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この質問をしないと病院で薬漬けにされる…和田秀樹「患者が医師に聞くべき"キラークエスチョン"」【2023編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2024年5月3日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ca-ssis

2023年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年8月27日)
適正な薬の服用はどのくらいか。医師の和田秀樹さんは「オーストラリアのある調査では、入院患者の約5人に1人が薬の飲みすぎに起因した入院だった。病院に行くと、不調の数だけ薬が処方されてしまいやすい。患者は自分が飲むべき薬の副作用について必ず医師に尋ねることだ」という――。

※本稿は、和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■入院患者の約5人に1人が薬の飲みすぎ

65歳を過ぎると、どんなに注意をしていても、調子の悪いところが1つ、2つと増えていきます。それが「老いる」ということであり、生きている証です。

ところが、医療では、病気を薬の力で抑え込もうとします。

オーストラリアでの調査報告では、全入院患者の3%前後が、薬の服用に起因した入院でした。高年の患者ではその比率がさらに高くなり、15~20%とされています。

薬の飲みすぎで重篤な状態になる人が、こんなにもいるのです。

薬を処方しすぎる薬大国・日本では、その比率ははるかに高いと見て間違いないでしょう。実際、それによって患者さんの健康を害することが起こっています。

薬の数が増えれば、必然的に副作用も多くなります。ちなみに高年者の場合、薬の数が6種類以上になると、副作用が増えるとされています。

「最近、頭がボーッとするし、寝込むことが多い」と思っていたら、多剤服用による副作用だったケースも珍しくありません。認知症と間違われたり、足元がふらついて転倒し、寝たきりになったりすることも起こっています。

■大病院を受診すると薬漬けになる

では、なぜ、日本の医師は薬を多く出しすぎるのでしょうか。

最大の理由は、医療の専門分化にあります。

ある時期から、医学教育の専門化が進みました。たとえば、大学病院には内科という診療科はなく、呼吸器内科、内分泌器内科、消化器内科、循環器内科というように、臓器別の診療科が並んでいます。

日本の医学教育には、オールマイティに患者さんを診られる総合医を育てる教育システムがほとんどなく、専門医はほかの領域に関して詳しい知識が、ほぼありません。

このために、大学病院などの大きな病院を受診すると、1つ調子が悪いところが現れると、受診する診療科も増えます。各診療科では、それぞれ薬が処方されます。

調子の悪い箇所が1つ、2つと増えていけば、そのたびに新たな薬が追加されていきます。このため、大病院にかかると、高年者は薬漬けになりやすいのです。

■効能ではなく、副作用の説明を仰ぐ

では、開業医のところに行けば、多剤服用の問題は避けられるのでしょうか。

たとえば、内科クリニックの医師も、もともとは大学病院や大きな病院で特定の臓器だけを診てきた医師が、ほとんどです。

大きな病院
写真=iStock.com/Meindert van der Haven
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Meindert van der Haven

医学部で基本的な知識は学んでいるため、専門外の患者さんを診ることはできます。

ただし、医師は、専門外の疾患に対して、医療マニュアルに頼ります。

標準治療を示すマニュアルには、1つの疾患に対して2~3種類の薬が推奨されています。そのため、薬についてしっかりと勉強していない医師を受診すると、不調の数とともに、薬の数も増えやすくなるのです。

「毒を以(も)って毒を制す」。これは、薬の本質を示す言葉です。

病気という毒を、薬という名の毒を使って抑え込むため、病気以外の場所にも作用します。たとえ1つの病気を抑えられても、作用は他所にも及び、意図する反応とは異なる症状を生み出します。これが副作用です。

ですから、自分が飲む薬については、副作用を確認しておきましょう。薬が処方される際、効能の話はあっても、副作用の説明はされないことが大半です。

その場合には、患者さん自身が、「この薬にはどんな副作用がありますか?」と尋ねましょう。患者さんが尋ねれば、信頼に足る医師なら、きちんと答えてくれるはずです。

薬を飲み始めて体調が悪くなったと感じたときには、頑張って飲み続ける必要はありません。すぐに体調の悪化を医師に相談して、服用をいったんやめるか、別の薬に替えることが、ご自身の健康のために必要です。

■薬の必要性は体と心が教えてくれる

副作用の話をすると、「絶対に薬を飲まない」という極端な選択をする人がいます。

しかし、それで人生のご褒美時間を楽しむだけの健康を保てるでしょうか。

薬の使用も、白か黒かの二分割思考ではなく、副作用のリスクを理解しつつ、必要な治療は取り入れていくという、自分なりのグレーの部分を見つけていきましょう。

たとえば、何十年も、就寝前に市販の頭痛薬を飲み続けている高年の女性が、私の患者さんにいます。それを飲むと、よく眠れるのだそうです。

医学的に見れば、睡眠の質という点において、その薬に意味はありません。むしろ、依存性や胃腸への負担も大きく、継続して飲まないほうがよいと伝えたいところです。

とはいえ、患者さん自身にとっては、今のところ困った症状は何も出ておらず、それを飲むことで気持ちが落ち着き、よく眠れるといいます。ということは、飲み続けることが、彼女にとって最良の選択となります。

このように、その薬が自分に必要かどうかは、自分の体と心が教えてくれるのです。

私も、自分自身の健康管理のために、薬を何種類か服用しています。

まず、胃腸薬を飲んでいます。なぜ飲むのかといえば、慢性の下痢や胃痛に悩まされているためです。飲んだほうが一日を元気で過ごせるため、服用しています。

高血圧の薬も飲んでいます。現在のところ、薬を飲まないと最大血圧が200mmHgを超えるほど上がるので、薬の力を借りているのです。なお、血圧の正常値は、最大血圧が140未満mmHg、最小血圧は90mmHg未満です。

私の場合、高血圧治療ガイドラインが示すこの数値まで血圧を下げると、頭がボーッとしてどうにも調子がよくないので、正常値より高めの170mmHgを維持しています。この数値だと頭がスッキリして思考力が保たれ、元気に過ごせるのです。

■血圧を下げる「引き算医療」は体にダメージ

すでに動脈硬化がある高年者に、正常値より数値が高いからといって「薬の力で正常値まで血圧を下げる」という引き算医療は、ダメージを与えます。なぜでしょうか。

動脈硬化を起こすと、血管の壁が厚くなります。そのため、血圧を多少高くしてでも血液を巡らせないと、脳に酸素や栄養素が届きにくくなります。つまり、加齢によって血圧が高くなるのは、動脈硬化に対処するための適応現象なのです。

にもかかわらず、正常値まで血圧を下げると、脳は酸素と栄養が不足します。これによって、頭がボーッとする、だるい、足がヨタヨタする、などの不調が現れます。

低血圧の人は、体がだるい、動くのが億劫になるなどの症状を訴えます。それと同じ状態が、高血圧の人が降圧剤を多く飲むと、人工的に作り出されてしまうのです。

ですから、高齢者は血圧を高めにコントロールするほうがよい、と私は考えます。

また、血糖値が高くなった場合も、薬で正常値まで下げる引き算医療が始まります。

血糖値も、動脈硬化が進むと、脳にブドウ糖を送るために高くなるのが自然現象です。

それなのに、血糖値を下げる薬を使ってしまうと、正常値を維持していたとしても、ふらつきや動悸(どうき)、痙攣(けいれん)といった低血糖の症状が出ることがあります。

■糖尿病の人はアルツハイマー病になりにくい

なお、「糖尿病はアルツハイマー病を引き起こす」という人がいますが、それは「糖尿病の治療を受けている人」の話です。

和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)
和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)

浴風会病院による研究結果では、糖尿病の人は糖尿病でない人に比べ、アルツハイマー病の発症率が3分の1にとどまっていました。この結果もあり、浴風会病院では血糖値を高めにコントロールしていました。

私自身も糖尿病ですが、歩くこととスクワットで血糖値が300mg/dLを切ることを目標にコントロールしています(基準値は110mg/dL以下)。300mg/dLを超えたときだけ薬を飲んでいます。

糖尿病合併症が起こりやすい眼底と腎機能の検査は定期的に受けていますが、今のところ問題は起こっていません。

薬の服用は最小限にとどめ、不調のときに飲むように心がけるとよいでしょう。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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