「配偶者が一番大事」は大間違い…和田秀樹「65歳から本当に大事な人間関係を見極める唯一の方法」
プレジデントオンライン / 2024年5月27日 15時15分
※本稿は、和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■人目を気にしていると、結局損をする
人に嫌われたくない。そう思っていると、自分が他人にどう思われているかが絶えず気になります。
しかし、人の目を気にするのは、多くの場合「独り相撲」です。
まず、見ず知らずの人には、どう思われたとしても、基本的に実害はありません。
人に迷惑をかけるようなことをしていない限り、赤の他人にどう思われたとしても、自分には何の関わりもないことです。
会社勤めをしている人が社内の人の目を気にする、あるいは子育て中の人がママ友の目を気にする、というのはわかります。
たとえば、羽目を外して遊んでいるところを同僚やママ友に見られて、よからぬ評判を立てられたら、場合によっては仕事に支障が出たり、ママ友の集まりに参加しづらくなったりするでしょう。
何らかの利害関係がある相手であれば、その目をある程度は気にせざるを得ません。
ところが、会社を定年退職したり、子どもが独立したりして、すでに実質的な利害関係がなくなったあとも、元同僚や元上司、かつてのママ友といった人の目を気にし続ける人が少なくないのは、やや奇妙に感じられます。
老年精神科医として、アンチエイジングに関する提言を行っている立場から言えば、そんなふうに人目を気にしていると、結局損をすることになります。
「年甲斐もない」などと他人に思われることを気にせず、興味や関心があるのだったら多少派手な服を着たり、美容に力を入れたり、思い切った髪色に染めてみたりするほうが、むしろ若返って、残りの人生をより楽しめるようになることが多いからです。
■人が誰かに嫌われる原因は相手の「地雷を踏む」から
また、嫌われたくないと思うことで、人づき合いが窮屈(きゅうくつ)になることもあります。
「今度の集まりで行きたいお店を提案したら、図々しいと思われるかしら」
「あのお礼の電話は、もっと早くかけたほうがよかったかな」こんなふうに、四六時中、相手に気を遣う人がいます。
しかし、人が誰かに嫌われるとしたら、それはたいていの場合、相手に気を遣っていないからではなく、相手の「地雷を踏む」、つまり、相手が気にしていることをうっかり口にしてしまうなど、「言ってはいけないこと」を言うからです。
多少、気を遣わなかった程度の「どうでもいいこと」で、人が人を嫌うことはまずありません。地雷さえ踏まなければ嫌われることはない。そう思えば、もっと人とフランクにつき合えるのではないでしょうか。
また、気を遣いがちな人ほど、上下関係に敏感な人が多いという印象があります。
自分より上か、少なくとも同格と思う相手には過剰なほど気を遣う一方で、自分より下と見なす相手には、無意識のうちに尊大な態度をとっていて、それが嫌われる要因になっている可能性もあります。
みんなに好かれようと思うと、人づき合いはしんどくなります。
嫌われても問題のない相手はいくらでもいます。一方で、この人にだけは嫌われてはいけないという相手もいます。
あなたにとって、本当に大事な相手にさえ嫌われなければ、人に嫌われることを怖れる必要はないのです。
■本当に大事な人間関係とは、肉親や夫婦とは限らない
では、あなたにとって本当に大事な相手とは、誰でしょうか。
親子やきょうだい、夫婦など、近しい関係の相手が一番大事、と考える人は多いと思いますが、それは思い込みの可能性があります。そして、その思い込みによって、不自由になっていることが少なくありません。
たとえば、子どもが一番大事だと思っていると、子どもに嫌われたくないからと、自分のやりたいことを我慢してしまうことがあります。こんな例を考えてみてください。
夫に先立たれて寂(さび)しい思いをしている女性が、行きつけのお店で知り合った男性と仲よくなり、再婚を考えるようになったとします。
この女性に財産がある場合、その子どもたちは、ほぼ間違いなく相手の男性が財産目当てだと考えて、再婚に反対するでしょう。そこで本人はたいてい、再婚をあきらめてしまいます。
しかし、たとえ財産目当てであったとしても、日本の法律上、その女性が最期を迎えるまで伴侶として添(そ)い続けなければ、相手の男性は遺産を手にすることができません。
一方で、再婚に反対した子どもがその後、母親を手厚くケアしてくれるとも限りません。
だとすれば、子どもに嫌われることを怖れるより、自分を幸せにしてくれそうな人、一緒にいて心地がいい相手とつき合うことを選ぶほうがいいと言えるのではないでしょうか。
本当に大事な人間関係とは、肉親や夫婦とは限りません。
■遠慮しなければ成り立たなければ「いい関係」とは言えない
私は職業柄、多くの高齢者を見てきているので、親の遺産相続できょうだいが壮絶に争うケースや、親の介護のために自分の生活を犠牲にして、結果的にほかの人間関係を失うケースなどもよく見ています。
子どもが独立したあと、夫婦で顔をつき合わせる暮らしになり、相手にうんざりしながら我慢している人も少なくありません。
自分と本当に気が合う人。この人は心の支えだと感じられて、互いに愛情を持ち、一緒にいると心が安らぎ、何でも打ち明けられる人。それが自分にとって大事な人なのであって、親や子や配偶者だから大事というわけではないのです。
そこの峻別(しゅんべつ)をしっかり行い、自分にとって本当に大切な人間関係を見極める必要があると思います。
嫌われたくないからと相手に遠慮しているのであれば、その相手は、本当の意味で自分をわかってくれていると言えるでしょうか。
少なくとも、遠慮しなければ成り立たない関係なのであれば、夫婦であろうが、親友であろうが、その時点で「いい関係」とは言えないと思います。
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精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)
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