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毎日耳掃除をやってはいけない…耳鼻科医が解説「耳掃除は2週間に1回"手前だけ"で十分」な理由

プレジデントオンライン / 2024年6月5日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PORNCHAI SODA

子どもは中耳炎や耳垢栓塞になりやすい。どうすれば防げるのか。小児耳鼻咽喉科を専門とする国立成育医療研究センターの医師・守本倫子さんは「中耳炎は『鼻水を取り去ること』、耳垢栓塞は『耳掃除をやりすぎないこと』が予防になる」という。正しいケアの方法を聞いた――。(聞き手・構成=大西まお)

■小さな子どもに多い「急性中耳炎」

子どもの耳トラブルにはどんなものが多いのかよく聞かれますが、もっとも多いのはやはり「中耳炎」でしょう。小さなお子さんをお持ちの親御さんたちの実感ともぴったり合うのではないかと思います。風邪をひいて熱が出て鼻水が出て、それが治ったと思ったら再び発熱……という時は中耳炎であることが多いものです。

中耳炎とは、鼓膜の奥にある「中耳腔(ちゅうじくう)」に細菌やウイルスが入り込んで感染し、炎症が起きる病気です。中耳炎には、風邪などが原因で起こる「急性中耳炎」、炎症部分から膿や水が出てたまる「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」、感染を繰り返して耳漏(じろう)(耳からの排液)が続く「慢性中耳炎」などがあります。

このうち小さな子どもが最もなりやすいのは、急性中耳炎です。風邪による鼻水や咳(せき)が治りかける頃になりやすく、強い耳の痛みだけでなく、時に耳だれを伴うのが特徴。子どもは耳と鼻をつなぐ「耳管(じかん)」が短くて水平で、また鼻をすすることが多いため、鼻から耳へと細菌やウイルスが移行しやすいのです。治療には抗菌薬(抗生剤)や痛み止めを飲む、また鼓膜に膿(うみ)がパンパンに溜まっているときは鼓膜を切開するなどの方法があります。鼓膜を切開するというと怖く感じるかもしれませんが、通常2週間くらいで穴はふさがるので安心してください。

■膿や水がたまり聞こえが悪くなる「滲出性中耳炎」

一方の滲出性中耳炎は、急性中耳炎が治った後にも中耳腔に水が溜まり、聞こえづらくなってしまう病気です。急性中耳炎と違って痛みはないのですが、だからこそ子ども本人も親御さんも気づきにくく、いつの間にか耳の聞こえが悪くなる、という問題があります。

音は振動として外耳道から鼓膜に伝わると、鼓室内にある耳小骨(じしょうこつ)で22倍に増幅されて内耳に伝わります。ところが、滲出性中耳炎になって鼓膜の裏側に膿や水が溜まってしまうと、音が遮断されるだけでなく、鼓膜や耳小骨が振動しなくなって聞こえづらくなります。水に浸かった太鼓を叩いても、あまり音が鳴らないのと同じですね。粘度が高ければ高いほど、聞こえづらくなるのです。

滲出性中耳炎は、あまり重くない場合、内服薬で治療することができます。でも、粘液や水が多かったり粘度が高かったり、粘膜が肥厚していたりする場合は鼓膜を切開してチューブを装着し、浸出液が排出されるようにします。治療に1年くらいかかることもありますが、耳の中が乾いていくことによって治りやすくなるわけです。

■「鼻水を取り去ること」が予防になる

さて、難聴にもつながりかねない厄介な中耳炎を防ぐには、しっかり鼻水を取り去り、鼻水をすすらせないことが大切です。鼻水を強くすすると、より鼻から耳へと細菌やウイルスが送られやすくなるためです。でも、小さな子どもにとって上手に鼻をかむこと、鼻をすすらないことは、なかなかの難問ですね。鼻うがいも効果的ですが、より難しいでしょう。

そこで私たちがおすすめしているのは、市販されている生理食塩水の鼻スプレーです。これを鼻の中に吹き付けると鼻水が柔らかくなるので、鼻水吸い器で取りやすくなり、鼻もかみやすくなります。涙と同じ成分の生理食塩水だから鼻が痛くならず、鼻水ごとのどに流れて飲んでも問題ありません。泣いた後、お風呂の後、プールの後にも鼻がすっきりしているのと同じです。

さらに電動の鼻水吸い器があれば、とても便利でしょう。ただし、お子さんが小さいうちしか使わないかもしれません。もしも通院が大変でなければ、耳鼻科で吸引してもらうというのも選択肢の一つにしてもいいかもしれません。こまめに鼻水を取り除けば、鼻風邪から中耳炎へと進むのを少しは予防できると思います。

■耳垢栓塞の原因は「耳掃除のやりすぎ」

その他に意外と多いのが、「耳垢栓塞(じこうせんそく)」です。SNSなどに「子どもの耳が遠いから耳鼻科で診てもらったら、耳垢が詰まってた!」「耳が痛いと子どもが言うから何かと思ったら、中に石のような耳垢が!」なんて話がありますよね。まさにそれです。

耳垢栓塞の原因は、ほとんどの場合、過度の耳掃除です。本来、耳垢はカサカサでもベタベタでも、自然に剝がれて出ていくもの。長時間にわたって耳栓や補聴器をつけている場合以外は、耳の穴の出口を小指の先でササッとかくようにするだけでポロポロと出ていきます。あれで十分なのです。ところが真面目な親御さんほど、お子さんの耳を綿棒で毎日しっかり掃除し、逆に耳垢を押し込んでしまいがちなのです。

こうして耳の中に石のように硬くなった耳垢が詰まると、自宅で取るのは困難になります。近くの耳鼻科を受診して、ピンセットや吸引管、綿棒などで取ってもらいましょう。そのままでも日常生活にさほど支障のない場合は、耳垢を柔らかくする点耳薬を出してもらって1〜2日ほど使ってから取ってもらったほうが痛くないこともあり、おすすめです。

子供の耳をチェックする大人の手元
写真=iStock.com/nzfhatipoglu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nzfhatipoglu

■正しい耳掃除の3つのルール

では、耳掃除をしてはいけないかというと、そんなことはありません。でも、ぜひ守っていただきたいことがあります。

①ときどき、耳穴の手前のみを掃除しましょう

お風呂上がりやプールの後など耳垢が柔らかくなっているときに、耳穴の手前部分のみを綿棒でやさしくふき取るようにしてください。頻度は2週間に一度など気になるときだけ。あまり頻繁にこすると、耳の中を傷つけてしまう恐れがあります。

②子ども用の「頭が小さい綿棒」を使いましょう

100円ショップのものは綿棒の頭が大きいことが多いです。それよりは少し高級になりますが、子ども用の頭が小さい綿棒を使ってください。子どもの耳穴は小さいので、頭が大きい綿棒だと耳垢を奥に押し込みやすくなってしまうのです。さじのような形の綿棒は、テコの原理で力が入りやすいので使わないほうが無難です。

③綿棒には薄くワセリンを塗っておきましょう

綿棒はフワフワして見えますが、拡大して見ると粗い繊維のかたまりです。でもワセリンを塗れば傷つけるリスクが減りますし、カサカサの耳垢も吸着できます。

ちなみに、耳の中がかゆくて我慢できない場合は、炎症を起こしていることがあります。一度耳鼻科を受診し、ステロイドなどのかゆみや炎症をおさえる軟膏をつけて掃除するといいでしょう。耳の中の神経は痛みよりもかゆみを感じやすいため、耳掃除によって傷つけると、さらにかゆくなるという悪循環に陥りがちだからです。

■日常生活でわかる子どもの「聞こえ」のサイン

最後に「子どもの耳が聞こえていないかも」というご相談も多いので、簡単に説明したいと思います。小さな子どもの場合、自分で耳の聞こえを自覚することは難しいですから、親御さんが観察していて「おかしい」と思ったら早めに耳鼻科を受診しましょう。例えば、以下のような様子が見られる場合、念のため相談しておくと安心かもしれません。

・背後から話しかけられると返事をしないことが多い
(何かに夢中になっていなくても返事をしない)

・人の話を聞くときに、どちらか片方の耳を傾けている

・2歳になっても言葉が出てこない

・テレビなどの電子機器の音量を上げたがる、耳を近づける

・片方の耳にケータイを当てて通話すると返事をしない

・聞き返しが多い

耳に手を当ててよく聞こうとしている男の子
写真=iStock.com/DenisZbukarev
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DenisZbukarev

子どもの耳が聞こえない場合、急性中耳炎や滲出性中耳炎、慢性中耳炎、耳垢栓塞などが原因であることが多いでしょう。必ず治療を受けてください。

また稀にですが、おたふくかぜにかかったのであれば、おたふく難聴の可能性もあります。おたふく難聴は1000人に1人とされますが、多いと200人に1人ともいわれています。おたふく難聴には治療法がないので、ワクチンを接種し、おたふくかぜ自体を予防してくださいね。

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守本 倫子(もりもと・のりこ)
医師
国立成育医療研究センター小児外科系専門診療部 耳鼻咽喉科 診療部長。新潟大学医学部卒業後、慶應義塾大学耳鼻咽喉科入局。その後、海外留学などを経て2018年より現職。専門分野は、小児耳鼻咽喉科、小児喉頭疾患、小児難聴。

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(医師 守本 倫子 聞き手・構成=大西まお)

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