人生で最も大切なものは「お金」…海外移住した韓国人が、母国に帰ってドン引きした「韓国人の拝金主義」
プレジデントオンライン / 2024年5月22日 8時15分
※本稿は、シンシアリー『Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
■物質主義に抗おうとした韓国人
読者のみなさまのなかに、「韓国人は物質主義(拝金主義)が強い」という話を目や耳にされた方はおられませんか。韓国関連情報を載せている本、論文、新聞記事などをチェックしていると、意外なほどこの話が出てきます。
韓国でも経済的格差という言葉が広がり、借金による“投機熱風”に全国民が包まれていた2006年。韓国政府公認で「他人に配慮する生き方をしましょう」という趣旨の公共キャンペーンが展開されたり、物質主義に反発するような考えが人気を集めていました。
借金によるマンション投機が蔓延しているなか、理想と現実の間にかなりのギャップがありましたが、とにかくウケはよかったと記憶しています。「私は投機をするけれど、他の人たちは、物質主義に陥ってはならない」と考える人が多かった。意地悪な書き方をすれば、そういうことになります。
■「他の価値を犠牲にしているから問題だ」
2000年代から広まった「貧しいけれど清らかな生き方をした(に違いない)朝鮮時代の『ソンビ精神』を見習おう」という風潮も、こうしたキャンペーンの人気を支えていました。
この頃からメディアの記事も「精神」「配慮」「幸福」などをテーマにしたものが増えましたが、特に「主観的幸福感(Subjective well-being)」という論文で有名なイリノイ大学の心理学教授、エド・ディナーさんが、2010年8月17日の『東亜日報』とのインタビューで「韓国人は過度に物質中心的で、社会的関係の質が低い」、「物質主義的価値観自体が悪いわけではないが、社会的関係や個人の心理的安定など、他の価値を犠牲にしているから問題だ」と話したことが、個人的には印象的でした。短く、優しい論調ですが、的確だったからです。
■「お金は好きだが、お金持ちは嫌い」
『朝鮮日報』が2011年に連載したシリーズコラム「2011韓国人よ幸せになれ」の5回目(2011年1月7日)を見ると、韓国人のお金に対する歪みがわかります。
該当企画の諮問委員会に参加した海外の専門家たちは、韓国人を「お金が好きでありながら、お金持ちは嫌いだという、富に対して二重の態度を持っている」と分析した、とのことです。財閥は嫌いだけど財閥企業に入りたい、という認識に似ています。
アンケート調査の結果、韓国人は93%が「お金が幸せに必要だ」と思っていることが明らかになったにもかかわらず、その理屈に則れば“幸せになっているはず”であろうお金持ちに対しては、「親のおかげだ」、「なにか不正をやった結果だ」としか見ていないそうです。
これは、専門家たちには興味深い結果だったようで、先ほどのエド・ディナー教授も参加し、彼はこう話しました。
「韓国人は、社会構成員たちと自分を絶えずに比較し、勝つことが幸せになる道だと信じている」
「しかし、いつも勝者になることはできない。他人と物質的な面だけ比べ続けても、幸せを感じられなくなるだけだ」
■日本人は「家族と子供」、韓国人は「お金」
個人的によく引用するデータですが、ピュー・リサーチ・センターが各国で調査して2021年11月18日に公開した「人生に意味を与えてくれるのは何か(What makes life meaningful)」というレポートを見てみると(英語題で検索すると、ネットで普通に読めます)、いくつかの項目のうち、人生に意味を与えるものとして「お金」が1位になっている国は韓国だけでした。
日本およびほとんどの国は、「家族と子供」と答えています。特に面白い点は、複数回答が可能なのに、日本と韓国では「ひとつだけ」を選ぶ人が多く、ピュー・リサーチ・センターはこの点もピックアップしていました。見方にもよりますが、これは「これだけあればいい」とする認識が強いということでしょう。
日本では「家族と子供」、韓国では「お金」への思い入れが非常に強い。最近は人種差別的な側面から、「○○人は~」という話は、たとえジョークでも避けられる傾向がありますが、この点においては、各分野の学者たちが、なんの迷いもなく「韓国人は物質主義への執着が強すぎる」と口を揃えます。
■韓国は「世界でもっとも憂鬱な国」
まずこの韓国に蔓延する物質主義について、韓国内のいくつかの資料を取り上げておきたいと思います。あまり古いもの、日本の韓国関連情報(ブログや書籍など)で何度も取り上げられたものは、極力避けます。
韓国内でも「韓国人は物質主義が強い」という傾向が問題意識として定着している(でも改善はされないでいる)話として、比較的最近のものを2つ紹介します。どちらも、ちょうど本書の原稿を書いている間に見つけたものです。
まず、これは韓国以外の国でも話題になった見解ですが、インフルエンサーで有名作家でもある米国のマーク・マンソン氏が、韓国を「世界でもっとも憂鬱な国」とし、動画をアップロードしました。韓国では2024年1月28日『文化日報』などが報じています。
韓国社会は資本主義のポジティブな側面である「自分らしさの表現」などはあまり発現できておらず、お金稼ぎというネガティブな側面だけが強く現れていて、物質への執着が強すぎるといった主張です。
![韓国国旗](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/6/1200wm/img_a6e29327aeb3192418e613e89aa39fca1227750.jpg)
■「解決」「改革」を実現するのは難しい
ちなみにマーク・マンソン氏は韓国の儒教思想についても、「儒教のいいところである家族や社会のコミュニティの親密さは受け入れず、儒教的基準を強調しながらも個人的成功にこだわりすぎだ」とも話しましたが、本書の内容とも部分的にオーバーラップする主張であり、個人的に大いに同意します。ただ、細かい意見の相違もあります。
マーク・マンソン氏は「韓国人はこれらの問題を解決しようとするスーパーパワーを持っている」としました。しかし私は、韓国の人々は口では「解決」「改革」を主張するものの、実際は「その問題を作った人たち」と同じやり方を選ぶと考えています。
不動産投資のせいで次の世代の「社会間の階層移動」(簡単に言えば出世、資金蓄積など)が不可能になったとの問題を強く指摘しながら、自分たちはまた不動産投資にすべてをかけていることも、矛盾の現れのひとつです。
■結局は「お金」の韓国人にドン引き
紹介するもうひとつの記事は、韓国の北韓大学院大学(韓国では北朝鮮を北韓と言います)のキム・ソンギョン教授の体験談です。もともとは『ハンギョレ新聞』(2024年3月3日)に掲載された「南と北の物質主義」という記事の一部で、「統一というものを必要以上に物質主義で見ていないか」とのリベラル・メディアならではの記事でした。
外国に移民したキム教授の友人(韓国人)が、久しぶりに韓国を訪れましたが、韓国は10年前よりずっと物質主義な考え方が強くなっていて、もう完全にドン引きしてしまったという内容です。
一部を引用すると「異国の地で故郷に思いを馳せていた友人だが、韓国の変わり様にびっくりしたという。なによりもまず、人々があまりにも変わってしまったというのだ。誰に会っても、どこに行っても、どんな話をしてみても、結局は『お金』が結論になってしまい、本当に胸が苦しいという。たしかに、多くの資本主義国家で似たような傾向があるものの、韓国ほど『お金』が絶対的な基準であり、目的である国家は、珍しいだろう……誰もが、お金に対する欲望と、それによる不安に苦しんでいる社会、それがいまの韓国の素顔なのだ」というものです。
■2000年代初めは“清貧”が流行していたのに…
これに対して少し個人的な意見を書いてみるとすれば、果たして10年前は異なっていたのでしょうか。あまり変わっていないと思います。
2000年代になった直後ならわかります。異なっているように思えたかもしれません。経済破綻による「IMF(国際通貨基金)管理期間」と資産価値暴落、そして2003年から始まった、クレジットカードの無分別な普及(子供でもクレカ発給が可能でした)と使い過ぎによる個人破産の急増、いわゆる「カード大乱」などが起こった時期。
先ほども、当時“清貧”、すなわち清らかな貧しさを求める「ソンビ精神」が流行したと述べましたが、ちょうどその期間、一時的に物質というものに“呆れる”人たちが増えました。ですから、当時の韓国社会の物質主義が、いまより弱かったと思えるのかもしれません。
■10年前から韓国は物質主義の国だった
しかし、当時“清貧”を求めていた人たちは、再び家計債務によるマンション投資に命をかけるようになり、それが2000年代の韓国の経済発展を導いた「借金経済」の核心にもなりました。
10年前に移民されたなら2014年あたりですが、まさにそうした社会的雰囲気の真っ最中でした。記事の「友人」という方がどういう経緯で外国に出たのか、どういう価値観をお持ちの方なのかはわかりませんが、あくまで私の持論として、10年前にいまより韓国社会の物質主義が弱かったとは、ちょっと思えません。
ちなみに、このキム教授の見解のメインテーマは、韓国と北朝鮮の物質主義を比較したもので、韓国も北朝鮮も物質主義は強いけれど、そこには似ている点も似ていない点もある、というものです。
■北朝鮮とは違う「お金がないと死ぬ」状態
北朝鮮の場合は「生き残る」ためにお金を確保しようとする側面が強く、どちらかというと物質(お金)を「幸せのために必要なもの(家族とともに生存するには必要なもの)」としながらも、「物質があるからといって成功できたわけではない(これで人生の価値が判断できるわけではない)」と考える側面が強い、としています。
一方、韓国の場合は、口では物質的に満たされていても幸せになるわけではないとしながらも、成功(経済的成功ではなく人生の価値という側面で)のためにはお金が必要だとする人が多いとのことで、個人的に興味深く読めました。
![シンシアリー『Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち』(扶桑社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/9/1200wm/img_39cf12840720210ca76896de4508f93b242650.jpg)
しかも、経済的には北朝鮮よりずっと発展しているはずの韓国が、それでも依然として「生存のための傾向」として物質を追求する傾向が見られるとのことで、これはつまり、韓国では仮に生存に必要な分の物質が足りていても、まるで「お金がないと死ぬ」といった考えに取り憑かれ、さらなる物質を欲しがる傾向があることを意味しています。
これは中国でも同じ傾向が見られ、儒教の影響を受けた国のなかでは、日本だけがどちらかというと欧米先進国に近い(物質主義的な考えがあるとしても、余裕のない「生存的」傾向は示されない)と言われています。先ほどのマーク・マンソン氏が指摘した「資本主義の悪い側面だけ強く現れている」というのも、同じ話です。
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著作家
1970年代、韓国生まれ、韓国育ち。歯科医院を休業し、2017年春より日本へ移住。アメリカの行政学者アレイン・アイルランドが1926年に発表した「The New Korea」に書かれた、韓国が声高に叫ぶ「人類史上最悪の植民地支配」とはおよそかけ離れた日韓併合の真実を世に知らしめるために始めた、韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。著書に『韓国人による恥韓論』、『なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか』、『人を楽にしてくれる国・日本』(以上、扶桑社新書)、『朴槿恵と亡国の民』、『今、韓国で起こっていること』(以上、扶桑社)など。
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(著作家 シンシアリー)
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