「高すぎるから半額にして」という無茶振りに「それは厳しい」は三流…そのとき一流がする"うまい切り返し"
プレジデントオンライン / 2024年6月15日 15時15分
※本稿は、伊庭正康『トップ営業の気くばり 「あなたから買いたい」と言われる47の秘訣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■ワンストップサービスで新たな「解放の窓」をつくる
どんな業種の営業であっても、お客様から信頼を得る方法があります。
ワンストップサービスを心がけることです(これも、先の記事で紹介した「解放の窓」の関係です)。
例えるなら、「かかりつけ医」のようなもの。
「困った時は、この人に相談してみようかな……」
何かあったら、「この人に」、と思ってもらえる関係をつくるのです。
例えば、私もこんな経験があります。
「大人が踊れる店を探しているんだよね」(中高年の人が楽しめるディスコのこと)
「この辺で接待できるオススメの店って、なかなかないよね?」
「駅前の土地を買ったんだけど、何屋さんをしたらいいのかな……」
など、お客様から聞いた話を元に情報を探したことは、枚挙にいとまがありません。
もちろん、私はディスコや料理屋の紹介業者でもありませんし、ましてや、不動産は門外漢です。ジョハリの窓で言うと、お互いが知らない「未知の窓」です。
だからと言って、「知りません」と答えてしまうようでは、ワンストップサービスの血が許さないわけです。
ネットで情報検索してみたり、別のお客様に聞いてみたり、同僚に聞いてみたりしながら、できる範囲ながらもなんとか回答を示すことはします。
こうすることで、お互いにとっての新しい「解放の窓」をつくる作戦に出るわけです。
■「○○」をすれば、お客様はあなたに頼りやすくなる
でも、こう思いませんでしたか。
そう簡単に、お客様は頼ってくれるのか……と。
大丈夫です。実は、簡単。
鍵は、普段から「営業以外」の話をすることです。
つまり、雑談をしてください、といった簡単な話です。
先日、ある営業の方とこんな会話をしました。
営業「どうしてなんですか?」(※彼は、クレジットカードの営業ではありません)
私「経費精算が面倒で……」
営業「どこのカードにされるのですか?」
私「どこがいいのか、わからないんですよね。何か情報あります?」
営業「では、お客様や社内で聞いてみましょうか?」
私「それは助かります」
なんと、その日の夕方にメールが送られてきました。
そのメールには、こう書かれていました。
「聞いたところでは、ポイント還元を狙うならココがいいようです。
付帯サービスを狙うならココがいいとの声がありました。
加えて、口コミサイトのURLも添えますね。ご参考になれば幸いです。
加えて、前者のカード会社ですと、社内のネットワーク(人脈)を使って、営業担当のご紹介もできますので、おっしゃってください」
いかがでしょう。
私が信頼を寄せる理由を感じていただけたと思います。
ちなみに私は、ご紹介をいただき、前者のカードに入会をしました。
![クレジットカードを持ってラップトップでオンラインショッピングをする女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/c/1200wm/img_bc37675e607e206efe075bcdc6bf8c92232862.jpg)
営業ほど、多くの人と会っている仕事はなく、ネットワークを使えばお客様の知らない情報を簡単に集めることもできます。
加えて、同僚が知っている情報ネットワークを駆使することができるのも営業の特権です。
「いったん、あの人に聞いてみよう」と思ってもらえる存在になれると、営業が断然おもしろくなります。
まずは、雑談をしてみましょう。
■「できません」「難しい」と断ると二度とチャンスはこない
お客様は神様、というわけではありません。
「値引きをしてほしい」「納期を急いでほしい」
といった要請を受けることはないでしょうか。
お客様からの要請とはいえ、不利な条件で契約をしてしまうのはどうかと思うのです。
だからといって、「できません」「難しいです」と断ってしまうと、二度とチャンスはなくなります。
まさに、前回のクリニックはこのケースでしたよね。
では、営業としては、どうするべきなのか。
前回のクリニックの事例では「できることは精一杯する」と申しました。
もう少し、具体的に説明しますね。
「Noを言わずに、代替策を示す」、このパターンを詳しく解説しましょう。
まず、最初にやってはいけないパターンを紹介します。
無茶な値引きを交渉されたシーンを見てみましょう。
お客様「高すぎだよ。100円だったら検討するけどね。できる?」
営業「ええ、それは厳しいです……」
お客様「じゃ、いくらならできるの?」
営業「ええ……、190円でいかがですか?」
お客様「じゃ、ダメだね」
営業「ええ……、では、180円ではいかがでしょう?」
この商談は、みごとに交渉の罠に引っかかっています。
この罠を、「二分法の罠」と言います。
二分法の罠とは「できるか、できないか、どっち?」といったように、答えを「はい、いいえ」と迫られてしまい、不利な状況に追い込まれること。
これでは、とても頼られる存在にはなれません。
まさに“業者扱い”です。
■「ムリなお願い」をされた時の“うまい切り返し”
では、正解のパターンを見てみましょう。
まず、やるべきは「4つのステップ」で調整すること。こんな感じです。
お客様「高すぎだよ。100円だったら検討するけどね。できる?」
営業「100円ですか……。想定していなかったので、ぜひ伺っていいですか? 100円とおっしゃるには、背景があると思うのですが、何かあるのですか?」
お客様「そりゃ、今は仕入れ価格が上がっているので、少しでも下げないとね」
営業「そうでしたか……。100円である理由は、どんな理由でございますか?」
お客様「いや、100円に理由はないけど、少しでも下げたいんだよ」
ここで、100円にしないといけない理由はないことがわかりました。
次にお客様の「ニーズ(今、求めていること)」を確認します。
営業「ところで、今回、弊社の話を聞いてくださったのには、何かご期待があってこそだと思うのですが、差し支えなければ、お伺いしてもよろしいですか?」
お客様「そりゃ、お客様に目新しい商品を揃えておく必要があるからね」
ここで、お客様の「ニーズ」が確認できました。
■「不安」を聞き出し、「代替案」を示して交渉を試みる
さらに、「ご不安」な点を確認します。
営業「期待していただき、ありがとうございます。今でも十分ではないか、と思うのですが、どうして品揃えを気にされるのですか?」
お客様「最近は、人気商品の入れ替わりが早く、常に新しい商品を揃えておかないとお客様が不満に感じてしまうからね。難しい時代になったよ」
お客様の「不安」を聞けました。
さて、ここでいよいよ「代替策」を示します。
営業「教えていただき、ありがとうございます。ここまで伺いながら、申し訳ございません。100円では難しいのが現状なのです。
例えば、いかがでしょう。お客様を飽きさせない企画のご提案をさせていただきましょうか。POPを作成するなど、販促企画をこちらでさせていただきます。きっと売上に貢献できると存じます。実際、他のお客様でも、売上が上がり、喜んでいただいています」
いかがでしょう。
こちらだと信頼されませんか?
まず、「できる、できない」で回答をしようとしないでください。
聞き手に回った上で、交渉のカードを引き出し、その上で代替策を示すほうが、むしろ営業としてより信頼されるのです。
![ビジネスパートナーとミーティングする人](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/1200wm/img_5cbd03b38ffc327c3bb1808db60afbde232405.jpg)
■「お客様のニーズ」「お客様の不安」を聞くことが鉄則
ここで整理しておきましょう。
営業が信頼を得る条件は、「お客様のニーズ」と「お客様の不安」に応えることです。言いなりになることではありません。
![伊庭正康『トップ営業の気くばり 「あなたから買いたい」と言われる47の秘訣』(明日香出版社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/2/1200wm/img_22725754663ea057da22d1cb9df192e091615.jpg)
なので、このケースのようにムチャな交渉をされた時はもちろんですが、簡単な「お願いごと」、例えば納期調整、品質調整であったとしても、対応が難しい際は「できる・できない」で回答しないでください。
「お客様のニーズ」「お客様の不安」を聞くことが鉄則なのです。
最初は、「難しい!」と感じるかもしれませんが、慣れの問題です。
このパターンを習得すれば、お客様からムリなお願いをされたとしても、頼りにされる営業になること間違いなしです。
![「さすが」と言われる切り返し](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/1200wm/img_5dd07e93c207e44983a57f50669620a9247425.jpg)
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らしさラボ代表
1991年、リクルートグループ入社。営業部長、フロムエーキャリア代表取締役を歴任後、2011年に研修会社らしさラボを設立。YouTubeチャンネルでも営業のノウハウを配信中。近著に『超効率的に結果を出す テレアポ&リモート営業の基本』(日本実業出版社)がある。
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(らしさラボ代表 伊庭 正康)
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