これを言える夫婦の9割はうまくいく…医師・和田秀樹が「歳を重ねたら呟きなさい」と説く"6文字の口癖"
プレジデントオンライン / 2024年5月31日 15時15分
※本稿は、和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■会話の断片にこだわり、心をかき乱されてはいけない
誰かに言われたキツいひと言などが、いつまでも心に刺さったままになっていて、何かの拍子にそのことを思い出す。すると、「あの人にこんなひどいことを言われた」という悪感情がぶり返してきて、悶々(もんもん)としてしまう。そんなこともあるかもしれません。
相手に言われたことがいつまでも忘れられず、その悔しさや怒りをくすぶらせ続けている、いわゆる「根に持つタイプ」の人は、相手が発した言葉の、ほんのわずかな断片にこだわっていることが多いものです。
たとえば「あなたは冷たい」と言われたことを根に持っている場合、往々にしてその言葉だけが心に刺さり続けています。
そこで、そのときの会話の流れを、あらためて思い返してみてください。その言葉が出たときの状況や、前後のやりとりはどうだったでしょうか。
相手が「冷たい」と感じるのも無理はないような、何らかのことをこちらが先に言っていたかもしれません。あるいは、こちらを責めるようなものではなく、もっと軽いリアクションのような言葉だったと気づくこともあるでしょう。
俯瞰(ふかん)的な視点で会話の流れ全体を見渡してみると、「相手がそう言うのもしかたなかった」「あれは弾みで出た言葉だった」などと、冷静に受け止められる可能性があります。
会話の断片にこだわるのは、週刊誌の広告のショッキングな見出しだけを目にして、心をかき乱されるようなものです。記事全体を読んでみると、それほどたいした話でもなく、バカバカしい気分になったりするものです。
一歩引いたところから全体を眺めると、ものごとを受け止めやすくなります。
少し離れることでラクになる。それは、人間関係全般に言えることです。
■自然に遠のいた関係は、ちょっとしたきっかけでまた近づく
学生時代の友達、独身で会社勤めをしていたときの同僚、子どもが幼かった頃のママ友、かつて住んでいた家のご近所さん……。
一時期は毎日のように会っておしゃべりしていたのに、気がつけばほとんど会わなくなった。歳を重ねれば、そんな相手が何人もいるはずです。
その相手とは、別にけんかしたわけでも、気まずくなったわけでもありません。互いの生活の変化にともなって、自然に疎遠になったのです。自然に遠のいた関係は、ちょっとしたきっかけでまた近づくことがあります。
しばらく連絡を取らないうちに、なんとなく疎遠になった相手から、たまたま何かの知らせをもらい、そこからやりとりを重ねて、久しぶりに再会。当日は話が尽きず、楽しい時間があっという間に過ぎた。
そしてまた、以前ほど頻繁ではないにせよ、連絡を取り合うようになった。そんなこともあるでしょう。
こんなふうに、時間が経って顔を合わせても、また心地よいつき合いができるのは、相手を嫌いになって離れたわけではないからです。
嫌いになって離れた相手に対しては、時間が経っても悪い感情が消えないので、顔を合わせたところで、また親しくつき合うなどということはできません。
親しかった相手が離れていくことは、人生のどの段階でもあり得ることです。そうなる事情はさまざまですが、ほとんどの場合、あなたのことを嫌いになったからではありません。
■去る者は「追わない」ことが最善の選択
あなたに対する関心や愛情が、ひと頃より薄らいでいるかもしれませんが、嫌いになるところまでには至っていません。
そのような状況で、離れていく相手を引き留めようとすれば、相手は疎ましさや不快感を覚えることもあるでしょう。嫌いになる手前で止まっていた感情の針が、一気に「嫌い」のほうに振れて、あなたとすっぱり縁を切ろうという気持ちになってしまいます。
当然、その後再会する機会があったとしても、つき合いが復活することは望めません。
これは、恋愛でもよくあることです。相手の気持ちが離れてきているのを感じて、「私のことを嫌いになったの?」「絶対に別れないからね」などと言い出して、相手を引き留めようとする。
その行動によって、相手は息苦しさを感じて、「もう別れたほうがいい」と、決意を固めてしまうのです。
「去る者は追わず」の姿勢でいることは、相手に思い入れがあるほど、難しいことでしょう。でも、それができなければ、相手に対する悪感情と苦みだけが、双方に残されることになります。
離れていく相手と、互いにいい印象を持ったまま、またいつか気持ちよく会える可能性を残しておくためには、「追わない」ことが最善の選択です。
■自分も相手も60%で十分と考える
人づき合いでは、相手に対してイライラしたり、ムッとしたりすることも、多々あります。
たとえば、時間にキッチリしている人は、いつも待ち合わせの時間に平気で遅れて来る人にイラッとするでしょう。会話の中で、相手のなにげない言葉に、思わずムッとしたりすることもあると思います。
そういうときは、心の中で「まっ、いっか」とつぶやいてみてください。この「まっ、いっか」で、人との関係はずっとラクなものになります。妻が夫に対して、「しょうがない人ね。でも、まっ、いっか」と妥協している夫婦は、たいていうまくいっています。
何でもきちんとやろうとして、実際きちんとやっている人は、他人に対しても厳しくなりがちです。きちんとしてない人のことを実際に責めることはしなくても、まわりの人は、きちんとしている人がそばにいるだけで、なんだか責められているような気分になるものです。
そういう完璧主義の人は、何かひとつでもうまくできないと、「なんてダメな人間なんだ」と、自分を責めます。しかし、できない自分を責めるのは、「自分は何もかもできる」という傲慢(ごうまん)さの裏返しとも言えます。
自分にも他人にも、100%の完璧を求めていたら、人生はとてつもなく窮屈(きゅうくつ)なものになります。60%くらいできれば「まっ、いっか」。相手に完璧を求めないと同時に、自分に対しても甘くなってほしいと思います。
そもそも、歳をとればとるほど、心身の衰えにともなって、「何もかもきちんとする」ことなど不可能になっていきます。70代ともなれば、もはや雑にならないとやっていけません。
「いままでできていたことは、これからもできる」と思うのは危険です。いままで全力でやってできていたことを、これからも全力でやったとしても、その「全力」のレベル自体が日々、落ちていくのですから、できなくなって当然です。「やればできる」という思い込みは、もう捨てなければなりません。
60%で十分。何に対してもそう思うことが、これからの人生を生きやすくしてくれます。
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精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)
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