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"何もしない時間"に耐えられない人が多すぎる…寝ても疲れが取れない人が今すぐ取るべき「休息」の種類

プレジデントオンライン / 2024年6月13日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Olezzo

仕事が進まない、寝ても疲れが取れない、そんな時はどうすればいいのか。韓国の精神分析医キム・ヘナムさんは「現代人は大量の刺激が入る一方で消化する時間が絶対的に不足している状態にある。そのため、負荷がかかり過ぎたコンピューターのように頭が回らなくなるときがあるのだ。その場合は、1人の時間をつくるといい」という――。

※本稿は、キム・ヘナム著、渡辺麻土香訳『「大人」を開放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

■現代人には「1人の時間」が必要だ

現代社会を生きることは非常に骨が折れることだ。学ぶべきことも多ければ、考えなければならないことも山ほどある。大量の刺激が入ってくる一方で、それを消化するための時間は絶対的に不足した状態だ。そのためある瞬間、負荷がかかり過ぎたコンピューターのように脳の回転スピードは落ち、頭がうまく回らなくなる。こういう時は判断力が急激に低下して、重要な判断を見誤る可能性が出てくる。その上アイデアも枯渇して、現状維持に汲々(きゅうきゅう)とするばかりだ。そうなると、ただ椅子に座っているというだけで、仕事は進まず好ましい結果も出ない。たっぷり寝てもちっとも疲れが取れず、ストレスもたまる一方である。

そういう時に必要になるのは休息だ。日々無数の刺激に囲まれている私たちは、知らず知らずのうちに、たくさんのことを見聞きして、経験を積み重ね影響を受けている。そうやって押し寄せる刺激を、瞬間的な知覚として受け流すのではなく思考として発展させるには、考えを整理するための1人の時間が必要だ。食後しばらく体を休めると食べ物の消化が良くなって骨や肉の形成が促進されるのと同じように、押し寄せる刺激を理解してかみ砕き、精神の形成を促進させるには、刺激を消化するための余裕が不可欠なのだ。

■ビル・ゲイツは年に2度「思考週間」を過ごしている

ゆえに脳に負荷がかかり過ぎていると思った時は、一旦すべてを停止して休息を取らなければならない。それ以上の刺激が入るのを防ぎ、脳がそれまでに受け取った情報を整理して、既存の情報と統合するための時間を作るべきだ。

そうした理由からビル・ゲイツは年に2度、アメリカ西北部にある別荘で1週間の「思考週間(Think Week)」を過ごしている。社員はもちろん、家族の訪問も断って1人だけの時間を作りリフレッシュするのだ。マイクロソフト社の重要な事業構想は、すべてこの時間で作られたといっても過言ではない。

だが思いのほか、休むべき時にきちんと休める人は多くない。一部の人たちは休み自体を上手に受け入れることができないのだ。何もせずリラックスする時間に耐えられないのである。彼らは働いていない時間も休むのではなく、多少なりとも意味のある生産的な何かをするべきだと考える。そのため休み時間もじっとしていられないうえに、絶えず新しい何かを吸収しようとしてしまう。外部のあらゆる刺激から完全に距離を置くことができないのだ。すると心身が常に張り詰めた状態になり、脳はオーバーヒートして、ついにはバーンアウトしてしまう。

■脳を休めれば体が回復し、心も楽になる

リラックスして休息を取ることは、決して時間の無駄ではない。より良い人生を歩みたいのなら、時々無理にでも刺激のすべてを遮断して、1人だけの時間を作るべきだ。携帯電話の電源を切り、誰にも邪魔されない空間へ行き、あらゆる刺激から自分を守って脳を休める。そうやって疲れた脳が活気を取り戻し、自由な発想ができる状態を整えてやるのである。

すると、複雑に絡み合っていた思考がほどけてシンプルになり、疲れた体が回復し、心も楽になる。凝り固まった思考の足かせから解放され、いつもなら思いつかないような発想や、二の足を踏んでしまいそうなアイデアも浮かび、よりクリエイティブなものをひらめくようにもなるのだ。

一方、頻繁に海外一人旅をしている人たちが、口をそろえて言うことがある。「旅は家へ帰るためにしているのかもしれない」というものだ。知らない土地で知らない人に会い、新たな経験をするのは楽しいが、だんだん時間が経ってくると、どういうわけか家や日常、ふだん一緒にいる人たちが恋しくなってくる。出かける前はあんなにうんざりしていたのに、すべてが恋しくなってくるのだ。すると、いつもそばにいた人のありがたみが改めてわかるようになる。そして、一緒にいる時は当たり前だと思っていたことにも感謝の気持ちが湧いてくる。それゆえ旅の終盤になると家へ帰りたくなり、身近な人たちに会いたくなってくるのだ。

夕暮れ時に熱帯の海を飛ぶ飛行機
写真=iStock.com/murat4art
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/murat4art

■大きな喪失に直面したときも同じ

そういうわけだから、疲れて誰にも会いたくない時は、心の声に耳を傾けることだ。1人で考えをまとめる時間を求めて心が信号を送っているのだから、そういう時は仕事の手を止め、家族や愛する人たちとも離れ、短くてもいいから1人で過ごす時間を作るといい。

大きな喪失に直面した時も同じだ。児童小説『小公女』で主人公のセーラは生まれてすぐに母を失い、その後、父も亡くしている。プリンセスのように気高く育ったセーラは、彼女を用なしとみなした学院長から突如として屋根裏部屋へ追いやられ、使用人にされてしまった。セーラに降りかかった試練は成人した大人でさえ耐えがたいものだが、彼女は決して尊厳を失わない。それどころか、むしろ同じ境遇にある周りの人たちに力を貸した。

幼くして両親と死別し、使用人になってもなお人生を悲観せず、希望を失わなかったセーラの原動力は何だったのだろう? それは、他でもない屋根裏部屋だった。みすぼらしい部屋ではあっても、彼女は自分だけの空間で1人独自の空想を働かせながら世界を広げることにより、現実世界の苦痛を乗り越え、悲しみを鎮めることができたのだ。

■1人の時間があるから再び立ち上がることができる

大きな喪失に直面した際、自分だけの空間において1人で過ごす時間は必要不可欠だ。私たちは1人の時間をとおして記憶を整理し、自分に降りかかった喪失の意味を理解して、去っていった対象を永遠に心に刻む作業をする。失恋や死別を経験した人たちが、一定期間部屋に籠もり、屍のごとく布団にくるまってばかりいるのも、そのためだ。そうすれば大抵の人たちは悲しみをうまく鎮めて再び立ち上がり、より成熟した姿で自分の道へと戻れるようになる。

ところが1人でいることを恐れ、十分に悲しみを体感しないまま、すぐに新しい人を探したり、別のことに没頭したりしてしまうと、悲しみはかえって尾を引くことになる。失恋は新たな恋で忘れるものだという言葉もあるけれど、悲しみが消える前に別の人とつき合ってしまうと、無意識のうちに心に積もっていたうっぷんや怒りを新たな相手に吐き出してしまい、自ら関係を壊しかねない。だから耐えがたい喪失に直面した時は、無理に人と関わろうとせず、静かに1人で過ごすことだ。悲しみをきちんと鎮められれば、自然と誰かに会いたくなって、相手のすべてをきちんと受け入れられるようになるだろう。

■イヌイットは悲しみや怒りがこみ上げた時「ただ歩く」

文化心理学者キム・ジョンウンは、著書『遊んだ分だけ成功する』(未邦訳)で次のように述べている。

キム・ヘナム著、渡辺麻土香訳『「大人」を開放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)
キム・ヘナム著、渡辺麻土香訳『「大人」を開放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)

「イヌイットは心に悲しみや不安、怒りがこみ上げた時、意味もなくただ歩くという。悲しみが鎮まり不安や怒りが消えるまでひたすら歩いて心が落ち着きを取り戻したら、そこで振り返り、その地点に棒を立てるそうだ。その後また日々の暮らしの中でどうしようもなく腹が立って歩いた時、途中で以前立てた棒を見つけたら、ますます生きづらくなってきたということであり、棒に出くわさなければ、なんだかんだで耐え得る人生ということになる。休息は人生の棒を立てることだ。心の中の自分とどこまでも話し合い、穏やかさを取り戻すまで歩き続け、その地点に棒を立てて戻ることである」

つらくなった時は、しばらくすべてを停止して、自分自身に1人の時間を与えるだけでも、人生における問題の多くが解決するのを実感するだろう。そして気づけるようになるはずだ。あなたが無理にしなくてもいいことや、無理に会わなくてもいい相手、さらには今後するべきことと大切にするべきことに。それが、あなたに1人の時間を積極的にすすめる理由である。

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キム・ヘナム 精神分析医
1959年ソウル出身。高麗大学校医科大学を卒業し、国立精神病院(現国立精神健康センター)において12年にわたり精神分析の専門家として勤務。ソウル大学校医科大学招聘教授として教鞭を執り、キム・ヘナム神経精神科医院の院長として患者を診た。五人兄妹の三番目として生まれ、常に両親の愛情に飢えていた経験を持つ。愛情を独占していたのは仲のよかったすぐ上の姉で、羨望と嫉妬の感情を抱きながら育ったが、高三の時、この姉が突然の死を迎え、衝撃を受ける。医科大学に入学したのは、このときの体験がもとになっている。42歳でパーキンソン病を患う。

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(精神分析医 キム・ヘナム)

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