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ダイエットで「鶏ムネ肉」ばかり食べる人の末路…管理栄養士が警鐘を鳴らす「肉の栄養素」の真実

プレジデントオンライン / 2024年5月31日 10時15分

「たんぱく質の取りすぎ」に注意(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/koumaru

ダイエットのために脂質の少ない鶏ムネ肉ばかり食べる人がいる。管理栄養士の塩野﨑淳子さんは「偏った食事は健康に悪い。たしかにムネ肉はヘルシーだが、その分、肉で摂取できる栄養が乏しいことも知ってほしい」という――。

※本稿は、塩野﨑淳子『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

■「たんぱく質の取りすぎ」に注意

肉や魚の主成分であるたんぱく質。たんぱく質は体を構成する細胞の材料になることはよくご存じだと思いますが、生理機能を調節する「ホルモン」や「酵素」などの材料にもなります。

たんぱく質が不足すると、筋力の低下や肌荒れ、傷が治りにくい、感染症に対する抵抗力が低下することもあります。高齢になればなるほど、たんぱく質の摂取が重要になります。

今はたんぱく質の重要性が広まり、意識してとっている方も多くなっています。ただし、肉や魚には脂質(脂肪)も多く含まれます。たんぱく質が大切だからととりすぎれば、脂質のとりすぎにもなります。

■脂質は欠かすことができない

とはいえ、脂質自体は体にとって大事な栄養素です。健康に悪いイメージが先行して、なにかと悪者扱いされがちですが、脂質摂取は欠かすことができません。

細胞膜を構成する「リン脂質」という生体内分子になるので、脂質が不足すると皮膚の潤いを保つことが難しくなり、皮膚がカサカサに乾燥します。

また、ビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンの吸収を助けます。

脂質は消化によって、さまざまな種類の脂肪酸に分解されますが、脂肪酸はエネルギー源にもなります。一時的に飢餓状態に陥っても、体内に体脂肪の貯えがあれば、それを分解して利用することができるのです。

■肉や魚からビタミンやミネラルを摂取している

そして、肉や魚にはビタミンやミネラルも含まれています。

エスキモー(イヌイット)の人々が、主にアザラシやセイウチなどの海獣や魚介類を食べ、野菜をとらないのに生活習慣病にかかることが少ないのをご存じでしょうか。

脂質の摂取量も多いため、心筋梗塞や脳卒中などの循環器系の病気も多いのではと思われていましたが、調査の結果、そういった病気を発症する人が少ないことがわかりました。調理に血を使うこともあるそうで、肉や魚からビタミンやミネラルを摂取しているのですね。

ただし、極寒の地で十分なエネルギーを必要とするため、日本人がエスキモーと同じような食事をしても問題ないとは言い切れませんので、日本人には日本人に合った食文化を大切にしたいものですね。

■「ムネ肉やササミはヘルシー」は本当か

「鶏モモ肉は脂肪分が多いから、ムネ肉やササミの方がヘルシーなのでは?」と聞かれることがあります。

モモ肉の皮をカリッと焼くと、とてもおいしいですし、ムネ肉よりも肉質がしっとりしていますね。ムネ肉は加熱しすぎるとパサパサするので、しっとりと調理するのは難しい。

金額的に、ムネ肉は安くて家計に優しいですよね。筋トレをしている方は、「肉類は鶏ムネ肉しか食べません」などとおっしゃる方も少なくありません。なぜこんなに「鶏ムネ肉は健康に良い説」が広まってしまったのでしょうか。

白い背景にルッコラサラダとグリルチキンと野菜
写真=iStock.com/EasyBuy4u
「ムネ肉やササミはヘルシー」は本当か(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/EasyBuy4u

■鉄や亜鉛、銅の含有量が少ない

鶏ムネ肉とササミ肉、そして赤身肉の代表選手、牛ヒレ肉と豚ヒレ肉、ラム肉の栄養量を比較してみましょう。

肉各種の栄養素
出所=『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』

鶏ムネ肉とササミは他の肉類に比べて、エネルギー量や脂質が低いことがわかります。ムネ肉は皮をとれば、さらに脂質の量が少なくなりますね。

しかし、鉄や亜鉛、銅を見てみると、含有量が少ないのがわかります。

■ダイエットで肉類を控えると貧血に

これらの微量ミネラルは、普通に食べていても不足しがちな栄養素で、管理栄養士が病院給食などの献立を立てる際にも、鉄や亜鉛を充足するために食材の組み合わせには頭を悩まされるのです。

ダイエットをしている方も、安易に肉類を控えることで貧血に陥っている方がいらっしゃいます。

「エネルギー」や「脂質」の面だけを見れば、鶏ムネ肉は健康に良いという主張もわかりますが、「貧血予防」という側面から見れば、必ずしも「鶏ムネ肉はヘルシー」とは言い切れないのがわかります。

また、鶏肉は皮部分に脂質が多く含まれるので、鶏モモ肉の皮を取り除いて食べると、かなり脂質をカットすることができます。皮なしモモ肉とムネ肉を比較すると、モモ肉の方が亜鉛などのミネラルが豊富です。ムネ肉やササミばかりではなく、いろいろな肉のいろいろな部位を食べることが大切です。

■「貧血予防のためにレバーを食べる」の罠

「レバーは鉄分など栄養豊富で、食べた方がいいと聞くけれど、調理が難しいし、味もあまり好きではない……」という声を聞きます。

先ほど貧血の話題もありましたが、貧血を予防するためにも、無理してでも食べた方がいいのでしょうか。

たしかにレバーには鉄や亜鉛が豊富です。一方で脂肪も豊富ですので、毎日食べていると鉄は充足するかもしれませんが、脂質異常症になるかもしれません。「最近、鉄の多い食品を食べていないな」と感じたとき、たまに食べる程度でいいと思います。

また、あまり知られていませんが、レバーにはビタミンAが桁違いに多く含まれています。ビタミンA自体は重要な栄養ですが、脂に溶けるビタミンのため、どんどん体に蓄えられてしまうと健康被害が生じます(ビタミンA過剰症)。

したがって、ビタミンAには「許容上限量」という、毎日食べられる上限量の目安が設定されているのです。成人のビタミンA許容上限量は、2700μgRAE(レチノール活性当量/日)です。鶏レバーに含まれるビタミンAは、14000μgRAE/100g中です。

■「レバーの取り過ぎ」で「胎児奇形」も

焼き鳥ひと串が20g程度として、100gの5分の1量でレバー串に含まれるビタミンAは2800μgですね。野菜や果物にもビタミンAは含まれているので、焼き鳥ひと串程度であっても、毎日レバーをとるのはビタミンAの過剰になってしまいます。

とくに注意が必要なのは妊婦さんです。ビタミンAの過剰摂取による胎児奇形が報告されています。しかし、妊婦さんは貧血になりやすく、妊婦健診で貧血を指摘され「鉄分の多い食品を食べなければ」と焦ってしまう方もいらっしゃいます。

塩野﨑淳子『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(すばる舎)
塩野﨑淳子『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(すばる舎)

そんなとき、安易に「レバーを毎日食べよう」とすすめることのないよう、注意が必要です。

産婦人科で管理栄養士による栄養指導を受けている場合は注意喚起がなされますが、一般の方が断片的な知識で食事をすすめると、思いもよらない悪影響が出ることがありますので、お気をつけください。

このように、「(鉄や亜鉛が豊富で)栄養がある」と言われる食材も、一方で脂肪を多く含んでいて、食べすぎれば脂肪過多になるなど、一長一短なのです。100%良いところだけの食材はないのですね。

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塩野﨑 淳子(しおのざき・じゅんこ)
在宅栄養専門管理栄養士
1978年大阪府生まれ。2001年女子栄養大学栄養学部卒。宮城県仙台市在住。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションのケアマネジャーとして在宅療養者の支援を行う。現在は機能強化型認定栄養ケア・ステーション訪問栄養サポートセンター仙台(医療法人豊生会むらた日帰り外科手術クリニック内)で、在宅栄養専門管理栄養士として活動。一般社団法人日本在宅栄養管理学会理事。「高齢者の栄養管理」の最前線に立ち、日々簡単につくれて栄養をしっかりとれるレシピを提案。正しい栄養知識を広めるべく、積極的に発信している。著書に『70歳からは超シンプル調理で「栄養がとれる」食事に変える!』(若林秀隆監修・すばる舎)がある。

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(在宅栄養専門管理栄養士 塩野﨑 淳子)

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