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「おはよう」が言えない人に「人の気持ち」はわからない…"挨拶"という言葉に込められた「ブッダの教え」とは

プレジデントオンライン / 2024年6月12日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xavier Arnau

普段、何気なく使っている言葉の意味を考えたことはあるだろうか。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「実は仏教にルーツをもつ言葉が多い。例えば『挨拶』は師匠が弟子の悟りの度合いをはかる問答のことを指す。ここにもブッダの教えが込められている」という――。

■社員も経営者もそれぞれ悩みを抱えている

私が、人々の苦悩に仏教の智慧で寄り添う悩み相談番組「大愚和尚の一問一答」を、YouTubeで配信し始めてから10年が経つ。

「大愚和尚の一問一答」に届く相談には、「リストラされた」「仕事に行きたくない」「鬱になってしまった」「上司や同僚との関係に悩んでいる」といった仕事上の相談も少なくない。

中でもここ2、3年で増えているのは、経営者や経営幹部など、経営サイドに立つ方々からの相談だ。

「なかなか採用ができない」「社員が言うことを聞いてくれない」「嫌なことがあると社員がすぐ辞めてしまう」「No.2が育たない」「親から受け継いだ会社をどうしていくべきか」「創業以来ずっと黒字だったが、ここへ来て赤字が連続して立て直せない」「主力であった事業が傾いているが、新規事業として何をしていいのかが分からない」「妻や夫、親や子どもとの関係に悩んでいる」「現状苦しいわけではないが、未来が見えない」「自分の中にブレない軸や確信が欲しい」など。

また、企業からの講演会や研修会の依頼も増えている。

■実は仏教にルーツがあるビジネス用語

そんな「声」を受けて私は、「経営マンダラ実践会」と称する経営者向けの仏教経営研究会を始めた。昨年秋にスタートし、すでにこの半年の間に、東京、名古屋、大阪、サンフランシスコ、サンディエゴなど日米の都市で開催してきた。そこには中小企業の経営者、上場企業の幹部といった企業経営者、これから起業を考えている方々はもちろんのこと、政治家、医師、大学教授など、多種他業界のリーダーたちが集まった。

ここまで読んで、あなたは思ったかもしれない。

「なぜ坊さんが経営について語るのか」と。

実は「経営」は仏教の言葉である。また「経営」に限らず、ビジネスの場面で用いられる言葉の中には、仏教の言葉が多く存在する。ぜひ一人でも多くの経営者、そしてビジネスパーソンに、それらの言葉本来の意味を知っていただき、会社の経営や自身の生き方、働き方に役立てていただけたら幸いである。

■「経営」は永く、丈夫で、美しい布を織る営み

「経営」という漢字の「経」の字をよく見ていただきたい。

お経の「経」だ。では「経」とは何か。昔、まだ今のような製本技術が発達していない時代に、ブッダの教えを記した紙を束ねるために縫ったその縦糸が「経」である。そして「経本」にはブッダが説いた「苦を離れて幸福に生きるための真理」が書かれている。

つまり経営とは、「真理の縦糸に、創意工夫の横糸を絡ませながら、永く、丈夫で、美しい布を織る営み」のことなのである。

■朝の「挨拶」に隠されている本音

「挨拶」もまた、仏教の言葉である。

挨拶の「挨」とは「推しはかる」「近づく」「触れる」といった意味で、「拶」には「せまる」「切り込む」という意味がある。

古来禅宗では、師匠が弟子に何気ない言葉や動作を投げかけ、その返答を持って、弟子の理解(悟り)の度合いをはかるといったことが行われてきた。

そのような問答を「挨拶」と呼んだ。

例えば、会社に出勤して出会った同僚への「おはよう!」に対して、返ってくる「おはよう」の声が小さければ、「あれっ……何だか今日は元気ないな」と、相手の心情や体調を心配する。

例えば、家に帰って放った「ただいま!」に対して奥さんから返ってくる「おかえり」のテンションが低ければ、「あれっ……俺なんかやらかしたかな」と、自分の行動を振り返ってみる。

そんな経験が誰にでもあるはずだ。言葉を交わしながら、そこに言葉でない「何か」も交わされている。それが人間のコミュニケーションだ。そして、その言葉でない「何か」のほうにこそ、相手の本音が隠されていたりする。その「本音」に切り込んでゆくこと。それが禅の「挨拶」なのである。

■「投機」は禅問答を意味する言葉

「投機」といえば、短期的な価格変動での売却益を狙って行う投資のこと。損失を見込み危険を顧みず大利益を得ようとする行為ともいえる。

ギャンブルではないにしても、そのような行為を意味する言葉が、仏教の言葉だと聞いて、意外に思う人もあるはずだ。

しかし「投機」もまた仏教の言葉である。「投」は文字通り投げるという意味であり「機」は心の働きを指す。師匠が弟子に問いを投げ、弟子がその問いに答える。また弟子が質問を投げかけ、師匠がその質問に答えたり、答えずに考えさせたりする。そのような無限の掛け合いを通して、師匠は弟子を導き、弟子は次第に悟りの高みに達してゆく。

その禅問答を意味する言葉が相場に使われるようになったのだ。市場は、株や通貨などをその価格で買いたい、売りたいという、さまざまな思惑を持った売り手と買い手が集まって問答を繰り返し、価格が決定されてゆくからである。

■ブッダは教えが「流通」することを望んだ

流通とは、消費者から生産者までの商品やサービスの流れのことを指す。

しかし、これも仏教の言葉だ。「流通」は元々「るつう」または「るづう」と読み、仏の正しい教えが広く伝わっていくことを意味する。

『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』の第三巻には「安穏豊楽(あんのんほうらく) 正法流通(しょうほうるつう)」という表現が登場する。「正い仏法が広く伝わることによって、安穏豊楽な社会が実現する」という意味だ。

また、聖徳太子が著した『勝鬘経義疏(しょうまぎょうぎしょ)』には、「如来、まさにこの経を流通せんと欲す」とある。「ブッダは、この経典が広く伝わることを望んだ」という意味である。

水滴
写真=iStock.com/Trout55
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Trout55

■本来の「利益」は他を益すること

経営者は常に、いかにして会社の利益(りえき)を最大化するかを考えている。経営者でなくとも、人々の関心も常に「自分の利益」にある。

この「利益」も、実は仏教の言葉だ。ただし仏教では「りえき」ではなく、「りやく」と読む。そう、ご利益(ごりやく)と呼ばれるものだ。

多くの人は、受験合格、無病息災、家内安全、商売繁盛など、祈り、祈ってもらうことによって得られるだろう恵みのことを、ご利益(ごりやく)と呼んでいる。

しかし仏教が説く本来の利益(りやく)とは、自分の望みが叶えられることや、金品が得られることではなく、仏の教えによって得られた精神的恩恵を意味している。さらに、仏の教えを受けて自分が利益を得るということだけでなく、他を益(えき)するということ、他に恵みを与えるという精神と実践が大切なのである。

■経営の裏には必ず生身の人間がいる

さて、これまで元々は仏教語であった5つの用語を紹介してきたが、あなたはいくつ、その本来の意味を知っていただろうか。

会社とは社会に価値を創造、提供する装置であり、仕組みである。

会社におけるお金は、人体における血液と同じだ。循環が滞れば病気になるし、枯渇すれば生き延びることができなくなる。けれども、会社はどこまでいっても、人が人に商品やサービスを提供し、その対価としてのお金を受け取って血液としている。経営の裏には必ず生身の人間がいるのである。

「お金」ではなく「人」を見る。

ビジネスの場面で使われている仏教の言葉は、そのことを私たちに思い出させてくれる。私たちが普段、何気なく使っている仏教の言葉は、個人の「生き方」のみならず、会社の「経営」や、社会の「経済」にも深遠なる智慧と、大いなる指針を与えてくれるのである。

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大愚 元勝(たいぐ・げんしょう)
佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表
空手家、セラピスト、社長、作家など複数の顔を持ち「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。僧名は大愚(大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意)。YouTube「大愚和尚の一問一答」はチャンネル登録者数57万人、1.3億回再生された超人気番組。著書に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え 一問一答公式』(飛鳥新社)。最新刊は『自分という壁』(アスコム)。

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(佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表 大愚 元勝)

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