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貧乏ゆすりでもOK…認知症リスク高めのデスクワーカーが元凶の「脳のゴミ」を流す"ながら有酸素運動"の方法

プレジデントオンライン / 2024年6月7日 6時16分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

■6 “ながら有酸素運動”を習慣化して日々実施

ドーパミンを分泌して脳のゴミを分解する

運動のなかでも長時間続けることができる有酸素運動は、アミロイドβの排出に有効です。仕組みはこうです。有酸素運動をすると、ドーパミンと呼ばれる神経細胞を活性化するホルモンが分泌されて、アミロイドβを分解する酵素を増やすことができるのです。またピッツバーグ大学の研究によると、有酸素運動は海馬の大きさそのものを増やして、記憶力改善の効果まで認められたとのことです。

これは有酸素運動に限った話ではありません。体を動かすことが少ない座ったままのデスクワーク中心の仕事に携わっている人は、体を動かす職業に携わっている人より、認知症のリスクが高いこともわかっています。ほかにも世界中で運動の有用性を認める研究結果が、次々と報告されています。

ただし、運動のやりすぎには、注意しなければいけません。例えばスクワット。関節に負担をかける運動なので、とくに高齢者にはおすすめしません。また筋トレやジョギングなどハードな運動も必要ありません。目的はあくまでも血流やリンパの流れを改善して、脳のゴミの排出を促すこと。

自宅でおこなえる関節への負担が少ない運動を毎日習慣として続けることが、脳にとっては有効です。“ながら”でもできる簡単で効果的な方法を、下表でいくつか紹介します。

【図表】いつでもどこでもながら有酸素運動

■7 深呼吸で自律神経を整える

私たち現代人は意識しなければ、胸で呼吸をする胸式呼吸をしています。そこで時には、意識を持って腹式呼吸をすることをおすすめします。腹式呼吸をすると脳に送られる酸素の量が増えるほか、自分の内臓に意識を向けられることもポイントとなります。

私は腎臓の本を出していますが、「腎臓ってどこにあるんですか?」と聞かれることが多かった。自分の体のことなのに、まったくわかっていない人が意外なほど多い。自分の体のうちに今どういうことが起きているか、しっかり体と対話する時間が必要です。これには意識しておこなう腹式呼吸がとてもいいのです。

■8 香りを楽しんで海馬を刺激

また記憶を司る脳の一部、海馬を刺激すると認知機能の改善に効果があるといわれています。この記憶の力を高めるために必要といわれてきたのが、繰り返し覚える反復学習です。ただし好きでないことをひたすら繰り返すだけでは、記憶力が高まることはありません。その行為に興味関心があり、それが好きという感情がともなって初めて、反復学習が成果を生みます。

海馬を刺激して活性化するもののひとつに、香りがあります。とくに好きな香りなら海馬は活性化します。カレーなどのスパイシーな香りは、海馬を刺激する効果が抜群です。

■9 腹が立ったら“オウム返し”

映画・TVで号泣、爆笑 感情をデトックス

高齢者になると、怒りっぽい性格になるということは、よくいわれています。とくに認知症の初期には、それまで穏やかだった人が、ちょっとのことで怒鳴ったり怒ったりする症状が出ることが知られています。

人間の脳には、頭脳を使って賢く生きるための脳と、本能のままたくましく生きるための脳があります。

本能や感情を司る脳は奥の奥のほうに隠れていて、その周りを賢く生きるための脳が覆っています。そして本能が暴走しないようにブレーキをかけたり、感情をコントロールしたりしているわけです。

子供は賢く生きるための脳が未発達なうえ羞恥心もないので、本能のままに泣いたり怒ったりができるのです。大人になっていくにつれ、脳は自然と本能をコントロールするようになっていきます。しかしさらに年齢を重ねて認知能力が落ちてくると、子供と同じように賢く生きるための脳の機能が低下することで、本能の部分を抑えきれなくなり、怒りなどの感情が出やすくなってしまうのです。

よくあるクレーマーではなく正しい怒りであれば、私は怒ることも悪いことではないと思っています。でも現代は感情を外に出しにくいですよね。そこで私は感情を溜め込まずに、定期的に放出するようにしています。ちなみに私の場合は、泣ける映画などで号泣したり、お笑い動画で大笑いしたり。こうやって感情を出してあげることで、感情のデトックス効果が期待できるほか、脳のゴミのクリーニングにも役立ちます。

しかも怒ることによって、活性酵素が溜まったり、血圧が上がって脳の血管が傷ついたりと、脳にとっては悪いことしかないのです。怒りをコントロールするアンガーマネジメントの術を身につけることが、脳のためにも必要となります。

一般的におこなわれるのは、前述の深呼吸。瞬間的な怒りが続くのは約6秒ほどといわれています。その間に深呼吸をすることで、怒りの感情を鎮めるわけです。

それに加えて私がよくおこなうのは、“オウム返し”のツッコミです。例えば予約なしで受診をされた患者さんが、長く待たされたことでイライラが募り、抗議をしてきたようなとき。こうしてオウム返しをするのです。

「1時間も待たせるとは、どういうことだ!」
「1時間も待たされたんですね」
「そうだ、1時間も待たされたんだ!」
「そうなんですか、1時間も待たされたんですね?」

ここまでくると患者さんの興奮が収まり、「そうなんだよ……」と口調も穏やかになってくるのが普通です。人間には、発言をオウム返しされることで、瞬間的な興奮が収まるという性質があるのです。

一方、1時間も待たされていることに抗議する患者さんに、私が最初からこんな説明をしたらどうでしょう。

「予約の患者さんが優先なので、お待ちいただくことは仕方がないんですよ」

患者さんは患者さんで、予約なしで来たのだから仕方がないとわかっているはず。でもそれをあえて指摘されると売り言葉に買い言葉。図星のことを指摘された患者さんにもかえって怒りが湧いて、言い合いになってしまうのではないでしょうか。ですから、説明よりもオウム返し。

何か理不尽なことがあり怒りが湧いてきたなら、心のなかで自分の主張にオウム返しをして、自分にツッコミを入れてみてください。怒りによって生まれたゴミのクリーンアップに役立つはずです。

■10 非日常空間を求め旅に出る

最後に怒りを鎮め、脳を活性化させる手段として、私が患者さんにいつもおすすめしているのが、旅です。街、人、景色など、知らないものに触れて刺激をもらうのはもちろん、旅のプランを立てる準備段階から、脳にいい影響を与えてくれるでしょう。そして何より、感情のデトックスができるところもポイントとなります。

さて、みなさんは前編のチェックシートでいくつのチェックがついたでしょうか。チェックが多かった人は気を付けて。チェックが少なかった人も油断は禁物。人の脳は必ず衰えますが、早めに脳にいい生活習慣を始めれば、それだけ認知症のリスクは減ります。楽しいことに打ち込んで、脳のゴミをクリーンアップしましょう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。

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内野 勝行(うちの・かつゆき)
金町駅前脳神経内科院長
脳神経専門に約1万人を診察。著書に『記憶力アップ×集中力アップ×認知症予防 1日1杯脳のおそうじスープ』(アスコム)、『退屈ボケの処方箋 脳はスマホで若返る』(辰巳出版)など。

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(金町駅前脳神経内科院長 内野 勝行 構成=福光 恵)

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