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「コレステロール=悪玉とうそぶく奴こそ悪玉だ」和田秀樹が指弾するフェイク情報で儲けるTV界の裏の2大ワル

プレジデントオンライン / 2024年6月13日 16時15分

小林製薬「紅麹コレステヘルプ」は死者をも出す、健康被害をもたらした。

■健康サプリで死者が出るという矛盾

間違い1 サプリは健康にいい

社会を震撼させた「紅麹コレステヘルプ事件」は、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。紅麹コレステヘルプは、家庭用医薬品や生活用品などで知られる小林製薬のサプリメントで、常用していた人の腎機能障害などの健康被害報告が相次いだのです。

厚生労働省の発表によれば、2024年4月23日時点で延べ252人が入院し、紅麹コレステヘルプが原因と疑われる死亡例も、5件発生しているようです。小林製薬が、紅麹コレステヘルプを含む5製品の自主回収を余儀なくされたほか、同社から紅麹成分を供給された食品メーカーが調査に追われるなど、日本中が混乱に陥りました。

問題となった紅麹とは、中国酒の「紅酒」や沖縄県の特産品「豆腐よう」の製造、食品の「赤い色素」などに使われている「麹」の一種。成分には、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める「LDL(悪玉)コレステロール」を、減らす効果があるとされています。紅麹コレステヘルプは、その成分を含んでいるため、「コレステロールの低減が期待できる」と謳(うた)っていたわけです。

健康のために摂っていたサプリが、逆に死を招いてしまったというショッキングな事件ですが、実は、「サプリなら何でも、健康づくりに役立ち害がない」という、日本人が信じ込んできた「健康常識」が、“幻想”だったことを示す、象徴的な事件とも言えるでしょう。

紅麹コレステヘルプは、「機能性表示食品」で、国が有効性や安全性を認めた「特定保健用食品(トクホ)」ではありません。機能性表示食品は、有効性や安全性の根拠に関する情報などを消費者庁に届け出れば、事業者の責任で機能性を表示できます。言い換えれば、「コレステロールを減らす」という効果についても、安全性についても、国は「お墨付き」を与えていないわけです。

医療用医薬品であれば、処方した医師が、服用後の患者さんの健康状態をチェックしますが、サプリの場合、1日の摂取目安量は表示されていても、ユーザーが「自己判断」で量も増やせるし、使い続けることもできるので、健康状態が悪化するまで気づかないことが多く、危険なのです。

和田秀樹
和田秀樹 1960年生まれ。精神科医。和田秀樹こころと体のクリニック院長。東京大学医学部卒業後、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師などを経て現職。著書に『「健康常識」という大嘘』(宝島社)など多数。

■健康常識はなぜ、疑うべきか

にもかかわらず、紅麹コレステヘルプは、累計100万個以上を売り上げたというヒット商品でした。大々的なCMで、「コレステロールが減りそう」というイメージを刷り込まれ、健康診断のせいでコレステロール値を気にしている人が、多く買い求めた結果でしょう。

とはいえ、もっと罪深いのは、サプリメーカーから巨額の広告費をゲットし、国民を洗脳する「お先棒」を担いだテレビ局です。小林製薬を批判する資格はありません。

テレビ局などのマスコミの多くが垂れ流す健康情報は、スポンサーによる「カネの力」で歪められています。鵜呑みにしないでください。正しい健康情報を自分で見極め、わが身を守るしかありません。

さらに言えば、そもそも「健康を守るため、コレステロールを減らす」という健康常識そのものが、大いなる誤りなのです。そのことについては、次の章で詳しくご説明しましょう。

新常識1 安全性は保証されていない。死亡事故も

■“悪玉”という言葉に騙されてはいけない

間違い2 コレステロール値は下げるべき

死者まで出したサプリメント「紅麹コレステヘルプ」がヒットしていたのは、そもそも「LDLコレステロールは悪い物質であり、体内から減らすべき」という、間違った「健康常識」が定着していたからでしょう。

小林製薬は、被害状況の情報開示に消極的であるため現在、詳細は不明なのですが、まだ調査中にもかかわらず、青カビ由来の「プベルル酸」という有害物質の混入が「原因である可能性が大きい」と、厚生労働省は早々と発表しました。どう見ても、“不審”です。

というのも、実は、紅麹に含まれる「スタチン類」という成分そのものに、有害な作用があるかもしれないからです。スタチン類は、脂質異常症の治療薬にも用いられ、腎機能障害などの副作用があることがわかっています。つまり、「コレステロールを減らす成分」が、被害をもたらした事実を隠蔽(いんぺい)しようとしている疑いがあるわけです。

では、命を削ってでも、減らさなければならないコレステロールとは、どんな物質なのでしょうか。実はコレステロールは、がんや病原性ウイルスを退治してくれる「免疫細胞」の重要な原料です。つまり、コレステロール値が下がると、がんや感染症を発症しやすくなります。性ホルモンの原料でもあるので、コレステロールが少ないと、男性はEDになったり、女性は骨粗鬆症になったりします。

【図表】コレステロール値1mg/dl上昇ごとの死亡率変化

■コレステロール値は高いほうがいい理由

たしかに、「LDL」というコレステロールには、動脈硬化を促進するマイナス作用もありますが、一方で、傷ついた血管を修復して、頑丈にする働きもあります。LDLコレステロールを豊富に摂れば、血圧が高くても、血管が破れにくくなるのです。循環器系の医師がLDLの一側面だけをとらえ、“悪玉”呼ばわりするのは、不勉強な偏った見方です。総合的に見れば、LDLコレステロールは医学上、とても有効な物質なのです。

1993年に発表された、世界的にも有名な米国の「フラミンガム研究」の追跡調査によって、コレステロールの効果は、すでに明らかでした。血清総コレステロールが1mg/dl上がるごとに、がんの死亡率は40歳以上ですべて減り、総死亡率も60歳以上の全年代で低下しました。日本の研究でも栄養状態が良くなり、コレステロール値が高くなるほど脳出血、脳梗塞の発生率が減少傾向になることがわかっています。コレステロールには、血管を強くするだけでなく、血管のつまりを防ぐ作用もあると推察されます。

国民のコレステロール値を「上げたほうがいい」というのは、もはや世界のコンセンサスです。にもかかわらず、日本では、厚労省が音頭を取って、必死に「下げよう」としています。がん死亡率の高い日本では、「愚の骨頂」としか言いようがありません。

コレステロール悪玉論というフェイク情報をまき散らし、製薬業界とともに利権をむさぼる、循環器系の医師たちの責任も重いと言えます。残念ながら、利権まみれの医者が30年は医学部に居座るので、現状は改善しないでしょう。

新常識2 コレステロールは「日本人」の死亡率を下げる

■薬の副作用が事故を増やしている

間違い3 高齢者は免許返納すべき

高齢者による自動車暴走事故が相次ぎ、「高齢者に車を運転させるのは危険」という世論が高まっています。その結果、シニアドライバーは、「実車試験の義務化」や「免許自主返納の推奨」といった“迫害”を受けています。

たしかに、日本では悲しいことに、高齢者の自動車事故が多発しているので(ただし、減りつづけている)、事故を減らす対策は必要でしょう。しかし、マスコミが報道しているように、加齢による「認知機能低下」が事故の要因というのは、本当なのでしょうか。

諸外国の事例を調べると、高齢者の自動車暴走などの事故が多いというエビデンスは見当たりませんでした。加齢が事故の要因というのなら、欧米など日本以外の国でも、同じように高齢者の自動車事故が問題にされているはず。怪しいとは思いませんか。高齢者の精神医療に長年携わってきた私は、むしろ「薬の副作用」が事故の要因ではないかと、疑っています。

高齢者の自動車事故の状況を検証してみると、「普段は安全運転だったのに、事故のときだけ暴走してしまった」といったケースが目立ちます。つまり、何らかの原因で、高齢者が急に「意識障害」に陥り、アクセルを急に踏み込んだり、逆走したりするなどの運転ミスにつながったと推察されます。

そして、高齢者の多くが常用している治療薬には、意識障害を引き起こすものが少なくありません。例えば、高齢者は、体内の血糖値の調整がうまくいかないので、糖尿病の強い薬を服用していると血糖値が下がりすぎて、よく意識朦朧となります。

HbA1cを6%未満に抑えた人の16%、7.0~7.9%に抑えた人の5.8%が、意識障害などを引き起こす重症の「低血糖」になったデータもあります。私も、血圧や血糖値が下がりすぎて、頭がボーッとしたり、体が重くなったりしたことがあります。車を運転するので、HbA1cを9%ぐらいにコントロールしています。

2019年に東京・池袋で起こった自動車暴走事故でも、高齢の運転者がパーキンソン病の治療を受け、幻覚やせん妄の副作用がある「運転禁止薬」を飲んでいた可能性があります。血圧や血糖値を下げる薬の大半も運転注意薬です。ところが、日本のマスコミの多くは、大スポンサーである製薬会社に忖度してか、「薬が自動車事故の要因」とは口が裂けても言いません。

高齢者の自動車事故を減らすなら、免許返納より「減薬」を議論すべきでしょう。私は、むしろ「高齢者こそ車を運転すべき」と考えています。なぜなら、車の運転をやめると、要介護状態の発症を促す可能性もあるからです。

車の運転を続けた高齢者と免許を返納した高齢者を分析した研究によれば、車の運転をやめると、要介護になるリスクが2〜8倍も高まるそうです。「寝たきり高齢者」を量産し、財政が破綻する前に、「シニアドライバーいじめ」の愚かしい論調や政策を即刻、封じ込めるべきでしょう。

新常識3 薬の副作用が交通事故の原因

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹 構成=野澤正毅 撮影=宇佐美雅浩 図版作成=大橋昭一 写真=時事通信フォト)

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