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なぜ仕事をしなければいけないのにスマホをいじってしまうのか…良習慣は続かず悪習慣が続く根本原因

プレジデントオンライン / 2024年6月3日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

仕事をしなければいけないのにスマホを触ってしまう、毎朝早起きしようと思うのに寝坊してしまう、そんな悪い習慣を変えられないのはなぜか。認知科学コーチングを実践する名郷根修さんは「習慣化は脳の問題だ。脳の“GPS機能”を活用することで新しい習慣をライフスタイルに組み込むことができる」という――。

※本稿は、名郷根修『習慣は3週間だけ続けなさい』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■習慣化ができないのは脳の問題

「今年こそ健康的な生活を送る」
「来月から朝型に生活リズムを切り替える」
「来週から英語をもっと勉強する」

年明けや月初め、週初めに新しい習慣を始めようと目標を立てる人も多いはずです。どうにかして今の生活を変えたい。夢や目標を達成したい。ただ、多くの人は継続できず、挫折してしまっているのではないでしょうか。

そのたびに、自分がなぜ習慣化に失敗するのか原因を考えたはずです。根気がない、努力できない、体力がない……。「自分は新しいことを始めるのに向いていないかも」といつのまにか諦める人もいるかもしれませんが、本書を手に取っていただいたあなたは諦めきれず、習慣化のスキルを何とか手に入れたいはずです。

安心してください。あなたが習慣化を身につけられなかったのは、根気がないわけでも努力ができないわけでも体力がないわけでもありません。

あなたが新しい習慣をライフスタイルに組み込めないのは、脳の問題なのです。脳の「GPS機能」をうまく活用できていなかったのです。

■脳の「GPS機能」に目的地をしっかり入力できていない

脳の「GPS機能」と聞いてもピンとこないかもしれませんが、GPS機能はあなたも日頃から使っているでしょう。GPSはグローバル・ポジショニング・システムの略で、人工衛星(GPS衛星)の電波を受信して現在位置を特定する仕組みです。自動車のカーナビゲーションシステムやスマートフォン(スマホ)の地図アプリ、「ポケモン GO」などのゲームでも使われています。

方向音痴でもスマホの地図アプリに目的地を入れれば、自分の位置情報と目的地への道順を示してくれるのはGPS機能のおかげです。GPS機能を十分に使うには目的地は明確な方が便利です。

たとえば、渋谷のレストランで友達と待ち合わせをしたものの場所がわからないときに、店名や住所を入力すれば目的地まで最短の道のりを示して導いてくれます。「渋谷駅」と入力するだけではレストランまでは案内してもらえません。

「そんなの当たり前では」と思われたかもしれませんが、多くの人は脳の「GPS」には目的地をしっかり入力していないのです。スマホのGPSも脳の「GPS機能」も同じです。

目標が明確でないと、到着地点の指示を受け取れず、どこに行けばいいかわかりません。習慣が続かないのです。

■「健康的な生活を送る」では不明瞭

習慣化するには習慣の目的地を明確にすることが重要なのです。ですから、たとえば「健康的な生活を送る」「朝型に切り替える」では不明瞭なのです。具体的に何をすればいいのか脳は判断できません。

渋谷のレストランに行きたいのに「渋谷駅」と入力しているような状態です。「健康的な生活を送る」でしたら「今月はお風呂に入る前に毎日10回腕立て伏せをする」、「朝型に切り替える」ならば「これから3週間、平日は朝6時に起きる」のように測定可能な目標にすることで脳の「GPS機能」は発動します。

多くの人が習慣化できない語学も、脳の「GPS機能」がうまく働くように目的地を設定すればいいのです。「英語を毎日30分勉強する」ではなく「毎日30分勉強して、来年までにTOEICを今より200点高いスコアにする」と具体的な目標を掲げることで「GPS機能」は働きます。

目標をより明確にすれば、その目標に向けて脳は指示を出します。これまでのあなたがダメなわけではなく、目標の立て方が脳の原理にマッチしていなかっただけなのです。

人が意識的に行動するときには脳の「GPS機能」が必ず発動しています。運動や勉強、ダイエットを始めて、うまく習慣化できている人は本人が意識しているかはともかく、脳の「GPS機能」をうまく働かせています。

■脳のGPS機能を働かせないと欲望に流される

では、逆に「GPS機能」を働かせないと私たちはどうなるのでしょうか。欲望にひたすら流されてしまいます。仕事をしなければいけないのにスマホをいじってしまう、食べ過ぎとわかっているのにデザートをコンビニで買ってしまう、寒くて面倒くさいから毎朝の散歩に行かない……。

誰にでもそうした経験はあるはずです。脳が快楽を感じるかどうかが行為のトリガーになっています。脳が気持ちよく感じるか、不快に感じるかが、行為を継続できるか、挫折してしまうかを分けるといっても言い過ぎではありません。

トレーニングジムで腕立て伏せをしているアジアの女性
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

この認知科学の仕組みをうまく使うことで習慣化に近づきます。その仕組みこそが「GPS機能」なのです。

「GPS機能」をうまく活用できるようになれば、最初は気が進まなかった習慣化への取り組みもモチベーションを高く維持しながら続けることが可能になります。いつのまにか取り組みそのものが楽しくなり、目標に向かっての行為が不快でなくなります。

最終的には「習慣化のためにやらなくては」と意識することなく、日常生活に組み込めるようになります。今の時代はあらゆるところに誘惑が転がっています。習慣化が挫折しかねない原因はいくらでもあるわけです。

あなたも、幾度となく誘惑に負けてしまったはずです。そうした環境下で欲望に支配されずに自分を律するにはこれまでとやり方を変えるしかありません。そして、それは脳の「GPS機能」を使うことで軽々と実現できてしまうのです。

■脳のGPS機能とは「ラス」という部位の働き

「脳の『GPS機能』はなんかわかるような気もするけど本当かな……」

ここまで読んでおそらく半信半疑に思うでしょうが、脳の「GPS機能」は科学的知見に基づいています。脳の「GPS機能」はたとえで、正式にはラス(RAS:Reticular Activating System:網様体賦活系)という部位の働きのひとつです。

脳の医学的概念
写真=iStock.com/mi-viri
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mi-viri

ラスは1949年にピサ大学のH・W・マグンとジュゼッペ・モルッチという科学者によって発見されました。脳内で眠りと目覚めを調整する神経を調べていたところ、ラスを見つけたのです。その後も科学者たちが研究を進めた結果、ラスは脳に入るほとんど全ての情報を中継していることが明らかになりました。

脳はラスから送られてきた情報をもとにいろいろ考えたり、感じたりし、どのような行動をとるべきか体に指示を送ります。人が見るもの、聞くもの、触るもの、感じるものは、全て体の感覚神経を通ってラスに送られます。

■情報の取捨選択を担っているのがラス

脳内でどのような思考や感情が生み出されるか、行動意欲が起こるかどうかは、ラス次第だといえます。ラスは「情報の仕分け場」です。どの情報が必要でどの情報がいらないか、必要な情報にどのくらい注意を向ければいいかまで判断します。

この機能は非常に重要です。脳には大量の情報が流れ込んでいます。一説によりますと、人は毎秒4億ビット(1ビットはコンピュータが扱うデータの最小単位)もの情報を処理しています。

もちろん、あなたがそれを意識することはありません。そんな大量の情報を意識的に処理しようとすれば脳は混乱します。この情報の取捨を担っているのがラスなのです。入ってくる情報をふるい分けて、何に注意を向けさせるか、どれくらい関心を呼び起こすか、どの情報をシャットアウトして脳に届かないようにするかを判断します。

■目標を明確にしないとラスの精度が下がる

重要なのは、ラスがどのようにして情報を仕分けるかです。この情報の仕分けこそが「GPS機能」になります。ラスは入ってくる情報を選り分け、注意を引くべき順に優先順位をつけます。外部からの情報を仕分けして、自分の考えにぴったり合う情報や、自分が普段から親しんでいる物事の情報を拾い上げます。そして、拾った情報に自分の意識を引きつけます。

名郷根修『習慣は3週間だけ続けなさい』(SBクリエイティブ)
名郷根修『習慣は3週間だけ続けなさい』(SBクリエイティブ)

その仕分けの精度を高めるには目標を明確にしなければいけません。目標をはっきりさせることで重要な情報に焦点を当てられます。スマホのGPSに対して自分がどこへ行きたいかをはっきりさせれば、どうやって行くかがわからなくても、あとは導いてくれるのと同じです。

目標さえ決めればラスがそこへたどり着くための情報を集め始めます。他の情報に惑わされそうになっても、すぐに行くべき道を示してくれます。専門家の中には戦争で使う攻撃用ミサイルにラスをたとえる人もいます。ミサイルは目標の座標を入力して発射ボタンを押せば、何もしなくても勝手にそこまで飛んでいきます。

いくら邪魔されようが目的地を目指します。ラスも目的地にたどり着くまで周囲にどんな情報があっても、重要な情報だけを拾い続けます。

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名郷根 修(なごうね・しゅう)
ハイパフォーマンス代表取締役
1978年岩手県生まれ。Rotterdam School of Management, Erasmus University 経営学修士(MBA)。米国戦略コンサルティングファーム、グローバル医療機器メーカー・フィリップスで勤務後、現在はグループ合計年商180億円の医療分野の会社・南部医理科とフィンガルリンクの経営に携わり、世界最先端の医療技術や製品の普及に努めている。「伝説の戦略コーチ」として知られ、Strategic Coach社を創設したダン・サリヴァン氏に師事し、同社が提供している「10x Ambition Program」を卒業した唯一の日本人。

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(ハイパフォーマンス代表取締役 名郷根 修)

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