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毎月2万円以下なら「オルカン」と「S&P500」はお勧めしない…新NISAで「素人が本当に買うべき金融商品」とは

プレジデントオンライン / 2024年6月7日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

自分の資産を守るにはどうすればいいのか。経済評論家の上念司さんは「インフレ時代では普通預金の価値は目減りしていく。その対策として価格変動リスクを取る、つまり金融商品を買うべきだが、それならオルカンやS&P500よりTOPIXを買ったほうがいい」という――。

※本稿は、上念司『経済学で読み解く 正しい投資、アブない投資』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■投資をしなければ資産は目減りするだけ

新NISAが始まってから「貯蓄から投資へ」とメディアがやたらと煽っています。しかし、具体的に「投資」といってもなにをすればいいのでしょうか? 多くの人は株を買えと簡単に言いますが、どの株を買ったらいいでしょう? そういった超初心者が疑問に思うことにすべて本稿で答えていきたいと思います。

まず、そもそもなぜ投資をしなければいけないのかという点について解説します。日銀の金融緩和やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰などによってインフレ期待が完全に定着しました。インフレとは、お金の価値が目減りする現象です。

たとえば、年率3%のインフレの場合、100万円の貯金は翌年97万円の価値しか持ちません。つまり、現金やタンス預金、普通預金で保存していてもお金の実質的価値は目減りしてしまうということです。

■100万円で買えるものはどんどん少なくなる

実は、インフレというのは一種の税金みたいなものなのです。そして、この税金はリスクを取らない人に集中的にかかるという特徴を持っています。リスクとはなにか? 具体的に言うならそれは「価格変動リスク」のことです。いわゆる元本保証とは正反対。元本が保証されないどころか、刻一刻と増減しますよということ。なんか不安ですよね?

ただ、元本保証という言葉に騙されてはいけません。なぜなら、元本保証とはあくまでも名目の元本の価値を守るということであって、実質的な価値が守られるということではないからです。100万円の現金はたしかに永遠に100万円のままですが、100万円で買えるものはどんどん少なくなっていく。これがインフレなのです。

■「物価は永遠に不変」ではない

たとえば、蔵の中に眠っていた「開かずの金庫」を開けるというテレビ番組があります。

金庫の中から財宝が出てきたとネタになりますが、その財宝というのはたいてい金や銀や古銭です。これらは貨幣というよりも貴金属(商品、コモディティ)や骨董品としての価値を持つモノであり、その表面に刻まれた貨幣価値とは関係なく値段がついているモノです。

これに対して、聖徳太子の印刷された旧一万円札は使用済みのものなら一万円以上の価値は持ちません。未使用のものだと多少プレミアムはつくそうですが、それもあくまで骨董品としての価値であって、紙幣そのものの価値ではありません。まして、現在も新券が発行され大量に流通している福沢諭吉の一万円札が一万円以上の価値を持つことは、よほどのことがない限りあり得ません。

1998年から14年間もデフレが続いたので、私たちはこの感覚をもうすでに忘れているかもしれませんし、その時代よりあとしか知らない若い人も多いでしょう。また、アベノミクスが始まった2013年以降もインフレ率は平均で1%程度と、いわゆるディスインフレの状態でしたので、目に見えた物価上昇は感じられなかった人が多いと思います。あたかも物価は永遠に不変であるかのように思い込んでいませんか?

■文句を言う前に株式投資をすべき

しかし、そんなことはありません。2020年に経済のパラダイムは大きく転換しました。欧米では一時、インフレ率が8%から10%まで上がってしまい、まさに1970年代の石油ショックが再来しました。

一方、日本でも2023年はコアコアCPIが4%を超えて上昇しています。これは100万円の実質的価値が翌年96万円になってしまうということを意味します。漫然と100万円を現金で所持したり、ほぼ0%の金利の普通預金に置いておくと、4万円損する。なんか理不尽ですよね。

でもこれが現実なのです。我々がいくら騒いでも、このインフレはあと36年、おそらく2060年まで続きます。デフレとインフレは40年周期で巡っているからです。だから、いまグダグダ文句を言っても資産は目減りするだけ。文句を言う前に対策をとるべきではないでしょうか?

その対策とは、先ほども申し上げた通り、価格変動リスクを取ることです。具体的に言うと、元本保証ではない金融商品を買うこと。その典型的な例が株を買うこと、つまり株式投資なのです。

■モノの価値が上がれば、企業の価値も上がる

ただ、株式投資は元本保証ではありません。毎日、市場で取引され、その値段は刻一刻と変わります。逆に、元本が伸び縮みするからこそインフレに強い。元本保証ではないことが逆に強みだと思ってください。

では、そもそも株式ってなんでしょう? 株式とは企業の所有権です。では企業とはなにか? 企業とは、モノをつくったり、サービスを提供したりする組織です。

ここで再度確認しますが、インフレとはモノが不足してその価値が上がる経済現象ですよね? だとしたら、それを供給している組織の価値はどうでしょう? 当然上がるんじゃないですか? 当たり前の話です。モノの価値が上がるのに合わせて企業の価値も上がっていけば、資産の目減りを防ぐことができます。そして、そうなる可能性が極めて高い。

ただ、ここでもう一つの問題が生じます。日本中に企業は山ほどある。その中でどの業の株式を購入すればいいのか? そもそも、将来どういう商品やサービスが売れるのか予想して、それを提供する企業の株式を先回りして買うなんてことができるのか?

■素人は個別株に手を出してはいけない

ハッキリ言います。個人投資家でそれができる人はいるかもしれませんが、ごくごく限られた一部の超少数派だと思ってください。個人投資家なんて、はっきり言って素人。企業分析のために財務諸表を読みこなしたり、業界のトレンドを調査するためにインタビューしたりする能力もないし、暇もありません。だから、本業でやっている人たちには絶対に勝てない。

パソコンで株式取引をするスーツの男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

株式市場には「頭のいい人が頭の悪い人からお金を巻き上げる」という残酷な現実があります。個人投資家が徒手空拳で参入したところで、経験豊富なプロにカモにされて終わりです。我々は逆立ちしても勝てないと思ってください。

私はよく「投資を始めたいんですが、どの株を買ったらいいですか?」と質問されることがあります。私の答えはシンプルです。どの株も買ってはいけません。

あれ? なんかおかしくないですか? ついさっきまで私はインフレに勝つためには価格変動リスクを取れと言っていましたよね。そして、価格変動リスクを取るというのは、具体的には株式を買うことだと断言していたじゃないですか! なんか矛盾していません?

■2万円で約2200銘柄を買うことができる

いいえ、矛盾していないんです。

私は個別の企業の株式(個別銘柄)を買うなと言っているだけで、株そのものを買うなとは言っていません。どういう意味か? 個別銘柄を買うんじゃなくて、できれば株式すべてを買いなさいという意味です。

そんなことができるのか? 東京証券取引所に上場している銘柄数は約2200もあって、これを全部買うとしたらどれだけ資金が必要かと普通なら思うことでしょう。しかし、これが意外と安い! たった2万円ほどで約2200銘柄を買うことができるんです!

これがいま流行りの「インデックス投資」というやつです。それを説明する前に「TOPIX」と「日経平均株価」という2つの指数(インデックス)について説明します。

東京証券取引所に上場されている銘柄の加重平均を指数化したのが「東証株価指数(TOPIX=Tokyo Stock Price Index)」です。TOPIXは東京証券取引所に上場しているすべての国内普通株を対象としています。そのため、市場全体の動きを反映する広範な指標として使用されております。日本の株式の価値そのものを表しているといっても過言ではありません。

東京証券取引所には、TOPIXのほかに日経平均株価(日経225)という株価指数もあります。むしろこちらのほうが有名かもしれませんね。しかし、日経平均株価(日経平均)は上場企業の中から日本経済新聞社が選んだ225社の株価の単純平均(算術平均)です。加重平均ではないため、大型株の値動きに大きく左右されるという歪みがあります。

どちらかというと大企業指数といったほうがいいかもしれません。TOPIXとは異なる視点から市場を分析することができますが、TOPIXはよりは偏りが出やすい点には注意が必要です。

■プロ投資家と同じスタートラインに立てる

現在、東京証券取引所にはTOPIXや日経平均に連動した「ETF(上場投資信託)」が取引されており、また各種証券会社ではこれらの指数に連動した投資信託も販売されています。

連動というのはたとえばTOPIXが1%値上がりしたら、ETFの基準価格が1%値上がりするということです。逆にTOPIXが1%値下がりすれば、ETFの基準価格も1%下がります。

これって事実上、指数そのものを株式のように買っているのと変わりません。東京証券取引所に上場している全銘柄なわけですから、いわば「日本株式会社」の株だということです。ここまで規模が大きくなると、プロでもすべての情報をカバーすることはできません。結果としてなにも知らない素人投資家と同じスタートラインに立ちます。

■特定企業の株価が暴落しても影響は小さい

また、ある企業が不祥事等で株価を下げても、不祥事がなかったライバル企業の株価が上がるため、その分が相殺されて指数にはあまり影響がないなんてこともあります。

2024年3月に小林製薬が紅麴サプリによる健康被害を起こしました。3月26日に株価は暴落しましたが、ライバル会社である花王とライオンの値動きは図表1のようになっています。

小林製薬、花王、ライオンの株価推移
出所=『経済学で読み解く 正しい投資、アブない投資』(P150)

小林製薬が暴落したにもかかわらず、ライバル2社は株価を維持し、花王に至っては4月に入ってから値を上げています。このように指数の持つ平均の効果でリスクを分散することができるというのがインデックス投資の大きな利点です。

では具体的にどのような商品を買ったらいいでしょう。一例を挙げます。TOPIXに連動した投資信託の中で最も時価総額の大きいのは「三菱UFJ-eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」(eMAXIS)です。時価総額が大きいということは要するにみんなこれを買っているということになります。

気になるこの投資信託の値段ですが、2024年4月8日現在、基準価格2万734円となっています。意外と安くないですか? たった2万円程度で約2200銘柄をすべて買っているのと同じ状態なんですから。

■手数料が高い商品には要注意

次に、購入する商品について考えてみましょう。先ほどは日本株のインデックスファンドの中で最も時価総額の大きい「eMAXIS」をご紹介しました。日本株のインデックスファンドはほかにもいくつかありますので。そちらでも構いません。

ただ、気をつけなければいけないのは手数料です。たいていの投資信託は手数料が高く。利回りがそれで食われやすくなってしまうというのが問題です。

先ほど紹介したeMAXISは売買手数料が無料です。毎年かかる信託報酬は0.143%以内、信託財産留保額もナシという優れものです。というか、インデックスに連動した投資信託の場合、むしろこれが普通です。eMAXISを基準としてほかの投資信託を比較してください。

■S&P500やオルカンより「TOPIX一択」

次に、投資対象について考えてみます。私は基本的に日本株のインデックスだけで運用していれば問題ないと考えています。ただ、最近はアメリカ株のインデックスである「S&P500」指数に連動した投資信託を買う人が多いそうです。

また、世界の株式全体を指数化したMSCI世界株式指数に連動するいわゆる「オルカン(オールカントリー)」を買う人が増えているという報道があります。

上念司『経済学で読み解く 正しい投資、アブない投資』(扶桑社)
上念司『経済学で読み解く 正しい投資、アブない投資』(扶桑社)

どのようなインデックスを買うかはその人の自由ですが、私はあまりこれらをお勧めしません。お金に余裕があって投資を分散したい人ならいいですが、そもそも毎月最低投資単位の2万円ぐらいを積み立てるのが精いっぱいという人もいるでしょう。なにか1つしか買えないという条件の下であれば、私なら日本株のインデックス、TOPIX一択かなと思っています。

日本株の投資信託の場合、そこで取っているリスクは株式の株価変動リスクだけです。これに対して外国株の投資信託の場合、株式の価格変動リスクに加えて、為替の変動リスクも取らなければいけません。もちろん、この為替の変動リスクをヘッジすることは可能です。ヘッジありの商品もありますから。しかし、そのヘッジにはコストがかかります。

わざわざ為替の変動リスクを取ったり、それをヘッジするためのコストを払ったりしなくても、日本株で運用すれば価格変動リスクによってインフレリスクを相殺できるわけですから、それでいいのではないでしょうか?

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上念 司(じょうねん・つかさ)
経済評論家
1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

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(経済評論家 上念 司)

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