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「それに比べて私ったら…」哲学者が教える劣等感を成長の原動力にするためのたった一つの心の習慣

プレジデントオンライン / 2024年5月21日 10時15分

出所=『哲学を知ったら生きやすくなった』

劣等感から解放されるにはどうすればいいのだろうか。哲学者の小川仁志さんは「劣等感には“悪い劣等感”と“良い劣等感”がある。劣等感を他者との競争に向けず、自分の理想に近づけるために生かそう」という――。

※本稿は、さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■「私みたいに仕事やめたいの?」

マンガ2ページ目
出所=『哲学を知ったら生きやすくなった』

■もうひとりの自分が私に言い続ける…

マンガ3ページ目
出所=『哲学を知ったら生きやすくなった』
マンガ4ページ目
出所=『哲学を知ったら生きやすくなった』

■“悪い劣等感”と“良い劣等感”

【編集部】他人と自分を比べて劣等感に苦しむこと、ありますよね。

【小川】私たちが劣等感を抱くのは、人間には自分がよりよくありたいと思う「優越性の追求」の欲求があるからです。けれど、劣等感は誰しも抱くものであり、むしろ成長の原動力になると肯定的に捉えたのが、心理学者のアドラーです。もともと内科医だった彼は、自分の体の弱さをバネに舞台で活躍するサーカス芸人たちを診察するなかで、劣等感こそが人を成長させるカギだと気づいた。分かりやすく言えば、他者との比較で生まれる“悪い劣等感”と、自分の理想と今の自分を比較し、成長のバネとなる“良い劣等感”があると考えたのです。

【編集部】他人でなく理想の自分と比べれば、“良い劣等感”になるんですか?

【小川】そうです。私たちはつい他者と比べ、どう思われているかを気にしてしまう。でも、自分の評価を他者の承認に委ねていては、満たされず苦しむだけです。重要なのは、人ではなく自分がどうありたいか。自分の理想を目指して努力すれば、おのずと他者は認めるようになるはずです。

さらに言えば、自分の課題は自分にしか意味がなく、自分にしか解決できません。同時にリンの言うように、他人の心配や不安はその人の課題であって、自分が克服すべき課題ではない。アドラーはそれを「課題の分離」と呼び、割り切ることで前に進めると説いたのです。

■単なるねたみに終わらせない…

【編集部】今回、ミルとヤスミはまず「劣等感の原因」を考えて自分の理想を具体化しています。

【小川】いい考え方ですね。ただ他者をまねしたいだけなのか、自分の理想と現実とのギャップから来る劣等感なのかを見極めることで、課題が見えてきます。たとえ劣等感を抱いてもその段階で終わらせず、理想の自分と比較する段階まで高めれば、単なるねたみでは終わらないと思います。

【編集部】同時に2人は、「自分は他人と違うから」と言い訳していることにも気づきました。

【小川】いわば他者と比較する“悪い劣等感”をもとに言い訳をして、思考をストップしている状況ですね。そうすれば、勇気を出して自分と向き合ったり、理想と闘ったりする必要がなくなりますから。それはラクですが逃げとも言える。そんなときこそ、自分を制限する周りの環境や条件を外して考え、理想を突き詰めるといいでしょう。

■人生はこうして変えられる

【編集部】課題の分離ができても、理想に向かって一歩踏み出すのは簡単ではありませんよね。

【小川】アドラーいわく、課題を克服するのに必要なのは「勇気」です。そして勇気を得る方法は「自分の世界の見方(=意味づけ)を変えること」だと言います。

世界とは私たちが生きる環境のことで、それぞれの経験や選択の結果からできています。つまり、人によって世界の意味づけは異なるわけです。逆に言えば、「人間は自分自身で人生を意味づけ変えていくことができる」――この考え方こそが、アドラー哲学の根幹なのです。さらにアドラーは、他者から勇気をもらうこともできると言います。ここで大事なのは、人の役に立ち感謝されたことに目を向けること。それをもとに自分を肯定し、自信と勇気に変えていくのです。

■勇気を持って失敗してほしい

【編集部】過去の失敗やトラウマが大きいと、劣等感から抜け出すのは難しそうです。

さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)
さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)

【小川】トラウマはできなかったことに目を向けること。でも、過去の事実や失敗は変わりませんが、その意味は自ら変えられる。失敗をトラウマと捉えるか、「あのおかげで今の自分がある」と捉えるかでは全く違う。ちなみに、私が自信満々に見えるのは人生で失敗ばかりしているからです(笑)。困難に挑戦して初めて成功体験が得られ、成長にもつながります。

逆に言えば自信がない人に限って失敗を恐れて挑戦しない。若者や自信のない人ほど、勇気を持って失敗してほしいと思います。

【編集部】今、自己肯定感が低い人が多いといいます。

【小川】そうなんです。私はよく講演を頼まれるのですが、小学校では子どもたちの自己肯定感が低いからそれをテーマにしてほしいといわれます。また企業でも社員の自己肯定感が低いからそれをテーマにといわれるのです。どうやら今、子どもから大人までみんなが自己肯定感の低さに悩んでいるように見えます。これは失敗に厳しい社会の裏返しともいえるでしょう。ぜひその風潮を変えていく必要がありますね。日本の経済成長の低迷も、このことと無関係ではないような気がします。

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さわぐち けいすけ(さわぐち・けいすけ)
漫画家
2017年から漫画家として活動。社会に生きる人々の心境を描く書籍制作の依頼を手掛け、SNSの中ではPR漫画やオリジナル漫画などを制作し投稿。Xフォロワー19万人。主な著書に『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)、『偶発的ルネッサンス少女』(朝日新聞出版)、『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)、『だからお前はダメなんだ』(大和書房)、『僕たちはもう帰りたい』(ライツ社)など。

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小川 仁志(おがわ・ひとし)
山口大学国際総合科学部教授
京都府生まれ。京都大学法学部卒業。名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。伊藤忠商事勤務、フリーターの経歴を持つ。市民のための「哲学カフェ」を主宰。

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(漫画家 さわぐち けいすけ、山口大学国際総合科学部教授 小川 仁志)

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