新NISAの"敗者"は投資開始の前にバレている…元会社員で資産1.8億の50代個人投資家が断言する納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年5月24日 10時15分
■新NISAブーム、踊らされる人と自分の軸を持って始める人の差
今ほど投資が賑わったことがかつてあったでしょうか。投資メディアだけではなく、写真週刊誌やテレビのバラエティ番組でも投資を扱っています。芸能人がYouTubeで投資を語っています。数年前まで、街中で投資話を耳にすることはまずありませんでしたが、昨年くらいから投資話をされることもあります。それだけ投資が一般化しつつあるということでしょう。これは、2024年から始まった新NISAによる効果だと思います。
新NISAが始まって5カ月ほどが経過し、おおむね前向きな報道が多いなかで、逆張りを仕掛けてくるメディアもあります。新NISAが始まった2024年の年始から日経平均株価は上昇を続けて4万1000円台まで到達しました。ところが、軟調に転じて、そこから3000円以上値下がりしたときに「新NISAを損切り」なる報道を見かけました。
また、「政府が、医療・介護保険に、金融所得の反映のありかたを検討する」旨の報道に、「新NISAさせておきながら、事実上の課税を仕掛けてくるんだ」という憶測(感想)を見ました(新NISAが対象になるとは決まっていません)。または、これだけの円安のタイミングで米国株に投資すれば、円高になったときに損をするという考えの方もおられるようです。
私はその報道や一部の世論に違和感を覚えています。本稿では、「新NISAで軌道に乗る人・頓挫する人 私が考える共通点6」を紹介し、新NISAをどう活用すれば勝ち組になれる可能性が上がるのかを解説します。
■新NISAおさらい
新NISAについて、おさらいしておきましょう。主に5つのメリットがあります。
(1) 通常、投資信託や株式などで儲けたお金には約20%の課税があります。新NISAでは、これがただ(非課税)となります。譲渡益(売却益)も配当金・分配金も非課税です。
(2) 旧NISAでは非課税期間が有期であり、大きな足枷になっていました。新NISAでは、非課税期間が無期限化されました。
(3) 旧NISAでは生涯の投資上限額が十分とはいえませんでした。新NISAでは生涯の投資上限額が1800万円(簿価)まで増額されました。
(4) その1800万円の非課税枠は再利用が可能になりました。つまり、A社の株に投資、数年後に利益確定(売却)すると、その簿価分だけの非課税枠が、翌年以降に再利用できます。
(5) 旧NISAでは「つみたてNISA」と「一般NISA」のどちらか選択制でした。「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」に、「一般NISA」は「成長投資枠」に、それぞれ生まれ変わり、併用が可能となりました。どちらかのみ使っても構いません。ただし、成長投資枠のみ使う場合は、生涯の投資上限枠は1200万円(簿価)です。
新NISAにはこれらメリットがあり、旧NISAの欠点とされていた部分がおおよそ解消されたといえます。私は「神NISA」と呼んでいます。非課税期間が無期限、投資上限額が拡大となったため、年齢や資産額、得意な投資法、入金力(投資に回すことができる金額のこと)」などを鑑みながら、いろんな選択肢が取れるようになりました。
非課税枠の再利用ができるようになりましたので、どんな投資をするのか迷っている人には、試行錯誤も可能です。通常なら利益に約20%もかかる税金がただになるのは嬉しいですね。逆にいえば、国は新NISAを用意したから「老後2000万円問題」は自分で解決してよ……と腹のなかで思っているのかもしれません。
■活用法
どんな活用法が考えられるのでしょうか。私が投資初心者もしくは、新NISA初心者なら次の3つを考えます。
(1)米国株もしくは世界の株に投資する投資信託
米国株もしくは世界の株に投資する投資信託に、毎月同額を積立投資する。つみたて投資枠の活用をメインとしますが、つみたて投資枠の年額上限120万円を超える部分は、成長投資枠(同240万円)も合わせて活用します。年率5%での複利運用を目指します。そのポテンシャルがある銘柄はまた別の機会にご紹介しましょう(以下2・3も同様)。仮に、毎月3万円を、30年間にわたって年率5%で複利運用できれば、投資額1080万円に対して、評価額は2496万円になります。
ここで、冒頭で記述した「円安の今のタイミングで米国株に投資すると、円高になったときに損をする」という意見への私からの反論を記述しておきます。仮に1ドル155円が120円になったとして、率でいえば30%ほどです。年率5%で複利運用のポテンシャルと、為替レートが30%動くことと、長期の資産運用ではどちらが大きく影響するでしょうか? 30年後には投資した額の2.5倍近くにもなるという上記シミュレーションとも合わせて考えれば、為替レートの変動をそれほど恐れる必要がないことがわかります。
(2)日本株の高配当株・増配株に分散投資
日本株の高配当株や増配株に分散投資します。成長投資枠での投資となります。保有銘柄数は、投資額によりますが10~20程度が良いでしょう。1銘柄あたり60万~120万円程度を想定します。それらから配当金を得ながら株価上昇も狙う投資法です。配当金は不労所得になり、給料以外の収入があるのは嬉しいものです。新NISAなら、日本株の配当金は生涯にわたって完全に非課税です。「老後2000万円問題」に照らし合わせて考えるならば、月額5万円(年額60万円)の配当金があれば問題はクリアできるということです。
(3)米国株の成長著しい増配株に分散投資
米国株の成長著しい増配株に分散投資します。(2)のケースと同様に10~20銘柄程度が良いでしょう。米国企業の株主還元策は優秀です。株価を上げようとし、増配しようとし、自社株買いもします。それらに支えられて株価は上昇し、配当金も増えていきます。株価の伸び方が日本株のそれとは異なる強さがあります。ただし、新NISAでも、米国株の配当金には、米国で10%の課税があります。米国株の強さについても、また別の機会にお話ししたいと思います。
それでは、「新NISAで軌道に乗る人・頓挫する人」に関して私が考える共通点6を解説しましょう。
■軌道に乗る人の共通点6
軌道に乗る人の共通点として考えられるのは、次の6つです。
(2)最低でも数年は保有して長期で利益を得る
(3)増配株を長期保有して超高配当化を狙う
(4)投資方針が固まっている
(5)株価の確認は1日1~2回以下
(6)事実だけを見る
ひとつずつ解説しましょう。
(1)ゴールベースで物事を見られる
投資の目標設定をして、その目標と現在とのギャップを意識して、どう行動するべきかという視点で判断することが大事です。たとえば、マーケット全体が不調で株価が下落した→安く買うチャンスだから追加で投資しようと判断できる人は強いです。活用法(2)のケースだと、高配当株が安く買えるので、それだけ配当利回りが上がるということなのです。
(2)最低でも数年は保有して長期で利益を得る
株価は、短期では需給で決まり、長期では企業価値で決まります。企業価値とは簡単にいえば「どれだけ物やサービスを売って、どれだけ稼げる企業なのか」ということでしょう。この法則に則り、短期売買で小さな利益を追うのではなく、長期投資に見合った優良銘柄を選択して大きく利益を狙いたいところです。活用法(1)にあたる投資信託であれば永久保有でもいいくらいです。
(3)増配株を長期保有して超高配当化を狙う
増配株とは、配当金を増やし続ける株のことです。長期保有することで、自身の投資額(簿価)に対する配当利回りが高配当化することが狙えます。10年保有で、自分の投資額に対する配当利回りが10%を超えることもあります。ここまで育てられれば、個別株でも永久保有が視野に入ってくるでしょう。
(4)投資方針が固まっている
投資方針に芯があることが大切です。投資信託狙い、日本の高配当株狙い、米国の増配株狙い、日米の増配株狙いなど、投資方針を固めましょう。
(5)株価の確認は1日1~2回以下
長期の資産形成を目標とするなかで、株価の確認は1日1~2回以下で十分です。投資信託への積立投資なら、マーケットをまったく見なくても大丈夫なくらいです。個別株を持つ場合は、保有銘柄が単独で大きく下落した場合に原因確認が必要なので、まったく見ないのも良くありません。
(6)事実だけを見る
国は制度を決める(改悪する)ために「観測気球」を打ち上げて、世論の様子を見てくることが度々あります。先述の医療・介護保険に、金融所得の反映のありかたを検討する旨の発表もそのひとつです。いろんな報道があります。SNSでも玉石混交の情報が流れます。情報収集が大切とはよく聞きますが、大事なことは、正しい情報源から正しい情報を得て、事実だけに基づいて判断することです。
■頓挫する人の共通点6
逆に頓挫する人の共通点として考えられるのは、次の6つです。
(2)マーケット全体が悪いときに保有銘柄を損切り
(3)短期間で利益確定
(4)投資方針が固まっていない
(5)目先の株価の動きをしょっちゅう確認する
(6)憶測で語る
ひとつずつ解説しましょう。
(1)マーケットベースで物事を見てしまう
米国利下げが遠のいて株価が大きく下がった、円安になった評価額が戻った……など、マーケットに張り付いてそわそわするのは失敗のもとです。株価が下がったから怖くて売って楽になろうとか、株価が戻ったから損しないうちに売ろうと考えがちになります。
(2)マーケット全体が悪いときに保有銘柄を損切り
投資していると1年に1度はマーケット全体が大きく下落することがあります。数年ごとにより大きな下落があります。そこで、保有銘柄が連れ安して怖くなって、冒頭で紹介した「新NISAを損切り」に走ると失敗します。株価は、長期では企業価値に連動することを忘れてはいけません。
(3)短期間で利益確定
小さく儲けても、生涯の資産形成で考えるとほぼ恩恵なし。新NISAは売買を繰り返すことを前提としていません。儲けて売っても、非課税枠が再利用できるのは翌年以降なのです。つまり、短期売買を繰り返すように制度設計されていません。
(4)投資方針が固まっていない
ポートフォリオが高配当株や無配の成長株などでバラバラに構成されるのは望ましくありません。ただし、高配当株をコアとして安定的に運用するなかで、無配の成長株をサテライトとして資産成長を加速させるなど、はっきりと方針が固まっているならこの限りではありません。
(5)目先の株価の動きをしょっちゅう確認する
1時間ごと、暇さえあれば、暇でなくても……株価を見てしまう。長期の資産形成を目指すなかで、目先の株価の動きをしょっちゅう確認する意味などありません。短期思考に陥る危険性があります。
(6)憶測で語る
溢れる情報を鵜呑みにして情報に溺れてしまい、勝手な憶測で判断をするのは良い結果を生みません。
■まとめ
資産形成とは、今日や明日のお金を稼ぐものではありません。10年単位~老後のお金を作っていくものです。したがいまして、長期目線で物事を見る、判断することが大切です。一言でいえば、共通点6のそれぞれトップにあげた、「ゴールベースで物事を見る」「マーケットベースで物事を見る」……このうちのどちらの視点になるかで、成功・頓挫に分かれてくると思います。つまり、新NISAの“勝ち組”は投資への正しい心構えがあり、そうではない人にはないということかもしれません。
活用法(1)で紹介した投資信託への積立投資であれば、毎日株価を見ることなど不要です。(2)や(3)なら、個別株が単独で株価急落した場合に原因の確認が必要なので、株価の確認をする必要がありますが、それでも1日1~2回以下で大丈夫です。そわそわ株価を気にせずに、がちゃがちゃ保有銘柄を売買せずに、落ち着いて長期思考での投資を目指しましょう。
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投資家(投資歴20数年)・物書き
2020年に47歳で資産1億円とともに約25年間勤務した会社を早期退職。それから3年強で資産を1.7億円にまで成長させる。投資先は世界30カ国の高配当株や増配株、ETF、REITなど幅広い。現在は両親の介護・見守り(父は難病で要介護5、母はがんサバイバー)、そして家事をしつつ、単行本や連載、ブログなどを通じて投資やFIREに関しての情報を発信している。子ども食堂への支援も行う。著書に『今日からFIRE!おけいどん式 40代でも遅くない 退職準備&資産形成術』『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(以上、宝島社)、『お得な使い方を全然わかっていない投資初心者ですが、NISAって結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎)がある。(プロフィールイラスト=西田ヒロコ)
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(投資家(投資歴20数年)・物書き 桶井 道)
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