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冷却シートでは全然間に合わない…子どもに熱中症の症状が出たら即実行したい"最速で体を冷やす手段"

プレジデントオンライン / 2024年6月18日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

熱中症の原因はわかっているのに、なぜ毎年必ず子どもが熱中症で亡くなる悲しい事故が絶えないのか。小児科医の森戸やすみさんは「熱中症は予防が肝要だが、もし症状がでてしまった場合、即座に体を冷やしてほしい。可能であれば水風呂に入れるのが効果的だ」という――。

■「暑気順化」は時間がかかるもの

熱中症というと真夏のイメージがあるかもしれませんが、じつは6月頃から増加することをご存じでしょうか。これは「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といって体が暑さに順化する――つまり慣れるには時間がかかるため、また気温だけでなく湿度も熱中症のリスクに関係するためです。だから、蒸し暑い日本の初夏は意外と要注意なんですね。

熱中症で救急搬送される人は高齢者が多いのですが、次に多いのが子どもです。子どもは大人よりも体のサイズが小さいので、熱しやすく冷めやすいと考えてください。体表面積に比べて体重が小さく、環境の影響を受けやすいのです。

また子どもは大人に比べ、体温を一定に保つ身体機能はもちろん、熱中症にならないための判断力も未熟です。大人は暑いときに速やかに発汗します。さらに早めに水分を摂ったり、衣服を脱いだり、エアコンを付けたりできます。ところが子どもは、年齢にもよりますが、大人のようにはできません。だから周囲の大人が気をつけないと、急に子どもが熱中症になってしまうことがあるのです。

■学校の管理下での熱中症による死亡

毎年、子どもが熱中症で搬送されたり、亡くなったりする事故が繰り返されています。2023年7月には山形県米沢市でクラブ活動を終えた女子中学生が、帰宅途中に熱中症と思われる症状により倒れているのが見つかり、救急搬送された後に亡くなりました。

2022年5月には、小学校1年生の女児が遠足から帰宅後に熱中症とわかり、救急搬送されました。この際には、炎天下に長時間歩くことを心配した母親が担任教師に不安を伝えましたが参加を促されたこと、女児が母親による迎えを要請したにもかかわらず呼ばなかったこと、さらに女児がお茶の購入を希望したときに校長が認めなかったことが報道されました。

この他にも学校の管理下で熱中症になったり、亡くなった子どもの事例が、日本スポーツ振興センターのサイトに掲載されています(※1)。屋外で行う野球やラグビー、長時間の登山やマラソンで熱中症による死亡が多く報告されています。子どもたちを守る立場にある学校や先生、大人はもっと危機感を持って熱中症対策をすべきです。

※1 日本スポーツ振興センター「学校の管理下における熱中症死亡事例」

■未就学児のほうがより高リスク

こうして小中学生が熱中症で亡くなった事例は多数ありますが、じつは0〜6歳の未就学児のほうがさらに多く熱中症で亡くなっています(※2)。小学生以上の子供に比べて、より体温調整機能が未熟で、判断力も低いためです。例えば0歳であれば、「熱いから服を脱がせて」と保護者に伝えることさえできません。

以前、幼稚園バスに子どもが置き去りにされて亡くなる事件が立て続けに起きたことを覚えているでしょうか。2021年7月、福岡県の私立幼稚園の通園バスに5歳の男児が置き去りにされ、熱中症で亡くなりました。このことが大きく報道されたにもかかわらず、翌2022年には静岡県の幼稚園の通園バス内で、同じように置き去りにされた女の子が熱中症で亡くなったのです。きちんと確認をしていなかったのでしょう。

2023年には大型量販店の駐車場で、自家用車の中に置き去りにされた生後10カ月の子が、2時間半の間に熱中症で亡くなりました。5人家族で出かけ、両親は互いに相手がその子を連れていると思っていたとのことです。そこまで重大なことにならないまでも、屋内のサンルームで遊んでいて腹痛や嘔吐、体の痛みを訴え熱中症になる子もいます。

※2 厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和4年)」

■熱中症予防のためにできること

こうした事故を予防するためには、どうしたらいいでしょうか。まず、子どもを一人にしないことが大切です。屋外はもちろん暑い室内、車などに子どもを置き去りにしないようにしてください。「よく眠っているから」「クーラーを付けているから」「短時間だけだから」と思ってもやめましょう。睡眠より安全が優先ですし、子ども自身が誤ってクーラーのスイッチを切ることがあるかもしれませんし、短時間のつもりが長くなるかもしれません。

車の場合は、キーを車内においたまま子どもがロックを掛けてしまい、閉じ込められるかもしれません。JAF(日本自動車連盟)が車内に子どもを残した状況を想定して行った実験では、33℃の炎天下でエアコンが止まると、車内の温度は5分後に警戒域、10分後に厳重警戒域、15分後には危険域に達しました。

よく冷えた水が入ったデカンタとコップ
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liebre

次に、子どもをよく観察することが大切です。顔が赤くないか、汗をたくさんかいていないか、元気がなくなってきていないかに注意します。水分は見えるところに置いて、ほしがったらすぐに飲ませます。乳児の場合は母乳か育児用ミルク、それ以上の場合は水やお茶と塩分のあるおやつがいいでしょう。また普段から睡眠・食事をしっかりとる、暑い場所で長く遊ばせ続けない、涼しいところでしっかり休憩を取る、気候に合わせた涼しい服装をする、屋外では帽子をかぶるなど工夫しましょう。厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」や日本気象協会「熱中症ゼロへ」を参考にしてください。

■熱中症警戒アラートについて

では、どのくらいの気温・湿度の場合に注意が必要でしょうか。熱中症警戒アラートとも呼ばれる、熱中症警戒情報、熱中症特別警戒情報を指標にしましょう。これは、環境省が暑さ指数(WBGT)が高いと予測したときに出されます。

暑さ指数とは、人体の熱収支に影響の大きい気温、湿度、日射・輻射など周辺の熱環境の3つを取り入れた指標です。私たちの体は、気温が高いだけでは、体温が上がりすぎて熱中症になるということは少ないんです。逆に気温がそれほどではなくても、湿度が高かったり、周辺の熱環境が厳しい場合は警戒しなくてはなりません。

環境省の「熱中症予防情報サイト」の「環境省熱中症予防情報サイト 熱中症警戒アラート」の項目を開くと、各地の状況がわかります。子どもにスポーツや外遊びをさせるかどうか迷ったら、ぜひチェックしましょう。暑さ指数が25以上28未満だったら積極的に休息を取ります。28以上31未満だったら激しい運動は中止、31以上だったら運動は原則中止です。

芝生の上に敷いたブルーシートの上で眠る子供の汗をぬぐう母親
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

■速やかに体を冷やすべき

では、子どもが熱中症を疑う状態になったら、どうすべきでしょうか。暑い日にたくさん汗をかいた後に頭を痛がったり、めまいや吐き気を訴えたりしたら熱中症かもしれません。子どもは体調不良全般を「痛い」とか「お腹が痛い」と表現することがあります。頭痛がしても手足の筋肉が痛くても「お腹が痛い」と訴えるかもしれないことを知っておいてください。

呼びかけに対する反応がいつもと同じなら、涼しい場所に寝かせて衣服を緩め、体を冷やします。クーラーのきいた室内で、氷枕や濡らしたタオルなどを体に当てたり、水シャワーで冷やしたり水風呂に入れたりしましょう。大きな血管がある頸部や脇の下、足の付根を冷やすとよいといわれますが、可能なら全身を冷やしてください。水風呂に入れることができるなら、そのほうが効果的です(※3)。前述のように子どもは体重の割に体表面積が大きいので、大人よりも早く効果が現れます。

一方、冷却シートは汗をかいていると貼り付きにくく、しかも面積が小さいので、急いで体温を下げたいときには氷枕や濡らしたタオルのほうがいいでしょう。

※3 NHK「熱中症になったら…『アイスバス』『アイスタオル』重症化を防ぐ対策を解説」

■同時に水分と塩分を与えよう

そうして体を冷やすのと並行して、水分と塩分を摂らせましょう。熱中症は体が熱くなりすぎ、その体温を下げる目的でかいた汗が多すぎて水分と塩分が減ってしまうことが原因だからです。

熱中症の治療にはスポーツ飲料ではなく、経口補水液がいいでしょう。あるスポーツ飲料は100mlあたり食塩相当量が0.12g、あるリンゴ100%ジュースは0〜0.20g、経口補水液は0.292gです。水分も塩分も糖分も同時に補給できます。でも、塩分タブレットやおせんべいなどの食品で塩分を補えるなら、水でもお茶でも清涼飲料水でもいいでしょう。

自力で水分を摂れないようなら点滴をしなくてはいけませんから、すぐに小児科へ行くか、具合の悪さによっては救急車を呼びましょう。意識がなかったり、呼びかけに応答しなかったり、けいれんしたりしていたら、迷わず119へ。

子どもの熱中症は、とにかく予防に努めるのが最良です。夏は必ず暑くなりますし、子どものどういった点に気をつけたらいいのかはわかっています。ぜひ、安全に楽しく夏を乗り切ってください。

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森戸 やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。

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(小児科専門医 森戸 やすみ)

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