「月給わずか13万円」NHK朝ドラ元ヒロイン44歳…きょうだいで1人だけ母の虐待受け最高7股の男性遍歴に至る道
プレジデントオンライン / 2024年6月16日 10時15分
■「都内の一等地に豪邸」の額くらいの食べ物を吐いた
「私は中学生の頃から食べ物を食べては吐き戻し続けました。その食べ物の総額は都内の一等地に豪邸を建てられるぐらいにのぼります」
と、衝撃の告白をしているのは女優の遠野なぎこさん(44)。
世間から贅沢病だとか甘えだとか批判を受けたこともあるが、それは摂食障害という、れっきとした精神の病だ。
摂食障害は、必要な量の食事が食べられない〈拒食〉、自分ではコントロールできずに食べすぎる〈過食〉、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまう〈過食嘔吐〉などに分類される。また、口の中で食べ物を噛み続けて吐く〈チューイング〉なども含まれるとされ、患者によって症状はさまざまだ。
遠野さんは、拒食、過食、過食嘔吐を繰り返した。症状が良くなる時もあるが揺り戻しもあり、40代半ばになった現在もなお拒食に苦しんでいる。
この病気は10代から20代の若者が罹患することが多く、一般的に女性がかかりやすいと言われる。日本で医療機関を受診している摂食障害の患者は1年間で21万〜24万人いるとされ、さらには治療が必要なのに受診していない、治療を中断した患者なども含めると40万人近くいると考えられる(※)。
※国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所調べ
■太りたくないならば吐けばいいと囁いた母も摂食障害だった
この病の原因もいろいろだが、体重や体型へのこだわりから起因することが多い。遠野さんもそうで、6歳で子役デビューしているが、思春期になると少し体型がふくよかになったことがあった。このままでは仕事がこなくなるかもしれないと悩んだときに、彼女の母がこう囁いたそうだ。
「食べたら吐けばいいのよ」
そうか、吐けばいいのか。それならば、食べたいという欲求を満たしながら、吐けば食べたこともチャラにできると、幼いなりに理解したのだろう。しかし単純な行為に見えて、治療が難しい病につながる恐ろしいプロローグとなった。
「母もそうしていたので、スリムな体型を維持していました。さらには今の私と同様に摂食障害を患っていたのに、娘を同じ苦しみに引きずり込んだのです」
そう語る遠野さんは病と母との関係を綴った自著『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』(ブックマン社刊、2013年刊行)でも詳述しているが、その本の帯で“悪魔は母の顔をしていた”と表現している。
■自分だけに虐待したのは、ライバル視していたから?
母は病を誘導しただけでなく、4人きょうだいの長女である遠野さんだけに虐待を続けた。血が出るまで殴る、蹴るといった肉体的な暴力、「お前は醜い!」という言葉と暴力の両面で遠野さんを攻め立てた。父親は大酒飲みで遠野さんと息子にも暴力をふるったが、母はどうして遠野さんだけを標的にしたのか?
「母は私を娘ではなく女というかライバルとして見ていたようです。母もどうやら女優になりたかったのですが、私を産んだことでその夢を叶えられなかった。だから私をにくたらしく思っていたようなのです」
遠野さんは、そんな環境にいながらも子役から順調に大人の女優へと成長。連続TVドラマ『未成年』(1995年、野島伸司脚本、TBS系)で重要な役を演じたことをきっかけに、のちにNHKの朝ドラ『すずらん』(1990年度、清水有生脚本)でも主役の座を射止めた。
自分とは違って女優の道を駆け上っていく娘、どんどん美しくなっていく娘が目障りだとも思っていたのか。しかし、他人に遠野さんのことを聞かれれば、娘自慢をしていたらしいので、なんとも複雑な内面の持ち主だ。
「母は私を19歳で産んでいるので、当時まだ30代。エネルギーを持て余していたのでしょう。何かを成し遂げたいのに子供が次々と生まれてくるから何もできない。その吐け口もまた私への暴力へ繋がっていったのかもしれません」
しかも育児放棄をしていたので、幼い弟妹の面倒を見ていたのは長女の遠野さん。なんと、母の弟、つまり叔父の食事の世話もしていた。
「家庭は最悪だけど、きょうだいに決してひもじい思いをさせてはならない、その一心です。保育園の送り迎え、食事の世話など、母が投げ出した役目を引き受けました」
だが、学生、女優業、母親業で眠る暇もなくフル回転していたら反動は必ず来る。食べて吐いてという摂食障害もエスカレートする一方だ。
■朝ドラヒロイン史上最も遊んだ女優の男性遍歴
その後、朝ドラのヒロインになったときは仕事が忙しすぎて、今度は男性依存の状態に陥ってしまう。その当時は家族と離れて狭いアパートに一人暮らしをしていた。一人で撮影現場に行って撮影が終われば電車でアパートに帰ってくる毎日。マネージャーも付いてこないヒロインらしからぬ寂しい境遇で、給料も月に13万円ほどと薄給だった。
「忙しいのに孤独だし、お金もないしと、とにかくストレスがかかりすぎました。だからそれを発散する相手として多くの男性を求めていたんです。一時期はふた回り上の年上男性と同棲して、彼が運転するベンツで現場に行くこともありました。それでも満たされなくて、違う男性と関係を持ったことも……。なかには現場のスタッフもいたんです」
しかも、すべて自分から声をかけて始まったというから驚きだ。声をかけられたほうはびっくりするが、「私はあと腐れないから、どう?」と遠野さんが言えば、据え膳を食わぬは恥と思ったか。しかも清楚を絵に描いたような容姿の朝ドラヒロインから迫られ、NOと言える男がどれほどいるだろうか。
■「朝ドラヒロイン史上、最も遊んだ女では?」
遠野さんは当時を振り返って、今、そう語る。
「自分ではうまく立ち回ったつもりでしたが、周囲の方達はわかっていたようでした。『あの時、遊んでたでしょう?』などとあとで言われましたから。SNSなどない時代でしたから、世間に広まることもなかったのでしょう。今思えば、そんな私を辛抱強く起用してくださって、申しわけなさと感謝の気持ちでいっぱいです」
思えば、実の親から愛されない空虚感や寂寞感を、男性との交わりで埋めようとしていたのか。虐待にあった子供はアルコールや薬物などの物質依存、性的に奔放になる性依存になる可能性が高いという(※)。
※依存症.com
遠野さんもまた、仕事がない時は大量のアルコールを摂取して1日を過ごした時期もあった。しかし、原因となった親との関係性を修復していないので、いくら男性と出会おうと酒を飲もうと根本的な解決にはならない。
■自分を必要としてくれたバラエティ番組で爪痕を残す
朝ドラが終わった後は、通常ならば所属事務所はヒロインを演じた女優として盛大にプッシュしていくが、そうはならなかった。なぜなら遠野さんは、付き合っていた男性を追いかけてアメリカに渡ってしまい、しばらく日本にいなかったのだから。若手女優として大事な時期を棒に振ったのだ。
それでもその後は民放の昼ドラのヒロインにもなったし、映画で新人賞も受賞。数多くの舞台経験も積んだが、世間的な知名度は今ひとつ。そんな彼女が幅広い認知度を得たのは、バラエティ番組の出演がきっかけだった。歯に衣着せぬ率直な発言や、毒のあるコメントがウケて、バラエティで引っ張りだこに。
「バラエティでは、自分が“必要とされている”という感覚があって嬉しかったんです。加減がよくわからなかったのもあったけれど、毒を吐きまくってでも爪痕を残したかった。次々とオファーがあるのは、自分が必要とされている証ですから」
■大嘘をついて、不倫相手と再々婚した母と絶縁
しかし、男性との七股交際などあまりにもぶっちゃけた発言で、所属していた大手老舗事務所とは折り合いが悪くなってしまう。そこを退社して小さい事務所に移籍した後は、思うぞんぶんバラエティで存在感を示すことができた。
その間、結婚と離婚を繰り返す。いずれも月単位のスピード離婚。そして実母、母がわりに世話をしたきょうだいたちとも絶縁した。
「母は私の父と離婚して、私の撮影現場のスタッフだった男性と再婚していました。それなのに、勤めていたスナックのマスターと不倫をしていたんです。しかも、なぜか虐待している私に『キスした』だの『ラブホテルに行った』だのと告白したり、不倫相手の局部の写真を見せて自慢したりするのです。正気の沙汰とは思えないですよね。挙句の果てに大嘘を吐いて、不倫相手を彼の奥さんから奪ってしまったんです」
その大嘘とは……不倫相手の子供を妊娠し、中絶した。「みどりという名前までつけていたのに、どうしてくれるのか」と相手の家族に詰め寄り、別れさせたのだ。
結果的に略奪婚をして、自分の願いを成就させた。
「しばらくして私にまたこっそり告白してきたのです。『妊娠や中絶は嘘よ』と笑いながら、です。恐ろしいけれど、狂気をはらんだ母は、私より女優に向いていると思ってしまいました」
母は不倫相手の籍に、遠野さんを除く下の子供たちを入れた。それがとても悔しかった遠野さんは、前述の通り、家族全員と縁を切った。
「あれだけ愛を注いだのに、きょうだいは母を選んだのが許せませんでした。考えたら、彼らは育児放棄されていても虐待は受けていなかったし、再婚相手はお金持ちだったので母を選んだのかもしれません」
■母と同じことは絶対しない、母は自分の反面教師
財産は一銭たりともわたさない、と母は言った。遠野さんにとっては、金などもうどうでもいいこと。数々の男性に依存したかもしれないが、不倫は絶対悪だと思っているし、経済的には誰にも頼っていない。そこが母とは違う。
摂食障害で食べられない時期があっても美味しい料理を作ったり、家をきれいに整頓したり、子供や動物に愛情を注ぐのも、すべて母を反面教師としていたから。いや、すべて本当は母にしてほしいことだった。
美しく整えた家で食事を用意し、愛情たっぷりに育ててほしかった。自分を醜いなどと蔑まず「可愛い、可愛い」と慈しんでほしかった。
なのに、母は難病を押し付けたまま、遠野さんの前から姿を消してしまったのだ。(以下、後編へ続く)
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ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。
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(フリーランスライター・エディター 東野 りか)
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