、出身国を問わず、かなりの割合の人と英語でのコミュニケーションが可能でした。
ここでもやはり「便利なツール」として英語を使う機会をもつことで、自ずと英語のリスニングとスピーキングが上達するわけです。
さらに、Pimsleurを代表格として、英語で作られた言語学習ツールは、非常に優れている上に幅広い言語をカバーしています。
つまり英語を、他言語を学ぶツールとして使えたほうが、もっと色々な言語を習得したくなったときに、より優れた言語学習ツールで効率的に学習を進めることができるのです。
■効率的に他言語を学ぶことで得られるもの
日本語で他言語を学ぶよりも負荷が高くなるのはたしかですが、このメリットは大きいでしょう。約5年間で12カ国語を学んだ私は、まさに、そうした恩恵を享受してきた身といえます。
そして多くの言語を理解できるようになると、本書(第1章)でも述べたように、アクセスできる情報量が格段に増加するということも改めて付け加えておきます。
この点については、ニュース感度や政治経済の知識レベルも問われるところですが、「英語をツールとすると効率的に他言語を学べる」ということが、やがては情報強者となり、より広い視野でさまざまな物事を考えられることにもつながる可能性があるのです。
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YouTuber、インフルエンサー
2000年3月4日生まれ。愛知県出身。スペインの音楽に関心を抱いたことをきっかけとして、独学で外国語学習を開始。以降、5年間で12カ国語を習得(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語)。外国語学習の楽しさを発信するため、2022年に本格的に「Kazu Languages」というチャンネル名でYouTuberとしての活動を開始。年内に登録者数10万人を突破、翌年には台湾の急上昇ランキング3位を記録、そして日本国内でも急上昇ランキング18位となり、アメリカ、ロシア、ブラジル、ドイツ、インドなどさまざまな国からも視聴されるチャンネルになった。YouTube、TikTok、Instagram、Facebookの総フォロワー数は現在、のべ200万人となっている。
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(YouTuber、インフルエンサー Kazu Languages)
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