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今どきベルマーク集めするPTAと大違い…「不登校の保護者の会を開催」意義ある活動ができるPTAは何が違うか

プレジデントオンライン / 2024年5月26日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

委員や役員の押し付け合い、非生産的なベルマーク活動……。そんなブラックPTAのイメージを払拭するような活動がジワリ増えている。全国のPTAを取材してきたジャーナリストの大塚玲子さんは「『保護者や学校に何が必要か』を考え、それを実現するためにどんな場があればいいのか。それはPTAでもいいし、PTAでもなくてもいい。そんな順番で考えられる学校のPTAはやることを間違えにくい」という――。

■委員の押し付け合いで泣く人もでる

「PTAって、そもそも何ですか?」

長くPTAの取材を続けてきた筆者はよくこんな質問を受けるのですが、毎回どう答えたものか悩みます。何しろ、いろんなPTAがあるからです。

「よくあるPTA」の説明なら簡単です。学校行事のお手伝いや広報紙の作成、ベルマーク集め(学校への物品寄贈)などの活動をしており、加入は本人の意思にかかわらず全員必ず。委員や役員を決めるときは押し付け合いが起きやすく(なぜかほぼ母親限定)、ときには泣く人が出ることも……。ここ数十年、多くのPTAはこんな感じでした。

■「そうじゃないPTA」の登場

でも、最近は「そうじゃないPTA」もジワリと増えています。入りたい人が入り、参加したい人が参加する。希望者がいない活動はやめにして、会員が「やりたい」と思ったことをやる。PTAという名称を変える例も出てきて、バラエティに富んできました。

これが当たり前だと思うのです。法律に縛られない、ただの任意団体であるPTAが、これまで全国一律、同じように活動してきたことのほうが、よほど不自然だったと感じます。

いっそもう、「PTAとは何か」を考えるのはやめて、「保護者や学校に何が必要か」を考えたほうがいいと思うのです。それを実現するために、どんな場があればいいのか――それはPTAでもいいし、PTAでもなくてもいい――そんな順番で考えたほうが、やることを間違えにくい気がします。

では、保護者や学校に必要なものとは何なのか? いろんなものが考えられますが、筆者が潜在的なニーズを感じてきたのが「保護者同士の交流の場」です。昭和や平成初期によく見られた「PTA学級懇談会」のように「毎月やることになっているから今月もやる」というものではなく、集まりたいから集まる、もっとラフで自由な交流の場です。

近頃、そんな交流の場をもつPTAをちらほら見かけるようになってきたので、いくつかご紹介させてください。

■飛び入り参加OK、誰でも参加できるミーティング

ひとつめは、福島県にあるN小学校PTA。2019年春、初の退会者が出たことを機に入会届を整備し、自由参加をベースとした運営に改めました。珍しいことですが、改革に対する反対意見はまったく出ず、保護者や教職員からは応援や感謝の声が多く寄せられたといいます。

そんなN小PTAが2021年度から始めたのが「誰でも参加できる企画・運営ミーティング」です。数カ月おきに開催し、参加者は4、5人のこともあれば10数人のことも。役員さんや先生(校長・教頭)より、一般保護者のほうが多いことも珍しくありません。

「初回のミーティングは、平日の夕方から2時間やりました。子どもたちの登下校の安全面の話や、親子で参加できるイベントの案のこと、放送委員会(児童)のお昼の読み聞かせや、学校ポータルサイトのブログについてなど、いろんな話題があがった記憶です」(元N小PTA会長・Sさん)

参加した保護者からは「ざっくばらんに聞いたり話したりできて、すごく雰囲気がよかった」「飛び入り参加したが、学校側と保護者側の垣根がなく、自由に意見を述べることができていて良い会だった」「こういうのが本来の形だなと感じた」などの感想が寄せられたということで、満足度の高さがうかがえます。

会議でのプレゼン
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

■子ども向け「熊対策安全教室」

ミーティングで出た案が実現することもあります。2022年度は、熊の出没が増えていたことから、子どもたちに向けて「熊対策安全教室」を行うことになりました。昨年度(23年度)は初めてのオンラインミーティングを行い、地域の危険個所の問題から性教育のことまで、さまざまな話が出たとのこと。

PTA活動って、こういうので十分では? と筆者は思うのです。話をしたい保護者同士が集まって、やりたいことが出てきたらそれを実現する。そんな「土台となる場」さえあれば、別に毎年何人もの「委員」を選んだりする必要はないように思えます。

■不登校の保護者の交流会

ほかには、PTAで「不登校の保護者の交流会」を開催する例なども耳にします。

兵庫県川西市立東谷小学校の保護者Kさんは、2022年秋、お子さんが行き渋りの状態になりました。「親の会」に参加したいと思ったものの、あいにく近隣にはちょうどよいところが見つかりませんでした。

この頃、Kさんはネットの記事で、千葉県習志野市のある中学校のPTAが「不登校の保護者の会」を開いていることを知ります(筆者が書いた記事でした!)。

そこで、東谷小でも会を立ち上げるのに協力してもらえないか、PTAに相談してみることに。同小のPTAも記事で紹介されたPTAと同様に強制がなく、やりたいことをやれる雰囲気だったので、自分にもできるんじゃないかと思ったのです。

話をしたところ、会長や校長先生、近隣校の会長ら(※)が皆、快く協力してくれることに。そうして翌2023年秋から、同じ中学校区の3つの小学校が合同で「不登校の保護者の会」をスタートする運びとなったのでした。

※2023年春、東谷小を含む近隣の4つの小中学校はPTAを解散し、それぞれで保護者グループ(ココスクール)を立ち上げていました。

学校での保護者の集まり
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn

■同じ経験をした保護者が集まり、心の支えに

「会が動き出すまでの間、私は『図書ボランティア』のサークルに入っていました。ここもおしゃべりができて、気晴らしにはなったんですが、やっぱり『不登校の親』としてのお話はしづらくて。どうしても気を遣われてしまうので、それもちょっとつらいんですよね。でもいまは毎月、同じような経験をした保護者で集まるので、息抜きにもなるし、すごく心の支えにもなっています」(Kさん)

参加者は大体4、5人のことが多く、話しやすい雰囲気だそう。開催場所は、近隣の市の施設を使うことが多いのですが、小学校で開催したこともあり、このときは校長先生も参加してくれたといいます。

直接顔を合わせて集まる会のほかに、LINEのオープンチャットもあり、こちらに登録している保護者は現在12名。当初は会の告知のために使っていましたが、最近「フリートークOK」に変えたところだそう。

「会がスタートしてから半年しか経っていないので、まだ存在を知らない保護者の方が多いと思います。じっくりと細く長く続けて、『こういう会がある』という状況を定着させていきたい」とKさんは話します。

なお、これまでは平日日中に開催してきましたが、より多くの保護者が参加しやすいよう、今後は土日や夜の開催も考えているとのこと。近隣の中学の保護者グループも、会に加わることを検討中だそうです。

■「仕事をしなければいけない」と考えるから間違った道へ進む

不登校の保護者の会、みなさんはどう思われたでしょうか? 「こういうの、自校でもやってみたいな」と思った方も、きっといるでしょう。

大塚玲子『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)
大塚玲子『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)

ちなみに、Kさんが会を始めるきっかけとなった、習志野市のPTAの「不登校の保護者の会」の話は、拙著『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』でたっぷり紹介しています。興味がある方は是非、ご覧ください。

PTA活動というと「ただのおしゃべりなんてダメでしょ。なにか『仕事』をしなければいけないんじゃない?」と思われがちですが、本当にそうなのでしょうか。

「クジ引きであたったから」と仕方なく広報紙をつくったり、「ポイントを一番ラクに貯められるから」とベルマークを切り貼りしたりするより、保護者同士が自ら「集まりたい」と思って集まり、話をして考え合うほうが、ずっと意味があることのように筆者には思えます。

■なぜPTAにはドス黒い空気が流れがちなのか

PTAを「仕事」にしてしまうから、「我慢してやるのが当たり前」「やらない人はズルい」といった、ドス黒い空気が生まれてしまうのでは?

もちろん、これまでPTAがしてきたような学校のお手伝いも、やりたい人がいたらやればいいのです(他の人を無理に巻き込まない前提で)。ただ同時に、もっと「保護者自身が求めるもの」も、大事にしていいんじゃないかと思うのです。それはきっと、子どもや学校にもいい影響をもたらすのでは――そんな確信があります。

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大塚 玲子(おおつか・れいこ)
ノンフィクションライター、編集者
1971 年生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材、執筆。著書は『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。東洋経済オンラインで「おとなたちには、わからない。」、「月刊 教職研修」で「学校と保護者のこれからを探す旅」を連載。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

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(ノンフィクションライター、編集者 大塚 玲子)

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