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健康診断「少し高めの血糖値」を甘く見てはいけない…最悪の場合、心臓病や腎不全に至る「糖尿病予備軍」の怖さ

プレジデントオンライン / 2024年5月23日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Satoshi-K

健康診断で血糖値が高かったらどうすればいいのか。産業医の池井佑丞さんは「血糖値が正常より高い人は、糖尿病を発症するリスクが6~20倍高いと言われている。高い血糖値は心臓病や腎不全を招く。早い段階から食生活の見直しや運動を行ったほうがいい」という――。

■慢性的に高血糖になるのが「糖尿病」

糖尿病は、血糖値をコントロールするホルモンの一つであるインスリンが分泌されなくなる、または働きにくくなることで、糖が細胞に取り込まれなくなって慢性的に高血糖になる病気です。先天的にインスリンをつくることができない1型糖尿病と後天的な原因によってインスリンの分泌が低下してしまう2型糖尿病があります。

本来、インスリンは食事に関わらず24時間分泌される基礎分泌と食後の血糖値上昇に合わせて分泌される追加分泌の2つの方法で分泌されています。ところが、糖尿病患者さんでは、基礎分泌の低下によって空腹時の血糖値が高くなったり、追加分泌の低下によって食後血糖値がぐっと高くなったりします。2型糖尿病では、発症前/初期からも食後高血糖が見られるのが一般的であり、病気の進行とともに、より基礎分泌が低下し空腹時にも高血糖が認められるようになります。

治療法はさまざまありますが、作用時間の異なるインスリン製剤や作用機序の異なる内服薬を組み合わせて良好な血糖値を保てるよう治療が行われます。

■糖尿病の可能性が否定できない人は約1400万人

2016年の厚労省による調査では、へモグロビンA1cが6.5%以上(糖尿病型と判断される数値)または、糖尿病治療経験がある糖尿病が強く疑われる人は約1400万人、へモグロビンA1cが6.0以上6.5%未満の糖尿病の可能性が否定できない人(糖尿病が強く疑われる人を除く)も同様に約1400万人いることが分かっています(厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査報告」第31表より、2017年)。

健康診断で糖尿病と診断されるほど血糖値は高くないけれど、正常よりは少し高いですねと言われた経験がある方も少なくないのではないでしょうか。糖尿病の診断には空腹時血糖値とヘモグロビンの糖化状態をみるヘモグロビンA1cの測定、75g経口ブドウ糖負荷試験などが用いられます。医学的に、空腹時血糖値が110~125mg/dLの方やブドウ糖負荷試験にて負荷後2時間血糖値が140~200mg/dL未満の方は境界型とされ糖尿病に準ずる状態とされています。

■高い血糖値は血管を傷つけ、心臓病や腎不全を引き起こす

血糖値が正常より高い方は、正常の方よりも糖尿病を発症するリスクが6〜20倍高いと言われています。糖尿病を治療する最終目的は、血糖値のコントロールではありません。目的はその先にあります。高い血糖値は、血管を傷つけ、心臓病や腎不全などを引き起こす可能性があります。つまりは、糖尿病かどうかよりも、血糖値が高い状態にあることを気にかけることが大切なのです。ぜひこの段階から、食生活の見直しや、日々の生活に運動を意識して取り入れていただきたいと思います。

健康的な食事の材料
写真=iStock.com/YelenaYemchuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/YelenaYemchuk

昨今では、糖尿病リスク予測ツールなども作成され、Webで簡単に糖尿病リスクを知ることができます(例:国立国際医療研究センター「糖尿病リスク予測ツール 第3版」)。健診などの血液検査結果を合わせられるとより良いですが、年齢、身長、体重、血圧など簡単な項目で、リスクを予測することができます。ご自身の生活習慣の見直しに、試されてみると良いと思います。

■高血糖を放置すると失明や透析が必要になる場合も

また、2019年の調査では、まだまだ働き盛りの年代に糖尿病が強く疑われる状況にある方が多いことが分かっています。「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、男性は40~49歳:6.1%、50〜59歳:17.8%、60〜69歳:25.3%、女性は40~49歳:2.8%、50〜59歳:5.9%、60〜69歳:10.7%という結果が出ているのです(厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」2020年12月)。

糖尿病は管理することが肝要で、しっかりと管理されていれば日常生活を支障なく送ることができます。しかし、管理ができずに高血糖を放置すると重篤な合併症につながることがあります。たとえば糖尿病性網膜症により失明する、糖尿病性腎症により透析が必要となるなど仕事にも生活にも支障をきたすことになります。糖尿病と診断された方は、まずは主治医の指示に従ってしっかりと自己管理をお願いします。

■血糖コントロールが不十分な場合には薬物療法を開始

治療についても少し触れたいと思います。糖尿病治療の流れとしては、どの段階にあっても食事や運動療法は必要ですが、血糖コントロールが不十分な場合には薬物療法を開始します。治療薬にはインスリン注射薬、内服薬、インスリン以外の注射薬の3タイプがあります。

糖尿病患者さんには、合併症や年齢、肥満などさまざまなリスク因子を持たれている方が多く、一概にどのお薬から始めましょうという決まりはありません。それぞれのお薬によって、血糖降下作用や副作用なども異なりますので、個人個人に合わせた治療と効果を定期的に見直しながら進められていきます。診察時には、合併症の状態や予防方法、治療についての心配やご自身の生活リズムにあった治療法の相談ができると良いでしょう。

腹囲
写真=iStock.com/FredFroese
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FredFroese

また、血糖をさげる薬を内服していたりインスリン注射を行ったりしている場合は、その日の体調や、運動量の増加、食事時間がずれたなど、ちょっとした生活の変化が引き金となって低血糖をおこすことがあります。冷や汗や動悸、空腹感などの軽度の低血糖の症状が現れた場合には、飴(ブドウ糖)やブドウ糖を含む清涼飲料水などの糖分を摂取しましょう。疑う症状が現れた場合は、血糖値を測定し確認することが大切です。

■「イザという時」のために職場にも伝えておくと良い

低血糖を繰り返すと、低血糖症状を感じにくくなり、他の人の助けが必要なほどの症状を起こすこともあります。そのような状態を重症低血糖と言い、重症低血糖を起こすと意識が遠のく、昏睡や痙攣を起こすなどの重い症状が現れとても危険です。適切な対処が行われない場合には、命に危険が及ぶ可能性もあります。

上司や同僚の理解のほか、産業医や産業保健師を活用するなど、信頼のおける方に病状を伝え、いざという時に力になってもらえるよう安心できる状況を作られると良いでしょう。仕事上対処が難しい場合は会社に相談するようにしましょう。また重症化した場合を想定して、職場管理者に対応方法をあらかじめ伝えておくことも大切です。

また職場以外の社会的なサポートとして、糖尿病の合併症による障害や治療が難しい状態の場合に利用できる国や自治体の助成制度や、全国の病院や診療所に設置された糖尿病患者のための患者会もあります。経済的なサポート、悩みの共有や治療法の情報交換の場として、ぜひご活用いただければと思います。

現在糖尿病治療においては、糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質(QOL)が目標とされていますが、いつか糖尿病が治癒する病気となるように、多くの期待を背負って研究や開発が進められています。治療と仕事の両立は容易ではありませんが、諦めることはありません。正しい知識と周囲の支援を活用し、健康な時と同じように人生を楽しめるよう、健康管理に取り組まれてください。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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