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わが子の「うるせー、ババァ」にはどう返答すべきか…そのヒントは「絶対に怒るな」と説く孫氏の兵法にある

プレジデントオンライン / 2024年6月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

わが子から「うるせー」「ババァ」といった汚い言葉をぶつけられたらどうすべきか。幼稚園長で児童文学作家の小島宏毅さんは「怖い顔で怒っても、問題は解決しない。親が力で押さえつけるのではなく、親子での対話の機会と考えたほうがいい」という――。

※本稿は、小島宏毅『孫子の兵法から読み解くAIに負けない「すごい知能」の育て方』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

■子育ては、だまし合いなり

子どもは第一次反抗期を迎えるころになると、悪い言葉や汚い言葉を覚えてきて、「うるせー」とか「ババァ」などと母親に向かって言うこともあります。その場合には注意が必要ですが、注意すべきは、子どもは本心で言っているわけではないということです。覚えたての言葉を使ってみたい、親の反応をおもしろがって言っている、というだけのこともあります。

しかし、母親とすれば子どもの言葉を真に受け、「だれがババァなのよ!」と真剣に怒りたくなりますが、それは大人気ないことです。かえって相手の思うツボにはまるだけで、子どもはそんな反応を見てニヤニヤするだけでしょう。その顔を見るとますますムカムカしてきて罵声を浴びせる、という負の連鎖につながり、戦闘勃発の一歩手前という状態に至りますが、しょせん「子育ては、だまし合いなり」なのですから、あまりムキにならないことです。

昔は、「悪いこと言うのはどの口だ!」と怖い顔をして子どもに迫り、ほっぺたをつねる、ひっぱたくという仕打ちをする親、子どもが痛いと泣いても「悪いことは許さない」という厳しい態度を貫く親が多くいたものです。しかし、罰や痛みを与えるだけでは、子どももたまりません。時代的な背景もありますが、いまは体罰を与えるより、子ども自身に「自分が悪い」ということを理解させるという方法をとるべきです。

■反抗期の子どもと向き合う「5つのステップ」

それには、親が力で押さえつけるのではなく、親子での対話を選択しなければなりません。ここで、第1章で述べた「こころのコーチ」の手法を応用してみましょう。

STEP1:子どもの気持ちに気づく

もしも悪い言葉を言ってきたら、「子どもの気持ちに気づく」ことが大切です。先に述べたとおり、子どもが悪い言葉を使うのには、おもしろがっているということもあります。そこで、「ハハーン、この子は親の反応をおもしろがっているんだな」と理解してあげます。

STEP2:「教育の場面」ととらえる

次段階は、「教育の場面ととらえる」です。まさに、ここは教育的指導をするのに絶好のチャンスですから、見逃さないようにしましょう。

STEP3:共感する、子どもの抱いている感情は妥当だと考える

次のステップは「共感する」です。悪い言葉を使いたくなるのは、子どもにはよくあることだと理解し、子どもの感情を妥当だととらえることです。

■叩かれるよりも、ママから嫌われるほうが辛い

STEP4:子どもの感情の特徴をとらえて言語化する

ここまでのステップ1、2、3をふまえて、次のように言ってみましょう。

「いまの言葉は、よくない言葉よ。あなたはおもしろがって言っているのだと思うけど、言われてイヤな気持ちになる人もいるわ」

これが次のステップ4で、「感情の特徴をとらえて言語化する」です。子どもは、決してママのことが嫌いで悪い言葉を使っているわけではありません。だとしても、「それはママに対して嫌いだと言っているのと同じことだ」と伝えてあげるのです。さらに、次のように続けます。

「ママは、そんな言葉を言われて、とってもイヤな気持ちになったわ。あなたのことが嫌いになるくらい。ママは、あなたのこと嫌いになってもいいの?」

こう言われると、子どもの顔つきがだんだん曇り、「ダメー」と言うはずです。叩かれるよりもつねられるよりも、ママから嫌われるほうが、子どもにとってはよほどつらいことなのです。

STEP5:解決策を提示する

最後のステップは「解決策の提示」です。先の会話に続けて、次のように伝えましょう。

「じゃあ、もう二度と絶対に悪い言葉は言わないでね」

こうして、「悪い言葉は言ってはいけない」ということを教えてあげるのです。すると子どもは、「うん、わかった」と、素直に理解してくれるでしょう。

■「人はみな愛し愛されるべき」という人間観を伝える

子どもに対して力ずくで言うことを聞かせようとすれば、子どもは痛みに耐えられないので、しぶしぶ言うことを聞くでしょう。しかし同時に、自分を痛めつける親のことが大嫌いになります。そこに厳しさはあっても愛情はなく、いつしか言うことを聞かなくなってしまいます。

さらに、体罰を与えられたり抑圧されたりしてきた子どもは、親よりも体が大きくなったときに復讐に出ます。つまり、親に対して暴力を振るうようになるのです。そうなっては最悪ですから、子どもの悪い態度を変えさせたいなら、子どもの気持ちから変えることが大切です。

ステップ4で、「その言葉を言われたら嫌な気持ちになる」と伝えることは、「そうであってはいけない」と伝えるということです。つまり、「悪い言葉を使うとママは嫌な気分になる」→「ママのことを愛していないと感じる」→「ママも子どもを愛せなくなるけど、それではいけない」、ということを順序立てて伝え、最終的には「互いに愛することが大切だ」という価値観を、対話を通して伝えていくわけです。これはすなわち、「人はみな、愛し愛されるべき対象である」という人間観を伝えているといえるでしょう。

ハートを持って太陽にかざす手
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

「クソババァ」と言われ、目くじらを立てて怒り狂い、「何てことを言うの、この子は!」などと逆ギレしてしまうと、親自ら「人間はみな、不平等に侮蔑を受ける対象である」ということを体現していることになります。同時に、子どもにそう学ばせてしまっている、ということでもあります。

■親の怒りは、子どもへの大人気ない報復行動

そもそも「怒る」という行動じたい、子どもを攻撃して黙らせるという報復行動にほかなりません。「不当な侮辱を受けた」ということを自ら認め、子どもに対して「あなたこそ、何の価値があるのか」と、大人気なくも反攻している行為だからです。これは、「人間は、侮辱、差別、軽蔑されてしかるべき価値のないものだ」と伝えているのと同じことです。

小島宏毅『孫子の兵法から読み解くAIに負けない「すごい知能」の育て方』(日刊現代)
小島宏毅『孫子の兵法から読み解くAIに負けない「すごい知能」の育て方』(日刊現代)

子育ての「利」とは、愛すること、愛されること。そして「害」とは蔑み、蔑まれることです。悪い言葉は悪いこと、言われた相手も嫌な気持ちになる、よくない言葉だということは、よく伝えておかなくてはなりません。「人間はみな愛し愛されるべきものである」――このことを子どもに伝えてほしいのです。

愛し愛されることが利であるとわかっていれば、こころのコーチのステップ1からステップ5までは、段階を踏んで自然と進んでいきます。そして悪い言葉を使えば自分自身の損害になることが理解できれば、悪い言葉などもう使おうとはしなくなるでしょう。こうして、親の気持ちに従わせることができます。さらに、親の言うことを聞いてくれたら、たくさん愛してあげるべきだということは、ここまでお読みいただいたみなさんなら、すでによくおわかりのことかと思います。

■子育ての「利害」(九変篇)

【書下し文】
是の故に智者の慮、必ず利害を雑(まじ)う。利を雑えて、務め信(の)ぶべきなり。害を雑えて、患(うれい)解(と)くべきなり。是の故に、諸侯を屈する者は害を以ってし、諸侯を役する者は業を以てし、諸侯を趨(はし)らす者は利を以ってす。(九変篇)

【現代語訳】
智者の考える戦術は、必ず利害を考察するものだ。利となることを明らかにすれば、準備は自然とすすんでいく。害となることを想定しておけば、問題点や不安があっても未然に解決できる。このように、諸侯を屈服させる者は、損害を与えて、諸侯をこちら側につかせ、従わせる者は利を与える。

【育児対訳】
上手な子育ては、必ず利害を考えるということです。子どもにとって利となることは何かを明らかにすれば、自然と自立への準備が整っていきます。害とはなにかを想定しておけば、問題や心配(悪い言動)があってもうろたえることなく、烈火のごとく怒ることもなく、親子関係を悪化させずに解決できるものです。このように、子どもを親の側につかせるには、子どもにとっての害を示し、子どもを親に引き寄せるには、利を見せるのです。

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小島 宏毅(こじま・こうき)
ひよし幼稚園理事長・園長、児童文学作家
1961年生まれ。岐阜県出身。幼稚園園長として保育制度や子育てに関する著作、児童文学作家として絵本を発表している。著書に『ママはすっきり、パパはしっかり、園長びっくり! 認定じいさんに聞きました 認定こども園がみるみるわかる本』(ギャラクシーブックス)、『「ママ、うれしいわ」が子どもを育てる 孫子の兵法を知れば子育てがわかる、変わる』(幻冬舎)。児童文学作家として『しましま』(ひかりのくに)、『たこやきくんとおこのみくん』『飲茶むちゃむちゃ』『100歳になったチンチン電車 モ510のはなし』『う、のはなし』(以上4作品とも幻冬舎)がある。

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(ひよし幼稚園理事長・園長、児童文学作家 小島 宏毅)

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