男性更年期の不調は油の摂り方で改善する…男性医学の名医が説く「良い油」と「悪い油」の見分け方
プレジデントオンライン / 2024年5月16日 17時15分
※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『人生のあらゆるパフォーマンスを最大化する!男性活力の源「テストステロン」を増やすメソッド10』の第1話を再編集したものです。
■あなたが「男らしさ」を失った本当の理由
「テストステロン」と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか。ボディービルダーのような筋肉隆々の逞しい体をイメージする人が多いのではないでしょうか。
確かに、テストステロンはマッチョな「男らしい体」をつくり出します。しかし同時に、テストステロンは「男らしい性格や行動」も生み出しています。例えば、リスクを恐れず、大胆な決断をする。責任感がある。好奇心が旺盛である。チャレンジ精神を持っている――といった「男らしい性格や行動」は、実はテストステロンの量によって大きく左右されることが研究でわかっています。
最近どうも元気がない。若いころのようにバリバリ働けなくなった。プライベートでもバイタリティが落ちてきたように感じる――あなたが「男らしさ」を失ってしまったのは、年齢的な体力の低下ではなく、テストステロンの低下が本当の理由かもしれません。
■その活力低下は「男性の更年期障害」かもしれない
テストステロンは、ホルモンの一種類です。ホルモンは、私たちの体の様々な働きを調整する化学物質のこと。体内のいろいろな場所にある内分泌腺と呼ばれる器官で合成され、血液の流れに乗って体内を循環し、特定の細胞で効果を発揮します。
主に精巣(睾丸)で作られ、「男性ホルモン」の代表格とされるのが、テストステロンです。実は女性も体内でテストステロンを作っているのですが、テストステロンが男性ホルモンと呼ばれるのは、「これがないと男性になれない」から。男性生殖器、濃い体毛やヒゲ、がっしりした体つき、太い声帯などのいわゆる「男らしい体」は、すべてテストステロンの働きによるものです。
男性のテストステロンの分泌量は20~30代がピークですが、その後はゆるやかに減っていきます。しかし、これは加齢に伴うものというよりも環境やストレスに左右されます。特に40代あたりでテストステロンが急激に減少するケースがあります。テストステロンの減少により引き起こされる心身の不調は、近年、「男性の更年期障害」として知られるようになりました。
ただ、エストロゲン(女性ホルモン)の急激な低下が原因となる更年期障害は女性の体に必ず訪れる生理的なプロセスであるのに対し、男性の更年期障害は誰もが経験するものではなく、病気だと考えられるようになっています。そうして名づけられた病名が、「LOH 症候群(Late Onset Hypogonadism)」です。
そう、あなたが感じている活力の低下は、テストステロンの急激な低下によって引き起こされた病気である可能性が高いのです。
■テストステロン減少⇔肥満の悪循環を断ち切ろう
でも、安心してください。LOH症候群は治る病気です。落ち込んでいたテストステロン・レベルを再び上げることができれば、あなたは失われた活力を再び取り戻すことができます。その復活の鍵を握るのは、食事・運動・睡眠など、生活習慣の改善です。
まず取り組んでほしいのは、肥満を解消することです。
テストステロンの減少と肥満は、切っても切れない関係にあります。テストステロンには筋肉を大きくし、体脂肪を少なくする働きがあるので、テストステロンが減ると体脂肪が増えます(実際にテストステロンが低い人に薬として外から投与すると、年齢を問わず、内臓脂肪が減って筋肉がついてくることがわかっています)。
そして、体脂肪にはテストステロンをエストロゲン(女性ホルモン)に変換する働きがあります。体脂肪の増加により体内の女性ホルモン・レベルが高くなると、テストステロンを出そうとする刺激ホルモンが脳から出なくなります。そうしてますますテストステロンの分泌が減るわけです。こうして、テストステロンの減少→肥満→テストステロンの減少……という悪循環が発生します。
この悪循環を断ち切るために、まずは食生活を見直してください。基本は、たんぱく質をしっかりとること。そして、糖質もある程度とることです。
近年、ダイエットのため糖質を徹底的にカットする人が増えています。しかし、テストステロンを作るには糖質とコレステロールが不可欠なので、極端な糖質制限はテストステロンを下げ、筋肉を減らしてしまいます。最近は糖質制限を推奨する医師もこの点に注意して、糖質過多にならない適切な糖質制限ということを強調するようになりました。
■テストステロンを上げるためには油も大切
「油=肥満」というイメージをお持ちの方は多いでしょう。確かに脂質(油)は1gあたり9キロカロリーあり、1gあたり4キロカロリーの炭水化物と比べると高カロリーで肥満につながりやすいと昔は思われていました。しかし近年の研究で、油は一概に悪者ではないこと、テストステロンを増やすためには油が欠かせないことがわかってきました。
大事なのは、どの油を摂取するかです。大量摂取を避けるべきは、オメガ6を多く含むコーン油などのサラダ油です。これは体を酸化させます。揚げ物や炒め物に使っている油は、体によくないものであることが多いかもしれません。
積極的に取るべき油は、オメガ3を豊富に含む油です。いまはアマニ油やエゴマ油など、スーパーで手軽に良質な油が買えるようになりました。オメガ3を含み、かつ調理に使いやすい油というと、オリーブオイルが代表選手でしょう。オメガ3以外では、MCT(中鎖脂肪酸)オイルをコーヒーに入れたりして日常的に摂取するのもオススメです。
良質な油をとるため、肉は積極的に食べましょう。肉はたんぱく質も豊富で、テストステロンを上げるために優秀な食材です。特に羊肉はカルニチンというアミノ酸が多く、これが精巣を通じてテストステロンを増やします。インドカレー店ではマトンカレーを注文するといいかもしれません。羊にはやや劣りますが、スーパーで手に入りやすい牛もカルニチンを多く含みます。
魚もテストステロンを上げるために有効な食材です。動物性脂肪の摂りすぎは前立腺がんを引き起こす危険を高めるので、肉を食べる際は脂身を適量にして赤身を選ぶなどの注意が必要ですが、魚は動物性脂肪を含まないので、この心配がありません。
![良質な油と悪い油](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/c/1200wm/img_8c07d2fd7433a04aa39cd294f7c3df9c236732.jpg)
特筆すべきは、魚はオメガ3を豊富に含むということです。イワシなどの青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)をはじめ、一般的に親しまれている魚に含まれている油はいいものが多いと考えられます。サケ・ヒラメなどの白身魚もたんぱく質は豊富ですし、サバ・サンマ・マグロなどの赤身魚は鉄分を多く含みます。種類にこだわりすぎず、いろいろな魚を積極的に食べましょう。
私の母方の家族は銀座で天ぷら店を経営していて、祖父が年賀状に「油断大敵」と書いていたのをよく覚えています。これは一種のダジャレで、「油は断ってはならない」という意味だったようです。適切な油の摂取が健康に資するということを、祖父はよくわかっていたのでしょう。
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順天堂大学医学部教授、医学博士
1960年生まれ。日米の医師免許を取得し、米国で腎臓学の研鑽を積む。2003年帝京大学医学部主任教授、2012年より順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学主任教授。順天堂医院泌尿器科長。腎臓病・ロボット手術の世界的リーダーであり、科学的なアプローチによるアンチエイジングに詳しい。日本抗加齢協会理事長、日本メンズヘルス医学会理事長。著書に『うつかな?と思ったら男性更年期を疑いなさい テストステロンを高めて「できる人」になる!』(東洋経済新報社)、『LOH症候群』(角川新書)『寿命の9割は「尿」で決まる』『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)、『二階から目薬』(かまくら春秋社)などがある。
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(順天堂大学医学部教授、医学博士 堀江 重郎 構成=奥地維也 イラストレーション=髙栁浩太郎)
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