「安いプランでいい」に三流は最安値を提案、そのとき一流が使う“高いプランを選びたくなる”キラーフレーズ
プレジデントオンライン / 2024年6月7日 15時15分
※本稿は、伊庭正康『トップ営業の気くばり 「あなたから買いたい」と言われる47の秘訣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「営業ほどラクな仕事はない」が大袈裟ではない理由
お客様から愛される営業になるために、覚えておいてほしいことがあります。
もし、あなたが「営業ってしんどいな……」と思う時が来たら、こう考えるようにしてください。
「しんどいのは最初だけ(今だけ)」、と。
私も最初の頃は、「なんてしんどい仕事だ……。内勤がいいな……」と思ったことが、幾度もありました。
でも、それを越えるとスーッとしんどさは和らぎます。
スキルが身につき、効率が上がるからです。
さらにその先に待っている世界があります。
「営業ほどラクな仕事はない」、これです。
もちろん、仕事を舐めているわけではありません。
「売る」ではなく、「売れてしまう」状況になるのです。
■売れてしまう状況をつくる「販売力」の方程式
信じられないかもしれませんが、あるメカニズムを知ると、今のしんどさはそのプロセスでしかないと気付くことができます。
そのメカニズムが、これです。
私がこの「販売力」の方程式を知ったのは、営業を始めて3年目くらいの時でした。
『高額商品セールスマンのための驚異のセールス・アクション・プログラム』でその論を見たのがきっかけでした。
ちょっと難しそうですよね。
安心してください。めちゃくちゃ簡単です。
よく、営業は「行動量がすべて」といったことが言われますが、この本の趣旨はそうではありません。
大事なことは、その先。
「売れる営業基盤」をつくることがゴールであることが記されていたのです。
こう考えるといいでしょう。
「営業基盤とは、契約をくださるお客様、または見込み客がたくさんいらっしゃる状態」のことだと。
例えば、お客様が3社だと、探客のために走り回らないといけませんよね。
でも、お客様が50社あり、見込み客が100社あれば、契約が自然に入りやすくなります。
実際、こんな感じ。
今、私は研修会社を営んでいます。
最初は、営業活動をしましたが、今は探客をしていません。でも、講師としての閾値とも言われる年間200回の研修がコンスタントに入ります。
実は、それ以上のお問い合わせをいただいていますが、受けられない……そうした状態が続いています。これこそが、営業基盤のパワーです。
■しんどい期間を経て「愛される状態」がつくられる
話を戻しましょう。
かつて、求人広告の営業をしていた時、最初の2年はとにかく電話と訪問をしまくっていました。
「これでは身が持たないな……」と思っていた頃に、この法則を知ったのです。
そして、こう考えました。
今、一生懸命に訪問活動をしているのは、この先もずっとその状態が続くわけではなく、お客様から多くの契約をいただける「営業基盤」をつくるためである、と。
その基盤をより強く、より早くつくるために必要なのが、本書で紹介する「トップ営業の気くばり」です。
営業基盤とは、言い換えると「愛される状態」をつくることと考えて差し支えありません。
そして、それはちょっとだけ時間がかかるのです。
なので、もし「しんどいな……」と思う時が来たら、この先のことを考えてみてください。
「どんな営業基盤」をつくりたいのかを考えてみるのです。
もしイメージができないなら、あなたの会社のトップセールスは、どんな基盤を持っているのか関心を持つといいでしょう。
繰り返します。
しんどいのは最初だけ。愛されるまでの助走期間です。
■お客様の言われた通りにやってはいけない
お客様から、「安いプランでいいよ」と言われることもあるでしょう。
あなたなら、その時どのように対応しますか。
やってはいけないのが「かしこまりました。もっとも安いのは……」と、求められた通りに提案することです。
営業は求められた通りにやってはいけない。
これは鉄則だと考えておいてください。
実は、求められた通りに対応すると、お客様にとって満足のいくものにならないことが多いからです。
では、どうすべきなのでしょう。
正しい対応は、「教えてもらう」、です。
「安いのでいいよ」と言われた際は、“その背景”を教えてもらいましょう。
■安い薬を買いに来たのに、高い薬を買ってしまう⁉️
ここで、クイズを出しますね。
これは、私が研修で行うデモンストレーションの1つです。
シーンはドラッグストアでの一コマ。
あなたは風邪をひき、薬を買いに行きます。
まずは、シーンA。
店員「かしこまりました。こちらはいかがですか。480円で最安値です」
あなた「では、それで」
いかがですか。特に不満はないはずです。
でも、次のシーンBでは、あなたは不思議な体験をすることになります。
店員「かしこまりました。ところで、いかがされたのですか?」
あなた「咳と鼻水が止まらなくて、困っています」
店員「そうでしたか。それはおつらいですね。少し伺っていいですか。どんな感じですか?」
あなた「そうですね。咳き込んで、夜も寝られない状態が続いています」
店員「そうでしたか。日常の生活にも支障が出ているということでしょうか?」
あなた「はい。睡眠不足のため、仕事中も頭がボーとするんですよね」
店員「かしこまりました。では、お値段のことも考えつつ、しっかりと咳と鼻水を止めるということが大切ですね。3つのお薬をご案内できます」
(ここで3つの薬を示す。薬の名前:「グリーン」「オレンジ」「レッド」)
さて、ここであなたには、顧客の立場でリアルに考えてほしいのです。
では、続きを。
店員 「まず、このグリーンは、咳止めと鼻水を止める成分が標準の2倍入っています。即効性もあり夜もぐっすり眠れると思います。お値段は800円です。
次は、オレンジです。咳止めと鼻水を止める成分が標準の1.5倍入っています。効能はグリーンほどではないですが、こちらも、夜もぐっすりと眠れると思います。お値段は600円です。
次は、レッドです。咳止めと鼻水を止める成分が標準の1倍入っています。お値段は480円です」
ここで、店員が尋ねます。
さて、あなたはどれを選びますか?
■「解決できる方法を提示すること」が絶対原則
きっと、グリーンかオレンジではないでしょうか。
実際、研修でもこのデモンストレーションを行うのですが、ほとんどの人がグリーンかオレンジを選びます。レッドを選ぶ人は5%程度しかいません。
さて、ここで考えてみましょう。
シーンAとシーンBを比較してみてください。
満足度の高かった店員さんは、どちらの店員さんでしたか。
もし、あなたがシーンBの店員さんを選んだなら、不思議なことが起こっています。
安い薬を買いに来たのに、高い薬を買ってしまっているわけです。
なのに、満足度が高い……。
もう、わかりましたよね。
「お客様の言われるままに、素早く対応すると満足度は上がらない。背景を伺い、きちんと方法を提示することが大事」
これが絶対の法則なのです。
■購買意欲を高めるには「データにない感情の機微」が有効
最後に興味深いデータを紹介しますね。
セールスフォースリサーチ社が、全世界2900名を対象に調査をした「セールス最新事情(2018)」では、AIを導入した営業組織ほど、営業担当者を増員している傾向があると言います。
なぜでしょうか。
AIは学習によって、リストや顧客管理の精度を高めてくれますが、購買意欲を高めるには「データには反映されない、感情の機微」を考慮した対話が有効であるとわかったからです。
他にもあります。
エン・ジャパンの転職コンサルタント(160人)を対象に行った「AIに代替される仕事、されない仕事」の調査。
こちらでも、AIに代替されにくい職種トップ3は「経営者」「経営企画」「営業系」との回答を得ていることからも、すべての営業がなくなることがないことがわかるでしょう。
まず、お客様が言うままに対応してはいけない、ここを押さえておいてください。
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らしさラボ代表
1991年、リクルートグループ入社。営業部長、フロムエーキャリア代表取締役を歴任後、2011年に研修会社らしさラボを設立。YouTubeチャンネルでも営業のノウハウを配信中。近著に『超効率的に結果を出す テレアポ&リモート営業の基本』(日本実業出版社)がある。
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(らしさラボ代表 伊庭 正康)
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