賃貸だからと「仮住まいの意識」は絶対ダメ…一級建築士が教える「極上の暮らしを作る家具選び」の最終結論
プレジデントオンライン / 2024年5月19日 15時15分
※本稿は、水越美枝子『40代からの住まいリセット術』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■賃貸でも、仮住まいではなく“極上”の場を目指す
自分らしいインテリアを考える際、家具選びはもっとも大切な要素です。本稿では、そのポイントをお伝えしたいと思います。
まず、これからは「とりあえず」という意識で家具を選ぶのはやめませんか?
たとえ賃貸であっても、仮住まいという「とりあえずの意識」を捨てることです。
1年でも2年でも毎日暮らす以上、そこがあなたの“極上”を目指す場です。決しておろそかにしてはいけないと思うのです。
家具を求めるときは、用途を明らかにし、置く場所を決め、そこからサイズをだし、素材、デザインにいたるまでよく考えることです。
メーカーのカタログを見たり、雑誌やネットで探してみるのも一案です。自分の趣味に合う店を見つけたら、とことん通って、店の人に相談するのもいいでしょう。
いまは買わなくても、自分好みで、信頼できて、長くつき合えそうな店を探すのもいい勉強になります。
また、メーカーの定番品などは、家族が増えたり、引っ越して間取りが変わったりしたときに買い足すことも可能だということを知っておくと、のちのち助かることがあります。
■張り替えや塗り直しで新品のようになるケースも
以前私の事務所が設計し、家具選びもアドバイスしたクライアントのTさんから、「子どもが大きくなったので、子ども用の椅子をおとなと同じものに買い替えたい」との相談がありました。
定番の椅子なのですぐ手配できることを伝え、これまで夫婦が使っていた椅子も、ついでに座面の布地を張り替えてはどうかとすすめました。
Tさんは、早速、座面の張り替えとともに椅子の木製部分の塗り直しも依頼され、後日、「新しい椅子と古い椅子の区別がつかないくらい、きれいになりました」という連絡がきました。
また、竣工したばかりのクライアントGさんは、いままで住んでいたマンションで15年間使っていたソファを、新しい家でも使いつづけています。
そのソファはひとり用のものをつなげて、ふたり掛け、三人掛けにできるタイプのものです。これまではふたり掛けにして使っていたのですが、リビングが広くなったのでひとつ買い足し、三人掛けにしました。
生地はベージュに張り替え、アクセントになるように濃いオレンジと黄色のオットマンをふたつ買い足しました。新築の家に色やサイズもマッチしています。
■妥協せずに注文家具という選択
私は、6カ月のあいだ、ダイニング・テーブルを探しつづけたことがあります。
当時住んでいたのはマンションでした。食器棚とダイニング・テーブルを置くといっぱいになってしまうような狭いスペースで娘は宿題をし、息子はお絵描きをしていたものです。
食事はもちろん、それ以外のときにも家族がそこで過ごす時間は長く、コミュニケーションの場となっていました。私が、自宅を設計するときにダイニング・テーブルを中心に考えたのも、そこをみんなが集まる場所にしたかったからです。
ですが、マンション住まいのダイニングでひとつ困っていたのは、テーブルの上に鉛筆削りや、クレヨン、本や雑誌などが置きっぱなしになること。しかし、それらを収納できるキャビネットを買ったりすれば、ますます部屋が狭くなるというジレンマでした。
「収納機能も兼ね備えて散らからない、しかも見た目がいいテーブルはないものか」と考え、ずっと探していました。
しかし、どれも帯に短し、たすきに長し。半年探したところで、とうとう意を決して自分で図面を引き、つくってしまうことにしました。
■上質な家具は愛着もわき、人生の「伴侶」にもなる
一見、普通のダイニング・テーブルですが、天板から下の部分が収納棚と引き出しになっています。
来客にもダイニング・テーブルに座ってもらいますが、テーブルの下を覗き込む人は滅多にいませんから、文具や雑誌・新聞など乱雑な印象になるものは、すべてここに入れます。
書きものをするのも、雑誌や新聞を読むのもこのテーブルか近くのソファですから、「使う場所が置く場所」という適所の法則にものっとった収納です。
かつてここで勉強していた子どもたちが、それぞれの部屋で過ごすようになってからは、テーブルクロスやランチョンマットなど、ダイニング・テーブルまわりで使うファブリックの収納場所となっています。テーブルの下にしまっておけば、気軽にコーディネートが楽しめて便利です。
友人知人、クライアントにも好評で、私のオリジナルのダイニング・テーブルと同じものを使っている人が、何人かいます。
これはあくまで一例ですが、「自分仕様に徹底的にこだわり、オーダーする」という選択もあると思います。
間に合わせでなく、ほんとうに気に入ったよいものを選ぶこと自体が、インテリア上達の道にもなります。
上質なインテリア家具は使うほどに愛着がわき、思い出もしみ込みます。そうなれば、長い人生のよき「伴侶」にもなってくれます。
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一級建築士
日本女子大学非常勤講師、NHK文化センター講師。日本女子大学住居学科卒業後、清水建設(株)に入社。商業施設、マンション等の設計に携わる。1991年からバンコクに渡り、住宅設計のかたわら「住まいのインテリア講座」を開催、ジムトンプソン・ハウスのボランティアガイドも務める。帰国後、1998年一級建築士事務所アトリエ・サラを共同主宰。主に住宅設計(新築・リフォーム)の分野で建築デザインからインテリアコーディネート、収納計画まで、人生を豊かに自分らしく生きる「人が主役の住まい」づくりを提案。著書に『がまんしない家』(NHK出版)、『増補改訂版 いつまでも美しく暮らす住まいのルール』『一生、片づく家になる!』(以上、エクスナレッジ)、『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム』(大和書房)など多数。
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(一級建築士 水越 美枝子)
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