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「女・半沢直樹」の今田美桜があのCM女王を超えるのは時間の問題…同じ九州出身女優のガチンコ勢力争い

プレジデントオンライン / 2024年5月23日 10時15分

TBSテレビ 金曜ドラマ『9ボーダー』の公式サイトより

「半沢直樹」も手掛けた池井戸潤原作のドラマ「花咲舞が黙ってない」が話題になっている。「お言葉を返すようですが……」の決めセリフで目上の人や不正を働いた人に物申す姿が爽快といった声も多い。主演の今田美桜は2023年までの5年間の「令和タレントCM起用社数ランキング」で2位にランクイン。1位は川口春奈で春ドラマにも主演しているが、次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「出演番組の視聴率を分析すると、勢いで今田が優っている」という――。

■CM女王の2トップはいずれも「九州出身の女優」

今期の春ドラマでは2人の人気女優の対決が話題となっている。

今月発表された「令和タレントCM起用者社ランキング」(2019年~23年、ニホンモニター調べ)で、1位の川口春奈(33社)と僅差で2位の今田美桜(29社)が、それぞれ連ドラの主役となったからだ。

川口は19歳・29歳・39歳の3姉妹が自分の生きる道を模索する「9ボーダー」(TBS系、金曜22時)に、一方、今田は池井戸潤原作の「花咲舞が黙ってない」(日本テレビ系、土曜21時、以下花咲舞)のヒロインである。後者は、銀行を舞台に、不正を絶対に見て見ぬふりできない花咲舞が、弱い立場の人たちのために立ち上がる姿がお約束のシーンで、2014~15年、杏主演で放送して大ヒットしたのに続く第2弾だ。

両ドラマとも話題になっているが、放映開始からの数週間の視聴実態を分析するとその勢いに変化が生じていることがわかる。その興味深い結果を報告する前に、2人の略歴を簡単に紹介しよう。

川口は、今期のドラマの役と同じ29歳で、4年前にブレークした。

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、逮捕された沢尻エリカの代役を急遽勤め話題となったのが転機だった。その後20年秋の「極主夫道」(読売テレビ系)でヒロイン役、21年春「着飾る恋には理由があって」(TBS系)で主演、22年前期後期と連続してNHK連続テレビ小説(「ちむどんどん」「舞い上がれ!」)に出演し、同年秋に主演した「silent」(フジテレビ系)が社会現象となるほどヒットした。そして23年夏「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)のヒロインに続いて、今回の「9ボーダー」主役と引っ張りだこだ。

一方の今田(27歳)のキャリアは、川口にやや遅れる。

ヒロインに抜擢された映画『東京リベンジャーズ』で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞をとったのが3年前。テレビの連ドラ初主演は「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(日本テレビ系)の2年前。そして去年は春と夏に連ドラで主要な役を演じ、秋には「いちばんすきな花」(フジテレビ系)で主役となった。今回の「花咲舞」は連ドラ3本目の主役である。

2024年4月期土ドラ9「花咲舞が黙ってない」公式サイトより
2024年4月期土ドラ9「花咲舞が黙ってない」公式サイトより

さて、それぞれが主演を張るドラマの評判はどんなものなのか。

■「芸能人好き」層の動向

まず「芸能人好き」層は両ドラマにどう反応しているのかをチェックしよう。

世帯や個人だけでなく、特定層別の視聴率まで測定しているスイッチメディアのデータによれば、関東のサンプル約1万2000人のうち1割弱が「タレントや芸能人に興味あり」と答えている。

【図表】「芸能人好き」層の平均視聴率比較
スイッチメディア「TVAL」データから作成

該当者全員では、今田の「花咲舞」と川口の「9ボーダー」はほぼ互角だ。性別の区分けでは、女性では川口が上だが、男性は今田が1.5倍となった。

これに年齢を重ねてみよう。

「50歳以上の女性」では川口が2割リードしたが、「49歳以下の女性」では3割以上今田が逆転した。

また「男性50歳以上」だと、今田が1.8倍近くとなる。ただし「49歳以下男性」では1.2倍程度と差はそれほど大きくない。

つまり「女性50歳以上」が川口派だが、「男性50歳以上」と「男女49歳以下」では今田派という構図だ。

ただし「女性50歳以上」はドラマ視聴者の最大ボリュームとなるため、全体では僅差となったのである。

興味深かったのは、初回から5話までの推移だ。

初回は川口派が圧倒した。ところが同層の「9ボーダー」視聴率は徐々に下がり、逆に「花咲舞」は右肩上がりとなる。5話では4割も今田派が凌駕した。放映開始当初の期待は「9ボーダー」が大きかったが、ドラマの内容により「花咲舞」が逆転した可能性がある。

■前半戦で明暗くっきり

5話平均を幅広い年齢で確認してみよう。

【図表】両ドラマ5回平均の性年齢別視聴率
スイッチメディア「TVAL」データから作成

全ての層で「花咲舞」が上を行った。

それでもF2~4(女性35歳以上)では肉薄した。つまりその年齢層の女性には「9ボーダー」は興味深い物語になっているが、他の層では大きな差となった。

この辺りの状況は、SNSへの書き込みにも表れている。

「美桜ちゃんかわいい」
「可愛い人はメガネかけても可愛い!」
「今田美桜ちゃんの演技がかっこよすぎ‼」
「毎度スッキリして面白い」

まずは今田を評価する声が目立つ。毎回ストーリーの終盤で「お言葉を返すようですが……」という決めセリフで物申して、視聴者に爽快感を与える姿は「女・半沢直樹」のようだという声も多い。

一方で「9ボーダー」に対する声は方向性が異なる

「心に沁みる」
「等身大の三姉妹の苦悩に共感」
「アラサーとして共感しすぎて泣いてしまう」

反応しているのは圧倒的に同世代の女性たち。しかも川口ほかの登場人物を無条件で堪能する声は少なく、二十歳前、アラサー、アラフォーに特有の悩みなどが描かれたストーリーへのコメントが多い。

仕事でまっすぐに理想に向け奔走する今田に快哉をあげる「花咲舞」の視聴者たち。一方で、自分の思うようにいかない現実への苦悩に共感する「9ボーダー」の視聴者層。この対照的な内容が、視聴率“堅調vs右肩下がり”という差になったようだ。

要因には男性の極端な動向もある。

10代から64歳まででは「花咲舞」がほぼ1.7倍。特に男子中高生では約1.8倍、男性65歳以上では1.9倍にまで開いた。ターゲット層の間口の“狭い広い”の差がくっきり出た格好だ。

■「ドラマ好き」層でも差が拡大

勢いの差は、20~50代「TVドラマ好き」層でも明確だ。

【図表】TVドラマ好きの視聴率
スイッチメディア「TVAL」データから作成

「9ボーダー」は、男女ともに右肩下がりとなってしまった。女性では初回で1.5倍リードしていたが、5話では逆に2割以上差を付けられてしまった。

男性では初回の3割マイナスが、5話では半分にまで広がってしまった。残念ながら「9ボーダー」は、「TVドラマ好き」層のお眼鏡にはかなわなかったようだ。

SNSのつぶやきでも、「9ボーダー」の劣勢が明確だ。

「(着飾る恋の)二番煎じ感が否めないなぁ」
「(川口春奈でも)私には刺さらなかった」
「役者の無駄遣い感半端ない」

ドラマ名と「離脱」という言葉で検索すると、「9ボーダー」は5倍もヒット数が多い。視聴率右肩下がりはこうして起こっていたのである。

■サラリーマンの見方

今田と川口は、共に20代のOLを演じている。ところが職業・職種別にどう見られているかを分析すると、両ドラマには大きな違いがある。

【図表】両ドラマ5回平均の職業・職種別視聴率
スイッチメディア「TVAL」データから作成

サラリーマン全体では、「花咲舞」の視聴者が1.5倍近く多い。

原因はやはり“注目する層の幅”にある。「9ボーダー」は女性の非管理職や非正規の人々で健闘はしているが、男性の非管理職や非正規では、倍前後の差をつけられてしまった。

職種別では営業や企画・マーケティング職でまずまずだったが、技術職・接客業・公務員などでは「花咲舞」が大きくリードした。特に今田と同じ金融・保険で働く女性は、2倍差となった。やはり身近で自分事となる内容か否かは、ドラマの設定が大きな力をもったようだ。

■今後を占う

前出の経歴を比べると、川口の黄金期は20~22年。片や今田の活躍は始まったばかりだ。視聴率は主演俳優だけで決まるわけではないが、期せずして今期両ドラマの視聴率は、2人の女優の瞬間風速的な勢いを反映させたようにも見える。

さらに、今田は来年度前期のNHK朝ドラ「あんぱん」の主役が決まった。ここまで幅広い役を演じているが、漫画家やなせたかしの妻・小松暢をモデルにした主人公が、どんな活躍を見せるのかにも注目が集まっている。

若年層や男性の支持が高い今田。そして主役ラッシュとなっている今の状況。どうやら冒頭で紹介したCM起用社数ランキングの首位が入れ替わるのも時間の問題と言えそうだ。なお、川口は長崎県で、今田は福岡県。同じ九州出身の女優の中には橋本環奈(福岡県)もおり、テレビやCMを席巻していると言えるかもしれない。

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鈴木 祐司(すずき・ゆうじ)
次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト
愛知県西尾市出身。1982年、東京大学文学部卒業後にNHK入局。番組制作現場にてドキュメンタリーの制作に従事した後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。デジタル化が進む中、業務は大別して3つ。1つはコンサル業務:テレビ局・ネット企業・調査会社等への助言や情報提供など。2つ目はセミナー業務:次世代のメディア状況に関し、テレビ局・代理店・ネット企業・政治家・官僚・調査会社などのキーマンによるプレゼンと議論の場を提供。3つ目は執筆と講演:業界紙・ネット記事などへの寄稿と、各種講演業務。

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(次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト 鈴木 祐司)

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