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介護の非正規雇用でこんなに稼げるなんて…円安で再注目「ワーキングホリデー」で得られる驚きの時給と英語力

プレジデントオンライン / 2024年5月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mirsad sarajlic

オーストラリアのワーキングホリデー制度はなぜ、時給が高いのか。現地を取材したブックライターの上阪徹さんは「非正規雇用のリスクを賃金に換算している。リスクとリターンを賃金に相関させないどこかの国とは違う」という――。

※本稿は、上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

■ワーキングホリデー制度って何だ?

そもそもワーホリとは何か。ここで改めて簡単に紹介しておきたい。

ワーキングホリデー。その名のごとく、働きながら休日を過ごせる、というものだが、当該政府がビザを発行してくれるのだ。

本来は、文化交流を目的に、若い旅行者が長期休暇を取り、旅をしながら短期雇用で収入を得ることができる仕組み、である。

始まったのは、1980年。オーストラリアとの間で最初に制度ができた。その後、対象国はどんどん拡大し、今は29カ国・地域になっている。

短期間の旅ならいざしらず、数カ月など長期で休みを取って海外を旅するとなれば、まとまった資金が必要になる。もし、現地で働くことができれば、旅の資金にもなるし、現地の人たちとの交流も深められて一石二鳥、というわけである。

もちろん、働かなければいけないわけではない。まったく、あるいは、ほとんど働かずにワーホリ期間を過ごすことも可能。

私は50代だが、30年ほど前のワーホリといえば、このイメージだった。社会にまだ出たくない、お金に余裕のある若者たちがモラトリアム的に過ごす場所。あるいは、バックパッカーの猛者たちが活用しているケースもあったのかもしれない。

■ワーホリは英語習得のチャンスにもなる

ワーホリの何よりのポイントは、若者に限定されている、ということだ。ビザの申請条件は、18歳から30歳まで。ただし、渡航時に31歳になっていることは問題ない。子どもの同伴はできない。

そして各国ともに、ワーホリビザの活用は一度だけ。オーストラリアでワーホリを経験したら、もう一度、というわけにはいかない。ただし、再びワーホリでカナダに行ったり、ニュージーランドに行ったりすることは可能だ。

日本人にとっては、長期の海外滞在といえば、習得のチャンスになるのが英会話。中学校から高校まで6年にわたって英語を学ぶにもかかわらず、英語が話せない日本人がほとんどなのは昔も今も同じだ。

これは本書で詳述するが、英語力を求めてワーホリに関心を持つ若者も少なくない。そこで、オーストラリアなら、1年間のワーホリで最長4カ月、英語が学べる語学学校に通うことができる。語学学校にはワーホリ以外も含め、それこそまさに世界中から学生が集まるため、多国籍な友達ができることも魅力だ。

学校によっては、TOEICなどの試験対策や接客英語を学べるコース、バリスタやダイビングなどの英語プラスαを学べるプログラムを提供しているところもある。

オーストラリアは先に書いたように日本がワーホリ制度を導入した初めての国で、その歴史は40年以上になる。両国とも人数の制限はない。日本からはコロナ禍の時期を除くと、おおよそ年間1万人がワーホリでオーストラリアを訪れていた。

カナダは6500人と人数を定めている。また、イギリスは1500人の定員制限に加え、抽選式で申請時期も限られているなど、国によって制度の概要は異なる。

【図表1】ワーキングホリデー人気国の主な制度内容
『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)より

■オーストラリアの最低賃金は約2000円

ワーホリの過ごし方は、まさにさまざまだ。英語を学びたい、友達をつくりたい、コミュニティに属したいと語学学校に通うところからスタートする若者もいれば、英語力には自信があるから、とすぐに旅を始める若者もいる。

オーストラリアであれば、ずっとシドニーやメルボルンなど大都市で過ごすケースもあれば、ケアンズやパースなど観光地を巡ったり、リゾートで過ごしながら、あるいは地方の農場でアルバイトを続ける若者もいる。

就くことができる仕事については、職種や業種に制限はない。持っているスキルや経験、さらには英語力でさまざまな仕事に挑戦できる。カフェやレストラン、バーなどの飲食業から、イベントスタッフ、ハウスキーパー、船の甲板員、建設作業員、受付などの事務やIT関連の仕事などなど。

オーストラリアは日本人にとって人気のワーホリ先だが、それは受け入れ人数に上限がないことだけではない。日本と時差がほとんどないこと、多文化多民族国家で受け入れに寛容であることに加え、なんといっても就労の条件の良さがある。

もとより世界最高の賃金水準を誇る国。ワーホリ制度を有する主要英語圏の中でもダントツだという。国が定めている最低賃金は、課税前の金額で時給23.23豪ドル(日本円で約2200円)。週給になると882.74豪ドル(同約8万円/38時間労働換算)にもなる。

オーストラリアの現金
写真=iStock.com/Wirestock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wirestock

■リスクとリターンが相関している賃金体系

そればかりではない。働き方には、フルタイム、パートタイム、カジュアルの3種類があるが、カジュアルのような臨時雇用で国の最低賃金の対象となる場合には、賃金に25%以上の臨時雇用追加金を上乗せした金額を受け取ることができるのだ。

また、これ以外でも極めて合理的な考え方が実践されているのが、オーストラリアの賃金体系である。端的に言えば、いわゆる正規雇用と非正規雇用を比べたとき、時給に換算すれば、非正規雇用のほうが高いのである。

理由は明快で、正規雇用は安定しているから。安定していないが、賃金が高い非正規雇用を選ぶか、安定しているが、賃金が低い正規雇用を選ぶか、は本人次第。

要するに、リスクとリターンが、しっかりと相関している。これがまったく相関していないにもかかわらず、なかなか変われないどこかの国とは違うのだ。

元看護師からワーホリに行った藤田さんは、介護の仕事の時給に「こんなにもらえるのかと思った」と語っていたが、それは非正規雇用の時給だったことも大きい。実に正規雇用の時給に比べて1000円もの差があったという。

ワーホリは基本的な考え方として「旅をしながら」なので、オーストラリアの場合、一つの雇用主のもとでの雇用は最長6カ月とされている。6カ月経てば、別の仕事を見つけなければいけない。一方、カナダは就労についての期間の制限はない。

■ファームジョブで数年の滞在も可能に

ワーホリは、多くの国が滞在期間を1年間としている。カナダ、ニュージーランドなどがそうだ。だが、オーストラリアは最長3年まで過ごすことができる。

一定条件を満たすことで、2年目も滞在できる「セカンドワーキングホリデービザ(セカンドビザ)」、3年目も滞在できる「サードワーキングホリデービザ(サードビザ)」の申請が可能なのだ。

端的にいえば、ワーホリ1年目に特定の仕事に約3カ月(88日間)従事すれば、2年目の滞在が可能になる仕組み。また、ワーホリ2年目に6カ月間従事すれば、3年目の滞在が可能になる。

【図表2】条件を満たすと、2年目、3年目も滞在できる
『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)より

例えば、地方都市での農業や農業関連の仕事(ファームジョブと呼ばれる)に就く。バナナやイチゴ、林檎などのフルーツ、トマトやパプリカ、アボカドなどの野菜の収穫(ピッキング)もそのひとつだ。

NHKの番組では「ブルーベリー摘み」について紹介しているが、これこそまさにファームジョブだったのである。

ブルーベリー
写真=iStock.com/Ipinchuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ipinchuk

■人手不足を解消する合理的なシステム

もちろん「英語も話せないし、ずっとブルーベリー摘みでいい」と考えていた人もいたのかもしれないが、多くは「セカンドビザ」「サードビザ」を取得するために来ていた可能性が高い。そうすれば、2年、3年と滞在を延ばせるからである。

上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)
上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)

つまりは、がんばってくれたご褒美に翌年のビザがもらえる、というわけなのだ。ファームジョブ以外にも、果物や野菜をパック詰めする仕事や肉の加工場など食関連から、オペアと呼ばれる地方の家庭での家事手伝い、リゾート地でのサービス業(真珠養殖といった変わったものも)、建設現場での仕事など、条件を満たす仕事はさまざまにある。

現地のワーホリの間では、そのための情報が飛び交っている。どこで、何をするのがいいのか、どんな仕事が魅力的か、などだ。ファームジョブの募集は、政府のウェブサイトでも公開されている。

それにしても、自国ではなかなか人が集まらない仕事をやってもらうことで、翌年のビザというご褒美を出すわけだ。人手は確保され、働き手は稼げる上にビザがもらえる。これまた、なんとも合理的なシステムである。

■ひと仕事終えて趣味を楽しむ

こうして2年目、3年目のビザを手に入れれば、「ワーホリ1年でおしまい」ということはない。のんびりとシドニーのカフェで働き、ひと仕事終えて趣味のサーフィンを楽しむ、なんてことも可能(実際に、シドニーはすぐ近くにビーチがある)。

いろいろな国から集まって来る英語を学びたい人たちのコミュニティに加わり、世界中に友達をつくる人もいる。

また、日本人が集まる大規模なイベントに参加して、オーストラリアにいながら日本人の友達をたくさんつくってしまう人も。

ボンダイ・ビーチ
写真=iStock.com/RugliG
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RugliG

■ワーホリで世界視野に…

さらには、シドニーでアルバイトをがんばってから、オーストラリアの世界遺産を毎月、旅するという人もいる。ケアンズのグレートバリアリーフ、カカドゥ国立公園、ウルルと現地では呼ばれるエアーズ・ロック、パースのシャーク・ベイ……。

ワーホリの総仕上げで、ダーウィン、ゴールドコースト、メルボルン、ブリスベン、アデレード、パースなど、1カ月かけてオーストラリアを周遊することを楽しみにする人も。中には車で周遊する、自転車で周遊する、という人もいる。

ワーホリで出会った友人たちを訪ねて、ワーホリ後は中南米を巡りたい、ヨーロッパを巡りたいという人もいた。海外で過ごせば、そんな壮大な考えも、そう遠くにあるものではなくなるようである。

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上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。雑誌や書籍、Webメディアなどで執筆やインタビューを手がける。著者に代わって本を書くブックライターとして、担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット』(三笠書房)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)など多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。ブックライターを育てる「上阪徹のブックライター塾」を主宰。

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(ブックライター 上阪 徹)

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