金のネックレス、セカンドバック、ダブルのスーツ…「なぜ野球選手の私服はダサいのか」に対する元プロの答え
プレジデントオンライン / 2024年5月18日 10時15分
※今浪隆博『今浪隆博のスポーツメンタルTV THE BOOK 野球観戦が100倍面白くなる厳選100談義』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
■どうしてプロ野球選手は年々太るのか
個人的には「大きくなる」「厚みが増す」だと思っています。ぼくの場合、入団当初は身長171cm、体重71kg。11年後、最後のシーズンは身長172.5cm、体重は75kgでした。体重は4kg増えていますが、これは太ったのではなく、自分で意識して体脂肪率を高めた結果です。
では、なぜ体脂肪率を高めたのか。年間の公式戦が20数試合の大学野球に比べ、プロ野球のペナントレースは143試合もあります。月曜以外はほぼ試合があり、学生時代のフィジカルでは、とてもじゃないけどシーズンを通して持ちません。途中でガス欠を起こさないためにエネルギーを蓄える必要があり、そこで意識しなければいけないのが、エネルギー源となる脂肪です。
入団した頃、ぼくの体脂肪率は約7%でした。「それじゃ低すぎる。せめて2桁にしないと」と、トレーナーから言われていました。プロ野球選手なら体脂肪率の管理を意識するのは当然ですが、大切なのはバランスです。ある程度の脂肪がありながら、思うように動けるバランスはどこかを選手は考えています。なので、年々太っているのではなく、ベストの脂肪バランスを考えて体をデザインした結果なのです。たぶん……。
■成績を残す選手はお尻が大きい
プロ野球選手の体型についてよく言われることに「お尻が大きい」もあります。確かにお尻が大きく、太ももが太い印象があるし、実際、それがプロ野球選手らしい「必然の体型」だと、個人的には思っています。
あくまでもぼくの考えですが、お尻が大きく、太ももが太くなる理由は筋肉の使い方にあります。ポイントになるのは、お尻やハムストリングなどの大きな筋肉。
アマチュアの指導は、太ももの内側の内転筋を強調しますが、プロ野球で成績を残す選手には、お尻やハムストリング、つまり太ももの外側、体の背面の大きな筋肉をうまく使うという共通点があります。言葉では説明しにくいのですが、お尻やハムストリングを使ったほうが、素早く、最大のパワーを発揮できる、というイメージです。
お尻とハムストリングを意識して動くと筋肉は大きくなります。するとパフォーマンスが上がり、刺激を与えられた筋肉はさらに大きくなる。毎日、練習と試合でそれを繰り返しているのですから、必然的にお尻は大きく、太ももは太くなるというわけです。
■どうしてプロ野球選手の私服はダサいのか
「年々太る」「お尻が大きい」と微妙に関係しているのが、この疑問だと思います。ぼく自身、その世界にいましたし、決してダサいことを肯定するわけではありませんが……世間にはそういう見方をする人がいるのも事実でしょう。なので、ぼくなりの考察をしてみたいと思います。
まず、ダサいというのは思い込み、イメージによるところが大きいはずです。ぼくらが子どもの頃にテレビで見ていたプロ野球選手の私服は、ブカブカのスーツ、セカンドバック、似合わないパーマなど……。
諸先輩方には大変申し訳ありませんが、ダサいと言われても仕方ない面もありました。Jリーグが誕生してからは、カズさん(三浦知良)をはじめ、ヨーロッパの風を感じさせるオシャレなJリーガーの露出が増え、対比として「私服のダサいプロ野球選手」というイメージが固まった気がします。
では、実際にダサいのか。これは個々のセンス、価値観によるので一概には言えませんが、そうでもないし、少なくとも昔のイメージとは違うと思います。
■最近はオシャレな選手も多い
若い選手はみんなそれなりにオシャレだし、各球団にオシャレ番長的な選手もいます。在籍していた頃の北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)のオシャレ番長は……はい、ぼく、今浪隆博でした(笑)。
高校生の頃からファッションには気を使っていて、大学時代は、野球部の練習をサボって、ストリートファッションの店に朝から並んだこともあります。
ファイターズは北海道のテレビ局に取り上げられることが多く、毎日、球場入りする選手をテレビカメラが待ち構えていました。選手が私服でインタビューを受けるコーナーもあって、そこにぼくは命をかけていました。というのは大袈裟ですが、メディアに出る機会を増やし、1人でも多くのファンに自分を知ってもらうため、カメラに写ることを意識して洋服を選んでいたんですね。
入団して3、4年目の頃で、年俸は低かったのでハイブランドには手が出せません。御用達は札幌市内のセレクトショップ。こまめに洋服を買っていたら、ファンからも選手仲間からも「なみはオシャレやな」と言ってもらえるようになったんです。
■着られる服がないという悩み
体型とプロ野球選手の私服についてですが、お尻が大きく太ももが太いと、ジャストサイズを見つけるのが難しいという問題があります。探せばあります。でも、それが面倒な人は「どうせ合うサイズがない」を言い訳にして、着る物に気を使わなくなっていくのかもしれません。
最近はストレッチ素材のタイトなパンツもありますが、あれ、慣れてないと最初は窮屈だし、違和感もあるでしょう。その壁をこえられず、ラクな恰好でいいやとなる選手もいます。そこが強調されて「プロ野球選手の私服はやっぱり……」となるのではないでしょうか。
体型的に仕方のない部分もありますが、最近はオシャレに気を使う若い選手が多いので、イメージも少しずつ変わっていくはずです。いや変わって欲しいと、元北のオシャレ番長としてエールを送りたいと思います(笑)。
■どうして金のネックレスをするのか
プロ野球選手の「金」にまつわる疑問もよく聞かれます。金といってもマネーではなく、1つは貴金属のゴールド、もう1つは「金カップ」についてで、ちょっと微妙な話題でもあります。
最初の金、ゴールドですが、これはネックレスの話です。バッターボックスで空振りしたり、ファールを打ったりした後で、はみ出した金のネックレスを胸元にしまう選手、確かにいます。どうして、あんなにジャラジャラしてゴツいネックレスをつけているのか。邪魔になるんじゃないか。そういう疑問が浮かぶのも、わかります。
では、なぜ金のネックレスをしているのか……の前に、磁気ネックレスの話をしたほうがいいかもしれません。磁気の力でコリをほぐす、体調を整えるというやつで、ぼくもつけていた時期があります。確かに、疲れが軽減される気がしたし、踏ん張れるし、めっちゃええやんと思いました。
疲れがたまるとバランスが崩れるため、これはアリでしょう。デザイン性の高いものもいろいろあって、一時期、あれこれ試していたことがあります。でも結局、ぼくは続けませんでした。効果を感じる以上に、内野を守っているとき、首まわりで動くのがどうしても気になって、ストレスになるなら意味がないと思ったからです。
■ジャラジャラしていると邪魔なのは間違いない
で、金のネックレスですが、あれ、実は金のネックレスではなく、磁気ネックレスかもしれませんよ、というのはちょっと苦しい説明ですね。
金のネックレス、ぼくはつけたことありませんが、守備でもスライディングしたときでも、ジャラジャラしていると邪魔なのは間違いないでしょう(笑)。ではなぜ、しているのか……。
あくまでも想像ですが、体調を整えるなどの効果とは関係なく、気持ちの問題かもしれません。シーズンは長く、調子が落ちるときがあれば、体調を崩してしまうときもあります。毎試合、自分が思うようなプレーができるわけではありません。
とはいえ、それとは関係なく明日も、明後日も試合は続く。そんなとき、自分を奮い立たせるアイテム、またはお守り的なものとして、金のネックレスをつける人がいても不思議ではない。
■本人の気分がアガるなら、それでいい
ビジネスでも、大事なプレゼンの日にはお気に入りの腕時計をするとか、勝負下着を身につけるとか、いわゆるゲン担ぎする人もいると思います。
まわりから見たら意味がないことでも、本人にとっては大切なもの。ないと不安で、身につけているだけでテンションが上がるもの。それが、ある選手にとっては金のネックレスだった。だから、ほかの人が理由を想像しても意味がないのだと思います。本人の気分がアガり、成績に反映されていると感じるならそれでいい、というのがぼくの見解です。
ちなみに、ユニフォームからはみ出さないものの、ネックレスの類いを身につけているプロ野球選手、実はけっこういます。
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元プロ野球選手、スポーツメンタルコーチ
1984年7月6日生まれ。福岡県北九州市出身。平安高校(現・龍谷大平安高校)、明治大学を経て2007年北海道日本ハムファイターズに入団。2014年のシーズン中に東京ヤクルトスワローズに移籍し、15年に打率3割越えをマークして、リーグ優勝に貢献。2017年に引退。現在は、スポーツメンタルコーチとして、アスリートのサポート活動を行っている。その一環として、2022年に公式YouTubeチャンネル「今浪隆博のスポーツメンタルTV」を開設。
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(元プロ野球選手、スポーツメンタルコーチ 今浪 隆博)
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