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「初デートにサイゼリヤはちょっと違うかもね」正垣泰彦会長がヨッピーに明かしたサイゼの最高の楽しみ方

プレジデントオンライン / 2024年7月27日 10時15分

ミラノ風ドリアを手にする正垣会長 - 永井浩撮影

イタリア料理店「サイゼリヤ」をめぐっては「初デートで連れて行ってもいいのか」という話題が、たびたびSNSをにぎわせている。サイゼリヤ創業者で、『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか』(KADOKAWA)を出した正垣泰彦会長に、ライターのヨッピーさんが直撃した――。(後編/全2回)

■なぜサイゼリヤのオフィスは「普通」なのか

(前編から続く)

【ヨッピー】変なことを聞きますが、質素な机で仕事をして、前回お伺いしたように毎日サイゼリヤに行って食事して、ってすごくつつましい暮らしをしているように見えるんですが、豪勢な食事をしたい、とか豪勢な暮らしがしたい、とか思わないんでしょうか?

【正垣会長】会長の机が立派でもお客様は喜ばないですからね。雨が降ると困るから最低限屋根はほしいけど(笑)。

一度、アメリカのウォルマートの本社に行ったことがあるんですが、あそこの本部もすごかったですよ。廃校になった学校の中に事務所があって。小売で世界一の企業なのにそれだから「そんなもんか」と思いました。

【ヨッピー】それでも他の企業はたぶんもうちょっと立派なんじゃないかと……。

【正垣会長】もちろん、事業内容によっては銀行に融資を受けなきゃいけないから立派な場所に立派なオフィスを作らなければ信用されないとか、ビジネスによって違うから一概には言えませんけど、サイゼリヤは「お客様に喜んでもらえるか」が優先順位の1番目だから、豪華なオフィスになることはないと思います。

サイゼリヤ東京本部の会長室。非常にシンプルなつくりだ
永井浩撮影
サイゼリヤ東京本部の会長室。非常にシンプルなつくりだ - 永井浩撮影

■失敗は良いこと、決して怒らない

【ヨッピー】そこまでお客様第一主義でやってて、「あれはやりすぎたな」とか「失敗したな」みたいなことはないんでしょうか?

【正垣会長】失敗なんかはしょっちゅうですよ。でも、失敗は良いことだと思ってるんです。失敗はしないけどチャレンジもしない、だと当然成功しませんよね。つまり失敗しないと成功もしないんです。だから失敗は良いことなんですよ。失敗したら反省はしますけど、怒ったりはしません。

■1店舗の改善が数億円規模のコスト改善につながる

【ヨッピー】サイゼリヤに行って、お店を見てて気になったりすることはありませんか? 掃除が行き届いてなくて「ちょっと注意しようかな」とか。

正垣泰彦会長
正垣泰彦会長(永井浩撮影)

【正垣会長】私はお休みの日もサイゼリヤに行くんですね。お休みの日の日課は決まってて、1万歩歩いてサイゼリヤに行きます。従業員はたぶん「会長が来てる」なんて思わないでしょうね。私服で帽子をかぶって行くことも多いですから。

だからといって、その場で注意したりするようなことはしません。店舗の掃除が行き届いてなかったら、それは本部が悪いんですよ。掃除ができていないっていうのは「掃除していない」じゃなくて「掃除できない」んですよね。手が回ってない。つまりオペレーションの問題です。

サイゼリヤは約1500店舗ありますから、そのお店の店長と話して改善したところで1500分の1じゃないですか。それなら本部でオペレーションを改善して全店舗で共有したほうが1500倍効率が良いし、何億円っていうコストが浮きます。

■「立地が最悪」だったから競争力がついた

【ヨッピー】では本部の方は会長から怒られる……?

【正垣会長】本部でも怒りませんよ。問題提起はしますけどね。それも同じ理由で、本部ができていないということは経営陣が悪いんですし、経営陣が悪いということは結局私が悪いんですよ(笑)。だから怒りません。

ヨッピーさん
ヨッピーさん(永井浩撮影)

【ヨッピー】著書で書かれているように、「結果が良くない時は、必ず自分が間違っている」という考え方に通じるものでしょうか?

【正垣会長】その通りです。サイゼリヤの1号店は、駅から離れた商店街の中にある長屋の2階で、立地は「最悪」だったんですよ。だからこそメニューを工夫して、値段も安くして、試行錯誤することでなんとか軌道に乗せることができたし、競争力もつきました。

逆に言えば、立地が良くて黙っていてもお客様に来てもらえるようなお店だったら、工夫したり改善したりしなかったでしょうね。結局全て自分次第なんです。立地のせいにして諦めていたら成長できないですから。だから店舗の掃除が行き届いてなかったとしても、従業員のせいと考えるのではなく「自分が悪い」と考えます。

■社長になる条件は「皆に好かれる人」

【ヨッピー】「全部自分が悪い」という考え方をする中で、従業員をどういう部分で評価するんでしょうか? 例えば今の社長は松谷秀治氏ですが、どういう基準で社長に抜擢されたんですか?

【正垣会長】それは単純で、みんなから好かれてるからです。「次の社長どうしようか」って相談した時に、みんなが「松谷さんがいい」って言うから「じゃあ松谷さんにしよう」って。ただそれだけ。

【ヨッピー】例えば、「人からは嫌われているけどめちゃくちゃ仕事ができる」という人もいるかと思うのですが、そういう人は評価しない、と?

【正垣会長】いえ、そういう人はそういう人で別に向いている仕事があるから、社長ではなくそっちをお願いしますね。ただ社長はやっぱり人に好かれていないと人がついて来ないです。

それに、「人に好かれる」と言ってもなかなか難しくて、ちゃんとリーダーシップを発揮して結果を残さないと。「いい人」だけだと人から好かれないんですよ。

■フランチャイズ展開しない理由

【ヨッピー】サイゼリヤは海外にも積極的に進出していますが、海外でも同じような考え方で経営してらっしゃるんですか?

【正垣会長】はい。おかげさまで海外事業も順調ですよ。シンガポールにはいろんな人種の人がいるので、そこでうまくいけばどこでもやれるだろうと。目標は1万店舗ですが、フランチャイズ展開は考えていないので時間はかかりそうです。

【ヨッピー】フランチャイズにしないのはなぜですか?

【正垣会長】自分たち自身でやらないとどうしても高くなっちゃうからです。サイゼリヤは全部自分たちでやるでしょう。前回も言った通りオーストラリアに大きな工場を造っていますし、ワインだって、ブドウを自分たちで育てるところからはじめているからあの価格が実現できるんです。

【ヨッピー】あー、サイゼリヤのワイン、美味しいって評判ですよね……。プロのソムリエが絶賛している記事を読んだことがあります。

【正垣会長】持ってくるので是非飲んでみてください。大々的にうたっているわけではありませんが、実はミラノ風ドリアに合うように作ってるんですよ。

100円のグラスワインを手にする正垣会長
永井浩撮影
100円のグラスワインを手にする正垣会長 - 永井浩撮影

■「赤ワインとミラノ風ドリア」は最高の組み合わせ

【ヨッピー】これだけ、なみなみ入って1杯100円は異常ですよ。

【正垣会長】この赤ワインはね、酸味と塩味と苦味のバランスが良くて香りも良い。これを100円で出せるのはさっき言った通り、自分たちで全部やるからです。最高品種のブドウを、自分たちのブドウ畑で育てて、熟成させて、冷蔵コンテナで持ってきています。

このレベルのワインは他社には100円では絶対に出せないと思います。

「ミラノ風ドリアと赤ワインはとてもよく合うんだよ」と語る正垣会長
永井浩撮影
「ミラノ風ドリアと赤ワインはとてもよく合うんだよ」と語る正垣会長 - 永井浩撮影

そして、ぜひ試して頂きたいんですけど、赤ワインを口に含んだあと、ブクブクっと空気と混ぜなら口の中に広げてみてください。そのあとミラノ風ドリアを食べると口中に美味しさが広がりますから。

ワインの後にミラノ風ドリアを食べるヨッピーさん
永井浩撮影
ワインの後にミラノ風ドリアを食べるヨッピーさん - 永井浩撮影

【ヨッピー】わー、本当だ! 僕正直、ワイン苦手なんですけど初めてワインを「美味しい!」って思ったかもしれません。

「ワインは苦手だけどこのワインはおいしい」と話すヨッピーさん
永井浩撮影
「ワインは苦手だけどこのワインはおいしい」と話すヨッピーさん - 永井浩撮影

【正垣会長】ね、美味しいでしょう。でもこの組み合わせ、300円のミラノ風ドリアと100円のワインだから400円なんです。400円でこれが毎日食べられれば幸せでしょう?

【ヨッピー】確かに……!

■サイゼリヤは「イタリアのいつものご飯」を提供している

ちなみに、近年のSNSでは「サイゼリヤ論争」っていうのがあるのをご存じですか? 「初デートでサイゼリヤに連れて行くのはアリかナシか」っていう。毎回すごく議論が盛り上がるんですよ。「初デートにサイゼリヤはナシでしょ!」って女性が怒ったかと思えば、男性は「いや、サイゼリヤは美味いんだからいいだろ!」とか。

【正垣会長】私はSNSをやらないので初めて聞きました。そうやって話題に出してもらえるということはそれだけ興味を持っていただいているということなのでありがたいですね。

ただ、サイゼリヤは「イタリアの家庭料理」を提供しているんですね。特別なものというよりは日常的に食べられる家庭料理。なので、「いつものご飯」という感じで食べに来てもらうことを想定していて、「特別な日」というのであればちょっと違うかもしれません(笑)。

お付き合いした人が初めてお家に来る時に、「いつも通りだよ」ということでいつものご飯を作ってあげるのか、それともちょっとしたご馳走を作るのかは、それぞれが判断していただくのがいいんじゃないでしょうか。

■24時間営業も始めたい

【ヨッピー】いやしかし、このミラノ風ドリアと赤ワイン、ふたつ頼んで400円ということは、ドルで言えば3ドルですからね。海外の人からすれば驚異的な値段ですよね。

【正垣会長】「美味しい食事を安く食べられる」というのは幸せなことですからね。だからサイゼリヤの店舗を増やすことはそのまま幸せな人を増やすことだと思っています。そのうち、24時間営業も始めようと思ってるんですよ。

【ヨッピー】おおお……! 各社が24時間営業をとりやめる中、これまた時代に逆行する形で……!

【正垣会長】どうしてもお仕事が終わるのが遅い人もいらっしゃって、普段コンビニばかりの方が、温かくて美味しくて安いものが食べられたら幸せじゃないですか。今はコンビニだって高いですからね。

そういう「幸せな人」を増やすのが使命だと思っています。だから、海外進出も今はアジアが中心ですが、食べるものに困っている人がたくさんいるような場所に出店したいと思っているんですよ。戦争が終わったらウクライナに出店するとかね。

正垣泰彦会長
永井浩撮影
正垣泰彦会長 - 永井浩撮影

■もっと安く提供できるように1万店舗を目指す

【ヨッピー】イタリアに逆上陸する日が来るかもしれませんね。

正垣泰彦『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』(KADOKAWA)
正垣泰彦『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』(KADOKAWA)

【正垣会長】うーん、イタリアは最後かな(笑)。イタリアの食文化は本当に豊かだから。でも、前回も言いましたが本音を言うと早く倒産したいんですよね。だって、その方が楽じゃない?

サイゼリヤより安くて、美味しい会社ができて、お客様や従業員がみんなそっちに行っちゃえば、お客さんは幸せだし、従業員は楽しいし、私は仕事しなくて済むし、これほど楽なことはないですよ。でもまだそうじゃないから1万店舗目指してね。1万店舗作れれば今よりもっと安くなるだろうし。

【ヨッピー】まだ安くするつもりなんですか……!

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正垣 泰彦(しょうがき・やすひこ)
サイゼリヤ会長
サイゼリヤ創業者。1946年兵庫県生まれ。67年東京理科大学在学中にレストラン「サイゼリヤ」開業。68年の大学卒業後、イタリア料理店として再オープン。その後、低価格メニュー提供で飛躍的に店舗数を拡大。2000年東証一部上場。2009年4月、社長を退任して代表取締役会長就任。

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ヨッピー(よっぴー)
ライター
1980年生まれ。大阪市出身で、現在は東京都在住。体を張ったネタ記事からニュース記事まで幅広いジャンルの記事を執筆。銭湯が好きすぎて週に8回銭湯に行く。

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(サイゼリヤ会長 正垣 泰彦、ライター ヨッピー)

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