年100億稼ぎ37億納めた伝説のサラリーマン投資家「猪突猛進でワガママな人ほどお金を稼ぎ会社をでかくする」
プレジデントオンライン / 2024年5月23日 7時15分
清原達郎 Tatsuro Kiyohara 野村證券、ゴールドマン・サックス証券などを経て、98年、タワー投資顧問で「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年の高額納税者名簿で全国トップに。著書に『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)。
■天才的な経営者は人格的に問題がある?
スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス……。日本でいえばソフトバンクの孫正義など、イノベーションを生むトップ経営者というと、強烈な「個」を持つ人物が多いという印象はないだろうか。
なぜ大成功する経営者は「わがまま」なのか。今回、そんな疑問をぶつけたのは、「伝説のサラリーマン投資家」として知られる清原達郎氏だ。
清原氏は、投資顧問会社に勤める一介の会社員でありながら、2005年の長者番付(最後の高額納税者名簿)で全国1位に躍り出たことで知られている。昨年、自身が運営するファンドを閉鎖し、投資家として引退した清原氏は今年、著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)を出版。17万部を超えるベストセラーとなっている。
そんな清原氏に「ビジネスの成功と経営者の人格はどのように関係しているのか?」と聞くと、「イノベーションを起こすような天才経営者の話は私には理解できない」と謙遜しつつ、このように答えた。
「革新的なイノベーションを起こすということは、『一般常識とは異なるビジョンを描き、それを実現する強い意志を持って猪突猛進で突っ走る』ということ。だから、世の中では『個性的』と言われたり、時に『わがまま』に見えたりするのでしょう。何をもって『人格』と言うのかは解釈が分かれると思いますが、『他人の気持ちを慮る』ことが良い人格の構成要素なら、イノベーションを起こすような天才は人格的に問題があることが多い、とは言えるもしれません。
逆に、人格に問題がある人がイノベーションを起こせるというわけではもちろんありません。天才的な頭脳と強い意志が一致したとき、イノベーションが生み出されるのだと思います」
■成功のカギは「夢」次が実行に移す頭脳
こう語る清原氏は、実際に数多くの経営者と向かい合ってきた。そのなかで、「大成功する経営者」とそうでない経営者には、どのような違いが存在すると考えているのだろうか。「革新的なイノベーションを起こすのは創業社長であることがほとんどなので、創業社長に限って話す」と前置きしつつ、次のように答えた。
「大きく成功する創業社長には必ず大きな夢があり、それを実現するためにはどうすればいいのか、その手段と戦略を常に考えています。成功への一番のカギは、この『夢』です。『ビジョン』もしくは『意志』と言い換えてもいいかもしれません。
次に大事なのが、それを実行に移すための『頭脳』。この順番は逆ではありません。そこまで超優秀というわけではなくとも、夢実現のために努力と工夫を続け、成功する経営者は存在するからです。たとえ優秀な経営者でも、夢や強い意志がなければ大きな成功はありえません。夢がないと、ある程度成功した時点で『もうこれでいいや』と満足してしまうからです」
今は部下や周囲の話をよく聞き、対話しながらチームをマネジメントしていくリーダーが求められているように感じる。冒頭で挙げたようなトップ経営者はそんなタイプではなく、「ワンマン」の印象があるが、結局成功するのは「ワンマン」タイプなのだろうか。
![大成功する経営者(創業者)の共通点](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/8/1200wm/img_58a7989cb6f835e0f0587108d09e571c556466.jpg)
■創業社長は意見を求めるただのワンマンは要注意
「それについては大きな誤解があると私は考えています。『唯我独尊でわがまま』な創業経営者は周囲の声を聞かないと思われがちですが、実際はむしろその逆。さまざまな人の話を注意深く聞き、『どこかで役に立つかもしれない』と決して見落とさないようにしているものなんです」
清原氏のヘッジファンドで最初に投資したのは、大手家具メーカーのニトリだった。同社の似鳥昭雄社長といえば、ワンマン創業社長の典型と感じる人もいるだろう。実際、清原氏が初めて会ったとき、投資家嫌いでも知られる似鳥社長は、「家具の素人と話してどうなる。時間の無駄だ」というような態度だったという。
しかし、清原氏が「家具って、新居を構えるときに一回買って、それで終わりになりますよねえ。例えばフランスでは、ソファーは買い替えないけれど、それを覆うファブリックは替えたりするでしょう? カーテンだって季節ごとに替えるなど提案して、リピートビジネスをつくり出せないもんですかねえ」と話したら、似鳥社長は顔色を一変させて話を聞いてくれたという。
しかし、これは「創業社長の場合」と清原氏は念を押す。
「創業社長は自分のすべてをかけて会社を経営していますから、会社を成長させる重要な情報やヒントを少しでも多く求めているのです。これがサラリーマン社長でワンマンだと最悪。必ずと言っていいほど経営は腐敗します」
■自由と自己責任の世界である株式投資を
ここまで創業社長の「わがまま」について聞いてきたが、清原氏も尋常ならざる成果を残したファンドマネジャーだ。自身については「わがまま」なタイプと考えているのだろうか。
「わがままかどうかと聞かれてもねえ。20代の頃は人生の目標が見つからずに荒れた生活をしていました。酒の量も半端ではなく、野村證券でNY支店にいたときは、飲酒運転で事故を起こし、裁判所に出頭したこともあります。
ちなみに私が咽頭がんになった原因は『葉巻』だと思います。強いて言えばこれがわがままですかねえ。さすがにそれから葉巻は吸っていませんが、お酒は退院した日から再開しています」
豪快に語る清原氏だが、成功のカギだという「夢」はあるのだろうか。
「私はこれまでたくさん仕事をして、たくさん遊んできました。やるべきことはやりつくしたという実感があるし、最後の仕事として私の投資術をまとめた本も出版できたので満足しています(ちなみに私はSNSをやりませんので、私を名乗るアカウントはすべて詐欺です)。
あえて言うなら、趣味である低山ハイキングを体が動く限り続けること。また能登が大好きなので、震災復興が落ち着いたら毎月にでも旅行にいきたいと思っています」
「わがままを貫く」強みについて聞いてきたが、同時に清原氏は「会社員であれば『わがままを通せない』場面が多いのは当然。そういう人にこそ、自由と自己責任の世界である株式投資をやってほしい」と語った。「自分なりのわがまま」の通し方を自分で考えることが大切なのではないだろうか。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。
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投資家
1981年、東京大学を卒業し、野村證券入社。ゴールドマン・サックス証券などを経て、98年、タワー投資顧問で「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年の高額納税者名簿で全国トップに。23年にファンドの運用を終了し、退社。著書に『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)。
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(投資家 清原 達郎 文=本誌編集部 写真=野口博)
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