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子どもに大人気の先生は実は自然とこれができている…言葉にしなくても相手に好印象を伝える傾聴メソッド

プレジデントオンライン / 2024年5月21日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lielos

話し手と良い話ができる人はどんな聴き方をしているか。心理カウンセラーの古宮昇さんは「相手をただ大切に感じる思いが聴き手の根底にあると、それが相手に伝わり人間関係に影響を与える。このようにして聴いていると、話し手も本来の自分らしさを取り戻すだろう」という――。

※本稿は、古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■聴き手の根底にある「気」「エネルギー」「オーラ」「雰囲気」の正体

あなたが今までに出会ってきたなかで、いちばん好きな先生は誰でしょう?

そして、なぜその先生が好きなのでしょう?

さまざまな答えがあるはずです。しかしあなたはおそらく、「漢字の教え方がうまかったから」とか「分数の教え方がうまかったから」のようには答えないでしょう。

生徒は、教え方のテクニックが上手だったからといって、その先生を一番好きだとは感じないものです。素晴らしい先生というのは、教育への情熱があるとか、子ども思いだとか、子どものことが大好きだとか、子どもの成長を見ると心から喜びを感じるとか、そういう人です。

もちろん、教師にテクニックは必要です。何を言っているかわからないような教え方では、良い教師になれるはずがありません。

しかし本質的に大切なのはテクニックではなく、子どもや教育に対する真摯(しんし)な思いなのです。

傾聴しようとするときにもっとも大切な基盤は、テクニックではなく、話し手の気持ちをなるべく話し手の身になって理解するとともに、そのままの話し手のことをただ大切に感じていることでしょう。

私たちの思いは、言葉にしなくても相手に伝わり、その人との人間関係に影響を与えます。話し手をただ大切に感じる、その思いが聴き手の根底にあると、それは「気」「エネルギー」「オーラ」「雰囲気」といった形で醸し出され、話し手に伝わります。

■体を緩め、体を感じながら聴く

最近は傾聴について教える本が増えてきました。しかし、私が知る限りはどの本にも書かれていない、とても大切なことがあります。

それは、話を聴いているときに自分の体に少し意識を向け、体を緩め、体を感じながら聴くことです。話を聴くとき、体が緊張していたり、頭であれこれ考えたりしていたりすると、傾聴はできません。

英国のスピリチュアルの指導者であるエックハルト・トールは、自分の体を意識の一部で感じながら聴くことについて、こう述べています。

心の雑多なものが取り除かれた透明な空間ができ、その空間こそが、関係性が花開くために必要です(Tolle,1999;p.106;)(古宮訳)

話を聴くときには深くゆったりと呼吸をし、体を感じてリラックスしましょう。すると、傾聴の場は落ち着きとおだやかさと癒しをもたらす場となるはずです。

体には丹田と呼ばれる部位があります。おへそからおおよそ5センチほど下、そこから体の内側に5センチほど入った下腹部にあります。

東洋医学では、この丹田を体の中心と見なします。

丹田を示す女性
写真=iStock.com/Meeko Media
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Meeko Media

■息を口から細く長く吐いて自分のからだを感じながら聴く

私はカウンセリングが始まるとき、口から細く長く息を吐きます。このとき、吐く息は丹田から上がって来たものを唇から吐くつもりで、吸う息は鼻から丹田まで届かせるつもりでラクに吸います。

そして、話し手に注意を向けると同時に、ときどきほんの少しだけ自分の体を意識し、体を感じながら聴くようにしています。

聴き手は「何と言って返そうか」など頭のなかであれこれと考えてはおらず、話を聴きながらも、ただ自分の体を感じています。

このようにして聴いていると、話し手も本来の自分らしさを取り戻し、より自由で柔軟になる、そんな交流ができるように思います。

日常の会話でも、息を口から細く長く吐いて自分のからだをすーっと感じながら聴いていると、話し手と私のあいだに、おだやかなスペースが生まれるように感じます。

■あらかじめ傾聴の終了時刻を決める理由

傾聴は心のエネルギーをたくさん使います。ゆとりがないとできません。

古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)
古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)

ですから、プロのカウンセラーは予約制です。そして約束の時刻が来ると、話の途中でもそこで終わります。冷たく感じますよね。そんなに割り切らないで、話し手の気が済むまで聴いてあげれば優しいのに。

でも、「話し合いは正午までで、この場所で行う」と、最初にきっちり設定してお互いの合意をもって開始するからこそ、集中して聴けるのです。

もし、話し合いがいつ、どこで始まるかわからないし、いつ終わるかわからない、そんな状況だったら、対話の途中で「この話し合いはいつ終わるんだろう? 私も忙しいんだけど……あれもしないといけないし、これもしないといけないし……」と時間が気になって、話し手に集中することができません。

すると、「次回、また話を聴いてください」と求められると、「え、また⁉ かなわないなあ」という気持ちになるでしょう。

ですから、プロ・カウンセラーが時間と場所をきっちり設定するのは冷たいからではなく、自分にできる支援をせいいっぱい提供するためなのです。

■時間を決めておくことで「集中して話に応じる時間」を作る

同じことはカウンセリングに限らず、ほかの傾聴の場合にも当てはまります。

私が大学教員だったとき、学生や卒業生が「先生、ちょっと質問があるんですけど」とやって来ることがありました。彼らには悩みや迷いがあって、本当は質問のためではなく助けてもらうために来ていました。

でも、私はすぐその場で話を聴くことはなく、お互いのスケジュールを合わせて予約を取り、開始時刻と終了時刻を決めて相談に応じました。

「ごめん、今は時間がないけど、来週金曜日の午後4時から4時半に時間が取れるので、そのときはどう?」という具合です。

そうする教授は他にはほとんどいなかったと思いますが、私は時間を決めておくことで、落ち着き、集中した状態で話し合いに応じることができました。

あなたが傾聴の対話をする際も、あらかじめ開始時刻、終了時刻をお互いに合意することができればベターでしょう。

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古宮 昇(こみや・のぼる)
心理カウンセラー
心理学博士。公認心理師・臨床心理士。米国州立ミズーリ大学コロンビア校より心理学博士号(PhD.)を取得。米国にて、州立児童相談所、精神科病棟などで心理カウンセラーとして勤務し、州立ミズーリ大学心理学部で教鞭を執る。日本に帰国後は、心療内科医院および大学の学生カウンセリング・ルームのカウンセラー、大阪経済大学人間科学部教授を経て、現在は神戸にてカウンセリング・ルーム輝代表。

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(心理カウンセラー 古宮 昇)

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