「行けないや、ごめん」と返信しちゃダメ…旧友やSNS友からの誘いにイマイチ乗り気になれない時の正しい返信
プレジデントオンライン / 2024年5月21日 16時15分
■「報告、連絡、相談」VS「議論、時には炎上」
あの人、いい人だよね――この言葉、コンサル界隈では「仕事ができない、褒めるところがないから性格を褒めておく」ときの言葉だと知ったとき、「これが、プロフェッショナル、コンサルの世界!」と噛み締めたのを覚えています。違う言い方をすれば、「何かしらの付加価値を出してくれないなら、貴方の存在意義はない」。こう表現すると、プロフェッショナルの世界そのものです。
かつては、これは性格の悪い「コンサルの世界」の話でした。しかし、今は世の中全体が相手と距離をとる時代です。仕事終わりに容易に飲み会に誘えないし、若い部下を叱咤激励なんてできません。何より、SNSで気の合うコミュニティや存在意義を示せる安住の地を持ちやすくなりました。こうした背景もあり、職場においては昔のように「いい人」だけでは相手にされない時代になってしまったのです。
まさに殺伐としたコンサルの世界のような感じに、世の中が少し近づいているのです。だからこそ、昔ながらの「いい人」を捨てないと、ビジネスも人生も健やかに過ごせない時代になっているのです。
では、どうすれば「いい人」をやめることができるか。たとえば職場での習慣から変えていくことが「脱・いい人」の第一歩です。
皆さん、職場でつい相手に配慮して怒らせないようにと、「報告、連絡、相談」だけで仕事していませんか。新人でもあるまいし、「報連相」なんて嫌いましょう。
ビジネスは学校の試験のように「答えのあるゲーム」ではありません。絶対的な正解がないビジネスの世界で物事を判断し、後悔の少ない選択をする方法は、3つしかありません。仕事のプロセスを非の打ちどころがないものにする、2つ以上の選択肢から相対的に良いものを選ぶ。そして、議論を前提にする。
答えのないビジネスの世界では、意見が食い違うのは当たり前です。議論、そして、時には炎上するような喧々囂々のやりとりを日常のものとして受け入れましょう。議論の中で相手の意思決定に役立つ示唆を与えてこそ、職場での尊敬が得られるのです。
■「文句を言わず黙々と仕事」VS「出世のために社内政治」
そろそろ気づいてもいいし、大っぴらに言ってもいい時代が来ていると思う。特に、大きな企業、社員がいっぱいいる企業に勤めている皆さん。皆さんも気づいているはずです。「自然とは偉くならない」ことに。
いい人ブって文句を言わず、目の前の仕事に黙々と取り組んでも、偉くはなりません。昇進しても、せいぜい課長代理どまりでしょう。課長代理とは、いわば会社最適の人材。社内のことには詳しいから、会社としてはいると助かる。ただし、人材としての市場価値は低くてもできる役職でもあります。
課長代理より上の世界――課長、部長、役員、そして組織の「プレジデント」として活躍したい人は、そんなことでは困ります。だから、黙って与えられた仕事をやり続ける、いい人なんてやめる。「自然とは偉くならない」と認識して、「いかに偉くなるか?」を真剣に考えてみましょう。
具体的にどう行動するか? まずは現実を直視すること。同じ役職についた同期は一緒だと思っていても、実は裏側の評価シートやボーナス査定では大きな差がついているなんてことは当たり前です。普通はそこまで同僚に話したりしませんが、歯を食いしばって同世代のエースに評価の内情を教えてもらいましょう。このままではまずいと危機感を持つことが重要です。
出世に伴う現実を直視できたら、次は昇進の仕組みを理解して行動していきましょう。偉くなる人はどういうルートを辿っているか、会社はどんな仕事に高い評価を与えているのか――丁寧に情報収集をしていきます。
情報が集まれば、昇進するための戦略も見えてきます。たとえば、「今の部長は最近就任したばかりだから、この部署に居続けても出世するには分が悪い。あっちの部署に異動したほうがいいかも」といった具合です。
戦略が決まったら、異動を叶えるために行動する。商人魂を燃やして、異動したい部署の人や上司にアプローチをする。社内政治も含めた、ある意味「悪巧み」をしてほしい。
悪巧みをしても出世したいかを考えてみてください。そうすれば、自分の大切にしていることが見えてきます。出世を目指すとは、キャリアをつくっていく答えのないゲームでもあるからこそ、「いい人を続ける」路線と、「いい人をやめる」という2つの選択肢から方針を選ぶことが重要です。
あくまで「無駄に」「周りに流されて」いい人になるなと言っているだけで、生まれつき「いい人」は、そのまま「いい人」でも構いません。
■「首尾一貫」VS「朝令暮改」
議論、炎上を避ける人には特徴的な行動パターンがありますよね。「さっきこう指示してしまったから、変えられない」。無駄にいい人ブっている彼らの名は、首尾一貫性マン。
はっきり言いましょう。まったく無駄な行動だと。絶えず変化している世の中では、ある時点で真摯に考えた答えが時間とともに役に立たなくなるのは当たり前。一度決めた事柄を変えられない首尾一貫性マンは、答えのないビジネスの世界で思考放棄しているだけです。
だからこそ、世の中では悪い意味で使われがちですが、こうなるべきです。朝令暮改マンに。
インプットが変われば、仕事を進める仮説が180度変わっても決しておかしくありません。過去の判断が間違っていたと認めるのを恐れず、朝令暮改を当たり前にしていきましょう。
■「行けない」VS「行かない」
高校の友達、いや、友達でもないただの旧友、連絡先は知らない、SNSでつながっているだけ、程度の仲間からこういうお誘いがあったとしましょう。
「今度、同窓会までいかないけど、仲間で集まろうかと。来ない?」
そう言われたときに、直感で皆さんも思うはず。
「うわ、面倒くさ。いや、嫌いなわけでもないよ、でもさ……」
そんなとき、こう返信していませんか。「その日、行けないや、ごめんね」。
これが最悪です。まさに「いい人」症候群。同窓会に行ったところで、そのつながりに何の意味もないと思っているから面倒だと感じているのでしょう。行く意味があるなら、二つ返事で「行く!」となっているはずです。
だから、これからは「行けない」ではなく「行かない」と返事をしていきましょう。
愛は無限にあると考えがちですが、そんなことはない。誰かに与えられる愛の量は限られています。愛の量を100だと考えてください。たいして会いたくもない昔の知り合いに最低単位の1を配ってしまったら……愛はあと99しか残りません。限られた愛を注ぐのは、自分が本当に大切に思う人たちだけでいい。行く気の起きない誘いには「行かない」と自ら愛をセーブし、温存した「1」を思いっきり、仲がいい人に注ぎ込みましょう。
「この人の会には行かないけど、あの人の会には行く」という決意は、「行かない」という返事と矛盾が生じていないから、愛のエネルギーを増やします。また、もしこの決意を会いに来てくれる“あの人”が知ったら? 自分への愛をより強めてくれるでしょう。
人間同士のロイヤリティは、相手に何かを与えることでは育めません。大切なことは排他。ロイヤリティは排他からしか生まれません。「あえて誰かを愛の対象から外す」ことが、愛を強くするのです。
■「仕事が最優先」VS「プライベートが最優先」
どんな仕事も最優先。プライベートを犠牲にしてでも働きます。
いや、ちょっと待ってほしい。
ビジネスは付加価値を発揮してお金をいただく手段にすぎません。時には歯を食いしばって仕事をする必要もあるけど、人生のために仕事をしているのであって、逆じゃない。ビジネスは、あくまで人生の下位互換なんです。
たとえばビジネスで失敗したり、仕事で怒られたからといって、不機嫌になって家族での食事が静かになるなんて、ありえない。
逆に、失恋を引きずってプレゼン失敗しちゃいました……なら? あるある! それが人生ってものです。
■「SNSの友達数を増やす」VS「毎年1回、友達解除」
僕は年に一度、フェイスブックの友達リストを眺めてちょっとでも「うーん」と思う人がいたら、友達を解除しています。
この習慣、マジでお勧めです。
誰かに与えられる愛の量は限られているし、ロイヤリティは排他からしか生まれません。両方の意味で、友達は絞っておいたほうがいい。
やってみたらわかります。何となくつながっていることの多さ。その何となくのつながりを切るかを考えたときに、「この人は偉い人だから、つながっておくか」といった、打算の入り交じった、感情の灰汁と向き合うことになる。これが、自分で自分の人生を決めているのを感じられて、最高なんです。
■「頼まれたら、断らない」VS「基準に合わなければ断る」
いわゆる「いい人」って、何かを頼まれると、助けの手を差し伸べてしまいがちですよね。マクロな引いた目で見れば最高の心掛けですし、人類そうあるべきだと思います。
しかしながらミクロな視点、プライベートやビジネスにおいては、頼みごとを断らないのがベストじゃないケースもありますよね。
「二つ返事で仕事を引き受けたら、終わらず、土日徹夜することになり、せっかく楽しみにしていた子供の運動会に行けない」。そんな負のスパイラルが始まる。わかってはいるのだけど、ついそんな状況に陥ってしまいます。
なぜ自分が損をする状況に、自分を追い込んでしまうのか。理由はシンプルです。その状況に直面する、今回で言えば頼みごとをされたときに、初めて自分の行動について考え始めるから。自分にお願いをしてくる輩に、いい人と見られたい、困っていてかわいそうなどの感情が湧いてきて、判断が鈍るのです。
日々の行動はこう変えてしまいましょう。「先に判断基準をつくる」。
「この人に頼まれたら、受ける。この人以外の頼みなら、受けない」や、「土日に予定がない場合だけは、2回に1回は受ける」といったように、自分の中で判断基準を先に立てて、基準に合わせて行動すればいいのです。
頼みごとをされたときにいい人になるか、ならないか。精神論にせず、ルール化してしまうのがいいでしょう。
人生の話でいえば、婚活も一緒。事前に判断基準を持っていないのが、結婚したいと言いながら結婚できない人の典型的なパターン。合コンなどで異性に会ってから判断をする。目の前の人を比較して判断基準をつくっていくから、様々な条件に振り回される。結果、高望みになってうまくいかない。
最初から自分の婚活市場の価値を見極め、「相手がこういう基準を満たしていたら、積極的に行動する。そうじゃない場合は断る」と事前に決めておけば、まずうまくいく。いつまでも「白馬の王子様」を待たずに済みます。
ちなみに、頼みごとを引き受けるかの返事を保留したり、いったん持ち帰ったりするのは最悪です。
クライアントから、一見役に立つかわからない事例を調査してほしいと依頼されたとしましょう。もしあなたが依頼を宿題として持ち帰ったとしたら、「筋が悪いのでやりませんでした」というのは許されません。そして、「調査しましたが、意思決定の材料には役立ちそうなネタはありませんでした」というのもご法度です。仕事は自分を売り込む場なのに、これではそっぽを向かれてしまいます。
イエスマンでよかったのは遠い昔。今は甘えられません。この宿題には意味があるのか、どうすれば意味がある仕事にできるのか。その場で考えて、その場で議論し、仕事に意味が出せないなら断れる。現代は、そんなリジェクトマンこそ重宝される時代です。
■「相手に予算を聞く」VS「先に見積もりを出す」
たとえば、僕が講演を頼まれたとします。そのとき、「謝礼はいくらですか?」と聞いてから行動してしまうのはアウト! 一度相手に聞いてしまえば、やっぱり「いい人」に思われたいし、お金にがめついとも思われたくないから、思ったより安い金額でも受けてしまうことになります。
でも先に、「1講演、○円です。それで予算がOKならやらせてください」と言ってしまえば、自分の判断基準で仕事を決められます。
もちろん、怖いです。「じゃあ、いいです」と言われて、仕事をもらえなくなるのは。でも、相手の頼みを断るのは排他。自分の基準で断れば、次に決めた金額を払ってくれる人が現れたとき120%で仕事と向き合えます。
人生を健やかにするためにも、いい人ブらないのはホントに大事なんです。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。
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経営コンサルタント
KANATA代表取締役、「考えるエンジン講座」代表。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て、論点思考を伝授する「考えるエンジン講座」にて自ら講師として授業を提供。本講座は個人・法人合わせて年間1000人が受講。コンサル思考・心得を配信するYouTube「考えるエンジンちゃんねる」を運営(登録者数3万人)。著書に『コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト』など6冊があり、累計30万部超のベストセラー作家でもある。
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(経営コンサルタント 高松 智史 撮影=宇佐美雅浩)
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