1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

ハーバード大「ヒトは180歳まで生きられる」…逆に言うとそこまで死ねない人間がすべき老化を防ぐ5つの習慣

プレジデントオンライン / 2024年6月3日 16時15分

根来秀行 Hideyuki Negoro 医師・医学博士。東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学医学部客員教授、東京大学客員上級研究員ほか。アンチエイジング研究の第一人者。

■老化のスピードが決まる3大要因とは

顔にシワが増えてきた、階段を上るとすぐに息が上がってしまう……。日常のさまざまなシーンで感じる「老化」は、諦めるしかないと思っていませんか。ところが近年、老化のメカニズムについての研究が進み、120年以上生きることさえ可能になると考える研究者も増えています。世界中の第一線の研究者が集う、健康長寿をテーマにしたハーバード大学のシンポジウムでは、概して「医学の進歩で、ヒトはいずれ150から180歳まで生きられるようになる」という結論になります。

とはいえ、医学の力で老化を止めて寿命を延ばすことは、がんなどの深刻な病気を引き起こすリスクが伴うため、すぐに実用化されることはないでしょう。一方、生活習慣を改善することで、細胞内にある「テロメア」という「命の回数券」とも呼ばれる遺伝子の構造を節約し、老化を予防できることがわかりつつあります。テロメアについて、詳しくは後述します。

「大人になってから起こる生理機能の衰えにより、さまざまなストレスに対する適応能力が低下すること」、これが老化の一般的な定義です。たとえば、年を取ると呼吸機能全般が低下して、運動をすればすぐ息が上がるようになり、病気をすれば呼吸器系の疾患が生じやすくなります。さまざまなストレスに適応しにくくなるわけです。

テロメアのムダ遣いにつながる要因は、大きく分けて3つあります。1つ目は、体にかかった負担に対して起こす「炎症」です。「熱くなる」「赤くなる」「はれる」「痛みを伴う」は炎症の「4大兆候」で、ウイルスと闘ったり、病気を治そうとしたりしている証しになります。その炎症で老化細胞との関わりが深いのが「慢性炎症」です。

細胞は慢性炎症で損傷した部分を修復しようと、頻繁に分裂・増殖を繰り返し、その分だけテロメアが短くなって細胞の老化が進み、細胞が構成する組織や臓器も次第に衰えます。慢性炎症は、喫煙や歯周病、閉経などによるホルモン濃度の変化によって起こりますが、特に要注意なのが肥満です。過度な肥満では、全身で軽度な慢性炎症が起きている状態になります。

2つ目は、食事などから摂った余分な糖質が体内のタンパク質などと結びつき、変性・劣化して「AGEs(最終糖化産物)」がつくられる「糖化」です。血糖値が高い状態が続くと体内のAGEs産生量が増えるため、糖尿病の人は注意が必要です。また、糖尿病の人は肥満体型のことが多く、テロメアをよりムダ遣いしやすい状態といえます。

3つ目が「酸化」です。細胞のなかのエネルギー産生工場であるミトコンドリアの働きが低下すると、フリーラジカルを多く出します。すべての物質は「原子」から成り立っており、原子がいくつか結合したものが「分子」です。通常、分子のなかの電子は2個が1ペアとなって安定しています。ところが、フリーラジカルは電子が1つしかなく、他の安定した分子から電子を奪おうとします。その作用が酸化です。

もともと体内には、酸化を抑える「抗酸化物質」があり、その働きを「抗酸化作用」といいます。しかし、抗酸化作用は不規則な生活や加齢で低下します。20代の抗酸化作用を100としたら、40代は半分、60代では4分の1以下です。酸化が優性になった状態が「酸化ストレス」で、細胞は傷つきやすくなり、テロメアのムダ遣いにつながります。

■若々しさを保つ5つの方法とは

成人の体の約6割は水でできていて、体のなかに「海」を抱えているような状態です。その「内なる海」である内部環境で、大半の細胞が暮らしています。内部環境は、炎症、糖化、酸化などさまざまな要因で乱れてしまいます。

詳しくは後述しますが、内部環境を整えるためには、毛細血管内の血流をアップして酸素や栄養素をふんだんに供給し、効率的な細胞呼吸を実現することが大切です。毛細血管は細胞や内部環境にとっての「命綱」なのですが、加齢に伴い徐々に減ります。しかし、自律神経やホルモンバランスを整えることで再生させたり、新しく増やすことが可能です。その方法が、呼吸、睡眠、運動、食事、ストレス対処の5つです。

老化を予防する5つの方法

自律神経に自分の意思で直接アプローチできる方法が呼吸です。質のよい呼吸は、自律神経を整えるのと同時に、細胞に十分な量の酸素を供給してミトコンドリアの働きを活性化させます。

また、しっかりと質の高い睡眠をとることで、自律神経の乱れが改善されるうえに、抗酸化ホルモンの「メラトニン」や臓器を回復する「成長ホルモン」の分泌を促せます。

そして運動は、炎症、糖化、酸化の予防に役立つだけでなく、細胞呼吸の効率アップにつながります。

細胞に栄養素を供給するうえで、バランスよい食事も当然重要です。ひとくち30回噛むなど、食事の仕方を工夫することで、幸せホルモンの「セロトニン」が分泌されて自律神経が整う効果もあります。

ストレスに適切に対処することも、自律神経やホルモンバランスを整えることにつながります。

具体的な生活習慣の改善法を紹介しています。それらを実践して、体の「内部環境」を整えることが老化予防につながります。

血流促進が若々しさのカギ 老化のしくみ
出所=根来秀行『老化は予防できる、治療できる』(ワニプラス)

■老化予防法1【呼吸】たっぷりの酸素で細胞を活性化

肩甲骨ほぐしで深い呼吸、正しい舌位置で鼻呼吸
横隔膜を広げて腹式呼吸、数を数えて腹式呼吸

■老化予防法2【睡眠】成長ホルモンを促して体を修復

寝る前の10・20呼吸法、朝日を浴びる、寝る前の逆算入浴、真っ暗で睡眠、カフェイン+ちょい昼寝

■老化予防法3【運動】炎症、糖化、酸化をまとめて予防

サーキットトレーニングで効率よく運動、1日1万歩のインターバル歩行、電車内をジム代わりに、階段1段飛ばし、昼食の前後にきつめの運動

■老化予防法4【食事】ホルモンバランスを正常化

発酵食品・ネバネバ食品でメンタル強化、ひとくち30回噛む、3食の間隔は5時間、和食にオリーブオイル、飲酒は19時まで

■老化予防法5【ストレス対処】自律神経をパワーアップ

17時は笑顔タイム、イラッとしたらカウントダウン、マインドフルネス・ウオーキング、ガムで平常心をキープ、推し活で心を安定

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。

----------

根来 秀行(ねごろ・ひでゆき)
医師・医学博士
東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学医学部客員教授、フランス国立保健医学研究機構客員教授、東京大学客員上級研究員、奈良県立医科大学医学部客員教授。アンチエイジング研究の第一人者。『ハーバード&ソルボンヌ大学ドクターが教える! 超休息法』(徳間書店)、『老化は予防できる、治療できる』(ワニプラス)、『ハーバード&ソルボンヌ大学の最先端研究から考案! 肩甲骨リセット』(文響社)など著書多数。

----------

(医師・医学博士 根来 秀行 構成=伊藤博之 イラストレーション=江口修平)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください