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重症化で死に至る人も多い…熱中症予防で「いつもシャワーのみ、運動しない」人がすべき"1日5セット"の中身

プレジデントオンライン / 2024年6月14日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

■汗をかくために0.5度も体温が上昇

今年は5月上旬から最高気温30度以上の真夏日があった。あなたは体調を崩していないだろうか。

高温多湿の環境に長時間いると脱水症状になって、皮膚に集まった血液の流れが滞り、体温の調節機能がうまく働かなくなる。この状態が続くと、めまいや立ちくらみ、頭痛、吐き気、体のだるさ、失神やけいれんなどが起き、重症化すると死に至る健康障害をまとめて「熱中症」と呼ぶ。

熱中症に詳しい帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長の三宅康史医師によると、大きく2パターンがあるという。

「熱中症には、元気な人が暑い中でのスポーツや仕事によって体調不良に陥る『労作性熱中症』と、熱波に包まれた環境(半数以上が室内)で過ごすことによる『古典的熱中症』があります。

数として多いのは高齢者による古典的熱中症ですが、バリバリ働くビジネスパーソンも、睡眠不足やストレスで過負荷がかかって自律神経の働きが低下しているときには注意しましょう」

人の体は暑さを感じると、自律神経の働きによって末梢血管を大きく広げて血液をたくさん流したり、発汗させたりして、体の表面から空気中に熱を放散させ、体温が上がらないようにする。脳や内臓は熱に弱いからだ。

「適切な放熱によって正常な体温が維持できるのです」

と、信州大学医学部特任教授の能勢博氏が説明する。

「暑さに慣れていない状態では、平熱からたとえば0.5度の体温上昇で、やっと皮膚血流量が増したり汗をかいたりなどの体温調節反応が起こります。これは本人が暑い、暑いと感じながら体温調節を行っている状態です。ところが暑さに慣れると、わずか体温が0.1度上昇するだけで、これらの体温調節反応が働くようになります。すなわち本人はさほど暑いと感じていないのに、皮膚血流が増え、汗をかける状態になるのです」

それには暑さが本格化する前に、適度な運動によって体温を上げ、体を暑さに慣らすことだ。これを「暑熱順化」といい、熱中症に強い体をつくれる。

日常生活では入浴やウオーキングなどから始めるといいだろう。

「時間がない人であれば、仕事帰りに一駅前から歩くのがお勧めです。また血管を拡張する、汗をかくという機能はすべて自律神経の働き。副交感神経が人間の体に応じて働いてくれているのです。ぬるめのお湯に入浴して汗をかくことは副交感神経をオンにし、なおかつストレスを発散してリラックス作用もありますから、習慣にしてほしいですね。ジムに通うのももちろんいいですし、日頃から運動して体力のある方は屋外でゴルフなどのスポーツを楽しむのも有効です」(三宅医師)

日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトによると、日常生活でできる暑熱順化する動きとして、ウオーキングなら30分、ジョギングなら15分、筋トレやストレッチなどは1日30分を週5日、入浴は2日に1回を挙げている。現在、自分がどの程度暑熱順化ができているか、チェックリストで確認してほしい。

能勢氏は「インターバル速歩」を提唱している。

「リラックスして背筋を伸ばし、いつもの歩幅の『ゆっくり歩き』と、本人がややきついと感じる、最大体力70%くらいの『速歩』を3分ずつ交互に繰り返すのです。これを1日5セットで(計30分間)、週4日程度行ってください」

「ややきつい」のレベルは年齢や個々の体力によって異なるが、自分にとって「息は弾むが、きれない」程度を目安に。インターバル速歩以外でも、水中ウオーキングやエアロビクス、ダンス、テニスなどの運動でもOKだ。

■男性も麦わら帽子や日傘を使おう

そして運動後にコップ1杯から2杯の牛乳を飲むことがポイント(牛乳が苦手な人はヨーグルトでもいい)。運動直後から1時間経過する頃までは、全身のタンパク質の合成が促進される状態が続き、牛乳に含まれるアミノ酸(タンパク質)の吸収がされやすい。特に肝臓では、アルブミンというタンパク質の合成が高まっているという。このタイミングでアミノ酸バランスが良い牛乳など乳製品を摂取すれば、アルブミンがたくさん合成される。

「アルブミンは血管内の水分を保持する働きがあります。ややきついと感じる運動を1日に15〜30分程度行い、その後牛乳を飲む。これを2週間くらい続けると、血液量が100cc程度増えるのです。少ない量に思われるかもしれませんが、これだけの血液量が増えると、皮膚血流や発汗などの体温調節反応が劇的に改善するのです。そして気温が体温よりも低い環境なら、皮膚血流を無意識に調節し、汗をかかなくても体温調節ができる体になります」(能勢氏)

熱中症患者は例年、梅雨明け後に救急搬送のピークを迎え、死亡者数も増えやすい。一方、暑い盛りの8月にはむしろ減少する。それは「暑さに慣れることに加えて、お盆休みで休息をとれるからではないか」と三宅医師は推測する。

【図表】体が暑さに慣れているか確認! 「暑熱順化チェックリスト」

「過労や睡眠不足に陥ると、自律神経の働きが低下し、若い人でも暑さに弱くなってしまいます。少しでも体調に不安のあるときにはくれぐれも無理せずに活動してください」

特に梅雨の晴れ間は要注意。できる限り体に日射が当たるのを避けよう。「人の体が熱くなる一番の原因は、日射です。ですから屋外を歩くなら、麦わら帽子や日傘を使用しましょう。これは男性であっても、です。次に気を付けるのは輻射熱。日射が当たった路面などによる照り返しで体に熱がこもります。そして3つめが気温、室温です」(三宅医師)

梅雨時期は気温に加えて湿度も高くなるため、汗が蒸発しにくく、体内に熱がこもりやすい。万が一、自分や周りの人に熱中症を疑う症状があった場合、涼しい場所に移動して三大局所(首の前面の左右、両脇の下、脚の付け根の前面)を冷やし、水分の補給を。

人にとって快適な環境を研究してきた、東京大学名誉教授でペアベール建築環境研究所所長の加藤信介氏は「夏場なら涼しい格好で室温25〜27度を保つことが、大半の人が快適と感じる、自律神経に負担のかからない環境です。湿度はこれから高くなりがちですが、本来50%前後に抑えたいところですね」と話す。室内ではエアコンの冷房を上手に活用したい。

近年は暑い期間が長引き、身体的・心理的負担が続く。負担を軽減するためにも、今は暑熱順化を行いながら体調を整え、夏日は休息をとって乗りきっていこう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。本名・梨本恵里子。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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