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「23区マンション1億円」不動産バブルは調整が入るのか…住宅購入で絶対押さえたい"超重要ポイント"

プレジデントオンライン / 2024年5月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

東京23区のマンションは1億円時代に突入した。不動産バブルに調整は入るのか。経済ジャーナリストの山下努さんは「現在の不動産と株のバブルは日銀が過激な金融政策で演出した帰結だが、それこそが『日銀バブル』だと判断されれば、お金が流れ込んだ不動産や株の価格は調整を受ける」という――。

※本稿は、山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

■東京23区の不動産価格は別世界

前回のバブルも超えた「23区の新築マンション平均価格が2023年の通年価格で1億円突破」の知らせは、将来の円通貨の暴落懸念(悪性インフレ、財政インフレを警戒)を背景に起きている。

また、4万円を突破し、史上最高値を更新した日経平均株価が上がると、その「資産効果」でマンションなどの投資対象にもなる不動産価格も上がる。

株の上昇によって資産が増えた富裕層が、市場に厚みがあり流動性が高く収益が見込まれるタワーマンションなどを買いに動くのだ。

不動産と株は資産市場のメインの受け皿だが、価格の形成もバブルの情勢も、そのバブルの崩壊にも互いに連動性がある。

株式が上がるだけで、株で含み益を得た形の投資家に「資産効果」が生まれ、マンションにも投資先を広げる。

23区は他エリアと別世界になっている。

超高層とすぐわかる「タワー」と名がつけば売れるし、値上がり率も高い。

20階建て以下の中小型物件、「億ション」と呼べない中低層マンション(中低層でも一戸2億円を超す高級物件は別)は、市場に厚みがなく富裕層のマネーが十分に入ってこないので、購買(投資対象)にしない人もいる。

東京では、オフィスビルを中心に空前の「タワー」建設ラッシュだ。

「タワー」と名づけたほうが、超高層とわかり、値上がりしやすいと歓迎される。

大型再開発には、高層階が一戸数億円から数十億円以上の超高級マンションが併設されるケースが増えている。

■都心再開発のカラクリ

再開発も止まらない。

再開発でもうかるエリアは都心の未利用地等にシフトし、それは公園や学校など、高さ・容積率が未利用の公有地が多い。

デベロッパーは公園を含めたエリアを難なく商業用地に「変換」してしまう。

計画と資金を民間に頼る自治体が事実上、自治体の事業を「丸投げ」してしまうからだ。それは建物が古くなって建替えのときに起こりやすい。

土地をまとめて大規模に開発し、行政が求めるMICE(会議、学会、研修、展示会など、集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称)の機能を発揮できる施設を収容すると、再開発計画には巨額の補助金が出る。さらに建物の高さ規制の大幅な緩和、建物を大きく高くできる容積率のボーナスといった規制緩和が与えられる。

箱物であるホールやホテルなど、行政が指定した用途の建物を設ければ、簡単に容積率を上げられる時代だ。外国人や富裕層は、こうした「希少価値があって値上がり確実な超高額マンション」に好んで投資する。

また、今後5年間のオフィス床の新規供給面積の5割が港区に集中し、ますます都心回帰が進む。それに合わせ住宅の都心需要も伸びる。

23区の不動産会社は、需要に応えるだけの都心や湾岸マンションの中古の玉がないので、マンション「買い取り」(売り先を確保せずに業者が自分で買う行為)に走る。

ますます全国の新築・中古住宅の市場事情とかけ離れるばかりだ。

円安効果で、高値で買う外国人が市場を牽引しているので、2年前の水準で見れば、業者も太っ腹な値段で、自分で買っている。

■10年経てば相場は戻る

これからの新しい不動産戦略として、住宅の所有期間の目途は、10~15年としよう。

これは地震などの大災害も「10年ひと昔」で忘れてしまうといわれることも考慮に入れている。コロナなら半年だ。

たとえば、2011年の東日本大震災。

津波の怖さから、神奈川県藤沢市の臨海部など湘南の住宅地の価格が下がり、液状化の被害が大きかった千葉県浦安市も「地震前の相場で買う人は誰もいない」といわれたものだが、震災後、金融緩和の効果もあって10年ほどで相場は元に戻った。

コンクリートのクローズアップ
写真=iStock.com/SteveCollender
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SteveCollender

また、湾岸エリアは、津波や液状化で危ないといわれる。

たしかに、山の手や武蔵野台地なら災害リスクは湾岸エリアより低いかもしれないが、台地や丘陵地の一帯には土砂崩れなど、埋め立て地にないリスクもある。

住宅購入において、解決すべき疑問点は9つに絞られる。

次の知られざる「9つの本質的なポイント」さえ認識すれば、住宅購入で失敗するリスクが小さくなり、利益も期待できるだろう。

■住宅売買で絶対に押さえておきたい「9つの本質的なポイント」

①価値の落ちない新築マンションは、なぜ1億円(2023年の23区平均価格)を突破したのか

マンション1億円時代の背景が分析できれば、住宅投資には絶対負けない。

②新築物件値下がりの材料になる建築費は下がるのか

日本は地震などの災害大国で、公共事業が多く、建設業者数も多いままなので、再開発事業も絞りにくい。建設需要は止められないので、建築費は下がりにくい。

③市場が拡大する中古マンションは、どこを買えばよいのか

新築が建てられ、中古市場が厚いところがよい。大都市のなかでも、たとえば東京23区は都心か湾岸。もちろん前提は中短期投資だ。

④激変する「新しいマンションの買い方」とは、どのようなものか

前回のバブル崩壊後から不動産、金融市場は変化している。

買い手の消費者がそれに対応できておらず、まずい買い物しかできないのが現状だ。

⑤マイホーム購入のすべての問題を解決する「サンドイッチ売買」とは何か

マイホーム購入、売却、賃貸住まいを繰り返し、相場の変動や家族数の増減に対応する。地震など災害リスクも限定する買い方だ。

⑥値上がりするマンションを、どう見分けるか

購買層がなぜそのマンションを狙っているのかの最大公約数を探せばよい。

価格上昇の流れをつくっているのが外国人なら、彼らの次の一手を予想する。

冷静な市場分析や自分の投資戦略は別に持つ。この先もみなが「イケメンマンション」だと思うマンションを探し出せばいい。

■不動産バブル調整のゆくえ

⑦今後、日銀の新しい不動産バブルに、調整は起きるのか

日本はもう20年以上もの長期にわたって金融緩和を続けている。

長短の金利はゼロ金利、マイナス金利へと向かった。日銀は世界で最も金利が低い世界を演出し、そこから脱する利上げの動きも、日本は主要国で最も遅い。

訪日客や外国勢による資産市場の好調を維持する点を考えると、2023年3月に政策金利を0%以上にした日銀は「できるだけ24年も利上げをしたくない、そして円安のままにしておきたい」のが本音だ。

現在の不動産と株のバブルも日銀が過激な金融政策で演出した帰結だが、それこそが「日銀バブル」だと判断されれば、お金が流れ込んだ不動産や株の価格は調整を受ける。

不動産価格と株価を上げている買い手の半数程度は外国人で、円安効果があって外貨ベース価格に換算すると「安いから」買っているにすぎない。

もし、為替が円高方面に触れて動かなくなれば、高級マンションの価格も下がっていく。

また、株も大幅な配当利回りの低下や将来的な業績不振が見込まれれば、下がっていく。

さまざまな尺度から調整の余地はあると言える。

⑧インフレ時代の住宅ローン戦略を、どうとらえるか

マンション1億円相場は、悪性インフレの懸念からも来ている。

金利について借入時に工夫すれば、インフレによってどんどん住宅ローンの返済負担が減り、インフレが住宅ローンを返してくれる。

政府が発行する債務である国債(10年ものが長期金利の指標)を債券市場からほとんど買い占め、1100兆円強の国債の発行残高の半分を超す600兆円規模を日銀が買ってしまった。

この歴史的な政府債務の日銀による買い上げなどを通じ、かつてないほどのマネーが民間市場に供給された。ゼロ金利解除後も、過去に日銀が買い込んだ国債、株、不動産(リート)はなかなか、日銀からは売れない。

今後の利上げは非常にゆっくりとなり、それは前例のないカネあまりと超低金利を生み、お金は資産市場に大量に流れ込んで、収益が見込めるマンションや優良株はどんどん値上がりした。

しかし、日本銀行券(お札、円)の価値は日銀の資産が健全でないと動揺する。そして、政府債務はどんどん累増している。

政府が税収をベースにしっかり返済していくことは、もはや不可能に近い。少子高齢化・人口減少は止まらないので、財政需要もどんどん増えていく。

本書を読めば、こうした既定路線の未来が予想できる。今後も政府の借金を日銀に押し付ける懸念が、じつは悪性インフレを予想させ、お金を優良不動産や株に変えようという動きが、すでに始まっているのだ。

【図表1】住宅着工戸数の推移
山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)より

■安い郊外のマンションを買うと後悔する

⑨郊外と地方はどうなるのか

マンション1億円時代に安い郊外のマンションを買うと、人口減少のなか、何度も「もう少し待って買えばよかった」という値下がり局面が続く確率が高い。

山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)
山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)

新築マンションは、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)で駅徒歩5分以内が4割弱を占めるまでになり、郊外では徒歩5分以内の物件でないと資産性を保つのは厳しい。

以上9つのポイントについては、改めて本書で詳しく解説する。

序章と第1章では、東京23区のマンション事情と平均1億円を超えた裏事情を、第2章では、これからの狙い目のエリアや、おすすめしないエリアを紹介する。

第3章では、これからのマンションの新しい買い方「サンドイッチ売買」について詳しく触れ、第4章では、不動産市場をマクロ視点でとらえるための新旧バブルの理由や日銀と金利の関係などについて解説する。

第5章から第7章では、米国、韓国、中国の最新不動産事情を紹介したい。

第8章では、空き家が増えていく日本での不動産戦略と、狙い目である中核市候補と予備軍の都市などについても紹介しよう。

第9章では、晴海フラッグなど、自治体と大手デベロッパーによる公有地の再開発について、第10章では、大手デベロッパーによる都心開発のカラクリを解説する。

最後に、第1章から第10章までを「これから家を買うサラリーマンのための資産防衛術8カ条」としてまとめ、住宅購入を検討している人へのわかりやすいアドバイスとした。

本書がこれから住宅購入や売却、あるいは自宅不動産を通して資産を増やしたいという人たちの参考になれば、幸いである。

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山下 努(やました・つとむ)
元朝日新聞経済部記者、経済ジャーナリスト
1986年朝日新聞社入社、大阪経済部、東京経済部、『ヘラルド朝日』、『朝日ウイークリー』、「朝日新聞オピニオン」、『AERA』編集部、不動産業務室などに在籍。2023年朝日新聞社退社。不動産業(ゼネコン、土地、住宅)については旧建設省記者クラブ、国土交通省記者クラブ、朝日新聞不動産業務室などで30年以上の取材・調査経験を誇る。不動産をはじめとする資本市場の分析と世代会計、文化財保護への造詣が深く、執筆した不動産関連の記事・調査レポートは1000本以上に及ぶ。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)、『「老人優先経済」で日本が破綻』(ブックマン社)、『世代間最終戦争』(立木信名義、東洋経済新報社)、『若者を喰い物にし続ける社会』(立木信名義、洋泉社)、『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)など多くの著書がある。

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(元朝日新聞経済部記者、経済ジャーナリスト 山下 努)

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