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焼酎のボトルキープは3種類用意したほうがいい…赤字続きの居酒屋を救うために税理士が出した3大アイデア

プレジデントオンライン / 2024年5月16日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/krblokhin

飲食店の客単価を上げるにはどうすればいいのか。税理士の松岡靖浩さんは「商品の価格帯が『松・竹・梅』の3つある場合、6割の消費者は真ん中の『竹』グレードを選ぶ傾向にある。この法則を活かして『竹』を最も利益率のいい商品にして提供すると、客単価と利益率がグッとアップする」という――。

※本稿は、松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■赤字続きの居酒屋が「まず手をつけるべきこと」

私の顧問先の、ある赤ちょうちん居酒屋の話です。

そのお店はそれほど広くなく、スタッフもほとんどいない中で何十年と営業を続けてきました。しかし、時代の流れには逆らえず、経営状態も段々と厳しくなり、今では赤字が続き、なんとかして売上を挽回したいということで私の元に相談に来ました。

「まずどこから手をつけていきましょうか」、そう聞いてみると、社長は「広告を出そうかな」と言うのです。

【図表1】客単価を上げるvs.客数を増やす
『会社をつぶさない社長の選択』P.75より

そこで私が「社長、広告よりも先にやることがありますよ」と言うと、社長は不安そうな表情で「売上を上げるなら広告を出して、客を入れないとダメじゃないですか?」と聞いてきたので、上の表(図表1)を書きながら丁寧に説明することにしたのです。ちなみにこの表は、単純に客単価または客数を今より3%アップした場合の数字です。

■「広告を出す」は効率が悪い

もちろん、お店にやってくるお客様が増えれば売上は単純に増えていきます。ですから、広告を出してお客様を増やすという施策も検討する余地はあります。

しかし、お店がそれほど広くないことを考えると、限られたキャパシティの中でお客様が増えても、それほど売上は上がりません。それを考慮すると、客数よりもまずは客単価を上げていくところから手をつけるべきなのです。

上記の表では、客数(回転率)と客単価、それぞれ3%増えた場合の利益の比較をしています。客数が3%アップした場合は利益率が112%増加するのに対し、客単価が3%アップすると利益率が130%増加するという結果になっていますね。

つまり、客単価をアップしたほうが、客数が増加するよりも圧倒的に効率がいいということです。

このことを社長に説明しましたが、それでも社長の表情は渋いまま、なかなか納得はしてくれませんでした。その理由は「価格を上げるとお客様が離れていっちゃうよ」と、値上げに対する不安が原因です。

■値上げ以外の「3つの客単価アップ法」

本来であれば物価の上昇とともに、メニューへ価格転嫁していくべきなのですが、どうしても価格を上げたくないという社長の意思があったため「値上げだけが客単価をアップさせる方法ではないですよ」と、次の3つの施策を社長に提案しました。

1.松竹梅戦法

まずは「松竹梅戦法」です。居酒屋と言えば、棚にボトルキープされた焼酎。この焼酎は、1種類しかないお店が多いのですが、ここに少しテコ入れするだけで、客単価アップにつながるのです。

まず焼酎を3種類用意して、それらに松・竹・梅とランクをつけます。現在ボトルキープ用で販売している焼酎の売値が2000円だった場合、それを梅ランクの焼酎にして、竹ランクの焼酎3000円と松ランクの焼酎5000円、全部で3種類を用意するのです。

そして、ボトルの注文が入った際にお客様に3つのランクから焼酎を選んでもらう。そうすると、お客様はどのランクの焼酎を選ぶと思いますか?

焼酎のロック
焼酎(写真=パブリックドメインQ/CC-Zero/Wikimedia Commons)

■なぜ商品は「3種類」が儲かるのか

「もともとみんな2000円の焼酎をキープしていたんだから、2000円の焼酎だろう」、そう思われるかもしれませんが、実際には違います。

これは行動経済学の法則なのですが、価格帯が3つある場合、6割の消費者は真ん中のグレードを選ぶ傾向にあるというデータがあります。つまり、このケースであれば竹として提供している3000円の焼酎を選ぶ人が最も多いことになります。

ですから、この法則を活かすならば、竹の焼酎を最も利益率のいい焼酎にして提供すると、客単価と利益率がグッとアップすることになるのです。もちろん、梅として提供している2000円の焼酎が売れることもありますが、もともとはそれを売っていたわけですから損になることもありません。

ちなみにこの松竹梅戦法のポイントは、商品を3つ作ることにあります。2つではダメです。2種類だと高い焼酎と安い焼酎を選んでもらうことになるので、そうなると大抵のお客様が安いほうの焼酎を選ぶ傾向にあります。

ですから3種類、これが最もバランスがとれています。

■居酒屋の店員が「おすすめ」を紹介してくるワケ

2.クロスセルとアップセル

2つ目は「クロスセル」と「アップセル」です。

よく居酒屋に入って、最初にビールを頼んだりすると「今日は北海道産のジャガバターがおすすめです」といった感じで、店員さんからおすすめ商品を伝えられることがありますよね。そしてまんまと「お、そうなの? じゃあそれも一緒にお願い」と思わず頼んでしまった、そんな経験、みなさんもありませんか?

これはクロスセルと言って、典型的な客単価アップの販売手法です。お客様が何か商品を購入する際に別の商品も提案し、組み合わせて販売するのです。

また、これとよく似た販売手法でアップセルというものもあります。

たとえば、マグロのお刺身を食べようと注文した際に「今日は三崎から新鮮な中トロが入ってますが、いかがですか」と言われ、ついつい頼んでしまう。これです。

アップセルはお客様が頼もうとしている商品よりもグレードの高い商品を提案して販売する方法です。クロスセルもアップセルも提案型の営業方法で、客単価を上げるための施策として非常に効果的な販売手法だと言えます。

■ご飯や麺類の「大盛り」は儲かる

3.掛け算思考

3つ目は「掛け算思考」です。最近では赤ちょうちん居酒屋も回転率を上げるために、滞在時間を制限して営業しているところが多いです。これは、時間を制限しないと注文をせずにダラダラと席を占有されてしまい、売上効率が落ちてしまうからです。広いお店ならいいのですが、席数が少ないお店になってくると死活問題です。

しかし、お客様の立場で考えると「もっとゆっくり飲めるお店だったら、定期的に通うのに……」という意見もあり、常連客候補を逃がしてしまう可能性もあるため、店側としては時間制限を作るのは痛し痒し……というところなのかもしれません。

それならば、滞在時間が延びる分、課金できる仕組みを考えればいいのです。

たとえば、居酒屋であれば少し前に流行った「居酒屋×カラオケ」など、2つの要素を掛け合わせたビジネスモデルを展開していくといった方法が挙げられます。1曲歌うと200円が課金されるといった料金体系にすることで、注文しないお客様から別途でカラオケ代を請求できるようになるため、客単価のアップが見込めます。

松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)
松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)

このように、何かを掛け合わせることで、別方向から新しい売上を作ることができ、そこから客単価をアップできるケースもあります。売上アップに悩んでいる方は、このような掛け算思考を取り入れてみるのもいいかもしれません。

この他にも、ご飯や焼きそばなど作る手間がかからないメニューに「プラス200円で大盛り」といった選択肢を加えることで手間なく単価を上げるなど、少しの工夫で客単価アップは可能です。

今回は飲食店のケースでお話ししていますが、他の業種でも少しの工夫で売上アップにつながる方法はたくさんありますので、同じように考えて実践してみてください。

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松岡 靖浩(まつおか・やすひろ)
税理士
松岡靖浩税理士事務所代表。1967年東京生まれ。1990年中央大学商学部会計学科卒業。1995年税理士試験合格。現在、東京税理士会板橋支部所属。「倒産はさせない」をモットーに、現場一筋33年、500社以上の経営サポートを行う。銀行交渉、ノンバンクを利用、弁護士を利用しない企業再生の専門家。『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)が初の著書となる。

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(税理士 松岡 靖浩)

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