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左目の中の光を見て話せば相手の悪意は"鎮火"する…「お前はバカ」と叫ぶ嫌なヤツを無力化する会話テンプレ

プレジデントオンライン / 2024年5月24日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■嫌われず、揉めずに一言で萎えさせるべし

どんな職場にも、あたりのきつい人はいます。嫌味や悪口を言ってきたり、マウンティングをしてきたり、パワハラやセクハラまがいの言動を浴びせてくる人たちです。あなたはそんな相手に「言い返してやりたい」と思いますか? あるいはもう、そんな気すら起こらなくなっているかもしれません。

こういう相手に、言われっぱなしでいるのはよくありません。そのときに感じるイライラやモヤモヤは、ストレスとして蓄積していきます。もっとよくないのは「言われる自分も悪いんだ」と思い込むことです。自責の念に駆られ、自分を追い詰めてしまう人もいます。そもそも、業務上の指摘なら、嫌味や悪口を含める必要はないのです。

相手とあなたのやり取りは、職場の同僚や後輩も見ています。あなたが「言い返さない人なんだ」と思われると、便乗する人が出てこないとも限りません。そこまでいかずとも、面倒ごとを押し付けられたり、何か問題が生じたときにスケープゴートにされてしまうかもしれません。

そうは言っても、なかなか言い返せないのは「その後のこと」を考えるからです。相手の怒りに火をつけて、攻撃がエスカレートする可能性もあります。上司や同僚とはこれからもずっと、職場で顔を合わせなければならないのです。

やっかいなことになるくらいなら、我慢するほうがましだ。自分が耐えさえすればいいのだから――。このように考えて堪えている人が、けっこう多いのではないでしょうか。でも、それではますます悪循環にはまってしまいます。

というのも、攻撃的な態度をとる人は、きつくあたっても言い返してこない相手、ひどいことを言われたと周囲に口外しない相手、落ち込んだ様子を見せる相手を狙ってそういうことをしてくるのです。あなたがよかれと思って耐えているとしたら、それは自らハラスメント悪魔たちのごちそうになる行為でしかありません。

本稿では、そうした相手に効果的に言い返す技術について、考えてみたいと思います。「言い返す」といっても、反撃に出て手痛いしっぺ返しを食らわせるのではありません。悪意に悪意で返したら、相手はさらに強い悪意で応戦してくるかもしれませんし、何よりあなたの清らかな心が汚れてしまいます。

私が提案したいのは、まず刺々しい言葉を無力化してしまうこと。合気道の達人が襲い掛かってきた敵をはらりとかわし、相手の力を利用してごろんと転がしてしまうイメージです。次に「こいつには何を言っても効かないんだ」と、攻撃する気力を萎えさせてしまうような一言を返して、相手の悪意に楔を打ちます。

嫌われたり、揉めることはありません。うまくやればこちらの味方につけることができますし、その人の悪意を浄化して更生させるきっかけをつくれるかもしれません。周囲からは「どうやってあのモンスターを手懐けたの⁉️」「あなたは誰に対してもフラットに対応する人だね」と一目置かれることになるでしょう。

■攻撃に返す言葉は「おっしゃる通り」

コミュニケーションスキルを説いた本などには、悪意に対して「こう言い返せばよい」という効果的なフレーズが幾つも紹介されています。ですが、それらをすべて暗記しておき、ここぞというときに思い出して繰り出すのは大変です。実際の場面では相手に言われ「うっ」と詰まった瞬間に、勝負は決してしまいます。

そこで、ここでは咄嗟に使えるとっておきのテクニックを紹介します。まずは「承認」を用いたレスポンスです。例えば「おまえはばかか!」と言われたら「はい、ばかです」「おっしゃる通り」と返します。

攻撃的な言葉を投げつけられると、つい「いいえ」「しかし」「ですが」等の否定的な言葉で防御したくなりますが、それを言った瞬間に加害者vs被害者の図式が成立します。相手の目的は、言葉であなたに害を与えることなので、相手の思うツボになってしまうのです。

ところが、攻撃的な言葉を投げたのにあなたがうろたえる素振りもなく「そうなんですよ」と応じた瞬間に、相手の思惑がはずれます。相手が怯んだところで、すかさず「どうしたらいいと思います?」と質問してください。さらに畳み掛けて「教えてください!」と教えを乞う姿勢を見せます。これに「ウッ」と詰まるのは相手のほうです。

「おまえはこんな簡単なこともできないなんて、ばかじゃないの?」
「はい。自分でもばかだと思います。どうしたらいいでしょうか。ご教示ください」
「そんなのは自分で考えろ!」
「はい。考えてはみたのですが、どうしてもわからないんです。どうか助けると思って教えてください」

これを何度も繰り返すのです。決して反抗的な態度を見せたり、不貞腐れた感じで言ってはいけません。悪びれず屈託なく、ポジティブなアドバイスがもらえるかもしれないワクワク感を発しながら聞いてください。「そんな演技はできないよ」という方も、ご心配なく。ちょっとしたコツがあるのです。

■背筋を伸ばし、笑顔で相手の左目の中を見る

まず「鎖骨の位置」を通常より10センチほど上げてください。こうすると自然と背筋が伸び、胸を張った姿勢になります。頭蓋と肋骨に声が響いて明るく通る声になります。心の中には不安と恐怖が渦巻いていても、それを相手に悟られないよう“声で演じる”ことを、私は「ポーカーボイス」と呼んでいます。

次に口の形ですが、上の歯がすべて見える逆三角形をキープしてください(MJ型※)。この口の形で話すと自然と目尻が下がり、笑顔をつくれます。笑顔は心に余裕があるときに出るものですが、逆もしかりで笑顔をつくることで心に余裕が生まれます。また、MJ型の口から発せられる声は自信と高いエネルギーがこもった、明るく高く通る声になります。

※MJ型:民間放送テレビ局の女性アナウンサー(Minpou-no-Joshiana)がバラエティ番組などで司会を行う際の口の形から命名された。

最後に視線です。人と話すのが苦手な人は、無意識に眉間や鼻に目をやっています。相手に顔を向けながら、視線の直撃を避けようとする本能がそうさせるのだと思います。かといって両目をガン見してしまうと、こんどは相手の敵対本能を刺激してしまいます。

視線を向ける先は「相手の左目の瞳の中にある光」です。瞳の中の光を見ようとすると少しのぞき込むような感じになりますから、相手は「見られている」ことを強く意識します。しかも、左目は感性を司る右脳と繋がっています。これは私の推論ですが、相手からすれば真意を探られているような気持ちになるのではないでしょうか。

悪意を向けられがちな人は、うつむき加減で伏し目がちに、言われても言い返さず、ダメージを受けていることを相手に見せてしまいます。

それが嬉しくてますますエスカレートしているので、こうした堂々とした態度を見せることで「いつもとは具合が違うんだぞ」と感じさせることができます。

簡単に縁切りできない嫌味な相手の悪意を無力化し、嫌われないよう言い返す

■適切に言い返し生贄がいらない職場に

さて、嫌味や悪口を向けたはずのあなたがダメージを負った様子を見せず、逆に「教えてください」と食らいついてきたらどうなるか。あくまで職場ですから、コミュニケーションを仕掛けた手前、相手としても何かアドバイスめいたことを言わないわけにはいかないでしょう。

それを受け取ったら「ありがとうございます。次からそうしてみます」と明るく返事をして、その場を離れてください。そういうことが何度か繰り返されていると、だんだんと相手の調子が狂ってきます。

アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーは「認知的不協和の解消」という理論を提唱しています。この理論によれば、人は自分の行動と認識の間にギャップが生まれると、それを埋めるために自分の認識を修正する傾向があるということです。

つまり、最初はあなたが嫌いで落ち込むさまを見てやろうと暴言を浴びせたのに、あなたは落ち込むどころかにこやかにそれを聞いて、自分にアドバイスを求めてくる。しかも、時々お礼まで言われてしまう。この違和感を埋めるために、相手は「俺があいつに言葉をかけているのは、あいつのことを気に入っているからだ」と認識を修正するのです。

他人にあたり散らす人がなぜそんな大人になってしまったかを推察するに、幾つかのパターンがあると思うのです。もっともありがちなのは、自分が若手のころに上司からそのような仕打ちを受けていた、というものです。「俺は上司からの厳しい仕打ちに耐えてきた。だから次は俺が部下のおまえにそうしてやる」という、なんとも情けない報復です。

本当は誰だって他人から好かれたいし、感謝されれば嬉しいと感じるはずです。でも、そんな言動をしていれば誰からも嫌われますし、感謝されません。上の立場になれるくらいですから、仕事はそれなりにできるのでしょう。でも、マネジメントは失格です。

あなただけが標的にされているなら、言いやすいあなたが「生贄」になっている可能性もありますが、そんな職場が健全であろうはずがありません。被害者であるあなたに問題があるとは言いませんが、あなたの振る舞い次第でその状況を変えることができるかもしれません。

私はかつて15年間、保険会社に勤めていました。そこで人にあたり散らす怖い課長がいて皆に煙たがられていたのですが、私が何を言われてもへこたれず「教えてください」と応じていたら、だんだんと仕事の奥義や裏情報を教えてくれるようになりました。

当初は同僚から「すごいね、あの人と対等に話せるのは司さんだけだよ」と言われたりしましたが、その課長はだんだんと鬼の形相が柔和になっていき、最後には「頑固なところはあるが話せばわかる人」という評価になっていました。

あなたが適切に言い返すことで、鬱屈した人の心が浄化され、働きやすい雰囲気が醸成されるかもしれません。これからは言われっぱなしではなく、言い返して好かれる自分を目指してみてはどうでしょう。

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司 拓也(つかさ・たくや)
コミュニケーショントレーナー、「ボイス・オブ・フロンティア」代表
声と話し方の学校「ボイス・オブ・フロンティア」代表。心理学をベースとした対人コミュニケーションの講演やセミナーを開催。著書に『嫌われずに「言い返す」技術』(フォレスト出版)ほか、話し方やビジネス書12冊18万部を執筆。

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(コミュニケーショントレーナー、「ボイス・オブ・フロンティア」代表 司 拓也 構成=渡辺一朗)

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