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だから70の力で100の音が出せる…新人アナウンサーが研修で叩き込まれる"筋トレ"の中身

プレジデントオンライン / 2024年6月16日 10時15分

本屋B&Bで行われた千葉佳織さんと国山ハセンさんのW刊行記念イベント「話して伝えるためにプロがやっていること」の一場面。 - 写真提供=カエカ

「話のプロ」は会話の中でいったいどんなテクニックを駆使しているのか。『話し方の戦略』の千葉佳織さんと、『アタマがよくなる「対話力」』の国山ハセンさん、「話し方」をテーマにした著作が話題の2人の対談イベントより、その一部を特別公開する――。

※本稿は、本屋B&Bで行われたW刊行記念イベント「話して伝えるためにプロがやっていること」の内容を抜粋・再構成したものです。

■「結論ファースト」は唯一の正解ではない

【国山】よく「結論から話せ」みたいに言われるケースが多い一方で、千葉さんはあえて「結論から話す必要はない」とおっしゃっていますね。

【千葉】世の中で言われている“あるある”ってだいたい間違っていると私は思っていて。話し方でいえば、「結論ファースト」がビジネスパーソンの正しい話し方ですと言われがちなんですが……。

たとえばネガティブな話のとき、「あなたはもうチームから外れてください」という“結論”を最初に言われても、言われた側はなかなか受け入れられないと思うんですよね。そういう場合は段階を追って話していったほうが、最終的には理解してもらいやすいはずです。

スピーチであれば、最初に結論がわかってしまうと「はいはい、『挑戦して』っていう話をしたいのね」と思われてしまう面もあります。

なので私は、意図的に、最初はどんな話の内容が展開されるかわからないように話したりもします。「先日、こんなことがありました。私はここに悩み、こんな決断をしました。そこから私は、大胆な挑戦の大切さを学んだのです」という順で話すと、聞き手を惹(ひ)きつけるものになります。

イベントでの千葉佳織さんと国山ハセンさん
写真提供=カエカ
和やかな雰囲気の中、互いの「話し方のプロ」としてのこだわりが随所に垣間見られた。 - 写真提供=カエカ

■テレビの世界で学んだ「負けの美学」

【国山】ストーリーの部分を大切にしましょう、と。それでいうと、あえて弱みを見せるということも本に書かれていたと思います。

私も「負けの美学」と表現しているんですけど、相手との対話のなかで自分をさらけ出す。そうすることで相手も信頼してくれて、話が乗ってきて盛り上がるっていうのは、みなさんも想像できると思います。

この「負けの美学」は、芸人の加藤浩次さんから教わりました。一緒に飲んでいる途中で、加藤さんがいきなり真面目な顔をして「ハセンは負けの美学を忘れんなよ」と。「どういうこと?」って思ったんですが、そのときは意味をちゃんとは教えてもらえなかったんです。

そういう立ち居振る舞いっていうんですかね。自分をさらけ出して弱みを出すことで、愛嬌が生まれる。そのような「あえて」の立ち居振る舞いの大切さを、テレビの世界で学びました。

■自分を「開いて」共感を呼ぶ

【千葉】私は「自己開示」という言い方をしていて、本(『話し方の戦略』)のなかでは指原莉乃さんの事例をもとに解説しました。指原さんのスピーチは学ぶことの宝庫なんですよ。

国山ハセン『アタマがよくなる「対話力」』(朝日新聞出版)
国山ハセン『アタマがよくなる「対話力」』(朝日新聞出版)

【国山】指原さん。お仕事したことあります。

【千葉】指原さんはとにかく自分のことを下げて「私はもう本当にうまくいかなくて、顔もブスで……」とおっしゃいます。

逆に、AKB選抜総選挙で3回目の1位を取ったときは「私を1位として認めてください」っていう気持ちを開示しながらファンの皆さんに感謝を伝えています。

どちらも、人に話すのに勇気が必要な内容を自分から開示しているんです。だからこそ、聞き手は「この人は本心から私たちに伝えようとしてくれているんだ」と感じ、応援したくなるのです。

【国山】「共感」を呼ぶっていうことですよね。

【千葉】今の時代って情報が多すぎるので、ただわかりやすいだけではなくて、そこにどう共感できるか、ファンがつくかというのが大切だと思います。聞かれなくても自分を出しにいくっていうような覚悟があったほうが、ビジネスにも生きてきますよね。

■2秒待って相手の話を「聞ききる」

【国山】どんなシーンでもそうですね。人前で話すときにそういう要素を出すっていうこともあれば、会話のなかでちょっと意識づけて相手と距離を縮めていくこともできる。

ただ、いきなり縮めすぎてしまうと、「この人とは合わない」となってしまうパターンもありますよね。

【千葉】相手に合わせる「間」ですね。

【国山】相手が話し終える前に、被せるように自分の話に入ってしまう人がときどきいます。丸(句点)がつく前に入っていっちゃう。ここ結構テクニック的に重要で、話し終えてから1、2……2秒開けて話すぐらいがいいんです。

【千葉】私も一緒です。スピーチやプレゼンでも、句点のあとに2秒。

【国山】まさに。複数名の話者がいる場合や、ファシリテーションをする場合も、ちゃんと「聞ききる」ということですよね。

■会話の「隙間」を狙って話題をコントロール

【千葉】私、対話の場面でとても気になっているのが、たとえばPIVOTさんの収録でもあるかなと思うんですけど……話しすぎてしまう方、どうされてますか? 話に入れなくなりませんか?

【国山】これはですね、「隙間」を狙ってます。相手の一分(いちぶ)の隙を狙います。

テレビでもよくあるんです。カンペで「早く引き取れ」「次行け」みたいなことが出てるんですよ、実は。でもここで焦ってしまうと、見え方がよくない。「焦って被せてるな」みたいになってしまうので。

たとえば飲み会でも、バーってみんなが話してるときに、自分がちょっと入って次の話題を誰かに振りたいなって思ったら、その会話の隙間を狙う。

【千葉】隙間は句点でなくてもいいんですか?

【国山】句点でなくていいです。なんか落ち着いたなっていうタイミングとか、一息ついてるなっていうところを見逃さない。これはテレビの「アッコにおまかせ!」(TBS系列)で学んだんですけど……出演者のみなさん、ずっと喋(しゃべ)るから(笑)。

対話をする人のシルエット
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PrathanChorruangsak

■リアクションで場の熱量をドライブさせる

【千葉】「対話」って出たとこ勝負な面もありますよね。再現性につながる振り返り方のコツってなにかあるんですか?

【国山】そうですね。対話はやっぱり熱量が重要だと思います。なので、その場を盛り上げるために、相手から自分がどう見えているかを重要視しています。私は映像を見返して、自分の表情をチェックしていますね。

話を聞いているときのあいづちって、「え」っていうのと「え⁉️」っていうのって全然違うじゃないですか。声の大きさや表情によってけっこう変わるんですよ。そのリアクションの見せ方も、実は結構考えていたりします。

【千葉】相手の反応を見て「あ、この“え”の感じがちょっと足りなかったな」ってなるんですか。

【国山】そうですね。あいづちもここは言わないほうがいいなとか、つい「はいはいはい」とか「うんうん」となりがちなんですけど、「うん」って言うとちょっと失礼な印象を与えるから言わないようにしよう、とか。

挨拶(あいさつ)とかリアクションも、ここは笑顔でいたほうがいいよな、とかは考えるようにしています。基本のキですけど、やっぱり挨拶と笑顔って大事じゃないですか。

【千葉】この基本のキがどれだけ難しいか。

■アナウンサーが叩き込まれる基礎トレーニング

【国山】笑顔はもう、シンプルに鏡で自分を見て、どのぐらい自分の口角が上がるかなってチェックするんですよ。

千葉佳織『話し方の戦略』(プレジデント社)
千葉佳織『話し方の戦略』(プレジデント社)

【千葉】筋肉が動いているんですよね。

【国山】そうなんです、表情筋が動く。

実はアナウンサーの発声トレーニングは最初、いかに口を大きく開けられるかというところから始まるんです。「あ」「い」「う」「え」「お」の母音をどれだけ口を大きく開けて話せるかっていうのをみっちりやります。そのうえで、一音一音どう出していくかっていう発声トレーニングがある。

アナウンサーは早口言葉を学んでいる印象ってあると思うんですけど、早口言葉なんて学ばないんですよ(笑)。

■70パーセントを出すための100パーセントの訓練

【千葉】口を大きく開けるというのは私たちのトレーニングでもよくやります。そもそも口の開け方によって話のスピード自体がコントロールできるんです。口の開け方が小さいと話すスピードは早くなり、大きく開けるとちょっとゆっくりに。

ハセンさんはいつも100パーセント開けていますか?

【国山】さすがに開けていないです。でも、開けるところから始めないといけないんですよね。100でやっていると、自然に70ぐらいに、アナウンス原稿を読むときはもうそんなに大きく開けなくても音が出るっていうふうに変わっていく。

【千葉】70パーセントを出すために100パーセントをやる。この基本のトレーニングがとても大事だということですね。

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千葉 佳織(ちば・かおり)
株式会社カエカ代表、スピーチライター
1994年生まれ、北海道札幌市出身。15歳から日本語のスピーチ競技である「弁論」を始め、2011年から2014年までに内閣総理大臣賞椎尾弁匡記念杯全国高等学校弁論大会など3度の優勝経験を持つ。慶應義塾大学卒業後、新卒でDeNAに入社。人事部にてスピーチライティング・トレーニング業務を立ち上げ、代表取締役のスピーチ執筆や登壇者の育成に携わる。2019年、カエカを設立。AIによる話し方の課題分析とトレーナーによる指導を組み合わせた話し方トレーニングサービス「kaeka」の運営を行う。経営者や政治家、ビジネスパーソンを対象としてこれまで5000名以上にトレーニングを提供している。2023年、週刊東洋経済「すごいベンチャー100」、Forbes「2024年注目の日本発スタートアップ100選」選出。

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国山 ハセン(くにやま・はせん)
PIVOTプロデューサー
1991年生まれ、東京都出身。中央大学商学部卒業。2013年4月、TBSテレビに入社。「アッコにおまかせ!」「王様のブランチ」「ひるおび」などの情報バラエティ番組のアシスタントや進行役、朝の情報ワイドショー「グッとラック!」のメインMC(司会)などを務めたのち、2021年8月からは報道番組「news23」のキャスターを務めた。数々の現場取材を経て2023年1月に独立し、ビジネス映像メディア「PIVOT」に参画。現在は、番組プロデューサー兼MCとして、英語や資産運用、教育など、ビジネスパーソンのスキル向上に役立つ「学び」に特化したコンテンツを、アプリやYouTube上で日々発信している。

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(株式会社カエカ代表、スピーチライター 千葉 佳織、PIVOTプロデューサー 国山 ハセン)

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