顧客からの依頼に「すぐにやります」は絶対言ってはいけない…仕事のデキる人の"王道の返答フレーズ"
プレジデントオンライン / 2024年6月10日 15時15分
※本稿は、伊庭正康『トップ営業の気くばり 「あなたから買いたい」と言われる47の秘訣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■営業は「すぐにやります」と言ってはいけない
営業はスピードにはこだわるのは大切ですが、「すぐにやります」とは言ってはいけません。
このセリフ、つい言っていませんか。
お客様から嫌われるのは避けたい……そんな不安があれば、なおさらです。
しかし、この一見すると無難な答えが、結果としてお客様にストレスや不信感を生むことがあります。
まず、「すぐやります」とは言わないと決めてください。
先ほどもお伝えしたように、重要なのは、納期を明確にすること。
人によってペースは異なるため、納期が曖昧だと、ストレスが生じることが少なくないのです。
実際にあった事例を紹介します。
彼は、イベント会場の営業。
お客様から「予約は可能でしょうか?」との問い合わせが入りました。
その場ではわからなかったので「すぐに返事します」と伝えました。彼はすぐさま予約を担当する部署に問い合わせのメールをして、その返事を待ちました。
その矢先、そのお客様から電話が入ったのです。
「まだですか? そろそろ外出をしないといけないのですが……」と、催促を受けてしまったのです。
まだ、5分もたっていないのに、です。
これは、お客様がせっかちなのでしょうか?
そうではないですよね。
問題は、返事の期限を具体的に伝えなかったこと。
では、どうすればよかったのでしょうか。
いつ返事ができるかわからないこともあります。
この場合、「すぐ対応します。担当に確認をとりますので、ひょっとしたら10〜15分程度、お時間をいただくかもしれませんが、可能でしょうか?」と言えばよかっただけです。
■納期は先延ばし、納品は前倒しに
ここで、ズルいテクニックを紹介しますね。
少し余裕を持った期限をお伝えするようにしてください。その方が安全ですし、なにより感謝されるからです。
実は納期設定にはセオリーがあります。
「納期は『先』に延ばし、納品は納期より『前』倒す」、です。
「15分程度お時間を……」とお伝えしながらも、5分後に返答すればいかがでしょう。お客様の期待より早くなるわけです。
これが、できるビジネスパーソンの王道です。
最後に1つ。
意外と多いのが、「明日中に返事します」と納期を明確にしながらも、その返事がないという事態です。
そうなると、「すぐにやります」より、タチが悪くなります。
でも、これ、ほんとによくあります。心当たりのある人は、注意をしてください。
この執筆をしている今も、昨日連絡のあった営業さんから返事が来るはずだったのですが、ありませんでした。だから、余計に気を付けないといけないと改めて感じています。
こうした営業さんは「もったいないな……」と思います。もちろん、約束の期日までに返事ができないことも、当然あることでしょう。
返事ができなければ、約束した期日にこう伝えれば解決します。
「申し訳ございません。まだご返事ができる状況ではなく……」と。
これだけでも、きちんとしているな、と顧客は思うもの。
まず、納期を明確にしましょう。そして、きちんと守る。これ鉄則です。
■「この人なら任せられる」という安心感を獲得する
顧客の習慣に入り込むことができれば、それこそが最大の営業力となる。
この話をさせてください。
求人広告の営業をしていた時のこと。
そのお客様は、老舗の洋服店を営む社長さん。2週間に1度のペースで求人広告を掲載いただくお得意様でした。事務所は店舗の2階です。
その日も、いつものように水曜日の10時に階段を上っていき、ドアをノック。おおかた、この時間に来る人は、伊庭くらいなのでしょう。
いつものようにドアの向こうから、「伊庭さんか?」と、社長の声が。
「はい、伊庭です。おはようございます」
「おはよう。どうぞ、入って」
「お邪魔します」
そして、いつものようにイスに座り、5分程度雑談。
「また、いつもの職種で、募集を出しておいて」
「ありがとうございます。原稿、どうしましょう」
「伊庭さんに任せるよ」
「かしこまりました。また、作成したら見ていただくようにしますね」
「じゃ、一応、見せてもらうね。任せるけど」
「ありがとうございます」
おそらく、いわゆるソリューション営業とは、ほど遠い営業スタイルに見えたかもしれません。
でも、お客様が、長い付き合いをする上で本当に求めるのは、「この人なら任せられる」という安心感ではないでしょうか。
どんなに忙しくても、「いつもと一緒」であり続け、「この人に任せれば、細かいことは言わずとも大丈夫」と思っていただく行動をする。
この姿勢が、お客様の「習慣」に入り込むことでもあり、それができてこそ、お客様から信頼をしてもらえると、何度も実感してきました。
■「いつも同じ」は営業にとって強い武器になる
最初に私が、顧客の習慣になることを意識したのは、『メルセデス・ベンツに乗るということ』という本を読んだことがきっかけでした。
当時、メルセデス・ベンツは、新しいモデルに乗り換えても、メーターやパネル類の場所が同じでした。
何代にわたって乗り換えても、操作のストレスがなく、メルセデス・ベンツしか運転できないという状況をつくり、顧客を囲いこんでいるというのです。
同じであることが価値になる……目から鱗(うろこ)でした。
それまでの私は、一見すると地味にも見える、日々の訪問活動に一種のマンネリを感じていました。もっと、すごいソリューションをしないと、他の業者と差別化できない、そんな焦りも感じていました。
でも、お客様が望んでいることは、
「いつもと一緒であること」「すべてを言わずともわかってくれること」、
そんな基本的なことであると気付かされたのです。
確かに、考えてみるとそうです。
あなたの会社でも営業担当が変わる時、多くのお客様はストレスを感じませんか。
あれは、「習慣」が崩される不安があるからです。
なので、もしあなたが、かつての私のように営業活動にマンネリを感じ、焦ることがあれば、こう考えてみてはいかがでしょう。
「顧客の習慣に入る活動をしているのだ」と。
元P&GのCEO、アラン・ラフリー氏は、そのことを「顧客習慣」と言いました。
そして、彼はこう続けます。
「顧客は、差別化など求めていない。いつもと一緒であること、変わらないことが大事なのだ」
あなたの地味にも思える活動は、お客様にとってかけがえのない活動なのです。
「今日はちょっとラクをしようかな……」
「ちょっと手を抜いてもいいかな……」
「こんな単純なこと嫌だな……」
と自分に負けそうになった時、お客様の習慣を崩してはいけないな……と考えてみてください。意外とふんばれます。
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らしさラボ代表
1991年、リクルートグループ入社。営業部長、フロムエーキャリア代表取締役を歴任後、2011年に研修会社らしさラボを設立。YouTubeチャンネルでも営業のノウハウを配信中。近著に『超効率的に結果を出す テレアポ&リモート営業の基本』(日本実業出版社)がある。
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(らしさラボ代表 伊庭 正康)
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