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水虫を市販薬で治そうとすると、かえってお金がかかる…潜在的な患者「6人に1人」水虫を確実に治す鉄則

プレジデントオンライン / 2024年6月7日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan

水虫にはなりたくない。どんな対策が有効なのか。産業医の池井佑丞さんは「大規模疫学調査で日本人の6人に1人は水虫を起こす白癬菌を持っていることがわかった。プールの更衣室やサウナなどでもらう可能性もある。対策と正しい治療法を知ってほしい」という――。

■水虫にはさまざまな種類がある

蒸し暑い季節になりました。ふと気になる足のかゆみや違和感はありませんか。

「かゆくないけど、足指の間の皮膚がポロポロとむけている」「爪が変色して割れている」など、これはもしかすると水虫かもと思われたご経験をされた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

一般的に水虫と呼ばれている病気は、カビ(真菌)の仲間である白癬(はくせん)菌が皮膚の角質層に寄生して生じるもののうち、手や足にみられるものを主に指しています。ひと言に水虫といっても症状によっていくつかに分類されます。主に、足の指の間がふやけた状態になり、じくじくと皮膚がむけたりしてかゆみを伴う指間型、土踏まずや足の縁に小さな水疱(すいほう)ができ強いかゆみを伴う小水疱型、痛みもかゆみもないが足の裏全体が硬くなりひび割れたような状態になる角質増殖型、爪が黄白色に変色し、先が薄くなって割れることもある爪水虫(爪白癬(つめはくせん))があります。

■日本人の6人に1人が水虫を持っている

日本臨床皮膚科医会が2023年に実施した足白癬・爪白癬に関する全国疫学調査によると、参加患者1万4588例のうち、足白癬(足白癬とは、爪水虫以外の水虫のことを指す)または爪白癬のいずれかの症状が認められた患者は3310例/22.7%(男性 29.0%、女性 17.8%)でした。足白癬だけでは2659例/18.2%(男性 24.6%、女性 13.3%)、爪白癬については1530例/10.5%(男性 13.5%、女性 8.4%)と、日本人の6人に1人が足に白癬を持っていることがわかりました(畑康樹、上田純嗣、服部尚子ほか「足白癬・爪白癬の実態と潜在罹患率の大規模疫学調査(Foof Check 2023)第1報」日臨皮会誌:41(1)、066-076、2024)。

性別では、女性よりも男性の頻度が1.6倍〜1.8倍多く、年齢とともに罹患者数は増え、70歳以上では男性で約3割、女性においては約2割が水虫(白癬)に罹患していることもわかっています。昨今、糖尿病の罹患者(疑い含む)は5〜6人に1人と言われていますので、同じくらいの割合で足に白癬を持った患者さんがいることになります。どうでしょう、想像していたより多くの方が水虫を持っているように思いませんか。

今回は、4月ごろから増え始め7月ごろにピークをむかえる水虫の感染対策と対処法についてお話しさせていただきます。

■菌は24時間以上かけて感染を成立させる

まずは感染対策です。プールの更衣室、温泉、サウナなどでは水虫に感染することがあります。水虫の原因となる白癬菌は、湿度が高く温かい環境を好みます。プールの更衣室や温泉、サウナなどはその条件を満たしており、菌がとても繁殖しやすい環境と言えます。またこのような場所では、床、マットやサンダルなどの菌が付着しやすいものに、はだしや素肌で触れる機会が多くあります。ご自身が水虫と気づいていない潜在的足白癬患者が多くいることを考えると、リスクは高いと言えるでしょう。

風呂場
写真=iStock.com/Toru Kimura
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toru Kimura

しかしながら、幸い菌が付着するだけでは感染することはありません。傷がある場合を除き、菌は24時間以上かけて皮膚の角質の中に侵入し感染を成立させると言われています。白癬菌が付着してしまっても、足をきれいに洗えば菌は落ち、感染を防ぐことができるのです。反対に、家庭内などで白癬菌を持つ人と日常的にバスマットや爪切りなどを共有すれば、せっかく足を洗っても再び菌に触れ、感染する可能性が高くなります。

プールやジムなど、はだしで歩く場所ではご自身の履物を着用し、マットやタオルなどの共用をさけましょう。そして最後には、手足の指の間まで綺麗に洗い流し、よく乾かすよう心がけましょう。

■まずは皮膚科で診断してもらうことが大切

すでに症状がある方、またはもしかすると水虫かもと思われている方の中には、水虫で病院に行くことが恥ずかしい、仕事が忙しくて水虫くらいで病院に行く時間がないと思われている方もいらっしゃるでしょう。それでもまずは皮膚科で診断してもらうことをおすすめします。

再発を繰り返しやすいと言われる水虫ですが、治療を成功させるためには3つのポイントがあります。

①正しい診断のもとに薬を選択する

水虫を自力で治療することは不可能ではありませんが、水虫の種類や重症度をご自身で判断することは難しいです。皮膚や爪の一部を採取して、顕微鏡で白癬菌がいるかどうかを調べることもあります。

②治療の終了を適切に見極める

一見治癒したように思えても、実際には菌が残っていることがあります。菌が死滅したのではなく、活動を停止しただけという状態です。症状はなくとも治療が必要な場合があります。

③患部を清潔に保つよう日常生活を注意して過ごす

靴や靴下は通気性の良いものを選び、できれば同じ靴を続けて履かないようにしましょう。蒸れた状態は望ましくありません。お風呂の後などには、足の水分をしっかり拭き取るようにしましょう。家でははだしで過ごされるのも良いでしょう。

これらのポイントを考慮すると、まずは皮膚科で診断してもらうことが大切なのです。ドラッグストアなどで手軽に手に入れられる市販薬は処方薬が切れたときなどの補助的な選択肢として使用されることをおすすめします。治療費の観点からも、継続的な治療が必要であることを考えると、保険の効かない市販薬は結果、皮膚科を受診するよりも金銭的には負担が大きくなるように思います。

■水虫以外の皮膚病の可能性もある

一見水虫と思われる皮膚病も、実は湿疹などの他の皮膚病ということもあります。水虫に間違えやすい皮膚病に、接触皮膚炎や汗疱性湿疹、皮膚カンジダ症があります。接触皮膚炎は、じゅうたんや靴の革の染料や接着剤に触れることで起こる皮膚炎で、触れた箇所に発赤やかゆみ、ただれなどが生じます。汗疱性湿疹は、手足に汗をかきやすい人に見られやすく、汗が原因で起こる湿疹です。水疱やかゆみが現れます。皮膚カンジダ症は、粘膜の常在菌であるカンジダという真菌の感染によって起こる皮膚炎で、指の間、股、お尻、脇の下など皮膚と皮膚が接しやすい箇所に起こりやすく、こちらもかゆみを伴う発疹やただれを症状としています。

水虫と自己診断して来院した患者さんのうち、検査を行い実際に水虫(足白癬)と診断された割合は2/3ほどであったとの報告もあります(小笠原弓恵「白癬の頻度と患者意識」Jpn. J. Med. Mycol. Vol. 44、253-260、2003)。

足
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/years

特に、患部が腫れている場合や、家族に水虫がないのにお子様だけに症状がある場合、手や足の左右対称に症状があるなどの時は、水虫以外の病気かもしれません。

誤った自己診断は治療を長引かせる可能性がありますし、反対に水虫にもかかわらず無治療でいることは知らないうちに人に水虫をうつしてしまうことにつながります。水虫かもと思ったら、自己判断せずに早めに皮膚科を受診し、完治を目指しましょう。

(参考文献:中原保裕『処方がわかる医療薬理学2022-2023』学研プラス)

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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