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定年後はこれを手放せばバラ色になる…80代起業家が勧める権力に無頓着な"名脇役"というベストポジション

プレジデントオンライン / 2024年6月16日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

定年後も実社会でいきいき働くための原則とは何か。82歳で起業した実業家の松本徹三さんは「『瑣末なことにこだわらない飄々たる雰囲気』を持つ名脇役になるのがお勧め」という――。

※本稿は、松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■これまでとは異なる仕事の魅力

定年後に「これまでの経験が活かせる仕事」を求める人たちは、「安全志向」の人たちですが、それはそれで決して悪いことではありません。

あなたがあなたの所属した会社で当たり前にやってきたことが、実は別の会社には欠けていたことで、これがその会社の業績改善に大きく役に立つなどということも、十分ありうるからです。しかし、それはあまり「ワクワクする」ことではありません。

これに対して、せっかく定年にしてくれたのだから、これからは「これまでとは全く異なった仕事」をやろうと考えると、それだけでちょっとワクワクするのではないでしょうか?

なぜ「これまでとは異なった仕事」に魅力があるかといえば、大きく分けて次の三つのファクターがあるかと思います。

1 何事も(働く時間も、仕事の内容も)もっと「自由」に自分で決められる。
2 もっと自分に向いた(自分が得意で、やっていて「楽しい」)仕事を選べる。
3 世の中のために(あるいは次世代のために)なっているという「誇り」が持てる。

私は、これを、「自由」「楽しい」「誇り」の「仕事選びの三原則」と呼んでいます。

■「生活の向上」の誘惑はキリがない

それでは、なぜこれまではそういう仕事が選べなかったかといえば、自分の属する「組織」がそれを許さなかったからであり、なぜその「組織」から離れられなかったかといえば、自分が「生活の(経済的な)安定」をまず求めなければならなかったからでしょう。

そうです。「生活の安定」は、多くのサラリーマンが、普通真っ先に考えることです。

いや、「生活の安定」という言葉はあまり正確ではなく、「生活の向上」と言った方が良いかもしれません。「安定」なら、ある一定の水準で満足できますが、「向上」となれば、欲求はいつまでも際限もなく広がります。

最近は若い人たちの「結婚願望」がどんどん少なくなっているようですが、その要因の一つには、「家庭を持って子供の養育と教育にお金をかけるぐらいなら、独身である程度のお金が自由気ままに使える方がいい」という考えがあるようです。

2人目の子供を断念する傾向が大きくなっているのも同じ理由によるものでしょう。しかし、そういう基本的な問題は、入り口に過ぎず、実際には「生活の向上」の誘惑は、際限もなく広がっていくようです。

それは、周囲の人たちの贅沢がいやでも目に入り、羨ましく思わざるを得ないからでもあるでしょうし、テレビや映画でそれを見せつけられるからでもあるでしょう。会社の中では、自分と同期の仲間が、あれよあれよという間に偉くなり、自分の地位は一向に上がらないとなると、癪にもさわるし、少し惨めな気持ちにもなるでしょう。

■ゲームオーバーだからこそ

そうなると、「自分ももう少しは上に上がれるはずだし、そうなりたい」という思いを持つのも当然です。

そして、そう考え始めると、とりあえずは、何よりも「うまく立ち回る」ことを第一に考えざるを得ないし、特に大きな機会に恵まれそうになければ、まずは「安全第一」で行くしかなくなってしまいます。

しかし、定年間近の年齢に達すると、どうでしょうか?

長年自分を苛めてきたこの「生活の向上」の呪縛は、既に消えてしまっているのが普通です。もはや「ゲームオーバー」で、多くを求めるのは不可能だし、そんな気もとっくに失せてしまっているからです。

子供たちも概ね独立しており、もはや負担ではありません。家のローンも何とか完済しています。これからの親の介護のための負担が、少し心配ではあっても、「責任感の重圧」がのしかかってくるほどではありません。

これが、定年直近の年齢に達した人たちの平均的な状況だと思いますが、よく考えてみると、これって、かなり凄いことではないでしょうか?

大袈裟にいえば、牢獄から解き放たれて、自由な未来に向けて深呼吸をしているようなものだと、言えないこともありません。

赤いマントをつけて空を飛ぶ人形
写真=iStock.com/adventtr
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/adventtr

■「未知のものとの遭遇」のギフト

それならば、少しぐらい「冒険」をしてみても良いのではないでしょうか?

「自由」も「冒険」も必ず「不安」を伴うものであり、決して気楽なものではありませんが、それでも、それまでに長い間感じてきたような「責任感の重圧」に比べれば、何ということはありません。

失敗しても失うものはそんなに大きくはありません。良くも悪くも、人生の最後が少しだけ波乱に満ちた(面白い)ものになるか、平凡で詰まらないままで終わってしまうかだけの違いです。

何が「冒険」なのか、何が「面白い」のかといえば、そこには「未知のものとの遭遇」があるからです。

これまでには言葉を交わすこともなかった人たちとの出会いもあるでしょうし、全く異なった「考え方」や「やり方」を知って、驚きながらも「なるほど」と納得することもあるでしょう。

こういう新しい体験の中で、これまでは気がつかなかった「自分」の別の側面に気がついたり、新しい「価値観」に目覚めたりすることもあるかもしれません。

人生の最後にこういうことがあるかもしれないと思えば、そのチャンスを見逃す手はないでしょう。

■上も下も桁外れの人たちに出会う

定年のおかげでこれまでの仕事に一区切りがついて、新しい仕事に挑戦することの利点は色々ありますが、まずは収入にあまりこだわらないで済むということでしょう。

ランニング後に座って休む笑顔のシニア男性
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kumikomini

それまでは、収入が減ると自分の何かが否定されたように感じて、がっかりしていたかもしれませんが、定年後は、ゼロだったかもしれない収入が多少はあるだけでも、少し嬉しく感じるでしょう。

その収入がかなりの額になれば、時折はこれまでは諦めていたような、ちょっとした贅沢を楽しむこともできるようになり、それが日本経済に大いに貢献することにもなります。

そして、もしかしたらそれ以上に大きい魅力は、「誰かと競い合わないでも良い」ことかもしれません。

会社勤めをしていると、同輩や後輩が受けている処遇と自分への処遇を比較して、何かと苛立つこともあるでしょうが、こういう感情と無縁になれることは、何とも素晴らしいことです。

大体において似たような境遇の人が周りに多かったサラリーマン時代とは異なり、全く違った仕事をしてみると、上も下も桁外れの人たちがうじゃうじゃいます。「え? 世の中の人ってこんなにバカばっかりなの?」と思うこともあるでしょうし、逆に、周りの人の幾人かの、あまりの能力の高さに舌を巻いて、恐れ入ることもあるかもしれません。

■実社会の名脇役になる楽しみ

そうした新しい環境の中で、私が多くの人にお勧めしたいのは、「脇役」の楽しみを知ることです。

現状を大雑把に見ていると、高齢でなお社会的に大きな存在感を持っている人の多くは、「権力者」、具体的にいえば、政治家とか、あるいは個人企業のワンマン社長とかいった人たちでしょうが、もっと丁寧に見ていくと、「脇役」のような立場で、余人には代えられないような存在感を示している人たちも、結構数多くいます。

映画や演劇の世界でも「名脇役」は常に欠かせませんが、実社会でもおそらく同じような力学は働いているのでしょう。こういう人たちの多くは、「瑣末なことにこだわらない飄々たる雰囲気」を持っていることが多く、一緒にいるだけで心が和みます。

松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)
松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)

このような人たちの特徴は、一言で言えば、「能力」だけを自分自身の拠り所にして、「権力」にはこだわらない、言い換えれば、「物事を実際に動かすのは、誰か権力を持っている人がやればいい」と割り切っているかのようなところです。

確かに、「権力」に無頓着になれば、この世の中はかなり生きやすくなりそうです。「能力」を競い合うのも、それはそれなりにかなり大変ですが、「権力」を競い合うよりはずっと楽です。

「権力」を競い合って敗れれば、自分の全てが一挙に否定されてしまいますが、「能力」なら、たとえどこかで負けることがあっても、また別の場所に機会があるはずだからです。

どこかで通用する「能力」さえ持っていれば、「捨てる神あれば拾う神あり」「待てば海路の日和あり」で、胸を張って生きていける場所が、必ずあると思います。

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松本 徹三(まつもと・てつぞう)
実業家・作家
1939年、東京生まれ。京都大学法学部卒業。伊藤忠商事、クアルコム、ソフトバンクモバイルで通算51年間勤務。その後7年間は海外で仕事をした後、日本全国のレーダー施設で取得した海面情報を様々な需要家に提供するORNIS株式会社を82歳で創業。著書に『AIが神になる日 シンギュラリティーが人類を救う』(SBクリエイティブ)、『2022年 地軸大変動』(早川書房)など。

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(実業家・作家 松本 徹三)

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